まほろ公園で、ふりむけば
藤重ヒカル/作 小日向まるこ/絵
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刊行日 2025/01/22 | 掲載終了日 2025/01/26
ハッシュタグ:#まほろ公園でふりむけば #NetGalleyJP
内容紹介
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今では、「まほろ公園」という名前は知っていても、その意味がわかる人は、あまりいないかもしれません。
だいたい、まほろ公園で遊んでいる子のほとんどは、〝まほろ〟の意味を〝まぼろし〟のことだとかんちがいしているようです。
なかには「まぼろし公園」とよぶ子もいます。
文字が、にているからでしょうか。
それとも、ほんとうに〝まぼろし〟を見た人がいるからなのでしょうか……
(本文より)
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町にねむる思い出と子どもたちがであったとき、
ごくふつうの公園ではじまる
5つのふしぎな物語。
キミコに植えこみの奥から声をかけてきたのは、草を編んだお面をつけた人。ふしぎなことをたのまれます。「草のお面」
マユがおじいちゃんと歩いていたら、グラウンドの真ん中に古い電話ボックスがありました。電話のベルが鳴りはじめます。「もしもし、もしもし」
ピアノのレッスンに気乗りしないナオキは、誰もいない公園でふしぎな女の子と出会います。「雪空ピアノ」
公園に集まった、たくさんの人。結婚式、それともなにかの撮影でしょうか。近づくと、おじいさんに声をかけられます。「アルバム図書館」
小さな翼をもつペガサスのメメに乗って、ショウタはどこかなつかしい場所へやってきます。「メメ」
心あたたまる連作短編集。
出版社からの備考・コメント
ここに掲載している作品データは刊行前のものです。
刊行までに内容の修正があり、仕様の変更がある場合もございますが、ご了承下さい。
【ご注意下さい】
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販促プラン
【著者紹介】
作 藤重ヒカル(ふじしげ ひかる)
千葉県我孫子市生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築インテリアの仕事に従事。そのかたわら、飯野和好氏に師事、絵本・童話をかきはじめる。『日小見不思議草紙』で日本児童文学者協会・新人賞。作品に『さよなら、おばけ団地』『不思議屋敷の転校生』など。
絵 小日向まるこ(こひなた まるこ)
2015年よりフリーで作家活動開始。 漫画・イラスト・アニメーションなどを制作する。漫画作品に『アルティストは花を踏まない』『あかり』などがある。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784035306207 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
ページ数 | 159 |
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NetGalley会員レビュー
まほろ公園があるここは、60年前の大水での大被害から復興を遂げた町。当時の思い出がどこかに流れ着いていて、その幸せを使って公園に来た子ども達を元気付けてくれる。
そんな不思議を綴った短編集。
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『草のお面』
木にも家族があるのだろう。でも、木だけになかなか動けない、我が子(実)を植えて水をやることもままならない。だから、サザンカの木の夫婦の妖精は驚かさないように、草のお面をつけて、キミコの前に現れたのだろう。
そしてきっといつか、キミコの前に草のお面をした子どもが現れるだろう。彼女とその子供達もまた、同じことを頼まれていくはず。それが、まほろ公園のサザンカと人の大切な結びつき。
そう考えると、心がぽっと温かくなった。
『もしもし、もしもし』
冬の夜のはほろ公園に現れた公衆電話の長十郎さんは、おじいちゃんの夢を時を超えて叶えてくれた。マユにも、一生忘れないものを見せてくれた。
この長十郎さんみたいに、60年前のあの日に流されてしまったものたちは、このまほろ公園のどこかに流れ着いていて、ずっと待っているはず。60年前にここで暮らしていた人々のために。その想いのために。
『雪空ピアノ』
夜のまほろ公園で、アップライトピアノを一人弾く赤い服を着た女の子。何という幻想的な風景。
ピアノは弾いた人の思い出を優しくためていく。そして、その思い出が弾いて解き放たれると、ピアノから空へと帰っていく。まるで昇っていく雪のように。それが、聞く人も弾く人も一人だけの、夜のまほろ公園の「雪空ピアノ演奏会」。そっとそっと眺めてみたい、演奏会。
『アルバム図書館』
まほろ公園では、昔の思い出がそこにいた人ごと再現されることがある。きっとそれは、60年前に戻ったかのようだろう。今と昔が重なって共に存在する、不思議な時間。
それは、洪水で無くしてしまったアルバムにある写真が再現されるから。流れ着いた自分や家族のアルバムを見つけて保管してくれているアルバム図書館、その管理人が相手の心の中にそっとその写真を見せてくれるから。
人の世は繋がって続いている。それを思い出させてくれる、大事なアルバム図書館。
『メメ』
リョウタが「杉森小学校90年史」で見つけたのは、おばあちゃんの教室が写った写真。60年前の4年生の授業風景。
そしてリョウタは辿り着く。60年前の町から流されてきたものが集まった、「思い出」という場所に。それがあるから、この町の人々は暮らしていける。まほろ公園が、この町の人々を元気づけてあげられる。
「むかしと今はつながっている」 それは、単なる言葉ではない。人は過去の上に立つから生きていける。人だけではない。木も建物も土地だって過去によって支えられている。だから、60年前の洪水で命以外の全てを失ったこの町には、まほろ公園が必要だったんだ。失われたものが流れ付き、それを大事に大事にしまっておいて、必要な時に使ってくれる、このまほろ公園が。
児童文学として、とても夢のある物語を体験すると共に、人を含めた全てには、過去、積み重ねてきた歴史が必要なのだと、あららためて実感した。
過去の思い出が現れる不思議な場所。
それは今と昔は繋がっているから。
不思議な出会いでも、心のままにすんなり受け入れられるのは子どもならでは。
でも、一緒に信じてくれる大人もいるから(すぐに忘れてしまうとしても)、この物語は温かい気持ちになれる。
〝まほろ〟とは古語で、〝素晴らしい場所〟という意味だそう。
でも、語感が似ていることから、〝まぼろし〟だと勘違いしている人もいるようで……。
それって、ただの勘違い?
本当に〝まぼろし〟を見た人がいるからなのかも……
60年前に洪水で流されてしまった物に関わる短編が五作。
古き良き昭和の時代の建物や街並みなど、今は亡きものたちに思いを馳せることになるので、どの物語も切なさや寂しさが漂う。
それでも、優しく温かく、とても好きな話だった。
流されてしまった物がたどり着く場所が本当にあったらいいなと思った。
その公園は60年前に水害によって町ごと流されてしまった土地にある、“素晴らしい場所”という意味が込められた名前を持つ。そこでは名前が“まぼろし”に似ているせいなのか不思議な出来事にであうようで…。
もともとは山茶花が満開になることで有名な神社だった、まほろ公園を舞台に紡がれているのは不思議だけどしっとり優しい5編の物語。
P140で「そんなマンガみたいなことは、現実には起きないよ。」ってセリフがあるけど、マンガ以上にわくわく心踊る素敵な展開とちょっぴり切ない出来事がリズミカルに配置されていて夢中で読みすすめ没入しました。
思い出が生きる糧になり力を与えてくれる。なくなっても残っている、という希望が緩やかに繋がり続けていて、様々な“縁”がちりばめられた作品でした。
震災から60年が経った山茶花の茂る公園が舞台。
もともとは神社だったその公園では、不思議な幻が見える。
私が特に気に入ったお話は、おじいちゃんと孫がオーロラを見るお話。おじいちゃんが忘れていた子供の頃の夢が叶い、私の心も温まった。