安房直子 絵ぶんこ⑧海の館のひらめ
安房直子 文 くのまり 絵
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刊行日 2024/08/02 | 掲載終了日 2024/09/17
ハッシュタグ:#安房直子絵ぶんこ⑧海の館のひらめ絵童話 #NetGalleyJP
内容紹介
レストランで働く島田しまおは、真面目で一生懸命働いているのに、いつまでたっても皿洗いばかり。
それに心ない店主や料理人たちに、いつもいじめられてばっかりです。
そんな島田しまおは、もう辞めようと心に決めたとき、「しんぼうしんぼう」と言う不思議な声が聞こえてきました。その声の主は、なんと流しの下に置いてある1匹の「ひらめ」でした。
このひらめは、「海の館のひらめ」と言われる幸福を呼ぶひらめだったのです。
その後、ひらめの不思議な力で、島田しまおは、あれよあれよという間に夢をかなえることになります。
心がほっとする安房直子の傑作童話。
本シリーズ「安房直子絵ぶんこ」は、小学校中学年が読みやすい文章量の作品をとり上げて、人気イラストレーターの絵で綴ったシリーズです。
【公共、学校図書館向き】
対象➟小学校中学年
シリーズ全9巻刊行予定
★各巻ごとに挿絵担当が変ります。
①ふろふき大根のゆうべ(アヤ井アキコ 絵)4月下旬刊行
②猫の結婚式(西淑 絵)4月下旬刊行
③空にうかんだエレベーター(えがしらみちこ 絵)5月下旬刊行
④遠い野ばらの村(高橋和枝 絵)6月下旬刊行
⑤雪窓(長谷川あかり 絵)6月下旬刊行
⑥ひぐれのお客・初雪のふる日(松村真衣子 絵)7月下旬刊行
⑦北風のわすれたハンカチ(eto 絵) 9月下旬刊行
⑧海の館のひらめ(くの まり 絵)8月下旬刊行
⑨あるジャム屋の話(伊藤夏紀 絵)10月下旬刊行
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784751532089 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 56 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
いったい、何者だったのでしょうか?海の館のひらめとは。
誰もが知るとんでもない力を持つもののように描かれていますが、そんなに有名な存在なのかしら?読み終えてもそこは明確に謎解きされないまま、また、その不思議がいいのでしょう。
しまおの真面目さ、ひらめのことばを信じるまっすぐさや努力を惜しまない真っ当さ、その何もかもがあいまってしまおの力となったのでしょう。
起こったことはハッピーでラッキーかもしれませんが、よく読めばしまおのたゆみない努力と裏表ない言動が、それらを引き寄せたのです。夢が叶ったのは決してひらめの魔法とばかりは言えません。
くのまりさんの挿絵も美しく、ハッピーエンドにほっと心がほどけるお話でした。
私が初めて安房直子さんの本と出会ったのは、小学四年生の時です。なんだか分からない不思議に、先へ先へと引っ張られ、あっという間に読み終わったことを覚えています。
その時と同じ不思議が、今回も私を引っ張っていきました。
海の館のひらめって何?妖怪?妖精?神様?お化け?
でもそんなこと、どうでもいいのです。
海の館のひらめは、海の館のひらめでした。
温かくて不思議な安房直子さんの世界。また虜になりそうです。
本って、ひと、を現すじゃないですか
隣の席のバッからチラ見する文庫本の表紙が気になるし
百貨店のエレベーターホールでも本を手放さない若い男の慄然
いつも陽気なタレントさんの壁一面の書棚とか
その人が小学校の頃、どんな本が好きだったかを知ることは
どうぶつ占いよりも信じているふしがあるんです
安房直子さんの本でこども時代を過ごしたひとは、なんとなくわかっちゃうんですよね
朗らかだけど陽気じゃないとことか 図書館はひとりで行く派なこととか
海の館のひらめ 読みました
やさしいきぼう ゆめのはなし しんぼうしんぼうの意味
「ハンカチの上の花畑」に夢中になったかつての私の
あの頃が蘇ってきました
イラストは、小川糸さんの「ライオンのおやつ」のくのまりさん
好きしかない
レストランでずっと下働きのしまおは「海の館のひらめ」に真面目さを認められる。
生き方を認め導く者が必ず現れるという、故安房先生の想いを現代のイラストレーターが蘇らせた、美しい物語。
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表紙を見て、この絵の雰囲気はどこかで?と思った。そう、くのまり先生と言えば、私の大好きな絵本『のせのせ せーの!』(斉藤倫、うきまる 文)の絵を描いたイラストレーターだった。青い服と綺麗な髪を海風にたなびかせている女性の絵。背景は確かに海だけど、題の『海の館のひらめ』の気配はどこにもない。ならなぜ? と興味津々、読むしかないとページをめくった。
主人公は真面目この上ないしまお。でも、真面目ならば運が開けるとは限らない。レストランアカシヤでの彼の苦労はえんえんと続く。
ここまでの扱いをされたら、いくらしまおでも耐えられっこない。思わず目をそらしそうになった時、「しんぼう、しんぼう。」と言う声。その声かの主が、そう、「海の館のひらめ」だった。やっぱりだれかが、正直者の真面目な様子を見ているものなんだ。
ただ、更なる努力をもとめるひらめ。寝る間もないしまお。そのしまおの、どんなにがんばってもそれを表に出さない、素朴だけど温和で静かな顔が、くのまり先生の絵から浮かび上がる。そんなしまおは、真面目な表情でつぶやいていたはず。きっと「しんぼう、しんぼう。」と。
そんなしまおの苦手なこと。それは女性とのやりとり。それはそうだ。最初はレストランアカシヤで、次にひらめのもとで、そんな暇はかけらもなかったのだから。
だからこそ、教える一方だったひらめが叱りつけるように言ったのだろう。でも、その手立てはしまおの得意な方法。ひらめがしまおを想う心の深さを感じる瞬間だった。
そして、ひらめと2人の別れ。その時のひらめの言葉、「苦労はつきません。でも、正直に、まじめに働いていれば、きっと切り抜けられます」。これは、今は亡き安倍直子先生の思いそのものだったのだろう。そして2人は、明るい表情でこう言い合いながら生きていくのだろう。「しんぼう、しんぼう。」と。
安倍先生が残したものは、今でも人の心を打つ。だから、没後30年もたってから、「安房直子絵ぶんこ」として蘇ったのだろう。そして、今回公開された第8巻の絵の担当はくのまり先生。偶然とは思えなかった。
安倍直子先生が書かれた文の中に、今も生き続ける先生の想い、願い、希望に、どうか沢山の人が触れますように。そして、くのまり先生の絵で読めた偶然に心からの感謝を。