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この計画はひみつです
ジョナ・ウィンター/文 ジャネット・ウィンター/絵 さくまゆみこ/訳
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刊行日 2018/06/20 | 掲載終了日 2024/04/30
ハッシュタグ:#この計画はひみつです #NetGalleyJP
内容紹介
ニューメキシコの砂漠の名もない町に、科学者たちがやってきました。ひみつの計画のために、政府にやとわれた科学者たちです。計画は極秘とされ、だれひとり情報をもらしません。思いもよらないものが作られているにちがいありません。
もうすぐ完成しそうです。時計の針がチクタクと時を刻み……
できあがったあるものの実験が始まりました。
ラストまでかならず読んでください。
ニューメキシコの砂漠の名もない町に、科学者たちがやってきました。ひみつの計画のために、政府にやとわれた科学者たちです。計画は極秘とされ、だれひとり情報をもらしません。思いもよらないものが作られているにちがいありません。
もうすぐ完成しそうです。時計の針がチクタクと時を刻み……
できあがったあるものの実験が始まりました。
ラストまでかならず読んでください。
おすすめコメント
この計画とは「マンハッタン計画」のことです。集められた優秀な科学者たちが共同で作り出したのは原子爆弾でした。1945年7月16日に、ニューメキシコ州南部の砂漠で、最初の核実験が行われました。
その後、1945年8月6日広島に、1945年8月9日長崎に、アメリカは原子爆弾を落としたのです。広島と長崎以来、原子爆弾が人を殺すために使われたことはありません。
今は、多くの国が、地上での核実験を禁止しています。また、多くの国が、もっている核兵器を減らそうとがんばっています。それでも、2016年の時点で、世界には核兵器がまだ1万5700発も存在しています。いつかその数がゼロになることを願って、ジョナ&ジャネット・ウィンター親子はこの絵本を作りました。
映画「オッペンハイマー」がアカデミー賞7冠に輝きました。この絵本の中にはオッペンハイマーの名は出てきません。名前も明かされないたくさんの優秀な科学者が研究を続け、そして迎えるラストのページの意味を、みなさんと一緒に考えていきたいです。
著者情報
文:ジョナ・ウィンター(Jonah Winter)/詩人。絵本作家。30作以上のノンフィクション絵本を手がける。ジャネット・ウィンターの息子。主な作品に、『Diego』、『Jazz Age Josephine』など。邦訳作品に、『ちいさいフクロウとクリスマスツリーほんとうにあったおはなし』(鈴木出版)、『バラク・オバマ 希望への道のり』(PHP研究所)がある。
絵:ジャネット・ウィンター(Jeanette Winter)/絵本作家。伝記や、実際にあったことにもとづいた絵本を数多く手がけている。邦訳作品に、『ちいさいフクロウとクリスマスツリー ほんとうにあったおはなし』『わたしたちの家が火事です 地球を救おうとよびかけるグレタ・トゥーンべり』(ともに鈴木出版)、『マララとイクバル パキスタンのゆうかんな子どもたち』(岩崎書店)など多数。
訳:さくま ゆみこ/東京に生まれる。文化出版局、冨山房で児童書編集に携わったのち、現在は翻訳家として活躍中。「アフリカこどもの本プロジェクト」代表。著書に、『エンザロ村のかまど』(福音館書店)など。主な訳書に、『ヒットラーのむすめ』『ヘブン ショップ』『ネルソン・マンデラ』(いずれも鈴木出版)、「ホーキング博士のスペース・アドベンチャー」シリーズ(岩崎書店)など多数。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784790253563 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 39 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
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映画『オッペンハイマー』がアカデミー賞7冠に輝いた。映画の原作となる書籍も読みどのようにオッペンハイマーが描かれるのかと今月の公開を待っている。
アカデミー賞の発表後この作品の出版社である鈴木出版様のSNSでこの絵本を知りぜひ読みたいと思っていたので、今回読む機会をいただきありがとうございました。
この絵本では秘密の計画「マンハッタン計画」で集められた科学者たちが登場するが、名前は明かされない。
ニューメキシコ州の砂漠地帯に〈ガジェット〉と呼ばれるものを作るために優秀な科学者たちが集められる。
その場所やその周辺にはもともと住んでいた人や動物たちがいてそれぞれの生活をしている。科学者たちはガジェットを作り上げる。
カウントダウンとともに最初の核実験が行われる場面が描かれる。
その実験での立ち昇るきのこ雲に恐怖を感じた。そして広島と長崎での大きな犠牲を生むのだと思うと怒りや悲しみが襲ってきて涙が止まらなかった。
私はボランティアで子供たちに読み聞かせをしていた時期があるが、この本を選書しただろうか、子供たちにどう伝えたらいいのだろうかと読み終えてからずっと考えている。それほど大人にとってもショックを受ける絵本であり、多くのことを問いかけられた。これからもその問いかけについて考え学んでいきたい。
映画にも注目が高まっている今だからこそぜひ親子でこの絵本を読み一緒に考えてほしい。
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史実に基づいて『ちいさいフクロウとクリスマスツリーほんとうにあったおはなし』を書いたジョナ・ウィンターによる、原子爆弾の開発を行ったマンハッタン計画についての絵本と言うことで読んでみることにした。
原子爆弾の原理となったのはアインシュタインの数式。でもその数式には罪はない。それを現実のものとしようとした人々の様子について描かれていく。
アメリカののどかな砂漠。そこが突然接収されて巨大な施設がつくられ、最高機密のもと、不気味な開発が始まる。
開発の様子が夜の闇の中に描かれているのに対し、その周りは明るい夕空をバックに描かれている。豊かな自然の象徴としての動物達。美しい自然の象徴としての画家とその絵。さらに平和の象徴としての、先住民(ネイティブ・アメリカン)の一部族であるホピ(彼らの言葉で「平和の民」)の生活の様子。
しかし、再び夜のシーンとなり、日夜を徹して取り組む〈彼ら〉の様子が描かれる。なんたる対称。そして〈ガジェット〉の完成。書かれた数式と同様に、爆縮(インプロージョン)により原子核分裂を起こすために太い筐体だったことまで正確に描かれていることにゾッとした。
運ばれるのは夜。でも実験は昼。その対比に、豊かな自然への冒涜を感じる。
そして爆発。その閃光によって昼間は真っ暗に描かれる。その中で育ちゆくキノコ雲の様子、様子。
そしてとうとう、夜より暗い、真っ黒になり、この絵本は終わる。
読んでいて苦しくなる絵本だった。絵本は心を育てるもの。でも、このように歴史をきちんと伝える絵本も必要なのだと実感させるだけの内容がこもったものだった。
なお、余談になってしまいますが、以下のことは、これを読む大人が知っておくべきだと思います。
まず、原子爆弾の開発を促すアインシュタインからアメリカ大統領への親書が発端と言われているが、実はその親書は別の物理学者達が彼の署名を借りたものであり、マンハッタン計画が開始されたことはアインシュタインにも秘密にされていた事。
ドイツは原子爆弾の開発は行なっておらず、アメリカの思い込みによる暴走だった事。
そしてこのマンハッタン計画の主導者「原爆の父」オッペンハイマーはのちに水爆の開発には反対の立場をとったという事。
これはらは、もっと知られるべきだと思います。
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ひみつに
けれど早く完成させないと。
それは原子爆弾の研究だった。
世界中から科学者が集められて、
「戦争を終わらせるために」「他の国が研究を成功させる前に」と
急いで、けれど秘密に進められていた研究。
これは必要な研究だったのか。
著者と訳者のあとがきまで子供たちに伝えていきたい。
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秘密裏に進められた研究は、世界のあり方さえも一変させてしまうものをうみだす研究だった。
他の国よりも一刻も早く完成させねば。
完成させてからの実験は危険なものだ。
これらがわかっていながら、なぜ科学者たちがこれらを進めたのか。
この本を読んでから、子どもたちと話し合いたい。
あとから悔いることはいくらでもできる。
でもその前に良心をもった想像力は、働いているのだろうか。
この原爆の話だけではなく、たとえばクローン技術の研究についてなど、ほかにも例を挙げてそして考える。
技術の進歩とはどうあるべきか。科学のリテラシーとして考えることにも使いたい一冊だ。
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映画「オッペンハイマー」を視聴した後で、この絵本の存在を知った。
子どもたちにどう訴えかけようとしているのか、
知りたくて、絵をまじまじと観ながら読んだ。
科学者たちが秘密裏に進めていた「マンハッタン計画」。
映画の中でも、リアルに描かれていて、
実際、その実験の場に立ち会っているような、まるで、被曝してしまうかのような恐怖を味わった。
この絵本では、
砂地の山の、のどかな情景とは裏腹に、
不穏な暗い雰囲気がずっと付きまとい、
最後の場面では立ち直れないほどの喪失感を覚える。
科学者は研究の進歩と、実験の成功を純粋に夢見ているだけだったのかもしれない。
だが、使い方を誤ると、その悲劇は後世まで残る。
繰り返してはいけない。
それを伝えるのは大人の役目だろう。
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私たちは、真実を知らなければならない。今まで、多くの人たちが自分たちの都合の良いように解釈されてきた。それでは、私たち人類は、進歩して行かない。科学の進歩だけが進歩ではなく、真実を知り、どう行動するかを考えて見たい。
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地名もなく、秘密にされた場所に世界中からやってきた「えらい科学者」。彼らがこの研究所でつくっていたのは「ガジェット(小さな装置)」という暗号で呼ばれていた「原子爆弾」。その「原子爆弾」は第二次大戦末期、広島と長崎に落とされることになるのだが、この物語ではそのことは「著者あとがき」で触れられているにとどまり、完成した「原子爆弾」が最初に実験(トリニティ実験)を行うところで終わっている。科学者達が研究所で昼夜問わず「ガジェット」を作っている間、描かれている周囲の風景はおだやかな砂地や山の大地で、美しい絵を描いている画家や木彫りの人形を作る先住民のホピの人たちの姿など、恐怖と平和の世界が対比されている。一瞬にして奪われてしまう平和の世界。核兵器は使ってはならないし、作ってもいけない。いつか核兵器の数がゼロになることを切に祈る。