考えたことなかった
魚住直子/作 西村ツチカ/絵
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刊行日 2022/10/13 | 掲載終了日 2022/10/16
ハッシュタグ:#考えたことなかった #NetGalleyJP
内容紹介
ジェンダーバイアスとどこかつながる社会のしくみ
ある日、ネコに声をかけられた。
「わたしは、未来のおまえなのにょー。」
このままだと、おれの将来、たいへんなことになるらしい。
いったい、どうして?
知らないうちにさせられてる競争。
「ふつう」は男子がおごるもの?
おばあちゃんがなんでもやってくれる祖父母の家の「居心地の良さ」。
どこかでつながりあった社会のしくみに気づいて
考えはじめる男の子の物語。
出版社からの備考・コメント
ここに掲載している作品データは刊行前のものです。刊行までに内容の修正があり、仕様の変更がある場合もございますが、ご了承下さい。
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おすすめコメント
なんでおれだけにさせるんだよ。なんでおじいちゃんはやらないんだ。おじいちゃんは男で、年上だから、やらなくていいのか。
泡だらけの皿を洗いながら、イライラしてくる。
なんにもしないおじいちゃんを横目に、おばあちゃんはこうやって、いつもひとりで家事をやっていたんだろうな。
だけど、おばあちゃんがぜんぶやってくれるから、おれも居心地がよかったんだ。
そう思うと複雑な気分になる。
ふと、陽菜子の話を思いだした。
『おばあちゃんは、わたしにだけ手伝わせるんだよ。』
でも、そうか。おばあちゃんは、陽菜子にはさせるんだ。
ということは、どういうことだ?
おばあちゃんは不公平に腹を立てているけど、陽菜子には不公平なことをするということか。
『どうしてわたしばかり家事をやらされるの? なんでおにいちゃんはしなくていいの?』
以前、陽菜子がお母さんにそう訴えていたときも、そんなに怒ることかよ、と颯太は最初、うっとうしく感じただけだった。
だけど、不公平をされるほうは、すごく腹が立つんだ。でも不公平をするほうや、不公平に関係ないと思っているほうはピンとこないんだ。
(本文より)
販促プラン
【著者紹介】
作 魚住直子(うおずみ なおこ)
1966年生まれ。広島大学教育学部心理学科卒業。『非・バランス』で第36回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『Two Trains』で第57回小学館児童出版文化賞、『園芸少年』で第50回日本児童文学者協会賞を受賞。作品に『いいたいことがあります!』『超・ハーモニー』『クマのあたりまえ』『だいじょうぶくん』などがある。
絵 西村ツチカ(にしむら つちか)
漫画家。2010年、短篇集『なかよし団の冒険』でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞。漫画作品に『さよーならみなさん』『アイスバーン』『北極百貨店のコンシェルジュさん』、装画・挿絵を手掛けた作品に『シンドローム』『赤毛のゾラ』などがある。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784037273903 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
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NetGalley会員レビュー
「いいたいことがあります!」を読んでいないのですが、陽菜子の兄を主人公にした物語。しゃべる猫との出会いや、祖父母との関わりなどを通して、男だから、女だからと決めつけられたイメージに疑問をもつ主人公。「考えたことなかった」ことを考えはじめ、自分の意識を変えながら身の回りの人間関係を大切にする真面目な主人公に好感が持てます。猫語の語尾が「にょー」なのが好きです。
『いいたいことがあります!』の鏡合わせのような作品だなぁと思ったら、あのお兄ちゃんの方のお話でした。妹の方にはいいたいことがあるのに、兄の方は考えたこともなかったというのが如実に現れているタイトル。考えたことがないというのはつまり気付いていない、気付かないでいられるということで、そのこと自体が特権だとなかなか特権を持っている側は気付かない。それこそがガラスの下駄。ガラスの下駄履いているのに気付かない側にも、ガラスの下駄に歯噛みしている側にも読んで考えて行動に移してほしい一冊。
『いいたいことがありすぎます』も、児童に人気です。
主人公が試合中に、サッとゼッケンを縫っていたシーンがかっこよすぎ!
ジェンダーとかいいながら、裁縫道具を持ち歩く男子までは想定していなかった。
「変わりたい気持ちがあれば変われる」みたいな言葉も響いたし、子どもたちにも伝えたい。
「いいたいことがあります!」の続編的物語。(続編というよりは、パラレルな話なのかもしれません) 「いいたいことがあります!」で、この父と息子やばいよ〜、イラっとするよ〜、と思った人が多いと思うんですが、その息子が主人公です。
猫から話しかけられるファンタジーなきっかけで、現実にあるジェンダーバイアスに気がついていく颯太くんの様子が少しずつ語られます。颯太くんは自分は普通だとなんの疑問もなく思っている、ごく普通の真面目な子。祖父母の様子を見たり、女友達と話したり、野球の監督の何気ない一言に引っかかったりしながら、あれ?これって当たり前じゃないんだ、と、考えはじめます。考えの展開はとてもゆっくりですが、中学生男子が自分で考えているその様子にはとても好感が持てました。大袈裟かもしれませんが、これからの若い人たちがこの世の中にもたらしてくれるであろう希望を見た気がします。ありがとうございました。
「考えたことなかった」というタイトル通り、中二の颯太が、今まで考えたことなかったことを考えるようになるお話。
なにを考えるようになったのかというと、ジェンダーによりするべきことを決められている社会や、部活のレギュラー争奪であったり、学校の成績であったりという競争社会などの仕組みについて。
でも、全然堅苦しかったり、難しかったりせず、「~にょい」としゃべる猫がでてきたりして、なんだか軽やかで読みやすい。
颯太が好青年で、気持ちがよかった。
中学生に向けて書かれた本だが、颯太の祖父、団塊の世代にも読んでもいいんじゃないかと思う。
他の方のレビューを読んで「いいたいことがあります!」というお話のスピンオフのようなものだと知った。
「いいたいことがあります!」の主人公は颯太の妹の陽菜子。
こちらも読んでみたいと思った。
未来から来た喋る猫に指摘され、気づいていく「このままではやばい」こと。ジェンダーの縛り、男、女の役割の曖昧さ。学校のクラブの中の競争、祖父母の家の歪み。颯太が自分の立場になって初めて気付く、平等と不平等。慣例、そういうもの、というグレーな流れのままに自分もどっぷりつかっていたことに目覚めていく。妹のことば、女友だちのことばが颯太の胸を刺す。こっそりやってみたボタンつけやゼッケンつけ。考えたことなかったことを考え始めてみれば、世の中おかしなことだらけ。きっと、颯太もおじいちゃんも、変われるはず。
今回は『いいたいことがあります!』の陽奈子のお兄ちゃん・颯太が主人公。
未来の颯太だと言い張る不思議な喋る猫に出会い、祖父母の様子、友人や先生の発言を通して、今まで考えてみたこともなかった“疑問”や“不公平”について気づいていく物語。
まずは、ヘンだな、と感じて気づき、世の中の“おかしさ”に複雑な感情を抱きつつも、そこから自分の頭で考えて自分なりの答えに辿り着く颯太の柔軟な姿は、知るということ、知識を得ることは、今も昔も変わりなく、人生をかえるターニングポイントなんだと読者へ語りかけてくる。
男女関係なく、大人も含めて、たくさんの読者に届け!と感じました。
魚住さんの本は、絶対に面白い。
ねこが話しかけてきた場面では、甘いファンタンジーなのかと思ったけれど、
さすが魚住ワールドは違った。
ピリッと効いたスパイスのような出来事に、思わずにやりとしてしまった。
なにはともあれ、おじいちゃん、ほんとに良かった。
『いいたいことがあります!』は読破後すぐに図書館に入れました。作者と絵柄的に姉妹作だろうと思ってリクエストしたら、まさかの続きでした!
読み始めた時は「にょ」を語尾につけるネコちゃんがちょっと苦手でした。部活のレギュラーのくだりは、学生時代最大の関心事も、大人になって年を経てしまえば些末なことは全然覚えていない、というまさに今自分が感じていることで笑ってしまいました。
ジェンダー問題については、『いいたいことがあります!』の時は真新しさを感じたのですが、現在ですとその新鮮さは失われてしまった、という感想が正直なところです。最近は手芸部に入る男子や編み物が趣味の男子、ワンピースを縫う男子が主人公の児童文学が出ていますし、親が共働きで家事を分担する家庭、祖父母世代と親世代の確執なども何回も読んだことがある、という印象を受けました。そちらの面よりも、競争に勝つことのみがすべてじゃない、努力を見てくれる人もいる、というメッセージの方が強く受け取りました。
「がんばるのは、勝つためじゃなくて、気がつかなかったことに気がつくためだ。(p148)」
うん、たしかに。
そういう話を子どもとした覚えもある。
ジェンダーバイアスという言葉が本の紹介文にもある。
大人はそういうふうに名づけるだろう。問題提起するだろう。
子どもは、またかつて子どもであった私たちは、こうやって
「自分で感じて気づく」ということ、そういうことでしか乗り越えられないことがきっとたくさんある。
ネコの体を借りて伝える物語、敷居が低く、話に入っていきやすい。
これがジェンダーそのたの問題提起だったというふうに無理やり気づかせることもしなくていい。ただ、心の中に残るだけできっと意味がある。
今分からなくてもいつか花咲く種を蒔いたことになる、きっと。
「考えたことなかった」
世の中の多く問題はこの状態。
当たり前は当たり前ではない。
自分自身が考えと思っといることが誰あの考えに誘導されたものかもしれない。
一人でも多くの人が考えてほしい。
ジェンダーの問題は家庭内のささいなことで植えつけられる。
何の根拠もない男女の役割を次世代に受け継がせない社会になってほしい
本作『考えたことなかった』は私立中学に通う2年生の颯太が主人公。
妹の陽菜子が主人公になっている『いいたいことがあります!』と対になっているようだが、残念ながら陽菜子の物語はまだ読んでいない。
同じ価値観であるはずの「家族」の中にあっても、兄と妹、男子と女子で扱われ方が違ってしまう。
学校でいくら男女平等を教えても、家庭内にジェンダーギャップがはびこっていれば日本のジェンダーギャップ指数はそう簡単に好転することはないだろう。
そういった現実を、三世代の実生活にファンタジー要素も加えて描くことで、児童にもハードルを下げて自分事としてとらえやすいストーリーとなっている。
魚住直子さんの作品では『園芸少年』が好きなのだが、本作は決められたテーマがあって書かれたのかな?という固さが若干ある気がする。