シリアからきたバレリーナ
キャサリン・ブルートン/作 尾崎愛子/訳 平澤朋子/絵
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刊行日 2022/01/24 | 掲載終了日 2022/01/24
ハッシュタグ:#シリアからきたバレリーナ #NetGalleyJP
内容紹介
シリア内戦により国を脱出し、難民キャンプを経てイギリスに辿り着いたアーヤと家族の物語。〈カーネギー賞〉ノミネート作品。
シリア人の少女アーヤは、イギリスで難民認定を待っているところだ。
内戦で住めなくなったシリアを脱出し、ようやくマンチェスターに辿り着いた。途中、小さなボートで海を渡る際に父と離れ離れになり、気力を失った母を支えながら赤ちゃんの弟をつれて、毎日、難民支援センターに通っている。
ある日、同じ建物にバレエ教室があることに気づく。シリアでバレエを習っていたアーヤは、そこで明るい少女ドッティや先生ミス・ヘレナに出会い、踊ることで息を吹き返していく。
出版社からの備考・コメント
【ご注意下さい】 ここに掲載している作品データは刊行前のものです。刊行までに内容の修正があり、仕様の変更がある場合もございますが、ご了承下さい。
販促プラン
【著者紹介】
作 キャサリン・ブルートン
オックスフォード大学英文科卒業。中学校の英語教師として働きながら、児童文学作家として活躍。アフリカや中東などからの難民の子どもたちを教えた経験を持つ。本書はイギリスの児童文学賞〈カーネギー賞〉にノミネートされた。そのほかの作品に『We Can Be Heroes』『Another Twist in the Tale』などがある。英国バース在住。
訳 尾﨑愛子(おざきあいこ)
東京大学教養学部卒業後、児童書出版社の編集者を経て、東京大学大学院総合文化研究科にて学術修士号取得。大学院在学時より児童文学の翻訳家として活動開始。訳書に『クレイジー・レディー!』(福音館書店)、『オンボロやしきの人形たち』(徳間書店)などがある。東京在住。
絵 平澤朋子(ひらさわともこ)
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、児童書の挿絵や絵本の分野で活躍中。挿絵に『わたしのしゅうぜん横町』『青の読み手』『しずかな魔女』「名探偵カッレ」シリーズなど、絵本に『巨人の花よめ』など、作品多数。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784037269609 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
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シリアから逃れてきたバレリーナの卵の女の子とその家族の物語。いろいろな場所を経由しながら、なんとかイギリスにたどり着いた女の子は、まだ難民申請を受理されていない不安定な状態で日々を過ごしている。一括りに『難民』と呼ぶ人たちのことを、何にも知らなかった自分に驚く。作中で、女の子と関わることになるバレエの先生が言う。「いつの時代にも戦争はあったし、難民はいたのよね。」 そしてまた、こうも言う。「他人の親切にずいぶんたよったわ。」 戦争、難民、そんな大きな問題が、親切で全部解決されるとは思わない。でも、親切で助けられるものもあるというのは、実はとても大切なことなのではないだろうか。読めてよかった。ありがとうございます。
内戦のシリアを逃れ、イギリスに到着した少女アーヤが、愛するバレエを通してさまざまな人と出会い、未来をきりひらいてゆく物語。
アーヤはシリアを家族で脱出したが、イギリスに向かう途中の海で父とはぐれてしまった。目指していたイギリスに着いても、心と体が不安定な母と小さな弟を守り、イギリスに滞在するための手続きをひたすら待つだけの不安な日々が続いている。そんなある日、難民支援センターの2階で開かれているバレエのレッスンに参加できるようになり、踊る喜びを再び見出す。新たな友人も得、明るい気分で笑うこともできるようになるアーヤだったが、ふとしたときに失ったものの記憶がよみがえり、アーヤを苦しめる……。家族を守ろうと一人で頑張っていたアーヤが周囲の思いやりに少しずつ緊張を解き、バレエのダンスに想いを込めてゆく。その過程が丁寧に描かれ、美しいダンスが目に浮かぶ物語でした。
お母さんと弟と一緒に内戦を逃れるため、シリアからイギリスにやってきたアーヤは、体調を崩してしまったお母さんに代わって幼い弟の面倒を見ながら、手続きのため難民支援センターに通っています。ある時、ピアノの音に誘われ、吸い寄せられるように難民支援センターと同じ建物にあるバレエ教室をのぞきに行き、同じ年頃の少女ドッティや、かつてホロコースト逃れてイギリスに来たバレエ教師と出会います。
イギリスでのこと、フラッシュバックのように蘇るシリアでのことが代わる代わる語られる形式で物語は進行していきます。辛い現実を生きていても、打ち込める何かが未来に目を向けさせてくれること、言葉や文化の壁があっても、芸術が人々の心を近づけてくれること、決して消えない悲しみの中にあっても、人の心のあたたかさが希望の光を灯してくれること、困難な状況でも、一人ひとりの善意が物事を良い方向に変えること、を静かに力強く伝えてくれる作品です。
物語と、巻末の日本の読者へのメッセージ、訳者あとがき、物語を理解するためのキーワードのすべてに、この本にたずさわった方々から私たち読者への誠意とあたたかさを感じます。
小学校高学年の子どもたちに、ぜひ手にとって欲しい作品です。
カーネギー賞候補、ということで読みました。
とてもいい!
いろんな子供に幅広くお勧めしやすく、授業でも使えます。
バレエ、友情、生き甲斐、人生、自己、国際関係、異文化理解…様々なキーワードがあるので、どこを切り口にするか迷うのがうれしいですね。
日本の子にとっては解りづらい難民の話が理解しやすく、読者それぞれの読み方で共感することができるだろうと思われ、ポイントが高いです。
可愛らしい表紙とタイトルに興味を持ち、どんな本かと内容紹介を見ると、シリア内戦で平穏な暮らしも故郷も失ってイギリスへ来た少女の話とわかりました。
これまで難民のことは、ニュースなどで断片的には知っているけれど、その実態については全く知らなかった・・・。
主人公の夢にあふれるバレエ好きの少女アーヤに、思ってもみない災いが降りかかります。
天災では有りません。 人災、テロ、戦争、襲撃、避難、差別、無理解などなど。
シリアからやっとの思いでイギリスへたどり着いたけれど、父親はおらず、母親は心が傷つき体も壊れかかっています。気丈な少女アーヤは、母に寄り添い、幼い弟の面倒をみながら、難民支援センターで手続きのために頑張っていますが・・・。
身近にいるのは、同じ苦労をしている人たちで、年齢は様々だけど 皆 助け合い寄り添っています。
もし自分だったら ・・・ 想像もできません。 平和に暮らしていることに感謝!
最初は、難民ということで 言われもない差別的な目で見られていたアーヤ。
バレエの素晴らしい指導者ミス・ヘレナは、幼い頃に家族と離れ離れになった辛い出来事を乗り越えてきたユダヤ人。暖かく大きな心でアーヤを見守ります。
つらい思い出と将来の不安に怯えながらも、大好きなバレエに打ち込む姿が痛々しくも勇敢です。
多くの人の親切を受け入れて、住まいとバレエ学校、奨学金をえられたアーヤは、すごくラッキー!
文章は、イギリスの難民支援センターにいる現在と、過去の思い出が二層になって語られていて、そのまま映画になりそう。
バレエのシーンをみたいです。(*^_^*)♪
★ 難民の人たちが少しでも安心できる環境で暮らせるようになることを願います。
2022/1/7にDLし読み始める。 1/20 読了
没頭できるものは、つらい「いま・ここ」を一時忘れさせてくれる。共有できるものは、初めての場所・馴染みのないところでも「独りではない」安心を与えてくれる。バレエが共通言語となってつながっていく、シリア人の少女とイギリス人の少女の交わり、現在母国を後にせざるを得なかった少女と過去母国を後にせざるを得なかった元少女の交わり。何か打ち込めるものを持つことがどれだけ人を支えてくれるか。そして、バレエがどれだけその力を持つか。難民を迎える側の人たち、難民同士であっても国を離れた理由も離れた国も様々な人たち、それぞれの様子が丁寧に描かれているので、難民とともに暮らすことのイメージを持ちにくい日本の子どもたちにも伝わりやすいし、今後のためにも理解を深めやすいと思います。バレエが好き、から入っても、最近話題のシリア/難民が気になると思って入っても、双方への理解と興味が深まりそう。イラスト(実物は表紙しか見られませんが)も多用されていて、それも物語を楽しむ助けになるのではないかと思います。
日本は難民認定が厳しくて出会う機会がないので自分の部屋で寛ぎながら読むと罪悪感がもたげてくるけどそれは偏見なんだよと教えてくれた。それに一度弾圧や戦争が始まれば自分も難民になる可能性があるわけだし、それはいつも突然に始まるんだと思いました。バレエは殆ど知らないけれど主人公アーヤとイギリスで出会った少女ドッティたちが楽しそうに踊っているのは解るし
「アーヤの葛藤やのアーヤはおどること以外のすべてを頭から追いだし、肩を水平に保ちながら軸足のターンアウトをした。このドアの外に出たら、あたしは難民としてみとめられようとしている庇護申請者だ。戦場から逃げてきた、お父さんのいないかわいそうな子だ。でも、ドアのこちら側でレオタードと革のバレエシューズを身につけてバーの前に立つあたしは、ただのダンサーだ。ダンスに国境はない。言語も、肌の色も、国籍も、宗教も関係ない。パスポートも、書類も、「滞在許可」もいらない。ダンスに爆弾を落としたり砲弾を打ち込んだりはできないし、ダンスを破壊したりおぼれさせたりもできない。ダンスは安全な領域だ。しかも、それだけじゃない。ダンスは、時をこえた領域だ。戦争や愛や家族といったものは生まれては消えていくけれど、ダンスはそうしたものが生まれるまえも、消えたあとも、ずっとここにある。」(p182,183)
の文章が心を打って応援したい気持ちでいっぱいになりました。
難民の女の子の成功物語だろうと思い読みはじめましたが、それだけではなくヤングケアラーでもあり、多文化共生を考えることのできるお話です。
日本に住んでいる私たちには馴染みのない内容なのに、この物語ならわかりやすく頭に入ってきます。
子どもはもちろん、大人にもお薦めしたいです。
特にヤングケアラーについて、多文化共生についての授業をされる先生に!
シリアのアレッポからトルコを経由してイギリスに逃れてきた少女アーヤ。
彼女がバレエダンサーを目指していた。
父は海で離れてしまってから消息が分からない。
母と幼い弟と3人でたどり着いたイギリスでも難民認定がなかなかされず不安な日々を送っていた。
偶然出会ったバレエ教室で再び踊ることができる。
ある日突然始まった戦争に巻き込まれてしまい、故郷から出るしかなかった少女にあったバレエ。
バレリーナとなる夢はどんな状況でも彼女の夢であり続けた。
新型コロナウィルスのニュースが日々の中心である日本は。やはり平和な国なのだろう。
世界の至る所では、紛争が続いており、コロナのワクチンどころか、もっと恐ろしい感染症と隣り合わせで生活している人々がいる。
アラブの春の余波がシリアにも及び、アサド政権と反政府勢力との武力衝突が始まるまで、アーヤは、アレッポで家族4人と幸せな日々を送っていた。
他の国のように、政権が倒れて、すぐに人々にとっての日常が戻ると思っていたが、衝突は内戦になり、多くの人が命を落とす惨状となっていく。
アーヤの父は医者で、戦火で怪我を負った人々の手当に奔走していたが、いよいよ国を出て、かつて暮らしたことのあるイギリスを目指すことを決断をする。
物語は11歳のシリア人の少女アーヤが、シリアからイギリスにたどり着くまでの物語と、イギリスのマンチェスターで難民申請をするために過ごす日々が並行して描かれている。
難民という括りではなく、1人の普通の生活をしていた少女として、自分を見てほしいという人としての尊厳。
イギリスに来るまでの過酷な道のりのトラウマ。
イギリスで出会った信頼できる大人と友人。
父の教えと心の支えであるバレエ。
いくつものキーワードが重なり合い、読む者の心に迫る。
今も内戦が続くシリア。
タリバン政権のアフガニスタン、ウクライナ危機、パレスチナ問題。
この世界には、ごく一部の権力者によって普通に暮らしていた人々の人生が失われた物語が無数にあることを忘れてはならない。
著者も思いの外タイムリーになってしまったのでしょうか。
悲しみや責任を小さな背中で全て負うアーヤの真の大変さは他人には理解してあげられるものではないでしょうが、読みながらお腹が痛くなり吐き戻し涙が止まらなくなるくらいには彼女のことをだいすきになっていました。
本の素晴らしさは、安い共感ではなくもっと重い引っ掻き傷をつけられることにあると思います。
また踊りを愛する人に読んでほしい。自己表現をする人に読んでほしい。トラウマに囚われて自分の渦に飲まれてもすべてを表現しようという葛藤は、ずっとプロフェッショナルダンサーになろうと生きてきたわたしにはとても理解できるものでした。