with you
濱野京子/作 中田いくみ/画
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刊行日 2020/11/07 | 掲載終了日 2020/11/04
ハッシュタグ:#withyou #NetGalleyJP
内容紹介
あなたは“ヤングケアラー”と呼ばれる子どもたちを知っていますか?
中学三年生の悠人は、高校受験を控えている。優秀な兄・直人や、家族を置いて家を出ていった父親、悠人でなく直人に大きな期待をかける母親、といった家族のなかで、自分の存在意義を見出せない悠人は、日課にしていたランニングの途中、公園のブランコに座る少女・朱音と出会う。どこか影のある表情の朱音に、次第に惹かれていく悠人。朱音が、病気の母親の介護や幼い妹の世話、家事をひとりで背負う“ヤングケアラー”であることを知った悠人は、彼女の力になりたいと考えるようになるが……
母親の介護に携わる“ヤングケアラー”の少女・朱音に恋をした中学生・悠人の物語を通して、「誰かを大切に思うこと、社会へ目をむける機会」を読者に提供する児童文学です。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784774330785 |
本体価格 | ¥1,300 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
ヤングケアラーという言葉を目にし、すぐに申請を送らせていただいた本です。
ここ数年、ヤングケアラーという言葉を目にする機会は増えたように思いますが、まだまだ実際に子どもたちが自分の置かれた状況を言葉にすること、助けを呼べるということを、手に取りやすい児童書の形で知る機会は少ないように思っていたので、この本の刊行は嬉しかったです。
内容も、日本の現在の状況、制度について分かりやすく書かれていて素晴らしかったと思います。
ヤングケアラーという存在を物語を通して知ることができる作品。親の介護をする少女が読んでいると辛く、周りの身近な大人たちがなぜ気づかないのかともどかしく思ってしまう。それらの大人たちは決して悪人というわけではなく、ごく普通のどこにでもいるような大人たちでありそれがリアリティを出している。現実にもきっとこういったケースがあふれているのだろうなということに思い至らせてくれる作品。
「ヤングケアラー」について知る、「ヤングケアラー」へのケアの仕方を知る、
もし当事者の場合もどのように手を伸ばせばよいのかを知ることができる、
それも物語を通して、ということで主人公のように理解を深めながら知っていける、
ということでぜひ「見えない」事情についても考える一助にしてほしい1冊。
「ケア」だけでなく、役割として家のことをする子どもは、
このコロナ禍(とそれに伴う不況)の影響で増えそうだなとも思いました。
そういう子たちも事情は口にしにくかろうから、
「問題行動」ととられる行為も「なまけ」以外の要素を大人のほうで考える必要が、
いままで以上に増すだろうなということにも思いを馳せながら、
まずは「介護の担い手」を今後誰がどう負担していけば今後の日本が立ちゆくのか、
そろそろしっかり考えるべき時期にきていると感じました。
気を引くタイトルを書かれることが多い著者の作品だけに、
今回のあっさりしたタイトルは個人的にはちょっと残念ですが、
先入観を持たずに手を伸ばしてほしいという戦略でしょうか。
ぼくイエでなじんだ人も多いだろう中田いくみさんの表紙も中高生が手に取ってくれやすそうです。
『with you』というタイトルが素敵です。読後にタイトルを改めて思い出すと、どうにも甘やかな気持ちが湧き上がるはずです。いろんな場所に一緒にいこう。いろんなものを一緒に見よう。誰かを思いやりながら一緒に生きていく。そんなあたり前で素敵な気持ちに胸が満たされる読後感を是非、味わって欲しい作品です。
中学生同士の決してイージーではない恋愛を描いた真摯な物語です。人が人を好きになっていく気持ちの綾が繊細に編み込まれていく展開には、初恋の慄きがあって、淡い痛みを覚えます。主人公の中学三年生の少年、悠人の家族に対する愛憎やコンプレックス。そして、子どもながらに家族のケアをしなければならない「ヤングケアラー」という状況下にいる子どもについて。こうした要素が混然となり、ビターで甘やかな物語に陶然とさせられながらも、現代社会だからこそ見えにくくなり、孤立化していく子どもの問題点が浮き彫りになっていく見事な構成です。
この物語、八束澄子さんのホワイトレイブンにも選出された秀作『明日のひこうき雲』と設定上、いくつもの共通点があります。悠人が好きになる中学二年生の女子、朱音の境遇は『明日のひこうき雲』の主人公で同じ中学二年生の女子、遊と非常に似通っています。視点が男子が側からということもありますが、まったく違う手触りの作品となっており、物語の帰結も、その感慨も別のものになるのが面白いところです。濱野京子さんらしさが、逆に際立つところもあり、読み比べられることをお薦めします。
本当に大変なとき、そのことを誰にも言えないでいる、それが多感な時期の子どもたち…。この物語は、あなたのすぐそばで起こっているかもしれない現実だ。
学校に行きながら家族の世話や介護を担わざるを得ない状況にあり、それをしている「ヤングケアラー」という存在。
ある日夜の公園で出会った他校の女子中学生が気になり、話し掛けることを続けるうちに、彼女がそのヤングケアラーだと知り、何とか助けたいという気持ちで、葛藤しながらも行動を起こす男子中学生。双方の気持ちの機微を、等身大の視点で丁寧に描いていて、初々しい恋愛ストーリーになっているところも好感が持てる。
困った時、友達を助けたい時、子どもたちにできることは、まず信頼できる大人に相談すること。
具体的で大切なメッセージが込められたこの1冊を、ぜひたくさんの生徒たちにすすめたい。
家族の中で自分の存在を肯定的に感じられないまま、高校受験を目前にしている主人公の悠人は、もて余す気持ちを振りきるように走る日々。
ある日、ランニング途中公園で、どこか影のある表情でブランコに座り続ける少女・朱音を見かける。
何度も姿を見るうちに声をかけ、お互いの話をし、次第に朱音に惹かれていく悠人。少しずつ距離を縮めていく過程は、誰かと本気で向き合おう、向き合いたいという強さが伝わってきます。
悠人に“ヤングケアラー”という言葉を教えてくれるのは母親ですが、私もきちんと認識できてなかったし、当事者だったら尚更かもしてません。あとがきを読んで、濱野京子さん自分自身がかつてヤングケアラーであったことに気づいた、とあって、自覚症状がなく自分がおかれている立場を把握しにくいことにこの問題の根深さを感じました。
重いテーマを扱ってますが、主人公の男の子が他者を理解しようと少し大人になる、恋のお話でもあって、児童書だけど、子どもだけでなく幅広い年代の方に読んで欲しい作品です。