完司さんの戦争
越智典子/文 コルシカ/絵・漫画
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刊行日 2020/07/16 | 掲載終了日 2020/07/16
ハッシュタグ:#完司さんの戦争 #NetGalleyJP
内容紹介
1922年に新潟で生まれた完司少年は、外国へのあこがれから満州で働くことを選びます。しかし、楽しかった満州でのくらしは、召集令状によって終わりをつげました。釜山から出発し、戦地であるグアムへ行くことになったのです。到着直後の攻撃で左足を失ったあと、米軍の上陸により、完司さんはジャングルの中でひとり生きていかなければなりませんでした。
食料をなんとかして手に入れ、切りっぱなしの足を川や海で洗い、這いずるようにして移動する生活がはじまりました。持ち前のポジティブさと聡明さを生かし、ジャングルの中で生き抜いていく姿は、まるで冒険記のようです。
そんなサバイバル生活やその後の捕虜生活のことを、楽しかったこともあったと、ひょうひょうと語る完司さん。でも、戦争に行って帰ってくるまでの時間は自分にとって「この世にない時代」だったといい、最後にふと、こうもらします。
「戦争は、あの若い、いちばんいい時期を奪ってしまったのですよ。今ほしいものがあるとしたら、若さです。あの体力と機敏さがあったら、あれもこれもするのに、と思いますよ。」
好むと好まざるとにかかわらず、不条理にみながまきこまれる。そんな戦争の時代を生き抜いた、ひとりの青年のお話です。
出版社からの備考・コメント
【ご注意下さい】 ここに掲載している作品データは校了前のものです。刊行までに仕様などが変更になる場合もございますが、ご了承下さい。
おすすめコメント
【著者紹介】
文/越智典子(おち のりこ)
1959年東京生まれ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。絵本や読みもの・科学絵本・翻訳など、多方面で活躍中。おもな作品に、『ここにも、こけが…』『ピリカ、おかあさんへの旅』「ラビントットと空の魚」シリーズ(福音館書店)、『いのちのなぞ』(上下巻/朔北社)、『てりふり山の染めものや』『ツーティのうんちはどこいった?』『おふとんのくにのこびとたち』(偕成社)など、おもな訳書に『サルってさいこう!』(偕成社)、『いろいろ いっぱい』(ゴブリン書房)、『アラビア数学奇譚』(白揚社)などがある。
絵・漫画/コルシカ
1983年、東京都中野区生まれ。2010年よりイラストレーター、漫画家として活動開始。日本デザイナー学院グラフィックデザイン科2部卒。美学校「絵と美と画と術」第7期生。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784036451104 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
コルシカさんの絵に惹かれてリクエストしました。
越智典子さんによる完司さんの体験談と、コルシカさんによる絵と漫画が収録されていて子どもも大人も読みごたえある一冊でした。
読みながら水木しげるさんの漫画を思い出していました。
ごく普通の善良な若者がある日“戦争”に放り込まれる。この世にない世界に放り込まれる、いつどんな風に理不尽に死ぬかわからない世界に放り込まれる。
読んでみてほしいとしかいえません。もう本当に…読んでみてほしいとしか、いえない。
この本はむしろ、この壮絶な体験ながら手に取りやすいつくりの本だと思うので、戦争体験を書いた本をあまり読んでいない方にもオススメしたい。
捕虜となりアメリカに連れて行かれてからの体験が読めるので、こういった本はなかなかないのではないかと思う。
タイトルから戦争体験が多くを占めるのかと思ったが、前半は好奇心旺盛な若者が満州で過ごした開放的な日々を語るものだった。一転、一兵卒としてグアムへ送られ、片足を失いジャングルをさまよう後半は、壮絶悲惨な印象を受ける。しかし完治さんは、口では苦労を語らない。死への不安も感じなかったという。ただ当時を、自分の存在が「この世にない時代」だったという。著者の言う通り、完治さんにとっては自分の意思でも何でもなく戦争に駆り出され、自分が自分でなかったような時代だったのかもしれない。
朴訥とした完治さんの語り口は、現代の人にも親しみやすく、その体験も胸に迫る思いがするのではないか。
戦争体験記なのに悲壮感を感じなかった。「負けるとはおもってなかった」「楽しかった」。何なのかな、この感覚。時間の経過が不幸な体験を劣化させたとでも言うのか、片足を失い、さらに、ジャングルでの長期逃亡生活。それは苦しかっただろうに、不安だったろうにと想像するのだが、ここにはそんな形跡は微塵も感じない。ただ、たんたんと、その時の感想を述べているだけ。でも、その中には彼の戦争観やら感情やらが埋没していて、「わかる。それわかる・・・」という気分にさせられるのだった。
薄れゆく戦争の記憶。それでも、私たちは絶対に忘れてはいけないと思います。
これは完司さんが戦争で実際に体験したお話し。どのように生き抜き、暮らしていたのか。時には、おもいがけず楽しいこともあったなど、完司さんの明るい性格で淡々と語られていますが、私たちには想像もできない地獄のような光景をたくさん見て経験してきたのだと思います。でも、それは自分ではどうにかできることではなく、ただ、流れにまかすことしかできない。あとがきに、完司さんは、昔はよくうなされていたと書かれていました。あまりに辛く苦しい感情は無意識のうちに押し殺していたのかもしれません。描かれているのが凄惨さだけではないので、子どもたちでも読みやすいと思います。たくさんの子どもたちに読んでもらいたいです。
コルシカさんの絵からは想像できないつらい内容でした。
ま、そうですよね。戦争のお話っていうと辛くて悲しいお話になりますよね。
完司さんの体験した”戦争”はとてもつらくくるしいものなのに
決して感じさせない話し方にこの本の内容は浮かばれたような気がします。
グアムに送られた完司さんは片足を失い、仲間も失い、悲惨なジャングルでの生活にも
”死を感じることはなかった”と思いながら1年半たった一人での生活を送ったんですよね。
立って歩くこともできず、毎日這って移動する毎日・・・行くところ行くところ戦死者ばかり。
この本は児童文学なのでしょうか?
子供たちが読むには内容はつらいですが読んでみてほしい本ですね。
戦争とはいけないものだ
それは日本では戦争を経験していない世代に当たり前のように根付いた思想だと思う
如何に酷いことだったのか、苦しいことだったのか
読むのも苦しくなるほどの描写で書かれた書籍は多い
この本は、そんな書籍とは一味違った
まるで一つの冒険譚のような不思議な魅力があった
それは今では非日常な戦争という時代を
日常として生きてきた人の、人として当たり前の声が書かれていたからだと思う
戦争だろうと、人はその中で楽しみ見出すし、悩みもする
生きていく上で当たり前なのだろう
その部分を書くからこそ、読後戦争のない時生きていられた事に感謝をした
今まで悲しい事、いけない事という認識でしか知り得なかった戦争が
今の日常と表裏一体のように思えたのだ
だからこそ、やはりもうあの時代には戻って欲しくない
戻らせてはいけないと強く感じた一冊になった