朔と新
いとう みく
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刊行日 2020/02/04 | 掲載終了日 2020/01/09
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内容紹介
事故で視力を失った兄は、走ることをやめた弟に告げる。
「伴走者になってほしい」。
ブラインドマラソンは兄弟の絆を再生できるのか。
兄の朔(さく)が1年ぶりに家へと帰ってきた。朔と弟の新(あき)は、一昨年の大晦日、父親の故郷で正月を迎えるために高速バスで仙台に向かい、バスが横転する事故に巻き込まれた。朔は視力を失い、盲学校での生活を送っていたのだ。大晦日に帰省することになったのは、新が母親と衝突したことが原因だった。本来の予定より一日遅れでバスに乗ったのが、運命を変えたのだ。
中学時代、新は長距離走者として注目を浴びていたが、ランナーとしての未来を自ら閉ざし、高校に進学した後も走ることをやめた。
そんな新に、突然、朔が願いを伝える。
「伴走者になってもらいたいんだ、オレの」
激しく抵抗する新だったが、バスの事故に巻き込まれたことへの自責の念もあり、その願いを断ることはできなかった。かくして兄と弟は、1本のロープをにぎり、コースへと踏み出してゆく――。
東京2020オリンピック・パラリンピックをむかえるにあたり年、ブラインドマラソンを舞台に、近いからこそ遠くに感じる兄弟、家族の関係を描き切った一作。
日本児童文芸家協会賞を受賞し、2年連続で夏の読書感想文全国コンクールの課題図書に作品が選出された、児童文学界屈指の書き手、いとうみくが渾身の書き下ろし!
出版社からの備考・コメント
※発売前の作品のため、ネタバレのレビュー投稿は極力お控えいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
※カバーはデザイン制作中のため、変更となる可能性があります。
校了前のデータを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。
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おすすめコメント
日本児童文芸家協会賞を受賞したほか、2年連続で夏の読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれるなど、幼年童話からYA(ヤングアダルト)まで児童書の世界でヒットを飛ばし続ける作家、いとうみくさん。そのいとうさんが今回テーマに選んだのは、ブラインドマラソンです。バスの横転事故で視力を失った兄、そのバスに乗る原因をつくってしまった弟。盲学校から1年ぶりに自宅に帰ってきた兄は、突然、マラソンを始めると言いだし、弟を強引に「伴走者」として指名します。近くて遠い「兄弟」という関係を超えて、ふたりは次の一歩を踏み出せるのでしょうか――。
東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年。今だからこそ、読んでいただきたい一作が誕生します。読後、さわやかな風を感じていただければと思います。
――担当編集者より
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784065175521 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
新は元々母親とそりが合わなくて、ずっとイライラし続けていました。朔とはこれまで仲良くやってこられたけれど、彼の目が見えないということの重大さと、だからといって彼の自由を束縛してはいけないということ。その狭間で悩み続けます。
新が朔の伴走者をしたことによって初めて知った、自分自身の言語表現力の乏しさ、想像力の欠如。それは相手に対しての申し訳なさを知ることでもあり、自分自身の生きづらさの原因を知ることでもあったのです。
家族だから、こんなこと分かるはずだろうという思いと、家族だからこそ気が付いていないこと。それを知るにしたがって新の考え方も変わっていきます。
自分が自分らしく生きていくということを、何かのきっかけで失ってしまうと、それを取り戻すには大きな力が必要なのです。それは誰かのせいではなく、自分自身の心の問題だから、自分1人だけではどうにもできないことが多いのです。そんなときに、ちょっとした言葉をかけてくれる誰かの存在が大事なのだなと思いました。
自分の人生の伴走者となってくれる人、あなたにはいますか?と聞かれたような気がします。
バスの横転事故で視力を失った兄、そのバスに乗る原因をつくってしまった弟。克己心あふれる冷静な兄と贖罪意識に押しつぶされそうな弟。この関係性を基にした感情の渦。かつて何でも卒なくこなせた兄と今でも不器用な弟。兄と弟だからこそ、家族の中での立ち位置や両親との関係性などが2人に絡みつき、割り切れない思いが蓄積されていく。
晴眼者が事故により視力を失う恐怖は想像もつかない。普通に何も考えずにできていたことが簡単にできなくなることは「もどかしい」が、視力の場合は、そこにあるのは「もどかしさ」より「恐怖」だ。「私なら」と考えることすら恐怖である。ましてやブラインドマラソンなど理解の外だ。兄・朔のそういう選択に至る気持ちの変化と感情の爆発がこの作品の読みどころだろう。
梓と境野、この二人の役割は大きい。兄弟二人の複雑な感情の渦を整理していく役割を持っている。物語内での役割だけでなく、読者に対しても分かりやすい解説をしてくれる。梓は素直な感情の発露で人間関係の現状を見せてくれる。境野は人間関係の本質を距離感というアングルで見せてくれる。この分かりやすさは本作を児童にも読みやすくしている。児童書作家の「いとうみく」らしい人物配置だと思う。著者の配慮の通り本作は若い人に読んでもらいたい作品だ。もちろん大人が読んでも十分に心動かされる作品であるのは間違いない。それにしても「朔(さく)」と「新(あき)」という名前、両親はどういう思いでつけたのだろう(物語の中で)。ちょっと知りたいと思った。
この作者さんは己に咎はなくままならない状況に置かれた人物の描写がとてもうまい。
自分のことだからと言って自分の感情をみんなうまく扱えるわけではない。
それは子どもに限らず大人も同じこと。それをごく自然に物語の中に描かれている。
絵にかいたような幸せな家族というのも世の中には存在するけれど、
世の中にはそうではない家族も数多くいるし、むしろ歪さをはらんだ家族のほうが多いかもしれない。
そのことを苦しい時期に知ることができるだけでも力になることはあると思う。
別作品の主人公が顔を出しているのも、背景を描かずとも人となりが伝わるので、
紙幅を費やさずにいろいろな情報を伝えられるので良いなと思った。
(それぞれの話の世界が混ざることに対しては人によって反応が異なるかもしれないが)
兄にも弟にもそれぞれの思いがあり、兄弟だからこその壁がある。家族だからこそ言えない思いを言えるようになった2人。どんな走りをみせたのか気になりました。そして誰よりも梓が最強(笑)
大人にも子供にもオススメの1冊。ブラインドマラソンを多くの人に知ってもらうのにうってつけの作品でした。