天網恢々アルケミー
前崎中央高校科学部の事件ファイル
下村智恵理
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刊行日 2025/04/18 | 掲載終了日 2025/04/21
ハッシュタグ:#天網恢々アルケミー #NetGalleyJP
内容紹介
東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞優秀賞受賞作
高校2年の春、群馬の進学校に転入した安井良はある日の放課後、着崩した制服に白衣姿の金髪ギャルと遭遇する。彼女は何と化学室で牛タンを焼いていた!? この強烈な出会いから良は、彼女の属する科学部の面々と共に、図書室の呪いの忌書、黄泉からの手紙、トンネルの悪霊と3つの事件に巻き込まれていく――。「東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞」優秀賞の傑作ミステリ。
出版社からの備考・コメント
・多くのレビューをお待ちしておりますが、物語の核心をつくような、所謂「ネタバレ」はお控えください。
・ネタバレ行為はネットギャリーのみならず、読書メーター、ブクログ、Twitter 等の多くの方が目にする場でも同様にお控えいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
・本作は校了前の大切なゲラデータを著訳者よりご提供いただいた上で公開をしています。本作の刊行を楽しみにお待ちいただいている、多くの読者のためにも、ご理解、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
・多くのリクエストをお待ちしておりますが、過去のフィードバック状況やレビュー内容からリクエストをお断りする場合がございます。予めご了承ください。
・いただいたコメントは帯やPOP、X等SNSでのご紹介など、弊社販促活動に使用する場合がございます。予めご了承ください。
出版情報
発行形態 | 文庫・新書 |
ISBN | 9784488414214 |
本体価格 | ¥740 (JPY) |
ページ数 | 288 |
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NetGalley会員レビュー

小説を読むとき、私は冒頭の掴みを大切にしている。それは作品の玄関にあたるわけで、読者=客人として踏み込む以上、相手の出迎え方を気にしてしまうのだ。
その点において本作の掴みはテンポが良く、瞬く間に紙上に広がる世界へ足を踏み入れることができた。
牛タンを焼く金髪ギャル・珠理。
彼女に目を付けられてしまった僕・安井良。
その他個性的なキャラクター(みなのことを好きになれるに違いない)を登場させつつ進行する『天網恢々アルケミー』は、そのタイトルから想像される木難しさとは裏腹に、小気味よい掛け合いの楽しめるコミカルな作風であった。
彼らが出会うのは、『図書室にある呪われた忌書』、『黄泉からの手紙』、『トンネルの悪霊』の謎。
面白いのは、解決に際して動員されるのは天啓のような閃きではなく、どちらかといえば地道で堅実かつ本格的な化学実験ということだ。
そのどれもが知識として学べるものであり、「こうかな?」という推測をひょいと乗り越えていく真実に舌を巻いた。し、これが登場人物たちにとって等身大の謎解きとして機能しており、『舞台が高校』を見事に活かした手腕に脱帽だ。
また、真実に際したホワイダニットはコミカルで押し切ることはせず、青春に漂う甘さや苦さをしっかり掬い上げている。
結果として、これらを体験する安井が周囲で起きる出来事を次第に自分事と捉えるようになり、それに伴う彼の機微が心をくすぐった。余韻も爽やかで、いつまでも浸っていたい彼らの日常がそこにはあった。
私が学園ミステリに求めているものを全て兼ね備えていた。
総評、本作は「ド直球の学園化学青春ミステリ」だ。気は早いが、いまから続編を待ち望んでいる。そのくらいに面白かった。

短編連作で、隙間時間に少しずつ楽しめます。
学校が舞台なのですが化学ネタが多く、化学が好きな人におすすめしたくなりました。
それに、知らない単語が出てきたときに調べて「知識が増えた」と嬉しくなるタイプの読者さんにもおすすめしたいです。
スマホが出てくるんだけど奥ゆかしく手紙のやり取りをするのがいいなーと思いました。
現実社会で『「痴漢した奴は数年後に死にます!!」ライブ会場の注意書きに脚光』という記事を最近見かけたのですが、それを連想するような「うまいなーこのやり方ー」ってなるエピソードもあり、いいなって思いました。
あとは、女子のズルくてちょっと怖いところとか、友達の表面はこうだけど中身はぶっちゃけこうだよね、みたいなのとか、集団の中にいる個人の「誰かを傷つけることに鈍感になる」「その集団の仲間でいれば自分は傷つけられない」とか。
そういう話も出てくるのがすごく魅力に思えて、心に染み入る言葉がたくさんあるところが好きです。
素敵なヒューマンドラマ!

「青春とは、鈍色の日々を金色に変える、錬金術だ」
なにかしら拗らせている高校生たちの青春がここにありました。
東京から群馬の進学校に転入した良は、化学室で牛タンを焼いている金髪ギャルと遭遇するというとんでもない始まりから、良は金髪ギャルこと珠里や幽霊部員の科学部員たちとともに事件に巻き込まれていきます。
学校ならではの謎もいいんです。金髪ギャルの珠里のさすが理系!と思わせる知識量がこれまたすごい。中高一貫校の男子校から転入した良が、共学ならではのことに感動している場面はちょっと微笑ましいです。そして彼らを見守る大人たちのが、熱すぎたりちょっと遠目から見守っていたりと、距離感のとり方も好印象でした。
青春はいつだってキラキラしているとは限らないし、鈍色の日々もあるでしょう。でも自分が一歩踏み出すことで金色の日々に変わることがあるかもしれません。
きっとこれからも彼らは青春を謳歌していくことでしょう。彼らのこれからも応援したくなる作品でした。

前崎中央高校で起きる様々な呪い。文系の良(愛称チャールズ)は科学部の珠理に巻き込まれて、「科学的/客観的/数値的に説明」する事で、オカルトでないことを証明していく。
今までにない、日常のミステリの解法がここにあった。
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『図書室の忌書』
ここまで客観的な数値化によって、呪いを日常の謎として解決するミステリがあるとは想像だにしなかった。
このようなミステリが成り立つのは、それぞれの方向に個性的な登場人物達に支えられているからこそ、と言えるだろう。
良を使っての対照実験で呪いか科学現象かを見分けると言うことを平然と実行する珠理。「人体って、最高に優秀なセンサーなんだよ」との珠理の言葉通り、やはり良を使って客観性の高いブラインドテストを行う吉田先生。科学の申し子たる二人と被験者専門の3人組が、オカルトではなく「客観的/数値的に説明可能な科学現象」であると証明していくのは、まさに痛快。更にその枠だけに留まらない。新聞記事である良の父が、それをより広い視点から捉えていく。
理系人間にとっては、痒いところまでしっかり手が届く、日常のミステリだった。
『黄泉からの手紙』
靴箱に入っていた何も書かれていないラブレターの呪い、その二段構えのトリックさえ「科学的」に見事に解く珠理。でも今回はそれがらがメイン。三角関係の高校生を含めたやりとりがリアル。そして、元男子校の良の「純粋培養」さ加減に何回も頭を抱えさせられた。更にこの事件を「円満」に解決するために「科学部」が選んだ方法は、あまりにも意外だった。でも、「科学的に正しい事」と、「人の心を大切にする事」は別。それを彼らはちゃんとわかっていた。それにほっとした。
『旧針金山トンネルの悪霊』
今回の呪いの究明は、良の家族問題を絡めながら進んでいく。そこでの良と多紀乃の兄妹と父との会話に考えさせられた。東京生まれの東京育ちで現代の中学生感覚の多紀乃と、群馬生まれの叩き上げの新聞記者である父のやり取り。娘の価値観を否定や非難するのではなく、事実を示した上で、「考えることだ。時間はある。(中略) 下した決断の数、固めた決意の数だけ、人生は自分のものになる」と言った言葉がズシン心に落ちてきた。好意で言った言葉で珠理と破局した良に対しても、父は良の至らぬ点を冷静に指摘して、決断と行動も素早い。この面においては、父の鏡だな。
そして、良の発想を珠理の超絶分析テクニックが確認するが、それをバックアップする吉田先生の持つ試薬の数は無限なのか? いや、そうではなく……
これで、呪いを科学的に説明完了。ただ今回の背景には、若者文化や社会問題が深く関わっていたとは。単なる科学的解明だったのが、回を経るごとに様々な事柄と絡み物語に深みが出てきているのは感じていた。そして最終話の今回は更にその先が待っていた。呪いを科学的事実であると解明してきた知的な本作にとり、予想外のラストに突入。
是非続編をお願いしたい。
最後の吉田先生から良へのメッセージ。そうか、これは凸凹バディものを超えたミステリだったのか。

親の離婚を契機に、都内の私立男子中高一貫校から地方都市の共学進学校に編入することになった高2の安井良。共学への惧れと期待を胸に出会ったのは金髪白衣のギャル??・・。
妄想にも思える男子高校生のこじらせっぷりに笑える一方、説諭を通した父から子への薫陶や、家族関係の切実な部分は示唆に満ちており奥行きが深い。さらに化学を通したロジカルな推理がより重層的に物語を締めていくかのようです。
文芸部、化学部の両巨頭の過去の因縁など含みを持たせシリーズ化も期待させる、学園化学ミステリー。

両親の離婚を機に、東京の男子校から群馬の共学校に転入した安井良。ある日、化学室で牛タンを焼く金髪ギャルと遭遇。それから良は、彼女の属する科学部の面々と共に、図書室の呪いの忌書、黄泉からの手紙、トンネルの悪霊と3つの事件に巻き込まれ、科学知識を使って謎を解いていく。
化学のうんちくも楽しめるライトな学園青春ミステリ。クセ強めの先生や友人達、科学部の部員、父と妹、そして化学愛あふれる押し強めの金髪ギャル。個性豊かなキャラ達が良の学園生活をかき回し、オカルト事件を科学的に解決するのが読んでいて楽しい。続編希望です!

転校先の化学室で主人公が出会ったのは、牛タンを焼く金髪ギャル――突飛な内容かと思いきや、主人公の心情描写はとても共感性が高く、学生時代を懐かしく思い返しながら読みました。
起こる事件も身近な題材で、それを主人公たちがわちゃわちゃやり取りしながら解決していく過程が微笑ましかったです。
アルケミーなボーイミーツガール、面白かった!続編をお待ちしております!

両親の離婚を契機に東京の私立中高一貫男子校から群馬の共学の公立高校へ編入した安井良。そんじょそこらの公立じゃギャルとヤンキーに目をつけられるぞと脅されてトップ校を選んだのに、実験室で牛タンを焼いていた金髪のギャルになぜか気に入られてしまい──?
高校で「呪い」なのではないかと噂されている現象を科学部員たちが調査して科学的に解明していく青春ミステリ。体調が悪くなる図書室、下駄箱に入っていた白紙の手紙、急に痙攣し嘔吐した男子。どれも謎として魅力的で、かつ解明が最終目的にはなっていないところも好きでした。解決したときに立ち現れる人間関係や他人の人生に対して、珠里たちがああでもないこうでもないと悩みながら、最善と思える選択を取っていく、そのつくりにこそ本作の青春ミステリとしてのとびきりのおもしろさがあるのではないかと感じるのです。ぜひ続きも読みたくなりました。