記憶の対位法

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刊行日 2025/04/30 | 掲載終了日 2025/04/29

ハッシュタグ:#記憶の対位法 #NetGalleyJP


内容紹介

新聞記者ジャンゴの祖父は、対独協力者と糾弾された祖父の遺品から謎の小箱と紙片を発見する。〈図書館の魔女〉シリーズの気鋭が贈る知的探究の喜びに満ちた長編ミステリ。

新聞記者ジャンゴの祖父は、対独協力者と糾弾された祖父の遺品から謎の小箱と紙片を発見する。〈図書館の魔女〉シリーズの気鋭が贈る知的探究の喜びに満ちた長編ミステリ。


出版社からの備考・コメント

【ネットギャリーをご利用の方へ大切なお願い】
・多くのレビューをお待ちしておりますが、物語の核心をつくような、所謂「ネタバレ」はお控えください。
・ネタバレ行為はネットギャリーのみならず、読書メーター、ブクログ、Twitter 等の多くの方が目にする場でも同様にお控えいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
・本作は校了前の大切なゲラデータを著訳者よりご提供いただいた上で公開をしています。本作の刊行を楽しみにお待ちいただいている、多くの読者のためにも、ご理解、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

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出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784488029197
本体価格 ¥2,200 (JPY)
ページ数 448

閲覧オプション

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NetGalley会員レビュー

フランス人ジャンゴの亡祖父の遺品、寄木細工の箱の綿布紙片が発端。我々の世界は政治/文化/言語/宗教等が長い歴史の中で複雑に絡み合い成立する事を実感した。
対位法をキーワードとして楽譜の歴史が紐解かれ、更に単旋律の記憶を超え人と相対していく様に感動した。

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第二次世界大戦でのフランスとドイツの争いは、特に日本の今の世代にとり教科書の文字以上の意味は持っていないと言っていいだろう。どんな歴史的、地政的、文化/言語的、経済的、更には宗教的な背景があり、それに突き動かされて、彼らは行動していた。それに対する理解がなければ、当時を、そこで生きた人のことをわかったとは決して言えないだろう。

ドイツ領とフランス領を行き来してきた、文化/言語的にはドイツ寄りのフランスのアルザス・ロレーヌ地方。そのリモネージュ市に隠居していた故マルセル・レノールトの生き様は、まさに第二次世界大戦という時代を映してきたものといえるだろう。そして、それが今でも様々な面やその根底で生き続けていることを、ジャンゴらのやり取りなどから実感した。

膨大な労力をかけたその部分がなければ、「コラボ(ナチの味方)」と言われたマルセル・レノールトを、単なる「記号」として捉えてしまっていただろう。

更にゾエらの活躍により綿布紙の謎がとけるが、それは今までのストーリーとは距離を置く、全く予想外のものだった。そこからは、古来から連綿と続く音楽についての議論となっていく。異なるメロディーを同時に演奏して調和させる、本書のタイトルたる対位法、それが何とここリモージュと結びつくとは、ストーリーと結びついていくとは予想だにしなかった。

そして、現在のフランスの様子が語られていく。やはりそれは、当時のフランスと同じく過去をはじめとする重層の上に成り立っていた。

対位法は単なる作曲の技法ではなく、それを聞く人々に、一瞬一瞬の「今この時」を感じさせるもの。歴史においては、「今この時」である[出来事]は1回しか起きることはない。でもそれを一つの解釈に押し込めることは、多様性を否定する「記憶の法律」となる。このふたつが、マルセルの生き方と彼が残した綿布紙によって結びつくとは。

そして、根も葉もない誤解を受けて隠遁した、マルセルの心中を考えた。それと共に、「歴史」という「事実」は記録として創られたものと知った。本来の歴史は一人一人がもつものだら、それぞれの心の中で対位法のように共鳴することで厚みを帯びていく。だからこそ、マルセルは強く立ち向かえることができたし、ジャンゴは人を許し許されていくのであろう。

ここまでの大著でなければ気づくことのないことを、本書は明確に示してくれた。

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主人公をはじめとする、個性の強い登場人物たちがお互いの個性を認め合い、お互いの良き理解者であるという関係性がとても素敵で、友人によって心が救われること、共に悩んでくれる人たちがいるだけで過去も未来も違った見え方がすることに、友のありがたみを痛感した。
対位法という言葉も作曲技法も知らなかったが、読み終えて「なるほど」と唸った。言い難いことを背負って生きている人間の変容を表した、見事なタイトルだ。

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