冒頭から鳶伊の仇討ちのシーンで、３０年服役した鳶伊が出所して、まるでタイムスリップしたかのように変わっている世の中に戸惑っている様子も、殺人を犯したとはいえ、自分の中にある大事なものはぶれないので読んでいて安心感がありました。地域猫（後にマチルダと命名）を虐待しようとしている２人組や大家さん宅に入った強盗を撃退したり、マチルダが誰よりも懐いている様子に、シェアハウスのみんなもだんだん頼りにするようになります。壮真はシェアハウスに住んだことで、それぞれに事情を抱えた住人との交流からいろいろなことを考え、生きるのに大切なことは何かということに気づき始めます。考えの甘い頼りなかった壮真が、終盤にはそれなりに成長が見られて、希望の見える結末でした。タイトルにちょっと不安を覚えていたのですが、タケと一緒なので今回もきっと鳶伊は大丈夫なんじゃないかと思えました。マチルダが恋しくてきっとまた帰ってくるはずです。
この本を読むと、犯罪に巻き込まれるのは特別なことではなくて、誰にでも起こり得ることだと感じます。

クソコロナのせいでクソみたいな人生になった
アポ電　半グレ　闇バイト　オーバードーズ　
大学中退　お祈りメール
就職氷河期　捜査情報の漏洩　離婚はマイナス　
→だからどうした。みんなまとめて引き受けよう。
　人として「これだけもっていれば大丈夫」
　なやつがこの本にはある。

～鳶伊　手先はめちゃくちゃ器用　
　どんなにきつい仕事でも愚痴を言わない　
　いつも落ち着いていて頼りがいがある～
　貴方に出会うためのこれまでだった。
　旅の行く先は訊かない。
　けれど、あいつらそれぞれの脳裏には描けている。
　きっとまた会える。

　人好きを唸らせる。息を呑む展開小説だった。
　ハイタッチ！！！