二十四五

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刊行日 2025/01/14 | 掲載終了日 2025/01/14

ハッシュタグ:#二十四五 #NetGalleyJP


内容紹介

// ロングセラー『旅する練習』の著者がはなつ待望の新作!//

*第172回 芥川賞候補作*
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大事な人が、かつてここにいた

確かなしるしを何度でも辿る──

喪失を抱えたまま生きていく、祈りの記録。
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「これは、叔母がどんなに私を思ってくれていたかということを、その死後も巧妙なやり方で繰り返しほのめかされ時には泣かされたところでぴんぴんしている、根深い恨みである。」

実家を出て二年、作家になった二十四五の私は弟の結婚式に参列するため、仙台に向かっている。
五年前に亡くなった叔母の痕跡を求めて、往復する時間の先にあるものとは。
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著者/乗代雄介(のりしろ・ゆうすけ)
1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年「十七八より」で第58回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。2018年『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞、2021年『旅する練習』で第34回三島由紀夫賞、2022年同作で第37回坪田譲治文学賞、2023年『それは誠』で第40回織田作之助賞、2024年同作で第74回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。そのほかの著書に『最高の任務』『皆のあらばしり』『パパイヤ・ママイヤ』などがある。

// ロングセラー『旅する練習』の著者がはなつ待望の新作!//

*第172回 芥川賞候補作*
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大事な人が、かつてここにいた

確かなしるしを何度でも辿る──

喪失を抱えたまま生きていく、祈りの記録。
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「これは、叔母がどんなに私を思ってくれていたかということを、その死後も巧妙なやり...


出版社からの備考・コメント

★校了前の仮データを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

発売前の大切なゲラをご提供させていただいております。弊社では、下記のような方からのリクエストをお待ちしております。
○発売に向けて、一緒に作品と著者を応援していただける方
○NetGalleyへレビューを書いてくださる方
○自分には合わない内容だった際、どういったところが合わなかったかなど、建設的なご意見をくださる方

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読み終わりましたら是非NetGalleyへレビューをご投稿ください!
著者・担当編集者ともに楽しみにお待ちしております。
また、適したメディアやお持ちのSNSにもレビューを投稿いただき、多くの方に本を拡げていただけますと嬉しく幸いです。

※発売前作品のため、ネタバレになるレビューはくれぐれもお控えくださいませ※

ご協力の程、何卒宜しくお願いいたします。

★★★
作品の拡材や指定配本をご希望の書店様は
恐れ入りますが<講談社 書籍営業部>まで直接お問合せをお願いいたします。

★★


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★★★
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出版情報

ISBN 9784065383285
本体価格 ¥1,500 (JPY)
ページ数 112

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仙台で開かれる弟の結婚式に参加した景子の3日間が綴られている。家族と話していても、弟の結婚相手の家族との食事会でも、結婚式の最中でも、景子が思い出し、考えてしまうのは亡くなった叔母のこと…。という内容だった。
叔母と景子との間に何があったのか、どのような関係だったのか、具体的なエピソードなどはあまり語られないが、景子にとってどれほど大切だったのか、その死によって、どれほどの痛みを感じているのかが伝わってくる。最後の偶然出会った大学生との会話もよかった。

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読みおえた。日曜早朝。空が白みはじめた。新雪だ。なんと今日にふさわしい物語なのだろう。
足跡が、残る。
音が、ない。
新幹線が仙台駅に到着するや「青葉城恋歌」が流れ
市内を見下ろす伊達家の墓所から市内を見下ろせば、何百ものカラスが一斉に鳴き騒ぎ
弟の結婚式に参列するための来仙だから、お嫁さんは弟の幼馴染だから、
だれもかれもなんでも知っててあの頃話が続く続く。
それなのに、閑か。
光はゆっくり弱い。キラキラではない。
鹿が長く鳴いて映像が終わる。ケーンとは鳴かない。
華やか、がない。
2年ぶりの家族との対面、仙台駅前の結婚式場、わたしの職業は作家。
色彩が、ある。
5時を過ぎると、青灰色に染まった空の方が白く浮き始めていた。
青空は目を刺すようだ。 
なんか。好きなんだよね。その言葉がしっくりくる。
それらの何処にもどんな時間にも感じる、叔母の跡。
叔母は2年前に亡くなった。
ふと「ともだちになるために」の歌が耳をよぎる。卒業式でよく歌われるあの歌。
私は94ページの会話がとても好きで何度も其処に戻っていた。

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きっとあの少女のその後が書かれているだろうと思われるタイトルに、つい引き寄せられて読みました。「十七八より」の時は本当に難解で、読むのに苦労しましたが、今回はその時より読みやすく感じました、冒頭で私も最近夢中になって読んだ「違国日記」が登場して、就活中の女子大生に共感したからか、著者の作品を何作か拝読して、文体やその世界観に慣れて来たのか、主人公が大人になって少しだけ世間に歩み寄って来たからなのか。亡くなった叔母の存在が、景子の真ん中にあることが印象的です。そしてそのことを弟や、両親も分かっているような。けれど、景子には受け取ったものを誰かに渡す番が来ていることが、終盤で伝わってきました。大切なものが受け継がれていくことで、景子の気持ちも整理されてゆくのかな、と思いました。

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弟の結婚式のために仙台にやってきた景子。五年前に亡くなった叔母との思い出の地を巡り、誰かの一言で叔母を思い出す。
景子の喪失感と叔母への思いが切なくて、瞼の裏にためた思いを知るたびにこちらまで泣きそうになる。
大切な人を思い出すときとはきっと何気ない瞬間なのだろう。
弟が問うた思い出の地を巡るのは悲しいことなのか、嬉しいことなのかと深く考えた。
冒頭で『違国日記』が登場するのが印象に残る。叔母と姪の関係性はあの漫画のようなものだったのだろうかと考えるが、景子の綴る言葉のように鉤括弧の中の言葉は二人だけの思い出でしかないのだ。

私はこの作品を時間をおいて二回読んだが、喪失感とどう向き合うのかという答えは見つからなかった。でも生きていた頃の叔母を知らない人と出会い彼女の言葉を聞きやっと私も深呼吸が出来た気持ちになった。
大切な人を亡くしたときの喪失感は辛くて言葉に出来ないが、時間は過ぎていく。喪失感を抱え立ち止まっていることに気付いたとき私はまたこの本を読み直すだろうと思う。

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静かな物語の中にある、熱のこもった想い。
大切な人がこの世からいなくなっても、進んでいく時のなかにいる主人公に、思いを馳せながら読みました。
折り合いのつかない気持ちを抱えたまま、いつだって頭の中はいっぱいで、思い出すこと、想像することしかできない。まだ先へは進めないけど、夏葵ちゃんとの出会いで、主人公がふわっと軽くなったように感じました。
そして、タイトルは思い出せませんが、夏葵ちゃんが歌ってくれた歌、知ってます!優しい歌に癒されます。
私自身もまだ再生の途中で、この作品を読むことができてよかったです。
素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました!

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5年前に亡くなった叔母を忘れられない“私”は、弟の結婚式に参加するために2年ぶりに仙台に行く。2人のぎこちないやり取りに姉弟愛を感じるほか、様々な想いが読み手の心に静かに染み入ってくる小説。
また何年か後の“私”との再開が楽しみだ。

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「十七八より」の〝私〟が「ニ十四五」になった今、憧れの叔母は5年前に亡くなり、2年前に家を飛び出し、デビュー作が二つの賞をとった作家となっていた。

そんな〝私〟が、弟の結婚式に出席するために故郷の仙台にもどっての様子が一人称で綴られていく。

まだ抜け出せない叔母への想いが、憧憬として湧き上がってくる。弟とのぎこちないやりとり、あられもない会話の中に、姉弟愛が滲み出てくる。まだ打ち解けきれない両親との距離感。義妹となる幼馴染への複雑な心境。それらが結婚式へと集中していく。そんな〝私〟の着飾らない内面が、読み手に静かに静かにしみこんでくるのに、身を任せた。

そして式後、その全てを受け入れたかに見える〝私〟が、その心の波をあえて隠して、新たな旅立ちを始めるのを、見守った。

また何年後か〝私〟と再開するのを楽しみに。どんな内面を持つ〝私〟となっているのかを楽しみに。

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大切な存在である叔母を失った主人公が、弟の結婚式に行く。
主人公は作家キャラで、ガワはリアルタイムのイベントを姉として無難にこなしつつ、内側では過去を思い出したりして掘り下げていく。
結婚式なんだけど葬式みたいな。
ありきたりであざとい悲しみの見せ方ではなく、ちょっと逆張り精神みたいなのを感じさせる主人公が胸にどうしようもなく抱いた傷をじわじわとわからせてくれるので、味わいがあるなと思いました。好きだなと。

親世代との絡みがリアルでした。親の持っている定規があって、はみ出すと嫌そうにしたり心配したり、他人の目を気にしたり、普通にしてっていう気配みたいなのを出したり。
でも、子供への愛情があって、ちょっと悲しくなる愛しさ。弟について書いた作文を巡るエピソードとか、好きだなあって思いました。
弟と弟の嫁や友人キャラは安心感のあるキャラたちで、人間関係や平凡な生活が肌で感じられて、ほっこりとしました。

このお話、最初に夏葵ちゃんと出会うんですけど、その後で家族との結婚式関連のエピソードに移って(いいホテルでいい格好して恥ずかしくない振る舞いして)、夏葵ちゃんのターン再びって感じで切り替わるんですよね。
ちょっと疲れちゃう場から解放された感じというか、過去から未来へと変わっていく感じがあって。なんか風や空を感じて。
ガワを取り繕いながら内側で思案したり過去を想ったりしていたフェーズは成長した後の大人って感じがしたんですけど、夏葵ちゃんといるうちに「まだ子供」「まだ若い」みたいな気持ちになってきて。
このあとも主人公は生きていくんだよなあって。

私事で恐縮ですが、兄を亡くしているので、なんだかしみじみと読んでいました。
読み終えた後で情報を検索してみたのですが、主人公の阿佐美景子というキャラは過去作にも登場しているみたいですね。過去作が未読なのですが、これ1冊だけでも楽しめました。
「文学賞の選評を読んでおらず、他人に話を振られ焦る」というのも、作者の乗代先生自身の「それは誠」インタビューでもあったエピソードみたいですね。面白いなーって思いました。

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読んでの第一印象が、「芥川賞候補作。なるほど、納得」です。
誰にでも読みやすいとは少し言えないけれど、ぴたっとはまる人にははまるだろう、そういう作品です。

読んでわかるのは、

・主人公景子は弟の結婚式に出席するために仙台に向かっている。
・家を出ていて、家族との折り合いがいいようにはあまり見えない。
・どうやら叔母が亡くなっている。
・仙台は叔母と旅行をする計画を立てていた土地である。

など、行動や主人公が今おかれている状態の大枠のようなものだけなのである。
何が原因で叔母が亡くなったのかとか、どうして家を出ることになったのかとか、
ラストシーンのその後主人公はどうしたのかとか、そう言った細かい事柄の描写はほぼされていない。
そのくせ、主人公の目に映る景色、相対する人物の発言、行動、表情は、事細かに描写され、
その場の音や匂いまでも読んでいて感じる気がするほど。

そして、最初から最後まで貫き通して漂うのは、叔母を亡くした景子の、喪失感。

小さな音でロードムービーを見ているような、そんな作品だと思いました。

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叔母さんとの関係性とか後半で明かされるのかと思いきや、そういうことが無かったので調べてみたら連作だと……。単体で読めないこともないけれど、複雑な人間関係等理解したいなら他もきちんと読むべきなんだろう。だが、その曖昧さが景子の喪失感を際立たせる。大切な人がいなくなってしまったあと、残されたものはどう生きればいいのか。深く考えさせられる作品だった。

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芥川賞候補作。いよいよ受賞なるか。
最近は、趣向を凝らして差別化を意図的に図るような作風の作品が多い中で、ある種『小説』というものはこうあるべきであるという模範的な作品だと思う。主人公目線での作品の進行でありつつ読者としてその背中を追い続けるような言葉の動きがあってあくまで一つの世界に自分が入り込んでやりとりを見せてもらっているような感覚になる。
難しく考えなくとも人の微細な動きを捉えてそれを息をはくように自然と描いているからこそ情景が浮かぶ。その人の顔も会ったことがあるかのように形成されていく。きっとまだ一度も踏み入れたことのない仙台も懐かしく思う事だろう。

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第172回芥川賞候補作。弟の結婚式で仙台に行く。家族との会話、亡くなった叔母の思い出、偶然出会った女子大生との会話。さりげない中に、心の起伏が見えてくる。著者の経験から描かれているのかと思ったが、著者は男性だし、主人公は女性だ。この微妙なニュアンスを文章で表現しているのは上手いなとは思った。

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自分を変えたい人や、
誰かに変わってほしいと願う人に
薦めてみたくなる一冊ですね。

主人公は自他ともに変わり者と認める新人作家。

自分の世界のすべてだった叔母を喪い、
囚われすぎていた彼女が、
思わぬ巡り合わせに心を動かされてゆく物語です。

いなくなった後にも
威力を発揮する叔母の仕掛けの数々。

小気味好いですね~。
読むほどにスカッとしましたよ。

しかも、どこか偏屈な主人公のキャラも
振り切れた自由さのあの子も
危なっかしくって目が離せない!

一番楽しかったのは
結婚式で弟と並び歩くシーンですね。
湧きたつ会場の空気さえ感じられました。

とことん内向きな性格と全く違う個性の
化学反応が楽しい芸術作品。

じんわり余韻を残し、
たっぷり浸れるラストでしたよ。

これはまだ先があるって、
信じていいんですよね?ね?

(対象年齢は13歳以上かな?)

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思いのひとつひとつが、重ね合わせて表現されていて、じっくりと読んでもさらりと読んでも、しっかりと心の奥に残っていった。そんな小説だったなあ。本作で芥川賞、いいかげん取らせてよ!とやっぱり思う。自分の黒歴史を勲章みたいに主張する訳のわからない選考委員にとにかく腹が立つ。あなたではなく読み手視点から選考してほしいし、文学的観点からも、公正に判断してほしい。いずれにしても心を打つ作品で、こういったシーンで簡単に感動するのはよくないのかもしれないが、香堂くんの脛の傷についての思い出語りには泣いてしまうよ。女子大生夏葵さんの登場が未来へとぐいぐい引っ張って行って、これってYAとして若い読者にも読んでほしいと強く思った。

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弟の結婚式で仙台まで来たのに、主人公の頭の中には、5年前に亡くなった叔母のことで一杯なのです。叔母と旅したこと、また一緒に行こうねといっていたのに行けなかった場所のこと。弟の結婚は確かにめでたいけど、ここに叔母がいてくれたら、どうだったんだろうなんて考えてしまう。

 この主人公は「十七八より」の彼女かしら? 叔母のおかげで今の自分があるのだと思っているのに、家族すら叔母のことを話題にしてこないことにいら立っています。今は作家としてそれなりに有名になって、「作家であるわたし」ばかりが評価されていて、そんな自分を演じているのは疲れるのかな?

 面と向かってケンカするわけでもないんだけど、本当の心の内を言い合えない家族って、やっぱりツラいよね。

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第172回芥川賞候補作。
弟の結婚式のために訪れた仙台。5年前に亡くなった叔母を懐いながら、遺された世界の中に彼女の痕跡を探す。虚無感と充足感の相反する想いを燻らせながら進んでいく、大切な人との記録の物語。

自分の中で確立された存在を、外から眺める。思わぬ視点で語られる叔母の新しい一面や、見ていたはずなのに逃していた事実を再認識し、もう更新される事のないと思っていた存在のページが増える。愛おしい気持ちに溢れた小さなエピソードの積み重ねにジンときた。
とても読みやすく、身近に感じられる純文学。

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結婚式の場面や家族の交流を通じて、家族の絆や喪失感、成長、そして新たな出会いについて描かれます。特に、主人公が叔母の記憶を抱えながら生きる様子、そして新たな友人との関係が形成される過程が印象的で、彼女の内面的な葛藤や感情の変化が繊細に表現されており、強く共感したシーンも多数あり、家族や友人の大切さを再認識しました。
愛、喪失、再生をテーマにした上、感動的な要素が詰まっており、芥川賞が受賞してもおかしくないのでしょう。

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「旅する練習帳」で注目していた乗代雄介さんの芥川賞候補作品。タイトルの読み方がわからなかったのですが、作品を読み進めていくうちにスッと腑に落ちるようになりました。この年代のこととなるとすごく昔のような気がするのですが、たんたんと語り進められていく筆致に、乗代さんらしさがあふれていました。

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人にはきっとそれぞれの善良さ、やさしさがあるのだろうと信じられる、乗代さんの文章が大好きです。
大切な人の不在をかたどるように、訪れるはずだった場所をたどっていけば、そこに現れるのは確かに今も感じられる叔母からの愛情で、時間をかけてはりめぐらされた絆で、こうやってきっといろんな人に守られているんだなとあたたかい気持ちになりました。
弟くんや夏葵ちゃんとの会話も、思いやりやキラキラした若さがつまっていて、素敵でした!

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人は大切な人を亡くした時、どんなに慰められても傷は癒えることなく、
時間とともに息も出来ないような悲しみが、鈍く静かなものに変わるのを
待つしかないのだと改めて思った。心の疼きが確かにそこにあるけれど、
それを日々を生きることでやり過ごしていく。忘れるのでも、なくなるのでもなく
そこにある悲しみを心にもちつつも淡々と自分の人生を生きられるようになるのを
ただそういう日が来るのを待ちながら日々を生きていくしかないのだと思った。

ノスタルジックで淡々としていて、残された者との人間関係を描いていて
劇的なことが起こるわけでもない。だけど、残された者がどう生きるのかと
いうことを静かに問うてくるような小説。

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「十七八より」を読んでいなかったので作家になった主人公にとって叔母がどういう存在だったのか、叔母のゆき江さんがどういう人だったのか、家族の関係がどうなのかよく分からないまま読んでいたけど、それを想像しながら読むのも悪くなかった。少なくとも主人公にとって叔母がとても大切で彼女の人生に大きな影響を与えたのだろうと思った。大切な人は亡くなっても残された人の心と生き方に残り続ける、寂しいけれどあったかい気持ちになりました。

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乗代さんの作品は「旅する練習」しかお恥ずかしながら読めていなかったので、今回の主人公が「十七八より」等の主人公とは知らずに読みました。

実は今年、私も可愛い一人きりの弟の結婚式に県外へと出かけました。年齢も場所も状況も全然違うのですが、会話のちょっとした緊張感や互いを密やかに気遣う探り合いなどの雰囲気がとても他人事とは思えなかったので新鮮でした。ちなみに私も(幼い娘がいたのもありますが)ほとんど写真は撮っておりません、弟の結婚式という忙しすぎる非日常を精一杯味わいました(わたしもお色直しの退出の際に名前を呼ばれた姉です)。そして『違国日記』は私も大好きな作品なので、テンションをあげてしまった“彼女”の気持ちは分かります。きっとその後主人公が作家だと知ったらもっと大騒ぎするんだろうなあと思いつつ、何故か懐かしいような気もちになるラストの空気感にホッと一息ついておりました。主人公にとって大きな存在である亡き叔母が気になりすぎるので、他の作品も読みたくなりました。
失った人の思い出を振り返る時の、言葉に出来ない多面性ある感情を、本作品も『違国日記』も鋭く描いているように思います。ふとした時に頭に浮かぶ、そんな作品でした。

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読み進めるに「ああ何だかなぁ」と独り言を何度も呟いてしまう。僕も3年余り前、ただ独りの兄弟である弟を癌で亡くしたから。主人公の景子さんはどの喪失感はないけど、見た景色、目の前に並べられたご馳走、突然降り出した雨…ホントふとした時に思い出す人って誰にでもあるのではないかな。そして仙台で出会った年下の妹のような夏葵ちゃんの存在がまたピリッと作品を引き締める。冬の夜、僕は一気によみおえました。好きだなって思わせる作品です。

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弟の結婚式のために訪れた仙台で、亡くなった叔母と行くはずだった場所をたどる。「それってさ」「楽しいの 悲しいの」という弟の言葉が刺さる。叔母を思い出し、楽しいのか悲しいのか、という言葉を抱えてする旅に感情が動く。そこがとても好きだ。賞を取ってもっと沢山の人に乗代さんの魅力を知って欲しい。

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弟の結婚式のために訪れた仙台。亡くなった叔母を偲びながら、遺された彼女の痕跡を辿る。
何気ない日々の中でふとした瞬間に感じる孤独や焦燥感。揺れ動く心情を鮮やかに描く。瑞々しくも緻密な筆致で詩情を織り交ぜる文体も快い。静かに佇み耀う文章に陶然とした。

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二十四五の作家になった私が弟の結婚式に参列するために仙台に向かうところから物語が始まる。
実家から離れた時間、親子、姉弟、新たに親戚になる人々のぎこちなさや遠慮が彼等の間に横たわっていた。
5年前に亡くなった叔母との関係性が詳しくは描かれていないからこそ、想像が膨らんでしまう。
どれほど、その不在に傷つき今も尚癒えずにいるのだろうと。
偶然に出会った大学生の彼女の明るさが、対照的でもあり、変わり続けるであろう未来がきっと明るいものであると信じられた。
しみじみとよい作品でした。

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祖父の眼科医院、ゆき江叔母、弟と両親。既視感が。
2015年の群像新人文学賞受賞作でビュー作『十七八より』の阿佐美景子の約8年後、
弟の結婚式のため訪れた仙台での再会と出会いと過去の記憶が淡々と綴られる。
景子、相変わらずのそっけなさですが、周囲の人たちは「気むずかしい姉」景子を慮って接しています。
彼女に大きな影響を与えたゆき江叔母との関係は相変わらず仄めかす程度の描写しかありません。
弟の結婚相手、小学校4年生で同じ塾で出会った幼なじみの両親の俗っぽさは、難解な気配の中では異質な感じだが、逆にこの人たちの存在に救われる読み手は多いと思う。親戚に小説家とか、仕事の物差しにトヨタを目安にするところとか。
『最高の任務』も本作に繋がっているようなので読みたい。

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弟の結婚式で仙台にやってきた、24歳だか25歳だかの主人公。
彼女の心の中には、5年前に亡くなった、とても
仲が良かった叔母がいる。

叔母への喪失感がまだまだある中で、新たに親類となる人たちと会話し、噛み砕いていく。

具体的に何があったのかは語られないので
読者は想像するしかない。

本当に悲しいことがあった時って人に話したりできないよね。

そんな感覚を思い出した。


仙台の町も観光してみたくなった。
しっとりと優しい物語。

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独特な空気感と文章で、この作品ならではの言い回しや表現がとても魅力的でした。
会話の間もこちらに伝わってきて、楽しさや気まずさ、そしてままならない気持ちなどが体感できます。
ただ、続編と知らずに読み始めてしまいました。人物像と人間関係をより知るために前作も読んでから、もう一度読み返したいです。

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亡くなった人の記憶は、必ずしも事実そのものであるとは限らない。それは時に『与えられたと信じて疑わない愛から導かれる憶測』を含めて成り立っている。
しかしだからこそ、記憶はより美しく亡き者への愛はより深みを増していくのかもしれない。年月が過ぎるごとに、その人との思い出は部分的に強化され、私たちはその人が持っていた愛情の本質を再認識する。そして不在が故に、彼らの存在は私たちの心の中でさらに眩しさを増していく。

記憶は単に過去を見るための窓ではなく、喪失を受け入れ、その人との絆を未来にまで引き継ぐための橋のようなものなのかもしれない。それが、年月がその人の記憶を色濃く染める理由であり、私たちがその記憶を大切に抱えて生きていく理由なのだと、読後に思った。

喪失にはゴールも着地点もないけれど、時に私たちが進んでいくためのよすがとなる。
これからもきっと、表面的には認めない「叔母」の愛が、書かざるを得ない「私」の文章を支えていくのだろう。
有限であることは悲しく、そしてこんなにも優しい。

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弟の結婚式に出席するため、久しぶりに家族と過ごすことになった景子。
家族との何気ない会話から亡くなった伯母を思い出す。
『十七八より』という作品の続編らしく、前作を読んでいない私は、景子が家を出た理由や、景子と伯母の関係、伯母の死因など詳しいことはわからなかった。
それでも、景子のぬぐえない喪失感が物語全体に広がっており、伯母の存在の大きさが十分に感じられた。
仙台の風景や震災の傷跡なども相まって、物悲しくも美しい情景が目に浮かんだ。

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弟の結婚式に出席するために訪れた仙台での3日間の物語。結婚式の参列に前向きになれない、久しぶりに家族に会うことを煩わしく思っている主人公景子。行きの新幹線で出会った就活中の大学生夏葵と結婚式後に再会し出かけたことで、それまでのもやもやした気持ちが少し軽やかになっていく様子がよく伝わってきて、こちらまで明るい気持ちになれる読後感でした。

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『十七八』、『最高の任務』に続く景子シリーズ最新作。
作家となりデビュー作が大きな賞をとった景子が、弟の結婚式で仙台を訪れる。
5年前に他界した大好きな叔母と旅行で来るはずだった仙台の地を巡っても、結婚式でも景子に湧き上がってくる喪失感。
それが震災での喪失感と重なる。
大切な人を失った時、人はどう向き合えば良いのだろう。
重い雰囲気の中、旅先で出会った女子大生の夏葵との交流が未来への歩みを予感させてくれる。
情景描写の解像度の高さも出てくる人のめんどくささも乗代さんらしくて、今回もとても良かったです。

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『十七八より』の、あの景子が作家になり、家を出て2年。久々に家族と会う仙台に赴いた3日間は弟の結婚式に出席するため。5年前に他界した叔母への喪失感はそのまま、式に差し支えない範囲で思い出の場所を巡る。叔母との間の多くは語られず、景子の抱く焦慮もちらほら挟まれる。新しく親戚になる人々の晴れやかで浮き立つようすとは裏腹に、景子の内面は昏く沈む。気難しい一面も作家ゆえのことと受け取られる安易さにも辟易する。そこかしこに感じる仙台の街の叔母との記憶に不意に掴まってしまえば、心が波立ちもする。「二十四五」の若さが歯痒くもあるが、大学生の夏葵との出会いにどこか明るい風穴が見えた気がした。

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芥川賞候補作で発表前にぜひ読みたかった。機会を頂きまずは感謝申し上げます。読了後、最初に思ったのが「よかった」です。芥川賞は読みにくいイメージがあり直木賞よりですが、そんな感じはまったくない。主人公の女性作家は弟の結婚式で仙台に行く。電車を降りる時に年下の見ず知らずの女性とある漫画がきっかけで後日会うことになる。場面は弟の結婚式前後の話に移り、最後は初対面の女性との観光?語りが芥川賞なのだろうか、よく読む直木賞小説とは違う。しかしなぜか落ち着く。最後に思う。今作が芥川賞受賞しても驚かない。むしろ受賞すると思う。そんな手応えある小説でした。

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説明しすぎないながら丁寧な文章運びは、主人公である景子の心情と徐々に同調し、景子にとってゆき江叔母さんがどれだけの存在だったかが染み込んでいくようでした。心情的に近しい人をなくした喪失感は本人にしか分からないと思いますが、読み終えた今、この物語からなかなか抜けられないくらい入り込んでしまいました。

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乗代雄介さんの新作、楽しみにしていました。
『十七八より』から七八年後の物語。

乗代さんの作品を読むと、
これぞ小説、その巧みさに見事だなと
小説を読む楽しさを感じます。
でも何よりストーリーが好き!

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人は自分の人生を振り返るとか見つめ直すとかいうことを楽しい思い出でない限りなかなかしようとはしない。でも心の深い所にそれは一種の悔恨とともに誰もが抱えているのだろう。弟の結婚式というエポックに自分ばかりではなくその周囲の人々の思いが姉の視点で語られるのだが、それは決して快いものばかりではなく、奥歯に物が挟まったような会話の中に今まで言えなかった想いや気づきが溢れ出る。現在を基準にしてしたり顔で語る言葉は嘘嘘しく、本音を隠してて場をもたせるのも身につけた処世術といえるかもしれない。
 そんな中で初めてと言える弟の苦い思い出の吐露、色んな意味での緩衝役を担ってくれた叔母の存在とその喪失がブラックユーモアのように綴られてゆく。笑いで誤魔化せるものではなかった物が時の歩みの中で取り除こうとしても取り除けない澱のようなものに変わっていく。生き直すことはそれぞれにできないのである限り、今いる地点から過去を自分なりに背負って生き続けるしかないのである。マンガが引き寄せたように電車の中で出会う年下の娘もまたそうした一人であることがわかる。軽妙なタッチで描かれた一人一人がとても印象的である。

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弟の結婚式に出席するために初めて仙台の地を踏んだ〈私〉は、亡き叔母と旅行するはずだった名所を訪れる。人一倍本が好きだったのに、自分は何も書き残さなかった〈ゆき江ちゃん〉。景子と彼女の仲がどうだったか、彼女はなぜ生を終えたのか、そういったことは語られないのに、ひたひたと心に迫ってくるものがあるからすさまじい。淡々とした筆致で旅路は進む、でも瞼の裏側にはいつも涙の気配がある。何を書くべきか、何を書かないべきか、この作家は恐ろしい勘を持っている。書くこと、書かないこと、変わること、変わらないこと。普遍的なものが特別な形で詰まった傑作である。

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弟の結婚式のために、
仙台に向かう電車内で、物怖じしない就活生に声をかけられた景子。
どんなに、自分の関心のある書物を読んでいたとしても、見知らぬ人に声をかけるという行動は普通しない。
そして、景子の方も、普通に応対する。

その意外性のあるプロローグを皮切りに、
景子の、家族間の立ち位置や、亡くなってしまった叔母に対する感情の持っていき方にずっと苦悩している様子が見えてくる。
仙台の景色、未曽有の震災の跡などを辿りながら、その着地点を模索しているような気がした。
ラストに稀有な出会い方をした就活生に再会することで、
景子のこれからが少しずつ変わっていく、心の中の叔母も変わっていくのではないかと思わされた。

第172回の芥川賞候補作品。

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思っていたより短く、「NetGalleyでの公開途中までだっけ?」とあわてて調べてしまいました。
回収され切っていないと思ったところはきっと、前日譚で書かれている部分で、
私がそちら(の存在)を知らず、読んでいなかったことに起因しているのでしょう。
同様に『違国日記』を未読の方も多少ニュアンスがつかめなそうな気もしますが、
これを出会いにして読んでみるのもいい作品だと思うのでそういうたのしみ方もありでしょう。

家族の息苦しさと、それとのうまい距離の取り方にもがいている主人公と弟嫁に苦さを感じつつ、
それと対比されたようなスコンと明るい大学生女子の様子が清涼剤のようでした。

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