カメオ
松永K三蔵
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刊行日 2024/12/10 | 掲載終了日 2024/12/12
ハッシュタグ:#カメオ #NetGalleyJP
内容紹介
// 『バリ山行』で芥川賞受賞!「オモロイ純文運動」の原点
不条理な可笑しみに彩られたデビュー作!//
行け! 行け! カメオ!!
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中途中途半端な優しさと惨めな保身の狭間で
どうやっても救われない
俺らの魂が疾駆してました。
願いと祈りが結末にありました。
――町田康
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誠実さと善意、ペーソスに満ちた傑作犬文学。
神戸の物流倉庫に勤務する高見は新倉庫建設の工程管理を任されるが、建設予定地の隣りに住む犬連れの男が何かと工事現場にクレームを入れ、勝手に朝礼にも参加するようになる。
その男自前のヘルメットには「亀夫」という文字が書かれていた。
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著者/松永K三蔵(まつなが・けー・さんぞう)
1980年生まれ。関西学院大学卒。兵庫県西宮市在住、六甲山麓を歩くのが日課。2021年「カメオ」で第64回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。第2作「バリ山行」が第171回芥川龍之介賞を受賞。『バリ山行』は単行本として刊行されている。
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出版情報
ISBN | 9784065378267 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 144 |
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物流会社に勤める男性が、
思わぬ出来事で出逢った一匹の犬。
最初は全く気乗りせず、右往左往しながらも、
共に過ごす中で、少しずつ心境が変化していく。
しかし、自身のある決断により、
相反する葛藤と悩みに揺れる気持ちが芽生えてしまう。
その、どうしようもない切なさが、
私の心にも広がりました。
本能のままに生きる犬の姿を通して、
自身の不条理が打ち砕かれていくような、
爽快なヒューマン小説。
身体を凌駕していたアイロニーを脱ぎ捨てて、
無我夢中で走り抜けていくクライマックスに、
エネルギッシュな風を感じました!
読後も、「行け! 行け! カメオ!!」という力強い言葉が、耳元に熱く残っています!
「オモロイ純文」をプロモートする芥川賞作家が描く、不条理の中の合理性を模索するコミカルでユーモラスなデビュー作。
小さな分岐点を見過ごし続けた男が、どんどんとドツボに嵌っていく。クレーマー老爺と変な犬とに翻弄されて奔走する男の、誰ともなしに繰り広げられる言い訳がましい脳内モノローグがとても秀逸。生命に対する問いと、その内の一つの答えを呈示する、ストーリー性も読みやすさも犠牲にしない身近な純文学。テーマがわかりやすく、キャラクターと意外な展開にも独創性が光る唯一無二の作品。
進化していく「カメオ」がただただ面白い。
主人公・高見にとってカメオは理不尽の象徴のような犬。しかし、押し付けられた犬でも、生活を共にし 、名前を付けて呼んでしまったら、情が湧いてしまうのが人間だ。
そして、やっぱり無理、と身勝手に投げ出すのも人間。
そんな人間の矛盾や葛藤が、緻密に、濃厚に描かれている。
高見の矛盾や葛藤の対象が、私達の生活に密接している犬なので、読み手側の矛盾や葛藤もモロに出て、めちゃめちゃ考えさせられた。読後、大切な気づきを得られる、力のある作品だ。
人というものは基本面倒くさがりで、できない人をできるように助けることやできないことが分かっていながらそれをできるように頑張ることに対してはどうにも手を引いてしまいがちだと思う。けれどそれの対象が犬になるだけで、『がんばれ!』とか『できるよ!』とか間違えても笑って許す節があると思う。明らかに意思疎通に一癖あるやり取りなのにどうして。とても不思議なことだけど、犬たちにはそれを越えてくる愛を感じる。人がどんな状況に置かれようとも、犬には人を愛し続けるというある種一方的な感情表現があって少なからず人もそれを感じるのだろう。カメオもその一匹で、描写以上に主人公には愛が写っていたように思う。
「カメオ」=ブローチと勝手に想像していたけれど、全くの見当違いで、「えっ!それで」と笑ってしまった。主人公の高見の会社での立場には同情するけれど、「犬の件は、強く断ろうよ」と腹が立った。マンションの万年副理事長にバレるのではないかと、ハラハラのしどうしだった。
建築中の倉庫へのクレーマー亀夫が急死し、彼が飼っていた仔犬を引き取った高見。その不細工な姿に何を見出し、高見は山中に連れ出し走らせるのか。
読みながら、共に「カメオ!!」と叫びたくなったのは、自分もまた高見の同類なのだろう。
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趣味とは言え、オフロードバイクでのオンロード、さらにはオフロードまで挑まずにはいられない高見。
一方、建設中の倉庫に意味のないクレームをつけ続けることが、生きている事に見える亀夫。
亡い亀夫と高見の残された共通項は、亀夫が飼っていて高見が預かった、不細工な仔犬だけ。その子犬の態度に、愛想のなさに、高見は亀夫を見たのだろうか?
なら、なぜ連れて行くのが山だった? そして、仔犬の生まれて初めての全力疾走、初めて自分の「血」に目覚めての全力疾走。それに呆気にとられながらも、高見は最後には「行け!」と心の中で連呼した。この時、高見も初めて己と亀夫の共通点、逃げられない縛られた立場の者であることを、仔犬の疾走を通して感じ取っていたのだろう。そして、亀夫は一生言えなかった言葉を、心の中ではあるが叫ぶことができた。「行け!」と。前に進めなかった亀夫への決別の連呼。
だからこそ、その後に子犬を心の中ではなく、声に出して「カメオ」と呼ぶようになったのだろう。自分も仔犬も亀夫を超えたのに。それは単なる惰性ではないと思いたい。抜き去ったからこそ、声を出して「カメオ」と呼べるようになったのだと思いたい。
そうして夜の山中、車を降りた高見とカメオ。リードもハーネスも外され、高見から完全な選択権を与えられたカメオ。その、迷いを見せない選択に、言葉も無かった。でも、カメオが、その目覚めた血が決めたこと。高見も読み手もそれを受け入れるしかない。
悲しくても、辛くても、その姿に力いっぱい声をかけるしかない。「行け! 行け! カメオ!!」と。
それは、不条理だった亀夫との別れの掛け声。高見の自分の状況からの脱却を違う掛け声。そして何よりも、きっかけをくれたカメオへの心からの応援の叫び、別れの叫び。これから進んでいくカメオと自分に向けての叫び。
だからこそ、自分も共に叫びたい。
「行け! 行け! カメオ!!」
「行け! 行け! カメオ!!」
と。
工事現場に現れて難癖をつける隣地の男カメオ。カメオが連れて来る奇妙な姿の大人しい犬。とにかく癖強のこの組み合わせ。工期に余裕がないのに何かと邪魔をしてくるカメオこと「亀夫」。その勢いのある関西弁が笑いを誘う。タレのアタックって…。
後半は前半とはガラリと様相が変わる。なぜなら、「カメオ」は人間から犬に入れ替わるからだ。飼ってはいけないマンションでカメオと共に暮らす私。果たして、一人と一匹の行き着く先は?
緊迫した状況にもかかわらず、どこかおかしみを含んだ語り口、その抜け感が好きだ。『バリ山行』に続いてこの作品でも小説を読む楽しさを味わわせてもらった。