ハローハロー
九津十八
ログインするとリクエスト可能か確認できます。 ログインまたは今すぐ登録
出版社がKindle閲覧可に設定した作品は、KindleまたはKindleアプリで作品を読むことができます。
1
KindleまたはKindleアプリで作品を閲覧するには、あなたのAmazonアカウントにkindle@netgalley.comを認証させてください。Kindleでの閲覧方法については、こちらをご覧ください。
2
Amazonアカウントに登録されているKindleのメールアドレスを、こちらにご入力ください。
刊行日 2025/01/29 | 掲載終了日 未設定
ハッシュタグ:#ハローハロー #NetGalleyJP
内容紹介
【第2回ハナショウブ小説賞 テーマ部門大賞受賞作】
君の「普通」が羨ましい。
少年少女の心の叫びを描く青春小説。
〈あらすじ〉
吃音に悩む中学生・加瀬真中は、いじめが原因で不登校となったまま、中学三年生になった。そんな真中のもとに、車椅子に乗ったクラスメイト・明石京子が訪れる。
ピエロのように作り笑顔を浮かべて不都合なことをやり過ごしてきた真中と、自身のことを歩けないカカシだと皮肉る京子。互いを見下し合う関係でいることで、心穏やかな学校生活を送らないかと京子に提案され、奇妙な関係を築いていく二人だが……。
〈著者プロフィール〉
九津十八(ここのつ・とおよう)
1987年生まれ。兵庫県加古川市出身。2024年に『ハローハロー』が第2回ハナショウブ小説賞 テーマ部門大賞を受賞、同作にて小説家デビュー。野球観戦とゲーム配信視聴が趣味。
出版社からの備考・コメント
※ゲラは校了の前のデータであり、完本ではありません。
※発売前の作品につき、ネタバレを含むレビューやご感想はお控えいただきますよう、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
※全国の書店員様・NetGalley様でレビュアーの皆様にいただきましたレビュー・コメントを、帯、pop、web、SNS等で利用させていただいております。
※ハナショウブ小説賞とは?
opsol bookの所在地・三重県の県花でもある「花菖蒲」と「話で勝負(ハナしでショウブ)をする」という意味を込め、2023年に開設。
「介護・医療・福祉」がテーマの「opsol部門」のほか、回ごとにテーマが変わる「テーマ部門」や「エッセイ部門」など、多岐にわたるジャンルの作品を募集。「地方出版社」×「募集テーマが介護・医療・福祉」というめずらしさから、各種メディアが注目する期待の小説賞。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784434349379 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
関連リンク
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
吃音に悩む中学生の加瀬くんは、いじめが原因で不登校になる。
ある日学校からのプリントを持ち車椅子に乗った明石さんが訪れる。そのことがきかっけとなり学校へ行こうと決心する。
でも、加瀬くんはいじめにあっていたときもピエロのような笑顔をつくりその場をやり過ごしていた。そして明石さんは自分のことを歩けないカカシだという。
「君が私のこと見下して良い代わりに、私にも君を見下させて」そう明石さんに提案され加瀬くんはそれを受け入れる。
自分より不幸な人がいたら、安心したことありませんか?
障がいのある人に親切にしてちょっと気持ちよくなったことはありませんか?
そういう社会にある親切と偽善とが混じった感覚を思い起こしました。
私自身、車椅子に乗っていた時、杖をついていた時、親切にしてくれる人の視線や道を譲ってくれる人の視線がいつだって気になりました。
それはありがたいことですが、言葉だけでなく視線からも哀れみを感じたことも何度もあります。
そんなやるせない気持ちを中学生の視線を描ききったこの作品にとても惹かれました。
二人は「見下し合う」という奇妙な関係だけれど、その関係は一緒に時を過ごすうちに変化していきます。加瀬くんの吃音について、明石さんの車椅子での生活について二人とも知ろうとしていく姿も読んでいて心地よいです。もし一人ぼっちだと感じていても、理解しようとしてくれる人がいたらこんなにも心強いのだと勇気をくれます。
吃音や車椅子であることに対して理解しようとしない教師に腹がたちますが、思わぬところで二人で声を上げる場面は最高です。
でも最高の感情は加瀬くんと明石さんの二人だけが味わって良い感情であるのだとも思います。そのくらい二人の姿が眩しく、そして心情が変化していく姿に心が突き動かされました。
困っている人に手を差し出すことが難しくても、その人を知ることで理解することは出来るのではないでしょうか。ただ寄り添うことの大切さをぜひ感じて欲しいです。
中高生にもぜひ読んでほしい物語です。
障がい者や社会的弱者を「読者が心を乗せる船」として取り扱い、その船を「健常者の集団が明確な悪意を持って追い詰める」という構図が挑戦的だなと思いました。
中学生な主人公たち。
吃音の加瀬くんと車椅子の明石さんがメインなのですが、この二人を取り巻く周囲が「優しくない」。
そういう子たちへの接し方の理想は「優しくしましょう」だけど、そんな「当然こうでしょう」という思い込みを鼻で笑われてしまうような。
「現実ってこうだよな」「思い上がりみたいなのがあったな」と思ってしまう説得力がありました。
現実を生きていると、耳障りのいい良い理想をよく聞きます。
困っている人を助けるとか優しくするとか、みんな仲良くとか、相手を思いやるとか。
そういう言葉を見ていると理想的な綺麗だったり優しかったりする人間社会のイメージが湧くけれど、一方で自殺とかいじめとかの話もいっぱい見かける。学校の生徒も先生も、決して善良で品性のいい人間ばかりではなくて、低俗だったりエゴエゴしかったり悪意でいっぱい。
そういう「あり得ないような酷さがあるのが現実だろ」っていうのを描いて突きつけてくる作品でした。
現実の理不尽さ、息苦しさ、人間の醜悪さ、残酷さに、心がガンガンと削られていく気がしました。読み手の心を傷付けてわからせてやろう、という意気を感じました。
本人たちも血の通った人間で、ただのいい子ちゃんではない。
自分より下だと見下せる相手であることに特別な安心感や価値を見出したり、相手と同じ体験をすることで「相手はこんな気持ちだったんだ」と気づきを得るようなエピソードがとても丁寧に問題に向き合っている感じがしました。
特に印象が強かったのは、雨の中での母親とのシーン。
読者の目に白髪を見せてくれたり、母親が過去に悪意を吐いていたから、その因果で子が吃音になったのではと気にしていたりとか。
雨音の使い方も巧くて、なんだか強いメッセージ性を受け取りつつ、胸を突かれて泣いてしまいそうな気分になりました。
学校の生徒や先生は終始どうしようもない存在で、そこが本当に現実的で、世の中に「こういうのわかるよ」と言う元学生がいっぱいいるだろうな。(この「学校どうしようもないな!」感は「青春ゲシュタルト崩壊」を読んだときに似てるなとも思いました。ちょうど最近読んだというのもあり)
ラストでそんな彼らに爽やかに意趣返しして終わらせる二人は、気持ちいいなと思わせてくれました。
ガッツリどろどろやり返すのではなく、スカッと一言いってやって、後を引かずに「じゃあね」で終わるので、好感度が爆上がりで、よかったです。