真珠王の娘
藤本ひとみ
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刊行日 2024/10/15 | 掲載終了日 2024/10/17
ハッシュタグ:#真珠王の娘 #NetGalleyJP
内容紹介
◆構想10年――
◆藤本ひとみ、デビュー40周年を飾る渾身の作品。
戦況末期の日本で、真珠に魅せられた女性が正義と信念に生きる感動の物語。
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1944年10月、英国首相チャーチルから帝國真珠ロンドン支店の早川正臣に真珠の胸飾り「ハナグルマ」が手渡された。かつてパリ万博にも出品された品の修復依頼だった。「君の祖国は、あと一年ももたない」と言われながらも日本に戻り、正臣が向かったのは、ハナグルマを唯一修復できる水野家だった。
水野冬美は真珠職人の母と二人暮らし。学徒勤労動員で浜松にある挺身工場に出発する前夜、母から重大な話を聞かされる。早世した父は実の父ではなく、本当の父は「真珠王」と呼ばれる帝國真珠の創業者・藤堂高清だという……。
時代の波に翻弄されながらも冬美は自らの運命を切り開いていく。
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著者/藤本ひとみ(ふじもと・ひとみ)
長野県生まれ。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説で脚光を浴びる。フランス政府観光局親善大使を務め、現在AF(フランス観光開発機構)名誉委員。パリに本部を置くフランス・ナポレオン史研究学会の日本人初会員。著書に、『皇妃エリザベート』『シャネル』『アンジェリク 緋色の旗』『ハプスブルクの宝剣』『皇帝ナポレオン』『幕末銃姫伝』『失楽園のイヴ』『密室を開ける手』『数学者の夏』『死にふさわしい罪』など多数。
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おすすめコメント
◆担当編集者より◆
1984年、第4回コバルト・ノベル大賞を受賞し以来40年、女性読者から絶大な信頼を集めている藤本ひとみさん。現在でも講談社「青い鳥文庫」で「探偵チームKZ事件ノート」シリーズを手掛けられていますが、一方で一般文芸で壮大な歴史小説もお書きになり、人気を集めています。
◆担当編集者より◆
1984年、第4回コバルト・ノベル大賞を受賞し以来40年、女性読者から絶大な信頼を集めている藤本ひとみさん。現在でも講談社「青い鳥文庫」で「探偵チームKZ事件ノート」シリーズを手掛けられていますが、一方で一般文芸で壮大な歴史小説もお書きになり、人気を集めています。
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出版情報
ISBN | 9784065372890 |
本体価格 | ¥2,400 (JPY) |
ページ数 | 560 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
戦時中の日本の話と思って読み始めたら、突然現れるチャーチル!
そして以後もちょいちょい出張ってくるチャーチルだけは、
某映画で主演していた俳優の映像で思い浮かべながら読んでしまいました。
一国の、それも大英帝国の首相を相手にしてさえ、
一歩も引かないどころか軽妙にあしらう爽やか好青年と、
豪胆で口も素行も悪いけれど妙なやさしさのある、
正反対な性質のちょい悪系の2人に思われる主人公、
というプロットだけ取り上げるとThe少女小説!
…ではありますが、さすが40年のキャリアで厚みのある物語になり、
落としどころはそこか!という持っていき方で、
かなり長い(500ページを優に超える)ながらもググっと読めて(読んで)しまう。
ラストは、こうなんだろうな、とは思うものの、
言葉にされていない分は想像の余地があると思ってよいものか。
そのあたりを読後に話し合うのもたのしそうです。
太平洋戦争末期に真珠に魅せられた一人の女性の物語。
冬美の母は真珠職人として働いていた。
学徒勤労動員として浜松に出発する前夜母から思いもしない話を聞く。
猪突猛進という言葉がぴったりな冬美。
己の信念に突き動かされるように行動し、自分が見つけた夢を懸命に掴み取ろうとする。
しかし冬美に次々に壁が立ち塞がる。
それでも冬美は猪突猛進を続ける。
「女のくせに」「女だから」そう言われる続けるのに決して折れることのない思いの強さに、どうしても掴み取れないものに必死に手を伸ばし続ける冬美の強さに心を打たれる。
また冬美が母が必死で守った「ハナグルマ」の描写がとても美しい。
そして560ページ近いボリュームなのに、猪突猛進型の冬美の姿から目が離せなかった。
色褪せない輝きを保ち続ける真珠のように、凛とした輝きを放ち続ける冬美の物語は女性だけでなくすべての読者の心のなかに残り続けるだろう。
第二次世界大戦下、世の中の価値観がダイナミックに変化する中で、主人公・冬美の人生もまた大きく動き出します。勢いのある文章で一気に読み進めてしまいました。日本が誇る養殖真珠の知られざる世界に引き込まれ、その背後にある人々の情熱や努力が鮮明に描かれている点が特に印象的です。
第二次世界大戦末期、亡くなった母の仕事に魅せられ真珠職人を目指し、男だらけの世界に飛び込む少女。時代に、恋に、翻弄されながらも、力強く前を向く勇敢な女の物語。
戦時下の国民の心境や、女性の立場など、困難な状況に拍車をかける悪循環を通じ、今の豊かさに気付かされる。男女格差の歴史など、細部まで練られた構成と心理描写に圧倒された。
帝國真珠の中で女職人として躍動する一方、真面目な幼馴染の男と危険な匂いの男との三角関係が、波乱万丈の人生をまた拗らせる。理不尽過ぎる運命と、同じものを守る事で繋がる強固な想いにクラクラした。状況を顧みずに繰り広げられる火崎と冬美の軽口の応酬が、その瞬間だけ、戦争を忘れさせてくれるような穏やかさを生み、とても微笑ましく印象に残った。
何が彼女を、あの時代の人たちをそこまで強くしたのか。美しい真珠のような輝きを放つ女の生き様を描いた超大作。
流石のおもしろさ。世界史とリンクさせ、過去を描きながらも、現代を生きる「私」へのエールでいっぱいだった。
黙って従うことを美徳とする狂気や醜さ、したたかにしなやかに生きていくことの煌めきは、登場人物一人ひとりの行動で理窟抜きに示されていく。
血の繋がりなんかじゃない、信念の共感や共鳴の繋がりを自分自身の芯のひとつとすることもできるんだなと思うと、心が支えられる。
「ほら、あなたも、真珠王の娘のひとりだよ。そうなりたいと行動するなら」と言ってもらったように思う。
文字の連なりが、言葉になって、言葉が映像になって、まっすぐ心に届いてくるような、そんな小説だった。