みんなを嫌いマン
献鹿狸太朗
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刊行日 2024/10/15 | 掲載終了日 2024/10/25
ハッシュタグ:#みんなを嫌いマン #NetGalleyJP
内容紹介
泣くな、闘え、人類のために。
救いのない存在を救え。
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自画自賛と自己憐憫と承認欲求の渦巻くこの世界で、ヒーローは闘う。 なぜ? なんのために?
ある日突然80億人を救うスーパーパワーを手に入れた上原至は、“みんなを守るマン”として今日も人類の平和を脅かす地球外生命体と闘う。致命傷と思える攻撃を受けても完治し、どんな敵をも薙ぎ倒し、どこにでもワープできる彼は生きる伝説となっている。闘うことを強要され、弱音を吐くことを禁じられ、助けられなかった命に想いを馳せる全人類の奉仕者は、全人類の奴隷であった。彼はいつまで皆を救えばよいのか。彼に救いはあるのか――。
▼担当編集者より
2023年、大学院在学中に『赤泥棒』で颯爽と一般文芸にデビューした献鹿狸太朗が、その才能を抑えきれず、早くも3作目を上梓。『赤泥棒』は4刷り、2作目の『地ごく』も3刷りと快進撃を続けており、今作もこれまで以上に魅力的な「エグさ」が詰まっています!
これまで装丁もアートとなっていた献鹿作品ですが、今作では盟友・三ヶ嶋犬太朗氏のイラストを起用しています。
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著者/献鹿狸太朗(けんしか・まみたろう)
1999年生まれ。慶応義塾大学大学院卒。16歳の時、月刊少年マガジンRにて三ヶ嶋犬太朗名義の『夜のヒーロー』で漫画家デビュー。高校卒業後すぐにヤングマガジンサードにて『踊るリスポーン』連載開始。第59回文藝賞(河出書房新社)で「青辛く笑えよ」が最終候補となる。初の短編集である『赤泥棒』が発売後即重版となった。他の著書に『地ごく』がある。
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★★★
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★★
出版情報
ISBN | 9784065371756 |
本体価格 | ¥1,650 (JPY) |
ページ数 | 160 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
ヒーローものの番組を観ていて、ヒーローが正義のために街を壊す場面に一度でも違和感を持ったことがある人にぜひ読んでほしい圧倒的怪作。人々の期待のために「正義」を演じるみんなを守るマンの葛藤がとにかく刺激的で、今までに読んだことのない小説を体感しました。全身が痺れるような文章も魅力的で、同じ著者の作品がもっと読んでみたくなりました。
うーん、おもしろかった!
世の中には色々なことを考える人がいるものだ。
そもそもタイトルが頭おかしくていい。装丁も普通ではない。
そして何より、中身が普通ではない。たしかに面白く読み終えた。でも、いい作品なのかよくない作品なのか、判断できない。だからいい。
なぜか全人類を救う能力を授かってしまった主人公、地球外生命体が現れると戦わなければならない運命となってしまう。
ある人が言っていた「人生はゼロサムだ」つまりスーパー能力のある人には、それなりの義務が生じるということだ。
テレビの世界にもたまにそんな異才の人が現れる。文壇にも変異の突現が起きたということなのだろう。
これからどんな義務を果たしていくのか、ちょっと楽しみ。
地球外生物から皆を守る超人「みんなを助けるマン」至。歯に衣を着せず綴られる、彼や人々の心情。更にそれを、息苦しいまでに赤裸々に1枚1枚剥ぎ取っていく。
最後に残った、能力だけ超人のヒーロー至の真情はいかなるものなのか?
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『地ごく』の作者の新作なので迷わずリクエストした。
そして、その内臓感覚的な書き出しから圧倒された。そして超人たる英雄「みんなを助けるマン」、大学生の至だけが知る、己は博愛を強制され人権を無視される全人類の奴隷だと言う「現実」に、底知れぬ寒気を感じた。
突き放すように、歯に衣を着せずに語られていく至や人々の心情。読んでいて呼吸困難を起こしかねないほどの息苦しさ。生まれてきて欲しくないと心底嫌っている80億人の期待が、至を苦しませながら彼を支えているとは。ヒーローとは孤独なもの、そんな浅い見方では全く足りなかった。そんな内面を抱えるのが、ヒーローなのだと肌で感じる思いだった。
そんな、今にも崩れていきそうな至に寄り添えるのは、歳離れた小学生の弟、辿だけ。
大衆が、地球人が、「みんなを助けるマン」としっかり向かい合おうとした時、至にとって最も怖いのは、自分を支えてきた地球人の視線となっていた。でもそこで彼は自覚する。みずからの心に宿る超人的愛を。しかしそれさえ元々持っていたものですらなかったとは。結局、至の行動原理は赤子が笑っていれば安心するレベルの動物的本能からくる自己満足。赤裸々になった至の心の一番奥底。そこまで容赦なく掘り下げていった作者に、自分の心が拒絶反応を起こしかけるほどだった。
そこまで至ってのコペルニクス展開。独善的な幸福でも、後で必ず襲ってくる後悔があっても、悲劇の中、彼は地球人を助け続ける。地球人もまた、「みんなを助けるマン」を見損ない続けながら、彼を信仰していく。生きるためのなんという最低な持たれ合い。でも、それしかありえない関係性。言葉は無駄、些細な失敗は必然。ならば、自己満足する行動をひたすら取り続けていく。それが、能力は超人、心は普通の至がやっとたどり着いた「正攻法」。
至がここに至る、いや、至らせるために、ここまで心にメスを刺し入れ、1枚1枚心を剥いでいく必要があったのか。このため、だったのか。
そして、ずっと寄り添い見守ってきた「存在」に赦される至。これができるのは、彼しかいないのだから、と。辿はそのためだけに、ずっと存在してきたのか。
だから至は自らを受け入れる。「みんなを嫌いマン」だからこそ、「みんなを助けるマン」でいられる、と。
「地ごく」以上に胸が苦しくなる、でも最後には理解困難な、すなわち心で分かるしかないカタルシスをもたらす小説だった。
敵は地球外生命体か、はたまた善良であるはずの人間か。正義の味方を求める人々に「反吐が出る」と口にしたならば、きっと眉を顰められるだろう。
正義の味方であることを課せられた、青年の悲鳴に切り裂かれる。
初めて、ヒーローに「逃げろ」と叫びたくなった。
『地ごく』はなんとも言えない後味があり、新作はどんな作品なのかとリクエストしました。
こんなヒーローものは今までなかった!!と思うほどの面白さでした。
ヒーローといえば敵をなぎ倒し喝采を浴びる、そんなイメージなのに、もしも隣にいる人がヒーローだったらどうでしょう。そしてヒーローが倒した敵のこと考えたことはあったでしょうか。
敵が現れヒーローが登場したら安全圏から見て楽しんだり、知ったかぶりをしたくなりませんか?敵が現れたら“みんなを守るマン”を応援したくなります。そんな思いを抱くのは私もただの傍観者の一人にすぎないからなのでしょう。そんな心の内まで透かされたように描かれていて、気持ちを抉られ胸が締め付けられるようでした。
途中から苦しくなり、“みんなを守るマン”よ、そんな思いをするまで戦わなくていいよ...と言いたくなりました。
今までにない新しいヒーローの物語をぜひおすすめしたいです。
1行目から強烈過ぎる。何でこんな文章が思いつくのだろう。
前作、前々作も拝読しましたが、人の感情をこれでもかと煮詰めたような濃密な心理描写に圧倒されました。独特の比喩表現も癖になります。
自分の身に置き換えたら、絶対にヒーローなんて引き受けたくないと思ってしまいました。
スーパービームで地球外生命体を倒す、みんなを守るマン(通称・みん守)。
傷を負っても自動で治るので、決して死なない。
よく見える目とよく聞こえる耳を持ち、周囲の人々の様子も分かってしまう。
英雄には人権がない。
英雄は逃げることも許されない。
ぼろぼろになりながら、今日も戦う。
彼の秘密を知り、なぐさめてくれるのは弟だけ―。
「みんなを守るマンはみんなが嫌いだった。こんなに情熱的に嫌えるのは、信じられないくらいの愛があるからだ」
ある日スーパーパワーを手にして人類を守るため地球外生命体と闘うこととなった上原至。
みんなからの声援や感謝を受け取って、いつの間にか愛情を抱える怪物となってしまった彼が行き着く先とは。
なんて人は自己中心的で卑しくて醜いんだろう……。人間の汚さを見せつけられました。無知も過剰な興味も吐き気がしそう。でも愛されたい気持ちもわかってしまう。距離の取り方が難しい。自分以外は全て敵だと思って生きている人、そんな人たちの心の中のみんなを守るマンに読んでほしい。
献鹿狸太郎らしさ全開。タイトルからしてもうらしいが、話がまた。『マン』ってなんだろうと思ったら本当にそういうヒーローの『マン』なんだけど、当然普通のヒーローではなく。タイトルは自分の気持ちなのか、どうなのか。めちゃくちゃ人が好きな人なのか、本っ当に人が大嫌いな人なのか、関わりたく無いから遠巻きに眺めてるだけな人なのか。たまに読むととても刺激がある作風。
こんなにも正義の味方、みんなのヒーローという存在が可哀想と思う日が来るなんて思わなかった。
でも言われてみれば確かに、「ヒーロー」なんて世間が押し付けている幻想で、一般人が二足のわらじでやる仕事ではないよな…と思う。
なんの相談もなく、無償で、命懸けで、大勢の人の命を守る使命を与えられるなんて、私なら耐えられない。
この本を読んでしまったら、ヒーローものを普通の目で見られなくなってしまうなぁ。
衝撃的な一作でした…。
謎のパワーを手に入れた平々凡々な大学生・至が、「みんなを守るマン」として地球外生命体と日々闘う。なぜ、特別な力があると問答無用で闘わないといけないのか?卑しい人間が作り上げてきたヒーローの概念を根底から覆す、正しさだけではない正義が炸裂する異色の物語。
普通に考えればわかる事だよね?と自分の胸に手を当てたくなるような、極々当たり前の事実に今日まで思い至らなかった事に絶望した。
守りたい人がもし不死身だったら、ヒーローはその他の地球人を敢えて守る必要はないと思うのかもしれない。勝手に押し付けて、見返りはなしで、寧ろ助けてもらった後も「ヒーロー然」とした言葉や振る舞いを求める。誰がそんなヤツ等を守りたいと思うのか。ヒーローの悲痛な心の叫びに、浅はかな自分自身を顧みるキッカケとなる作品。
色んなものを天秤にかけ、自分を追い詰める。未だ嘗て見た事のないヒーロー像と、覚束ない心裡の表現がとても美しかった。
「愛の大嘘吐き」
愛に限らず大嘘吐きだらけの世界への、献鹿狸太朗からの果し状。
気にしつつ初めて読んだ作家さんでしたが、爆発力すごいです。
森見登美彦さんを思わせる勢いのある(かつ、ひねくれている)文体。
単純なようでいて、意外と複雑。
滑稽でいて、悲惨。
荒唐無稽なのに、リアル。
そして、「弟」の描写に心底ぞっとする。
最初の一文から最後の一文までピタッと決めてくれて満足です。
お客様に聞かれた時、名前が読めなかった人。それだけに気になってリクエストしました。面白い!設定と文章のリズム。言葉がするすると流れ込む。至の孤独と一抹の滑稽さ。辿のあどけなさと若干の不気味さ。作者はマンガも描いているとのこと。作品も作者も気になって仕方がない。
ヒーローとは、強くて優しくて最強の勇者。弱いものを守って当然だし、最後は必ず勝利する。でもこの作品は、そんなある種の偏見を打ち破ってくれた。ヒーローであることの苦しみや葛藤、弱くて柔らかいところが堪らなく心に刺さる。とてつもなく惹き込まれた。
ある日突然スーパーパワーを手に入れた上原至。否応なしに正義の味方であることを課せられた、青年の心の叫び。スーパーヒーローの孤独、苦悩、悲哀、葛藤、諦念をあぶり出し、自分本位な現代の日本の世情をシニカルに斬る。鋭い洞察力を余すところなくアウトプットするに十分な圧倒的語彙力と的確な言語化能力。解像度が高いとはまさにこのことか、と。ぜひほかの作品も読んでみたい。