音のない理髪店
一色さゆり
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刊行日 2024/10/21 | 掲載終了日 2024/10/21
ハッシュタグ:#音のない理髪店 #NetGalleyJP
内容紹介
「私の祖父は“日本で最初の、ろう理容師”です」
──時を超えて思いがつながっていく、実話に基づく物語!
音のない世界でも、きっとメッセージは届くから――。
ろう理容師を祖父に持つ若手作家。その半生を描こうとする姿が胸に迫る傑作小説!
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【あらすじ】
日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した第一号であり、自分の店を持った最初の人。そんな祖父を持つ五森つばめは、3年前に恋愛小説系の文学賞を受賞してデビューした。だが、その後自分の目標を見失い、2作目が書けないでいた。そんな折、デビューしたところとは違う出版社の編集者から声を掛けられ、祖父の話を書くことを強く勧められる……。
ろうの祖父母と、コーダの父と伯母、そしてコーダの娘の自分、さらには聾学校の先生まで。三代にわたる希望をつなぐ取材が始まった。
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著者/一色さゆり(いっしき・さゆり)
1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『ピカソになれない私たち』『カンヴァスの恋人たち』など。近著に『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』などがある。
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★★★
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★★
出版情報
ISBN | 9784065373255 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
ページ数 | 304 |
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心にしみる、ステキな小説でした。中学生にもぜひ読んでほしいです。また、人生を閉じる日が近づいてきた年代の私としては同年代にも読んでもらいたいと思いました。障害を持ちながら生きる人たちを題材にするにあたって、そうでない人間がどう向き合うのか。その思いを昇華していく道筋は、それはそれで色々な意見があることと思います。社会や私たちがいつも真剣に向き合い、考え続けることが結局は最適解なのだという、文字にすれば月並みな感想ですが、私自身が得たものは月並みではないと思いました。
一色さゆりさんの作品が好きで、身近にろう者やコーダの方もいるので読みました。
作品の中でも書かれていて主人公のつばめ自身が逡巡しているけれど、当事者ではないものが書く時ということの難しさがあると思います。
一色さんはだからこそ、"わからない"立場のつばめを主人公にし、1から一緒に歴史を学び、悩み考え答えを出していったのだと思いますが、そうした一色さんの誠実な姿勢が改めて好きだと思いました。
耳が聞こえない方の、苦労とか悲しみとか人生のハードルの高さとか、それこそ周りが作り上げるハンデというのが、こんな深いものだと気づかずにいました。耳が聞こえる自分には、わからなかった時代と世界。どんな人でも髪の毛は伸びるものだから、髪切りという職業は一度手に職をつければ、案外やっていけるのかなと思ってはいましたが、実際は耳の聞こえる人でも続けていくには大変な仕事だと思います。周りの人と違うということは、それだけ悲しいことで、特にこの国では人と違うことは、思いもかけない差別を受けることなのだと実感しました。それでも人は負けないで生きていけるのは、この世界に挑んでいけるのは、家族の絆と周りの人々とのつながりなのだということも教えられました。このあいだテレビでやっていたドラマで、初めて耳が聞こえないということは、こういうことなのだと少しだけ気持ちがわかったような気もしましたが、やはりまだまだです。私の伯母は、生まれつきの知的障害者でした。一緒には住んではいませんでしたが、心のどこかではたまにしか会わない伯母を恥ずかしいと思っていた若い頃の自分がいました。また、学生の頃は手話を学びに行き、ほんの少しだけいい人のふりをしている自分、優位に立とうとしている自分に酔っていた時もあります。でも、当事者の本当の叫びというか、家族の痛みはこんなものじゃない。そんなことも考えました。それに優しく接するだけでなく、一緒に生きていくこと、少しだけ生きていく道を切り開いてあげることの大切さも学ばせてもらえたような気がします。伴走しながら、お互い思いやりながらも、共に生きていく社会を作れたらいいなと思います。そんなことを教えてくれた物語でした。
「聞こえない世界と聞こえる世界、つい分けて考えがちだけど、本来境界線はない」
徳島に設立された日本初の理髪科の一期生で自分の店を持ったはじめてのろう者を祖父にもつ小説家の私は祖父の人生を小説にするため家族の歴史をひもとく旅に出る。
それはまたマイノリティと障害をめぐるマジョリティによる加害の歴史を辿る旅でもあった。
たくさんの人に読んでもらいたい一作。
ろう理容師を祖父に持つ、若手作家の五森つばめは3年前に作家デビューをしたが2作目が書けずにいた。
そんなとき“日本で最初の、ろう理容師”である祖父のことを書くことを編集者から勧められる。
家族三代の物語は、それぞれの思いが時にすれ違ったりしながらも、気持ちを伝えることで繋がる感動の物語でした。
身内にろう者がいるので、昭和から現代に至るまでのろう者の学ぶ環境のこと、自立し仕事していくことについてとても考えさせられました。
言語として手話はマイノリティであり、私も簡単な五十音くらいしか理解できません。
ろう者の身内とはメールなどの文字ツールを使えば話が通じますが、実際会った時に一対一ではコミュニケーションが上手く取れず、他の家族を通したり伝わらずにお互いに諦めてしまうこともあります。でも読みながら、それじゃダメなんだ、伝えることを諦めちゃダメなんだと声としてではなく、心に直接語りかけられたような気持ちになりました。
私も諦めずにコミュニケーションをとれるように、もっと学びたいと思います。
強い信念を持ち行動する祖父の姿や言葉に何度涙したか分かりません。
コーダとして複雑な思いを抱え生きている父や叔母の切ない思いや、つばめが調べていくうちに明かされていくことには心が震えました。
ろう者が身近にいなくても、誰もが心動かされる物語だと思います。
幅広い世代にぜひ読んでほしいです。
コーダ(聴こえない親を持つ聴こえる子ども)や、ろう、中途失聴者を主人公にした話は、これまで他に読んだことがあったが、コーダの子どもの視点から描かれた作品は初めてで、極めて興味深く読んだ。
小説家としてデビューして次の作品が出せぬまま三年たって、第二作として祖父の物語を書こうとする、五森つばめ。ろう者の祖父母のハンディを負った苦悩を、安易に小説にして切り売りしたくない、というつばめの述懐に、この小説を貫く誠実な芯を感じ、折々に感動しつつ読み進んだ。
日本で最初にろう学校の理髪科を卒業し理髪店を自営で開いた祖父、ろう学校の後輩で阿波おどりを踊るのが好きだった祖母、しっかり者の父の姉、コーダとして悩む少年時代を物語序盤で語る父。
「伝えたいことがあっても伝わらんのは、聴覚の有無に関わらん」
と語る父に、私は今までいだいていた「聴覚障害はコミュニケーションに障害をおぼえる」と単純化する誤った認識に気づかされた。
そして、後半、意外な展開が続き、一気呵成に読んだ。思いもよらなかったことが伏線になっていて、わくわくした。
祖父は理髪店を営むろう者であった。
父はろう者を両親に持つコーダであった。
そして小説家「五森つばめ」は2作目の執筆に踏み出せないでいた。
家族との関係を見つめ直すことで自身の家族の話をテーマに書くことに。
取材を続けるうちに何故自分がこれを書くのかに戸惑いを見せつつ
答えを見つけようともがく。
少しずつ分かる家族のこと、父、祖父、祖母、叔母。
この国の障がい者が置かれてきた歴史や差別の実情を知ることのできる1冊である。
感動のラストまで手が止まらない。
読んでよかった。心からそう思います。
昭和初期、障害への理解のない時代にろう理容師になることはどんなに大変か。
そして結婚して子供を産んでという普通とされることがいかに難しいのか。
自分の想像の上をいく困難と苦労に涙してしまいました。
老若男女問わず読んで欲しい作品です。
聞こえる者と聞こえない者の間に架け橋を。
そんな願いが込められた渾身の一作です。
主人公は崖っぷちの新人作家。
進むべき道に迷う彼女が
ろう者だった祖父の
特異な歩みを辿るなかで
衝撃の事実に行きあたります。
ろう者に育てられた父の
綺麗ごとを抜きにした葛藤、
周囲の反対あっても自分で子育てを
することへの祖母の罪悪感など、
私には全てが未知の領域でした。
日本手話と日本語対応手話は
文法からして別物だとか、
東京と大阪で水をあらわす
仕草が異なるという話にも
驚かされました。
聴覚がないことで身に迫る危機、
やまない差別や偏見、歪んだ制度など
困難の種が多すぎるという事実が
次から次へと掘り起こされます。
一方で、光明もありました。
手に職をつけさせたい、誇りを
持てるようにさせたいという想いから
各地のろう学校に広がった
理髪科の導入への道のり。
たとえ困難でもあきらめない人々の熱。
現代の若者のなかに息づくサポートの芽。
そして迷える主人公が至る確固たる境地。
そういったとびきりの力をくれる
心の輝きもこの作品の魅力ですね。
ろう者とその家族の生きづらさを、
本音で語りかける本作からは
丹念に取材を重ねた著者の
真剣さが存分に感じられました。
ろう者に限らず
他人を思いやることの大切さが
活字を通して身体に沁みわたる逸品。
これほど学びになる作品は
他に類を見ないと思います。
(対象年齢は13歳以上かな?)
深いお話でかなりの取材をして書かれているのだろうと感じました。
あんな過去があったことも、隔たりなく生きて行く難しさも、色々と考えさせられました。
つばめという名前に隠された思いにも心を揺さぶられました。
朝ドラ半年分を一気見したかのような充足感と感慨に満たされている。
「日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した一期生。自分の店をもった最初の人」
この1行に秘められた時間、
出版社解説には、実話に基づくとあるが事実を物語として読ませるに重ねた時間、
小・中・高校生の道徳の時間のすべてが網羅されているような本だった。
成長録とか逆境とかピンチという言葉が陳腐に思えてしまうほど屈強な本だった。
家族の愛情が選択を迷わせ
教育者のべき論が”決まり”を優先する
理髪店主は、「どこの店もろうあなんか雇わないだろうし客なんて気やしませんよ」と決めつけた。
そんな中「やらずに諦めるのは嫌です」と言い放った。そして
「どんなことがあっても、なぜ助けなかったんだろうという後悔だけはしたくない」
と意思を継ぐひとがいた。
ろう者と言えば、筆談すればいいんだろうと想っていませんか
どうせ伝わらないだろうと諦める癖はありませんか
つねに、聞こえないけど、聞こえないから、という枕詞がつきまとったひといませんか
「信じる」という手話をご存じだろうか。
私は<信じる>という単語が、これほど切実さを伴う動作だとは知らなかった。
二冊目が書けずにくすぶっている作家五森つばめは、日本で初めて自分の店を持ったろう者の祖父、正一の物語を書こうと決める。
しかし、正一はつばめが生まれる前に事故で亡くなっていて会ったこともないし、周りにろう者もいない。
そんな自分がろう者について書いてもいいのだろうか。
迷いながらも取材を続けていくうちに、つばめは、正一と自分との間に、つながりのようなものを感じていく。
正一本人、正一に関わった人々、その人たちの活動により広がっていく波紋が、自然に描かれていた。
ろう者であるとか、健常者とか、そういったことは関係なく、人々の生き様、つながり、人が人を思う気持ちに心を揺さぶられた。
今年、わたしが読んだ物語の中で、三本の指に入る傑作だと思う。
コーダの方視点から描いた作品はたくさんある。
それでもこの小説に対しては『必要』だと思う。
それだけ、視える人からの視点でもあり、
いつまでも理解はできないものかなと思っていました。
でも寄り添うことはできるのかなと。
「見える人」と「見えない人」の間には途方もない壁があって「見える人」はその壁を越えようと試みるんだけど、
「見えない人」にとっては壁を越えているというよりは、
「見える人」によって作り替えられたり、壊されたり、
違うものに見えているように思います。
その違いがいつかなくなりますように。
そう願うばかりです。
若手女性作家が、小説を書くために、自身の祖父とその家族の歴史を紐解き、取材を重ねていく過程を追ったお話。
印象的なのは、主人公のつばめが「これは私が書いて良いものなのか」と度々悩むところ。
「小説とは、身を削って書くものである」というのは耳にしたことがあるが、つばめの心境の移り変わりを読むにつけ、とんでもない覚悟がいることなのだと感じた。
特に今回の題材は、自分の家族の歴史を公にすることに繋がる。また、慎重に書かなければ、聾者本人やその家族、関係者たちの気持ちを傷つける可能性もある。
それでも「私が書くべきことがある」と覚悟を持って執筆にあたったつばめの信念が、「後世につなぐべきことがある」という覚悟を持っていた祖父の気持ちと通じ合った瞬間、鳥肌がたった。
たった一人の聾者の理髪師が、逆境の中でも真面目に取り組んできたことが、何世代にも渡ってつながっていく。
短い人生の中でも、残せるものはある。
そして、それはたった一人で成し遂げられることではなく、周りの人の色んなサポートのもと、つなげられるものだということ。
自分が今やっていることの意味を見失ってしまった時に読み返したい、勇気をもらえるお話だった。
デビュー後から燻っていた若手作家が、日本初のろう理容師である亡き祖父の半生を描こうと取材を重ねる。その中で、多くの理不尽とそれを超える確かな絆を知っていく、実話に基づく希望に満ちた物語。
聾者やコーダの視点でなく、コーダの子供の聴者を主人公にする事で、より気付きにくい“溝”が見えてくる設定が新しくて好い。聴こえない事への不自由さ、届かない事への憤り、伝える事への諦め、三世代にわたりコミュニケーションに影響を与えたのは、果たして「聴覚」の問題だけだったのか?聴こえない事がプラスになる事はないのかもしれないが、聴こえる事だけではプラスになるとも限らない、と感じさせられたうどん屋のシーンがとても印象的。生活の貧しさはすぐには解決されないが、心くらいはいつも豊かにいよう、という直向きな姿勢に心動かされた。
聴覚に関係なく、人の考えなんてものはそう簡単には伝わらない。相手を知り、自分を知ってもらう、途方もない道のりに時代のうねりまで伸し掛かる。読んでいるだけで心が折れる、恐ろしい差別の歴史ともしっかり向き合った、ありのままの世界を知る事が出来た。
「個人の尊重」について深く考えさせられる作品。
聾学校理髪科を卒業して理容師として生きた亡き祖父の事を書こうと取材を始める小説家のつばめは、疎遠になっていた父親や親族に会いに行く。障害者を差別する時代、聾者とその子供であるコーダの生き辛さと苦悩に胸が痛くなる。聴こえる者と聴こえない者の溝を埋めることはできないのかもしれないけれど、せめてその溝の存在を知る事、意識して行動する事でその溝が少しでも浅くなればと思う。世の中が障害のある人たちにとって少しずつでも生きやすい世の中になって欲しい。自分にも何かできることがあるのか考えてみようと思う。理不尽な事にも耐えて頭を下げていても、心まで卑下してはいない祖父の強さに心打たれました。とても良かったです。
これまでに、盲学校での職業指導については読んで知ったり聞いたりしたことがありましたが、
聾学校でも聾の人だからこその困難を乗り越えての職業訓練があったことをこの本を通して初めて知りました。
見えないことに比べると聞こえないことは不利にならないとでも思っていたのかと、
我が身を振り返るとなんだか自分の視野の狭さに(見えて聞こえているにもかかわらず!)愕然とします。
物語の運びとしてはうまくいきすぎだと思えるきらいもありますが、
主人公の目線から描くからこそ身近に感じられる「聾」と「コーダ」の姿があり、
家族のことだからこそ歴史も含めて振り返る必然性を感じさせられるので、
燻ぶる主人公の姿は、見えて聞こえるのが当然と思って暮らす人との橋渡しだったのかなと思います。
優しい、読後感の温かいお話でした。
デフ、コーダという言葉を知ったのは丸山正樹さんの「デフ・ヴォイス」でした。
ミステリーを書かれることが多い一色さゆりさんが、何故このテーマで書かれたのか最初は不思議に感じました。
2作目が書けずにいた若手作家が昔から心に引っかかっていた祖父母の過去を探っていく物語。
タイトル「音のない理髪店」は聾唖だった祖父母が営んでいた理髪店のこと。
家族だから目を背けてしまったり、大好きなのに退けてしまったり、主人公と家族の関わりから始まり、かつての
祖父母が障害がどれほど壁になっていたか、その窮状の中で祖父はどうしてここまで前向きに頑張ることができたのか、次に続くものへ皆が前を向いて進む様が胸を打ちます。
優生保護法が聾唖者にも適応されていたなど、今の若い方には信じられないような事実が描かれている点もよかったです。
お仕事物語かと思って読みはじめたけど、ヒューマンドラマ溢れる素敵な物語でした。耳が聞こえない人の理髪店の苦労や家族の系譜が折々に混ぜ込まれていて、とても考えさせられました。この作品のスピンアウトとして、時代を遡った別の物語も読んでみたいです。恥m手読む作者さんでしたが、これからも注目していきたいと思います。
日本で最初のろう理容師だったとされるつばめの祖父・正一。聾者にとって今よりもはるかに偏見も多く、厳しかった時代になぜ信念を持って生きることができたのか。疎遠になっていた父や伯母、そしてどこか苦手意識を抱いていた祖母に再会して向き合い、つばめの祖父に関する取材を進める中で、音のない世界を知り、過酷な環境を生きたことを祖父と周囲の人々の姿が浮き彫りになっていきましたが、取材した人々が抱えてきた秘密にもひとつひとつ解きほぐすようにしっかりと向き合って、三代にわたる希望を繋いでゆく姿がとても印象的な物語でした。この一冊を読むことができて本当に良かったです。
耳が聞こえない世界とはどのようなものか。
今も昔も、差別というものは場所を選ばずにあり続けているし、社会からなくなることはないと思う。
しかし、そんな世界でも誰もが夢や希望を持つことは許されていい。
それは信念と言い換えることができるかもしれない。
苦しい時代背景の中、音が聞こえない人たちが懸命に自分らしさを探し出した奇跡をたどる物語。
テーマ的にどうしても重くなってしまうため、読了感がいいとは言えないが、多様性と事あるごとに叫ばれる昨今、
相手の立場を考え、想像するためのひとつのツールとして、とても参考になる一冊であった。
新作が書けずに悩んでいる女性作家が、自身の家族、日本で初めてろうで理容師になった祖父の物語を元に作品を仕上げていくという成長譚。
言葉の使いも優しくみずみずしく、物語も繊細。
実際に作者の祖父は日本初のろう美容師だったようで、そこにファミリヒストリー的なスタートはあるものの、それをきっちりとフィクションに仕立て上げてているのがいい。
ろう者が生きていくことが厳しかった時代に、きちんと手に技術をつけて自立して生きていこうとしたろう者、なかなか周囲には理解されず苦しむ様子を、書けずに悩む現代の若手作家とカットバックしながら描いていく手法も見事で、物語に引き込まれる。
確か作者がこのミスで受賞した作品は美術に関係するミステリだった。大学、大学院とアートを学んだ素養を生かした作品だった。
それとは全く違うフィールドとテイストの作品だが、確かに感動させてくれる説得力のある一冊で楽しめた。
デビュー作以来、2冊目を描けない作家が聴覚障害を持ちながら理髪店を営んでいた祖父について描こうと、家族の歴史と自分の心を見つめる物語。本当に読んで良かったと心から思った。聾者が想像を絶する様な差別を受けていた過去を知らずにいた。聴こえる側と聴こえない側の溝は長い時を掛けて簡単には越えられない程深く大きくなってきたのだと思うと、人間とは、社会とはなんて残酷なんだろうと感じる。障害=不幸、可哀想という勝手な思い込みを私もしていたと思う。幸せかどうかはその人自身が決めるものなのに。ぜひ沢山の人に読んで欲しい。
日本で第一号の「ろう理容師」を祖父に持ち、2作目が書けずにいる小説家の五森つばめ。祖父の事を、ろう者が生きて来た道、受けて来た教育、身内や他人からの視線など彼らがどのように生き、旧優生保護法の中で命を繋ぎ今の自分が存在しているのかを書くことにした。青馬との出会いは偶然か、必然か。喜光子さんが墓場まで持って行こうとしている事とは?!
自分を含め、困らない日常生活を送れる障害を持たない人は、いかに自分が「普通」である事に気づいていない事を考えさせられ、「なにかの運命が違っていれば、本来つづくはずだった命のつながりが途切れる」事実を知った。
全てを読んだうえでの徳島の阿波踊りの場面はキラキラしている。途中、何度もウルウル。ミステリではない一色作品。
参考資料の数に圧倒されました。
念入りな下調べや関係者への聞き取りに支えられた良作に出会えたことを感謝しています。
きれい事ではないリアリティを感じました。
特に、「視覚障害は、“人と物”のあいだを隔てる障害で、聴覚障害は“人と人”のあいだを隔てる障害なんです」にはおおいに反省させられました。実際に経験したことがあるので。(家庭訪問のときに、耳が聞こえない母親と直接話さず、母親の補助をしてくれていた祖母と会話してしまい、次の日に自分の子どものことなので私と話してほしかったとお手紙をいただきました)
理解しているつもりでいてはいけない、上辺だけ取り繕うのはもっとよくない!