サリエリはクラスメイトを二度殺す

卒業演奏会で起きた殺人事件。その4年後
、同じ場所でまた人が死んだ。次に殺されたのは誰？犯人は誰？何故殺してしまったの？二つの事件はどうつながるの？浮かんでくる様々な疑問の答えを早く知りたくて一気に読んでしまった。
今は誰でも自分の考えを不特定多数の人に簡単に伝えることができてしまう。
自分が発した言葉の重さに、人は後になってから気づく。言った言葉を取り消すことはできない。その事を忘れないようにしたいと思った。

自分が経験してきたから事件の事がわかる部分があるのかもしれない。気持ちがわかることがあるのかもしれない。
そしてまた自分間違っていたのかどうかわかるのかもしれない。そんな複雑な気持ちを持って石神は事件の真相を調べていたのかもしれない
と感じました。
人はどうしても身近にいる人と比べてしまうことが少なくないと改めて感じ、その受け止め方は人それぞれで今回の物語は
マイナス的な方向に動いてしまった。
言葉一つでもちょっとしたきっかけで大きな事件を招いてしまう。
口から発せられた言葉は決して思っているほど弱いものではないと感じました。
もしあの時、違う行動をしていれば、違う言葉を掛けていたら、違う結果になっていたかもしれない、でも戻ることはできない中で
現実を、今を受け止めなければいけない、そんな気がしました。

ミステリーだけれど、登場人物たちが弾く楽曲の描写や、彼らの苦悩など、謎以外の部分でも読みごたえがありました。決して読後感はよくないけれど、考えさせられる結末でした。実はあの人が一番罪深いと作者は書きたかったのかな。最後、石神が手紙を差し出したのは、復讐の意味もあったのかも。あの人がそれを読むという選択をしたことも、すべてを知った後では尚更その罪深さが浮き彫りになるようでした。

ピアノを通じて高め合い、冗談を言っては笑い合い、高校時代の青春を共に過ごしたクラスメイトが引き起こした殺人事件。
悲しみと怒りと共に頭に浮かぶのは「なぜ」という疑問。彼を凶行に駆り立てた最後のきっかけは自分の言葉だったのではないか…。
美しい旋律に隠された嫉妬。才能と努力だけではどうにもならない理不尽さ。音楽の世界の厳しさを垣間見た気がした。