恋とか愛とかやさしさなら

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刊行日 2024/10/30 | 掲載終了日 2024/12/31

ハッシュタグ:#恋とか愛とかやさしさなら #NetGalleyJP


内容紹介

カメラマンの新夏は啓久と交際5年。プロポーズの翌日、啓久が通勤電車で女子高生を盗撮したことでふたりの関係は一変する。欲望と愛情のままならなさを描き、男と女のブラックボックスに迫る著者新境地となる長編。直木賞受賞第一作!

カメラマンの新夏は啓久と交際5年。プロポーズの翌日、啓久が通勤電車で女子高生を盗撮したことでふたりの関係は一変する。欲望と愛情のままならなさを描き、男と女のブラックボックスに迫る著者新境地となる長編。直木賞受賞第一作!


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784093867399
本体価格 ¥1,600 (JPY)
ページ数 288

閲覧オプション

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NetGalley会員レビュー

柔らかいタイトルの恋愛ものですが、一穂ミチさんの本、と良い意味で覚悟して取り掛かりました。後半の視点が変わるところは知りたかったような、知りたくなかったような。男性の感想が気になります。始終心のざわざわが消えず、ずっと私だったらどうする?私だったらなんて言う??と考え続けさせられる238ページでした。

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一穂ミチさんの作品は、いつももどかしく切ない。けれど愛おしさを覚えます。
自分の気持ちにとことん向き合って、逃げたくなるような事にも
立ち向かい、ぼろぼろになってもつらぬく。
この作品は今まで以上に人間の心理描写が細かく描かれていて、
なんどとなくうならせて貰いました。

今までのなかで一番好きな作品かも。

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私が言いたいことのほとんどを語ってくれる小説だった。
性犯罪加害者の家族は、自分の努力ではどうにもならない卑しさをべったりと貼りつけられる。ぬぐっても、粘っこくまとわりついて、逃れようとすればするほど、汚れる。その汚泥で窒息する。助けようとした子どもの傷に、その汚泥を刻み込む羽目になる。消せない入れ墨だ。
この主人公のように、せめてそのことに気づいて後悔でもするなら、少しは救われるかもしれないが、そんなことは、まずないのだ。反省してるという本人の弁は、認知の歪みのうえに成り立っているものでしかないから。
この本が、ひとりでも多くの人に読まれるといい。

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プロポーズされた翌日、恋人が盗撮の罪を犯す。
プロポーズした翌日、通勤電車で盗撮し捕まる。

恋人からの目線と、本人からの目線の2部構成。

魔が差したともいえる一瞬の出来事。家族、恋人、職場、大きな変化を巻き起こす。

加害者、被害者、当事者たちだけでなく、その周りにいる様々な人たちの日常も描き出し、様々な捉えかたを提示する。

信じるとは、許すとは、愛するとは。この物語は、正解を示しているのではなく、あなたならどうしますか?と問われているのだと感じた。

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カメラマンの新夏は交際5年の啓久にプロポーズされる。翌日啓久は盗撮で逮捕される。「二度としない」と誓う啓久だが、動機やその後の対応から許すのかやり直すのかと葛藤する新夏。”出来心”で犯した罪の重さは2人の人生を大きく変えていく。啓久の性犯罪に対する自覚のなさに苛立ち、おそらく痴漢や盗撮が無くならないのは「このくらいなら大丈夫」という思いがあるからではないか。被害者と啓久の奇妙な関係や、新夏の行動は意外性があり、一穂さんの癖のある恋愛小説を楽しんだ。

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一穂ミチさんは、はじめだ。直木賞は未読。ぜひ機会をみて読みたいと思う。
盗撮行為を通して、違う立場・視線の描き方がとても興味深い。
基本的には、決して行ってはいけない行為。それを踏まえた上で、人々の心理や感情は、人の業なのか?考えさせられた。痴漢行為や万引き行為など含めて考えた。今の世の中と深い結びついていることも含めて。

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読んでいてザラザラするような、痛みを感じる話。
細い鋭いもので神経を直接グリグリ触られるような痛み。
決して爽快な、とか心温まる、とかいう話ではない。
でも中毒のようにクセになって、途中ではやめられない。

目の前には一本の線が常に引かれていて
きっかけがあればすぐに越えてしまえる。
でも越えてしまったら、もう決して元には戻れない。
そんな現実を感じさせられます。
みんな取り繕って、うまく群れて生きているけど
本音はもっと残酷で冷めているのかも。
善良さも冷淡なところも、傷つけたりつけられたり
もがきなから生きている。
すべてが割り切れるわけではない
矛盾や曖昧さを抱えて生きている心の内面を
こんなにも迫るように描ける一穂ミチさんは
すごいです。

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この題名でこの内容!

カメラマンの新夏(ニカ)はプロポーズをされた翌日に、息子が盗撮で捕まったと恋人の母親から連絡をもらう。

示談で済んで前科がつかなければ許せるのか。
浮気は?風俗は?

これは男女を問わず意見が分かれるところ。
頭でわかっていても心が拒否してしまう、など本人でもわからないことかもしれません。

ニカの周囲の女性たちも男の人との付き合いの中で、さまざまな経験をしていて、傷だらけになって生み出した考えがあります。そのことに意見できる人などいませんよね。

性犯罪の被害者は圧倒的に女性が多いのですが、ニカは以下のようなことも考えます。

「悪い人」に傷つけられたりせずに生きていきたい。でも、現実には、「ただの人」が「悪いこと」をしている。真っ白はありえず誰もがグレーで、さまざまな理由やタイミングで黒に染まったりしている。

例えばネットにおける日誹謗中傷とか。気軽な、だけれど被害者にとってはダメージのある犯罪って世の中には溢れています。

後半はニカの恋人、啓久が主人公となって話が進んでいきます。

「自分がやったことと向き合う」という自分に科した刑について書かれていきます。

自分の家族にも話せない性癖が、罪につながるものだと苦しいのだろうと想像しました。

初めて思いました。色々な人のこの本の感想が知りたいです。

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プロポーズを受け入れた翌日、交際5年の彼が通勤電車で盗撮事件を起こす。幸せの絶頂から急降下するローラーコースターに乗せられた女の愛と打算、性加害者となった男の欲と内省。価値観が人を繋げ、そして引き離す、おぼつかない感情の行路を描いた物語。

許す事は必要だが、どの部分を許すのか。そして本当に許せるのか。被害者と加害者と恋人と家族と、この事件のどの部分に問題を感じているのか、そのズレがじりじりと全体に影響を及ぼし狂っていく。
人の感情はいつだってご都合主義で、その不快感がリアルな苦痛を伴い共感となっていく、繊細な心理を緻密に掬い取った作品。

あらゆる「瞬き」に追い詰められる現代社会を揶揄しているような、踏み込んだ描写がとても印象的だった。受け手がそれぞれどう感じるのか、発売後の反響も楽しみ。

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「恋、愛、やさしさ」は至高のもの。でも、1回の迂闊な過ちでそれを「信じる」ことができなくなることがある。その一方で、1回の真剣な怒りがそれを「信じる」きっかけにもなる。
弱くて脆く、強くてしなやか。それが人の心。

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『恋とか愛とかやさしさなら』
〈恋や愛や優しさ〉には相手との駆け引きがある。一方〈信じる〉ことはAll or Nothing。啓久のうかつな一回だけの行為で、新夏が5年の月日をかけて〈恋〉から〈愛〉へと育んできたものが揺らぐ。それを繋ぎ止めようとする彼女自身の〈情〉と、彼に抱いてしまった〈生理的な嫌悪〉の間で揺れ動きながらも、割り切れない〈想い〉。そんな新夏の様子が、読んでいて辛くてしかたがなかった。
そこに啓久の言い分〈コスパが悪い〉。読んでいて嫌悪感しか感じなかった本音。
『恋とか愛とかやさしさなら』超えられるわけではない、〈信じる〉かどうかの二者択一。その選択の苦しみは新夏の号泣が物語っていた。あまりにも切なくて涙ぐみながらも、実直な彼女の選択を受け入れるしかなかった。

『恋とか愛とかやさしさより』
新夏とは対局にある莉子の価値観に、暫し唖然とした。更に様々な価値観の持ち主が。
きっと涼音の歩む道はさらに険しくなる。でも、「信じる」ことができなくてもしっかりと「見届ける」のが、『恋とか愛とかやさしさより』強い。それを貫いて欲しい。証明して欲しい、と強く願う。
一方、莉子を本気で怒った啓久。それは新夏と長い時をかけて積み上げてきたものを、自ら壊した自覚があるからだと信じる。そこから「尊重されてる」と感じとった莉子がそれを胸に人生を歩んで欲しい、と切に願う。『恋とか愛とかやさしさより』自分を高めてさえいく、「尊重されているという自覚」を持ち続けて欲しい。
そして、そんな莉子が今度は啓久を怒りに来るのを待つのが、啓久の生きる道。『恋とか愛とかやさしさより』強く、自らの辛さを背負って歩んでいける道。それを自ら見つけた啓久に、一言、「初めて自分の2本の足で立ったんだ。だからそのまま、しっかりとな」と声をかけたいと思った。

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プロポーズの翌朝、婚約者が盗撮で捕まった。
 そんな衝撃的なあらすじに抱いた第一印象は、「異質な人物や非日常的な事件を通して描かれる、人間ドラマやサスペンス、イヤミスの類かな」だった。それなのに、読み進めるうちに込み上げてくる、ザワザワした感じ。「あれ?これって、『私達みんなの話』?」

 盗撮事件によるストーリー展開、登場人物達は一癖も二癖もあり、素直に共感を集めるタイプの物語ではなさそうなのに、確かに人間にはこういう部分があると思ったり、理屈も正論もへったくれもなくこんな心の動きをする事があると感じたりしてしまうのは、さすがは一穂ミチさんと唸らされた。複雑な心情をどん詰まりまで追い続けて描写する筆力に、グイグイと引きこまれてしまう。

 そして作中には、プロ、アマチュア、報道、スマホ、様々なカメラが登場し、それぞれがファインダー越しに世界を眺め、それぞれの思いをのせて(あるいは無意識に、無自覚に、軽率に)世界を写真として切り取っていく。それは、私たちが主観というフィルターを通してしか世界を見られない事に酷似しているのだ。
 状況設定こそ特異なものの、この作品は全ての人の「眼差し」についての物語なのだと思った。他者への眼差し。自分への眼差し。他者からの眼差し。他者からの眼差しによって影響を受けた自分の眼差し。多くの眼差しが重なり合い、溶け合い、反発し合い、人の視界を覆っていく。それはあまりに当たり前すぎて、日常生活の中では意識する事すらない。その眼差しが、いつ、どこで、どんな体験をして、どんな人の影響を受けて形作られていったのかさえ分からぬまま、私たちはそれらを通して世界と向き合い、日々を生きている。その眼差しが時に他者を、そして自分自身をも傷付けていることを、自覚する事もなく。この物語は、その事実を赤裸々に描き出している。
 カメラ越しに何を見るか。世界をどう切り取り、加工するか。被写体とどれほどの距離で、どう向き合うか。カメラマンとしての新夏の眼差しが、私たちに問いかけてくるように思えた。
 「あなたの眼差しに、世界はどう映りますか?」

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難しい。嗜好なのか偶然か突発か。それをどう判断する?疑いを向けられたとき、どう弁明する?今の世の中、情報が回るのは一瞬、自分の知らないところでいつまでも消えず燻り続けるものもあるだろう。そこにどう対峙していける?難しい。

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登場人物みんな共感できないのですが、それは私が当事者ではないからなのかも。こんな悩みや思いを抱えている人は周りにいるんだろうなと思わされた作品でした。それぞれが今後少しでも楽に暮らせますようにと願わずにいられません。

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そろそろの予感通りのプロポーズ
穏やかで幸せな家庭を築けそうな気持の通じる相手
そんな予感が、翌日の、相手の親からの電話で吹き飛んでしまう。
後に残されたのは、どうしても理解できない気持ち
なんでそんなこと
なんでこのタイミング
なんで幸いに、なんて言えるの
なんで、なんで、なんで
それでも好きだという気持ち
気持ち悪いという気持ち
相手の姉のヒステリックな対応も拍車をかけて…
登場人物が皆、病んでいたり傷を抱えていたり
「普通」の人っていないのかな
「普通」ってなんだろう
そんな気持ちにさせられる作品です。
でも、それぞれの気持ちはなんとなく「わかる」と思わせられる。
作者の筆力なのでしょうね。

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さすが一穂ミチさん、絶妙なところを突きつけてくる。交際5年で結婚話が持ち上がったまさにその時、彼が電車で女子高生のスカートの中を盗撮し逮捕されてしまう。ほんの出来心で初犯、性癖ではない、結婚はしたいと言う彼。さぁあなたならどうする?驚き、失望、嫌悪感、打算やまだ好きな気持ち…。身近な人たちの相反する反応と共に葛藤し揺れる主人公・新夏。「人を信じる」ということ、「罪を犯した」ということと、自分自身が向き合うとはどういうことか、様々な人間模様と内面を露わにし、我々に性根を問うて来る、抗えない一穂節に今回もやられた!凄い!

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最初は新夏と啓久が結婚するまでの紆余曲折の流れかと思ったらまさかの大どんでん返し。
恋人同士、親子、友人、それぞれの人間関係や人間の
奥底にある普段押し殺しているであろう本当の感情の
もどかしさが見事に描かれていて今迄とは違う一穂先生の一面が見えた作品に出会えました。

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息がつまる気がした。
こういうことを書いてしまうんだ、という驚きと畏怖のような気持ちで苦しかった。
人間の心の深いところに手をつっこみ、
あえて封をしているような黒いものを引きずりだして、
目の前に差し出してくる。
お前は絶対に罪を犯さないのか?
そんなに善人なのか?
許すとはどういうことなのか?
問いかけに答えられない。
ただただ息をつめて読み終えた。
安易なゴールはない。
一筋縄ではいかない自分をかかえて生きていくしかないのだ。
苦しいのに、小さな一歩をふみだす気力のかけらを受け取ったような気がした。

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これは男性に読んで欲しい!
なんなら通勤電車内のweb掲示板で連載して流して欲しいです。
いろんなことが辛すぎて涙が溢れてしまうけれど、これはスルーしてはいけない。
目を背けず、しっかりと咀嚼して考えなくてはいけないと思わせてくれる内容。
展開がどこへ進むのかわからず一気読みしました。

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なんかもう、さすがとしか言いようがない。
今までの作品も胸が切なくて、「好きだから苦しい」を存分に味わえたのだけど、今回はそれだけに納まらない苦しみと葛藤があった。
いつものことながら、物語の登場人物達がただの登場人物としてでなく、生身の人間で、熱を持って生きている。だから、苦しくても最後まで目が離せない。もう、彼らを知る前には戻れないのならば、どうか幸せにと祈るしかない。

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私は女性で毎日通勤で満員電車に乗っているから、盗撮や痴漢などはふざけんなよこのやろうと思っている。
自分の衝動を抑えられないなんて猿かよとすら思っていた。
でも「婚約した恋人が電車内で盗撮をした」ということになると、違う考えになるのだろうか。婚約者をポイっと捨てられたらスッキリして楽になるのか、それとも許して差し上げるのが将来の奥様の役目なのか。
私ならどうするだろう。
周りはギャイギャイうるさいのに、迷いつつ自分で一生懸命考える新夏が愛しく思えた。

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冒頭からがっちりと心を掴まれ、一瞬で惹き込まれて完全に魅せられた。
人を理解するとは?寄り添うとは?愛するとは?正解とは?
究極の状況下で、究極の選択を迫られた時の心理模様、人の表と裏、光と影を見事に表現していて、痺れた。登場人物達が自分の内面をさらけ出す描写が圧巻で、ズバズバ心に刺さる!!
一条の光が差した終わり方に、一穂ミチの底力、小説の力を強く感じた。

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芥川賞直木賞の記事を読んでいたら、覆面作家の話が出ていた。今回のノミネートのうち3人が顔出しNGの覆面作家だったという。直木賞の受賞者である一穂ミチさんもその一人だったが、受賞を機にマスク姿を解禁した。この匿名性、今どきである。承認欲求が肥大化している現代だからこそ、真っ当な精神の持ち主であれば個人情報を秘匿して匿名であることを選択する。一穂さんのマスク姿、個人的には好感爆上がりだ。
そしてこの新作も、ものすごく興味深かった。夕食の後ちょっとだけ読もうとしたところ、あまりに没頭して一気に最後まで読んでしまった。

ちょっと仕事で盗撮犯を扱うテレビ番組を観る機会があった。何人かの犯行の現場を取材しているのだが、そのいずれの人も出来心ではなく、常習の人だった。たいていの人にとって「盗撮」のどこがいいのかよくわからない。私は「パチンコ」も「タバコ」も「サウナ」もとりあえず試してみたが、どこがいいのかわからないが、なんとなく好きな人がいることは納得できる。しかし「盗撮」は試していないが、どこがいいのかわからない。好きな人のことも全く理解できない。
だが、人が理解できない喜びというのは往々にして奥が深いものだから、ハマれば沼にハマり込んでしまうのだろう。それだけは納得できる。

この小説は、カメラマンの女性がプロポーズされた翌日、その相手が盗撮で捕まってしまうというなかなかの書き出しから始まる。この盗撮というのが絶妙な設定だ。これが痴漢であれば、ちょっと印象が違う。痴漢ならば、ポジティブな性欲の正しい「間違った発散」と納得できるが、盗撮となるとまず理解されない感じがする。しかもそれが(ほぼ)家族となればなおさらだ。
殺人の加害者家族についてのノンフィクションを読んだことがある。それと比べてはいけないのだろうが、盗撮の加害者家族もけっこう辛いものがありそうだ。まず理解の域を外れているということが、何よりの苦痛になるのではと感じる。
この本は大きく二部構成になっていて、事件が起きてそれからの展開が前半。後半はさらに先の展開になっていくが、確かにそういう人は絶対にいそうと思える人物がつるべ打ちに登場する。イライラするくらい「いる、いる」とうなづいてしまう。

まだ直木賞受賞作は読んでいない。だがこの本を読んで、すぐに読まなければという気持ちにさせられた。もしかすると明日突然何かで死んでしまうかもしれない。読まずに死んで後悔しないためにもすぐに読まなければ、そんな焦燥感に囚われた。あれっ。

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ものすごい話だった、圧倒された。
被害者視点と加害者視点、のみならず加害者の周りの人間の心情までリアルに描かれ、ニュースなどではあまり想像することのない、犯罪の余波を凄まじい筆致で表現しています。
たかが、と思うような犯罪でもその影響は人それぞれ、計り知れない。この物語は前半は加害者の恋人視点、後半は加害者視点でそれぞれの苦悩を、これでもかというほど生々しく描いています。
『光のとこにいてね』でも、説明のつかない情動を見事に描ききった一穂ミチ先生。期待を裏切らない傑作!

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「恋人が盗撮で捕まった。あなたは別れる?別れない?」という、単純な話ではなかった。「別れる一択でしょ!」「許してあげれば?」なんてすぐに言えてしまうのは、他人だからだ。「初めてだし」「人を殺したわけじゃない」「生理的に無理」「でも好きだし」「私じゃ足らなかった?」溢れて止まらない思いを秤にかけて決断しようとしても、きっとグラグラするばかり。それより何より「どうしてどうしてどうして」謝ってほしいわけじゃない。理解(できないけど)したい。という新夏の気持ちはよくわかる。
盗撮に限らず、痴漢・万引き・闇バイト・・・・様々な犯罪に軽い気持ちで手を出してしまうひとたち。これから人生を生きていくひとたち、というかこの世界で生きている全員に読んで欲しい。読むべき。自分の行動がいかに周りの人を傷つけるか。罪人は盗撮をした啓久だけじゃない。

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男性の立場からすると、
身につまされる、という言葉では言い尽くせないものを感じた。
もし自分が同じような境遇にいたとしたら、
啓久と同じような考え方をしてしまいそうな気がする。
特に「自分は常習犯とは違う」と見下してしまうあたりが。

後半の展開はいろいろ衝撃でした。
「恋とか愛とかやさしさより」に続く言葉を、しばらく自問自答してしまいそうです。

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家業の写真館で働く新夏。プロポーズの翌日に恋人の啓久が女子高生のスカートの中を盗撮、新夏はショックを受ける。

初犯で示談で済んだからとおおごとにしたくない啓久の母。でき心からと詫び、新夏の信頼を取り戻したい啓久。一度とはいえ性犯罪なのだから許すべきではないと主張する啓久の姉真帆子。

このまま結婚してよいものか、大いに悩み迷う新夏が出した結果は。

転職を余儀なくされ、加害者のレッテルの重みを知る啓久。一方被害にあった莉子は、実害はなかったからとあっけらかんとしてみえるが…。

様々なことを考えさせられたが、なんと感想を言えばよいかわからない。読んでみてとしか、言いようがない。

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すごく考えさせられる小説だった。
5年付き合って、プロポーズしてくれた彼氏が電車の中で盗撮行為で逮捕された。
大したことがなくて良かったという彼の母親、気持ち悪すぎてもう娘にも会わせたくないという彼の姉。
そして自分は一体どんな気持ちなんだろうと揺れる主人公。
私も、自分が彼の母親なら、そして兄弟なら、そして恋人ならどうしただろうと思いながら読んだけれどすごく難しいなと思った。これが他人だったら気持ち悪いとすぐ切り捨てられるのに。
そして後半はその彼目線の物語。婚約までした彼女と結局別れ、盗撮した女の子に話しかけられ、その子の境遇もわかり、自分の罪についても考える。彼本人としてはなぜあんなつまらないことでと最初の彼女目線の時のお話の時点では思っていたけれど、自助会の仲間の再逮捕や自分が盗撮した女の子と話す機会ががあったり、新しい会社の人に犯罪行為のことがバレていたことが発覚したりして自分が犯した罪について向き合うようになる。自分としては大した罪ではないと思っていたしもうコスパも悪いから二度としないと思っているが、他人からしたら一度やった人はまたやるかもしれないと思う。非常に難しいテーマの話だったし自分の中で答えもまとまらないけれど、読んで良かったと思う。

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つらい。お互いにつらい。
ただ、言えることは、
結婚前の気持ちと、結婚後の気持ちは、ずっと同じではないから、
少しでも不安要素があるなら、
その人とは結婚しない方がいいと思う。
私はそう思う。
迷うのはわかる。
啓久(ひらく)は、優しい人だと思う。
たった1度の失敗。でも、
たぶん一生、後悔すると思う。
盗撮は、性犯罪なのか?グレーだと思うけど、こんなに後々つらいことが回ってくるのだと、改めて思った。
家族の言葉や、友人、職場同僚の言葉が刺さる。
複雑な読後感。
この微妙さをうまく書いていて、一穂ミチさんすごいと思った。
読み手によって、意見は大きく変わると思う。
本当に絶妙にグレー。
タイトルだけ見ると恋愛小説ぽいけど
これは加害者心理についての本という感じ。
YouTubeの裏側の本音も、なるほどと思った。
被害者の女の子も気持ち悪い。
えっと、そういう人間の気持ち悪さとか、鳥肌がブワって出る感じをうまく書いていて、ぶれていなくて、すごい本だなぁと思った。
この本を読めて良かった。

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