海神の娘　黄金の花嫁と滅びの曲

著者のことは知っていたけれど（職場でもよく読まれる小説だったけど）、自分で読むのは初めてだった。
初めはその世界観に悲しくなったけど、章が進むにしたがい、登場人物たちの必死に丁寧に生きていこうとする姿に共感し、もっともっと読みたくなった。
伴侶を、臣下を、領主を、理解しようとする人物たち。
もちろん、感情に囚われてしまう人たちも出てくるけれど、その書きぶりは優しく感じた。

海神（わだつみ）といつも共にいる霊子様。
彼女？がいちばん悲しく感じた。

なぜ？と考えてもわからない。神の考えることは誰にもわからない。
争いや天災により簡単に消えていく命。悲しみと憎しみを抱えて対立する領民たち。結婚する相手を選ぶことができない海神の娘と領主。
自分が判断を誤れば争いが起こり、命が失われるかもしれない。そんな立場になったら誰でも怖いと思う。それでも信じることができる相手と共に、絶望を味わいながらも進むべき道を見つけ、今いる場所に根を張っていく登場人物たちの姿に勇気づけられる。

沙文と沙来。二つの国が諍い、海神は領主たちを雷で焼いてしまった。
ある者は自分の音楽のせいだと責め、ある者は同性のかつての主を愛していると気付かないまま、海神を憎み、絶望する。
その一方で巫女王により二つの国をひとつとして再生させることを託された領主と海神の娘は、互いに善性を備えつつもそれだけではいけないのだと、苦難の中突き進む。
読むと暗く落ち込む気持ちになるけれど、同時に我々にも驕った生き方を考えさせる作品だと感じた。

前作に続き、今回も大変良かったです！
連作になっているので、読み応えも抜群でした。
でもせっかくだから、違う島の、違う人々のお話ももっともっと読みたい.....というわけでさらなる続編を期待します！
面白かったです！！

不条理な神の支配する世界において
否応なく海神の娘と指定され、また領主との結婚を決められる。
選択の自由のない中で、それでも自分の責任を果たし
よりよき世を作るべく力を尽くす彼らの姿は見ると
自分ももう少し頑張ろう、と背中を押される気がする。

戦を重ねる中で好戦的な領主を失い、敵国・沙文の次の領主となる託宣を受ける皮肉。海神の戯れに翻弄される両国に住む人々や、自らの運命を知り葛藤を抱えながら懸命に生きる若き領主や神の娘たちの選択が描かれていて、容易には消せない積み重ねてきた因縁とわだかまりを抱えながらも、真摯に向き合って手を取り合い、乗り越えようとする決意がなかなか印象的でした。

白川さんの作品に出てくる、はかなげに見えて芯が強い女性が好きです。静かな強さにあこがれます。
自分の人生であっても何か大きなものの力の前では無力でままならないもの。それはどのような立場でも、現実の私たちの生活でも同じなのだとしみじみと感じました。そして、どのような立場におかれてもどう生きるかは自分次第。考え方次第で良くも悪くもなるということも。

十二国記にはちょっと及ばないかなと思いつつもなかなか楽しめました。
最初、この設定どんなんだっけなと思い出しながら読みました。
漢字がなじみがない物だったり、どうやって読んだのかすぐ忘れてしまうのでルビは章ごとに振ってほしいなと思いました。
最後のエピソードがなかなか面白かったです。

かなり広がりのある世界観を感じたのですが、
結果としてはふたつの島の間の話に終わりました。
これは続編への布石なのか、あえての狙いなのか。
２つの島の住民の抱く複雑な感情についての、
微に入り細を穿つ設定・描写はとても読みごたえがありました。
結局、海神が望んでいたのは何だったのか。