東京ハイダウェイ
古内一絵
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刊行日 2024/05/24 | 掲載終了日 2024/07/07
ハッシュタグ:#東京ハイダウェイ #NetGalleyJP
内容紹介
ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。
東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事の向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。
直也に「真面目な働き方」を馬鹿にされた日の昼休み、普段は無口な同僚の璃子が軽快に歩いているのを見かけた彼は、彼女の後ろ姿を追いかける。
辿り着いた先には、美しい星空が描かれたポスターがあり――「星空のキャッチボール」
桐人と直也の上司にあたるマネージャー職として、中途で採用された恵理子。
しかし、人事のトラブルに翻弄され続けた彼女は、ある日会社へ向かう途中の乗換駅で列車を降りることをやめ、出社せずにそのまま終着駅へと向かう。
駅を降りて当てもなく歩くこと数分、見知らぬとんがり屋根の建物を見つけ、ガラスの扉をくぐると――「森の箱舟」
……ほか、ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語。
【著者略歴】
古内一絵(ふるうち・かずえ)
東京都生まれ。映画会社勤務を経て、「銀色のマーメイド」で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞、2011年にデビュー。2017年に『フラダン』が第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選出、同作で第6回JBBY賞(文学作品部門)を受賞。
他の著書に「マカン・マラン」シリーズ、「キネマトグラフィカ」シリーズ、「風の向こうへ駆け抜けろ」シリーズ、『お誕生会クロニクル』『最高のアフタヌーンティーの作り方』『星影さやかに』『山亭ミアキス』『百年の子』などがある。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784087718683 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
ページ数 | 288 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
真面目過ぎて手を抜くのが下手な不器用な6人が辿り着いた、プラネタリウムや美術館などの癒やしの「隠れ家」。都会ですり減った心を温かくつつみ込む珠玉の連作短編集。
完璧主義な訳でも、潔癖な訳でもない。ただ、自分の納得いく形にしたいだけ。そんな小さな拘りで浮いてしまう主人公たちのもどかしさと、悪気はないが当たりが強い周りの人たちの焦燥感の、どちらも痛いほど伝わってきた。片方だけをピックアップして描くのではなく、色んな考えに寄り添った包容力のある作品だと強く感じた。
傷付けるのも人、救うのも人。傷と再生を繰り返す人との関係性が、「隠れ家」を“逃げ場”から“憩いの場”に押し上げる丁寧な工程も心打たれた。
トラウマ、ワーママ、イジメ、LGBTQ、ハラスメントなど、昨今の様々な問題に向き合ったシビアな内容だが、魅力的なスポットがちょうど良いバランスで緩和しているのも良かった。
コンカフェがそこに繋がるのか!と絶妙な伏線たちも最高に面白く、とても印象的だった。
コロナ禍の一年にある、東京を舞台にした本作。パラダイスゲートウェイという架空の会社に働く人々を中心に、様々な年代の人達の悩みや葛藤が描かれている。
こう書くとなんだ、よくある悩みを慰め合う本か。そう思われるかもしれません。
しかし、この作品はそれでは終わりません。それぞれに悩みを抱えつつ、自分で乗り越えようと懸命に生きる私たち一人一人の分身のような人達が懸命に生きている姿があるのです。
いじめにあう少年は、悩むだけでなく、しかし、やり返してざまぁ、などと言う訳でもない。自分で一歩新しい世界を切り開き、それを見守ってくれる存在があることのありがたさを知り、日常を進んでいくのです。
ぜひ、自分の足で立つことが疲れた時、何となく周囲に流されて生きていることに疑問を持った時に読んで欲しい1冊です。
たくさんのものを抱えすぎて、自分ではどうすることもできない程にいっぱいいっぱいで…そんな人達が、自分の「隠れ家」を見付けて、癒されていくような、ふわっと軽くなるような様子が、すごくよかったです。
そしてがっつりじゃなくも、そっと繋がって助け合っていけるような相手がいること。桐人や璃子、恵理子や光彦など、ほどよい関係性でいいなと思いました。
誰しも悩んだり、傷付いたり、苦しんだりと何かを抱えて生きていて、毎日きつい!なんてこともあると思います。
でも頭のどこかに「完全な人間なんて、一人もいない」という言葉を置いておくと、ちょっと楽になる気がしました。
そして私も「隠れ家」探しをやってみようと思いました!
心が軽くなるような、素敵な言葉をくれる作品でした。ありがとうございました!
息苦しい毎日の中で、息継ぎする時間って大事だ。
喧騒から離れ、心休まる隠れ家で自分の心の声に耳を傾けるひととき。忙しいとなおざりになりがちだけれど、登場人物たちがプラネタリウムや美術館、喫茶店などそれぞれの場所で自分を取り戻していく姿を見て、私も心の換気ができたようだ。
登場人物と自分を何度も重ね合わせて、一緒に喜んだり悲しんだり深く頷いたり、そして何より一歩進めるように互いに背中を押しあった。これから先も、私の人生も、彼らの人生も続いていく。隠れ家に足を運んでも、回復できない日もあるかもしれない。それでも、璃子が桐人に救われたように、隠れ家が繋いでくれた関係もあるんだ。何度迷っても空振りしても、少しずつ進んでいける気がした。
一つひとつが心地よい長さで、心がじわじわと回復していくのを感じた。この本も、私の隠れ家の一つに仲間入りしました。
少しずつ少しずつ、めんどくさいことや苦しいことを受け入れていく過程に、励まされました。
自分の心を平らにできる場所がひとつでもあれば、なんとか越えていけるのかな。
急激に変わることはない日々だけど、心にひとつ、そんな場所を見つけたいと思います。
実直ながらも不器用さで仕事に悩みを抱えていた桐人。ある日の昼休憩の際、同僚の璃子がある施設に入るのを目撃し・・・。
何かしらひっかかりがあり、何かしら溺れそうになっている我々にとって本当に必要な物が教えてくれる。それは未来永劫変わらぬ星空だったり、一望俯瞰できる光景だったり、何かしら引き付けられる美術だったりなどとさまざまで、一旦立ち止まり、振り返り、休息し、冷静になることが得づらくともいかに重要であるかのようだ。また今は気付かずとも、必ず誰かが側にいて見ていてくれることも心強い。
繋がる輪廻のように再生を施してくれる連作集。
新宿のある書店に行った時、この作者の「十六夜荘ノート」の文庫本が大量に積まれた特集コーナーを見た。池袋の書店では「マカン・マカン」のシリーズが表紙を表に綺麗に並べられていた。どうやら書店員から愛されている作家のようだ。
そんなこともあってずっと気にはなっていたけど、なかなか手に取るきっかけがなかった。しかし新作が出たということで読んでみて、今まで読まなかったことを強く後悔した。
しみじみといい本だった。書店員から愛されるのもよくわかる。「共感」に満ちた連作短編集だからだ。
ネットショップのアドバイザーとして働く男は、担当のショップのために残業してまで特別なポップを作ってあげている。しかし周りのスタッフからは「他の店から同じようにサービスして欲しいと要求されて困る。余計なことをするな。サービスするならきちんと料金を取れ」と嫌がられる。
会社はそんな理不尽、矛盾に満ちている。
親切は、時として「余計なこと」と受け取られる。やるせない。しかしそれが現実だ。
政治家は、寄付の税控除をうまく使い「節税という名の脱税」に勤しむ。そこに心の咎めや呵責を感じない人にはこの本は向かない。不器用にしか生きられない人、真っ直ぐにしか生きられない人。不正な稼ぎ方や節税もできない、したくない、そんな人たちにこそこの本を読んでもらいたい。そして正義の確かな存在、本当の幸せとは何かを感じて欲しい。
書店員がなぜこの作家を愛しているのか。それはこの人の本には確かな幸せがあり、希望があり、暖かさが、愛があるからだ。
「幸せって何?」その問いに対する答えの一つがこの本にはある。