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鳥と港
佐原ひかり
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刊行日 2024/05/29 | 掲載終了日 2024/05/29
ハッシュタグ:#鳥と港 #NetGalleyJP
内容紹介
“これから”の働きかたの物語
大学院を卒業後、新卒で入社した会社を春指みなとは九ヶ月で辞めた。所属していた総務二課は、社員の意識向上と企業風土の改善を標榜していたが、朝礼で発表された社員の「気づき」を文字に起こし、社員の意識調査のアンケートを「正の字」で集計するという日々の仕事は、不要で無意味に感じられた。部署の飲み会、上司への気遣い、上辺だけの人間関係──あらゆることに限界が来たとき、職場のトイレから出られなくなったのだ。
退職からひと月経っても次の仕事を探せないでいる中、みなとは立ち寄った公園の草むらに埋もれた郵便箱を見つける。中には、手紙が一通入っていた。
「この手紙を手に取った人へ」──その手紙に返事を書いたことがきっかけで、みなとと高校2年生の森本飛鳥の「郵便箱」を介した文通が始まった。
無職のみなとと不登校の飛鳥。それぞれの事情を話しながら「文通」を「仕事」にすることを考えついたふたりは、クラウドファンディングに挑戦する。
『ブラザーズ・ブラジャー』『人間みたいに生きている』の新鋭が描く“これから”の働きかたの物語!
おすすめコメント
著者の佐原ひかりさんは、デビュー作『ブラザーズ・ブラジャー』で注目を集め、3作目の『人間みたいに生きている』で大ブレイク。司書として働きながら多数の連載を抱える、兼業作家の経験も活かして描いた、新しい時代を生きる世代の働き方の物語です。
仕事とはなんなのか、なんのために働くのか、好きなことは仕事にできるのか……仕事観を見つめ直すきっかけになる一冊です。
そして、作品の中に描かれる手紙のやりとりもとても魅力的です!
《便箋、インク、封筒、切手、気持ち、話題、ことば。すみずみまでこだわって、整理して。手紙を書くときに覚えるのは、心の手入れをしているような感覚だ》
読後、誰かに手紙を送りたくなるかもしれません。文通、しませんか?
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784093867191 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
ページ数 | 320 |
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閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
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著者のファンです。今回はどのような人たちに会えるのだろうとどきどきしながら読みました。
働き方の話ではありますが、人へのあたたかさと信頼と…。
誰かを想うことと、誰かとことばをやりとりする素晴らしさについてあらためて感じいることができました。
また宝物がひとつ増えた、そんな気持ちにさせてくれてありがとうの気持ちでいっぱいです。
刊行後、今度は紙の手触りで読めることを楽しみにしています。
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気持ちを文章にあらわすことで
救い、救われる人たちがいる。
そう教えてくれる作品でした。
主人公はとことんツイてない大学院卒の25歳。
絶望的に会社が合わなかった彼女が、
数奇な巡合わせで始まった文通を機に
癒され、希望のカケラを育んでいきます。
文通屋立ち上げまでのワクワク感が凄い!
そこからの思わぬ波乱にドキドキして、
最後にはニヤニヤが止まらなくなりましたよ。
万能のように見えて危うい少年と
お茶目な父親のドタバタも見どころ。
特に初笑いのくだりはワハワハ笑えました。
何でもない手紙に、どうしてこんなに
心が動くんだろう?って不思議になる場面も
一度ならずありました。
これが優しく紡がれた物語の力なのですね。
全ての自信を失くしていた主人公が
立ち直っていく姿には、
思わず自分を重ねてしまいました。
大切なのは強みを知ること。
活かすこと。
私も、もう少しがんばってみます!
(対象年齢は13歳以上かな?)
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仕事の人間関係で行き詰まり、退職したみなと。不登校になったあすか。二人が置き去りにされた郵便ポストを介して文通することがきっかけになり、はじまった文通屋「鳥と港」。
手紙は悩める人の心を自由にする翼であり、日頃社会や日常と戦っている人を癒す帰るべき港。
きっと文通を申し込んだ人たちは、そんな気持ちになっただろう。
お互いにふつうについて悩む二人が、文通屋を通して、変わっていく姿は働くことに悩んでいる人に共感とエールをくれるだろう。
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どうしてこんなに心がゆさぶられるのだろう。
仕事で傷ついた港と、高校生の飛鳥。
真面目で一生懸命で、傷つきやすいのにその傷を必死に隠そうとする。
そんな二人が愛おしくて、最後まで目がはなせなかった。
そして、二人に力をくれる手紙の存在の大きさに、改めてうなずいてしまった。
確かに手紙はもらうとうれしくて元気が出て、しまっておきたくなる。
考えてみたら、昔から人と人を結びつけてきたものは手紙だ。
わたしも、誰かに手紙を書きたくなった。
この作品に出会えて、本当によかった。
大きなプレゼントを手渡された気持ちになった。
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入社9ヶ月で会社を辞めたみなとと不登校の高二の飛鳥。それぞれの生きづらさを抱える二人が、公園の草むらに埋もれた郵便箱がきっかけで出会い、文通屋「鳥と港」を始める。理想と現実の狭間で揺れ、落ち込んで、めげて、また前を向くみなとの姿に自分が重なり共感するところが多かったです。スマホで簡単にやり取りできる時代だからこその、手書きの手紙の温かさが伝わってくる話でした。こんな文通サービス、現実にあったらやってみたいな。
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大学院を卒業した春指みなとは自分に限界が来て会社を辞めた。
両親と暮らしながら次の仕事を探せないでいる時、公園の草むらで郵便箱を見つける。郵便箱のなかには一通の手紙が入っていた。
その郵便箱を介して手紙の送り主の森本飛鳥との文通が始まる。手紙を通して家族や友人にも言えなかった思いを綴っていく。
そして二人は文通を仕事にしようと考え付く。
文通屋という仕事がないならつくろうと言う飛鳥と、できないからという思いから新しく始められるみなと。二人の関係性や、やり取りがとても心地よい。しかし二人には抱えている背景があり繊細な感情が描かれていて時に胸が苦しくなりながら読んでいた。手紙に綴られた言葉に何度も泣きそうになった。
みなとと飛鳥を見守る親の言葉や距離感が素敵で羨ましいほどだった。
私は働いているとき自分の仕事が天職だと思っていましたが、事情が重なり仕事を辞めたとき、みなとが手紙に綴った「不安な退屈」という表現がぴったりな日々を過ごしていました。そのとき私を救ってくれたのは友人からの手紙でした。メールでのやりとりが当たり前の日々に、手書きの言葉が私の癒しとなりました。私も手紙を書く時間や、便箋や封筒と切手をたくさん買い集めて選ぶのがとても楽しかったです。いつからか手紙のやり取りはやめてしまったけれど、手紙だからこそ言える思いがあることを思い出しました。久しぶりに手紙を書きたくなりました。
私も「鳥と港」があれば、利用したいです。
働くとはいったいどういうことでしょうか。
他の人は出来ているから、我慢しているからと自分に言い聞かせて不要に感じることさえもこなしていく日々を続けていくことでしょうか。家事や育児は働くことにはなりませんか?
自分のやりたい仕事に就けるとは限らないし、みなとと飛鳥のように今まで誰もやっていない仕事を作り出すことも簡単ではありません。それでも働くということについて考えさせられました。
冒頭のみなとの言葉のように「会社、燃えてないかな」そう思ったことのある人も少なからずいると思います。そんな人にこそぜひ読んでほしいです。
佐原先生の新作とても楽しみにしていました。
読ませていただきありがとうございました。
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また一人、新作を楽しみにしたい作家を発見した。
子供の頃、ポプラ社の江戸川乱歩シリーズを読んで読書が面白いと思うようになった。おどろおどろしい表紙が特徴的で、後で知ったがその半分ほどは江戸川乱歩自身が自分の作品を「少年探偵団」シリーズとして子供用に書いたもの。そして残りは乱歩作品を子供向きのリライトしたものだったらしい。そのせいか、リライト版は今は絶版になっていて手に入らない。
そんな読書体験からのスタートなので、必然的にミステリ好きになった。もちろん日本の代表的な名作文学や世界の名作文学作品などは一通り通過したものの、圧倒的にミステリ読書体験の蓄積が多い。特に大学時代は「ミステリマガジン」のバックナンバーを揃えたりと結構なミステリマニアだった。
しかし、仕事を始めてからの読書量は圧倒的に減ってしまった。とくにAD時代は殺人的に忙しく、徹夜続きも当たり前、土日も関係なく働いて読書どころではなかった。ちょっと読書の時間が取れるようになったのは、ディレクターを経てプロデューサーになった20代の後半あたり。だが仕事の関係で読まなければならない本も多く、そこでも読書の中心はやはりミステリだった。
そして今、一時のようにがむしゃらに仕事をすることは無くなり、年相応にペースダウンしてテレビ番組制作をしている。
そのおかげか、最近はミステリ以外にジャンルの本もよく読むようになってきた。名前を知らない作家の本でも、どこか気になるところがあればまずは読んでみる。なるべく食わず嫌いのない読書をするようになってきた。
そんな中で出会ったのがこの本。初めて読む作家の人だが、実に気持ちのいい作品だ。
大学院を卒業した主人公・春指みなとは、会社に絶望し、わずか9ヶ月で会社を辞めた。そしてふと立ち寄った公園の草むらで古い郵便箱を発見する。その中には手紙が入っていた。その手紙には、「気が向いたら返事をください」とあり、そこから不思議な文通が始まる。
しばらく郵便箱でのやり取りが続き、ある日、文通の相手と出会うことになる。
これ以上のストーリーは知らずに読んだ方がいい。もしまだ興味が持てないならば、二人が始める仕事のことくらいは知っていてもいい。
二人は「文通屋」を始める。何か話したいことがある人が手紙に書いてきたら二人が返信を書く。悩みを打ち明けるでもいいし、ただ話したい人でもいい。送られた手紙に二人が返事を書く。二人の名前の一部をとって「鳥と港」という名のプロジェクトだ。
まずはクラウドファンディングでプロジェクトを始める。無理のないスケジュールで、オリジナルの便箋に手書きで文をしたためる。
ここまで知れば絶対に読みたくなるはず。出会った公園文通の相手の正体は?そして二人のプロジェクトは成功するのか?
途中、何度もウルッと来る瞬間がある。この物語はどこに向かって進んでいくのだろうか、ページをめくる手が止められない。
作品中にある「春は海からくる」。その意味を知った時、涙が頬を伝った。
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働くってなんだろう?いやなことをガマンしてお金をもらうこと?それとも・・・?
人は「ひとりでいたい」と「つながりたい」の両方の気持ちをどうするのが幸せ?
年齢や立場の違う2人の主人公を軸にした物語の達人、佐原さんが、今回はリアリティの高い作品を生み出してくれました。
「あすか」と「みなと」2人はもちろん、登場人物ひとりひとりがしっかりした輪郭を持って生きています。
特に2人の親たちの描写が絶妙な匙加減だと感じました。
ストーリー展開も、やや普通でないところを含みつつ無理がなく、最後まで惹きつけられっぱなし。
文句なく、新たな代表作と言いたいです。★5つでは足りません!
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久々の佐原ひかりさんでした。
冒頭から会社燃えてないかな…と不穏な事をいう主人公みなと。そんな状態に追い込んだのは今話題のドラマ「不適切にもほどがある」ではないけど「するのが当たり前」という押し付け。
会社を退職してなかば引きこもり状態のみなとが立ち寄った公園で見つけた郵便箱とその中にある手紙。誰とも分からない人とこの郵便箱を使った文通を始めるってシュールな感じ。でも文通って懐かしい。高校生の頃に男子校寮生活だったので外界との繋がりを求め中学の同級生とした文通を思い出した。
文通を仕事として始めるみなとと文通相手のあすか。今となっては文通してくれそうな人もいないのでこんなのあったら利用しちゃうかもと思いつつ読み進めた。
そして文通を仕事にした事で失われたものがみなとを追い詰める。仕事なんて生活していくための糧と割り切るかやりがいや楽しみを求めるかというのは答えはないけど悩ましい問題よな。
ラスト付近でまた登場した郵便箱と手紙。ここで使ってくるとは…出会いのためのグッズと油断してたわ。