カフネ
阿部暁子
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刊行日 2024/05/20 | 掲載終了日 2024/05/20
ハッシュタグ:#カフネ #NetGalleyJP
内容紹介
一緒に生きよう。
あなたがいると、きっとおいしい。
食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
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*あらすじ*
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
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*担当編集者より*
5年近くの歳月をかけて、優しくも切なく儚い、阿部暁子さんの新たな代表作が誕生しました。
食べることの大切さ、人とのつながり。本作に登場する薫子とせつな二人の関係を通して人生で大切なことが何かを改めて気づかされます。改稿される原稿を読むたび、担当編集者は何度も泣きました。
2024年本命の作品として、ご感想をお待ちしています!!
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著者/阿部暁子(あべ・あきこ)
岩手県出身。2008年、『屋上ボーイズ』(応募時タイトルは「いつまでも」)で第17回ロマン大賞を受賞しデビュー。『どこよりも遠い場所にいる君へ』はベストセラーとなり、『パラ・スター〈Side 百花〉』『パラ・スター〈Side 宝良〉』二部作は《本の雑誌》が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位に選ばれた。ほかの著書に『鎌倉香房メモリーズ』(全5巻)や『また君と出会う未来のために』『室町繚乱』などがある。近著に『金環日蝕』。
出版社からの備考・コメント
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★★★
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★★
出版情報
ISBN | 9784065350263 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
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薫子は、夫との離婚に続いて最愛の弟も亡くしてしまう。そんな中、弟の元カノであるせつなとの交流が始まり、薫子とせつなの関係性が、カフネの活動を通して少しずつ近づいてゆく様子が丁寧に書かれていました。カフネの活動で、いろいろな理由から家事がままならない家でのボランティァから伺える社会問題や、登場人物の親子関係など、ストーリーに組み込まれたたくさんのエピソードに、心を痛めることもありましたが、その隙間を埋めるように、心を癒すような温かい料理が並べられ、人間の弱さや頼りなさを支えてくれる気がしました。無敵のように思えたせつなの、完全武装の内側に薫子が寄り添う未来がに思いを馳せました。
「カフネ」という不思議なタイトル、これは作中に登場する家事代行サービス会社の名称。ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」という意味だという。もうこのあたりですっかり物語に魅せられてしまう。
主人公は夫と離婚し、そして仲の良かった弟を突然亡くした中年の女性。
生前、弟は交際相手の女性を家族に紹介する。その女性が所属しているのが「カフネ」。彼女はここで料理のプロとして活躍している。冷蔵庫にあるものでたちまちにうちにいろいろな料理を作ってくれる、そう、家政婦の志麻さんみたいな人だ。
家族顔合わせの場で、両親が「ちょっと料理を作って」と頼むと「私の時給分3000円をいただきます」と言われてしまう。プロであるとの誇りであるが、このエピソードがなかなかいい。
いろいろあって主人公は土日にボランティアとして「カフネ」を手伝うことになる。「カフネ」利用者が「この人に必要」と感じた人にプレゼントできる「お試しチケット」があり、その利用者の元に無償で向かうのだ。向かう先はなんらかの事情を抱えている家庭。そこでのドラマもなかなか読み応えがある。
ストーリーは実にドラマティックだ。人それぞれがさまざまな事情や感情を抱えて生きている。
その謎が明かされるたび、意外な真実に涙させられてしまう。人は強く生きている。しかし弱る時だってある。誰かに頼りたい時もあり、誰かを助ける時もある。
5年をかけて作られた物語は実に巧みで、人物も深く魅力的だ。初めて読む作家だが、この前にも色々と書かれているようだ。遡って読んでみたいと感じた。
弟を亡くした薫子は亡き弟の元彼女の
小野寺せつなと遺言のことで会い
気分が悪くなって倒れたところを
助けられ、それから段々とお互い
関わるようになる。
誰からも好かれていた弟、晴彦の死を
なかなか受け入れられない薫子。
しかも離婚の痛手からも立ち直れず
アルコールにたよる毎日。
自分の感情を表に出さず冷たい雰囲気の
せつな。しかし、身も心もずたぼろの
薫子に料理を作ったりボランティアで
家事代行を手伝わせたり、彼女なりに
元カレの姉を気遣う。
読み進めるうちに薫子はもちろん
亡くなった弟の晴彦、そしてせつなの
抱える問題があきらかになっていく。
人としての自分の在り方、生きたいように
生きることの難しさ、家族だから
一緒にいても人は人のことを
本当に理解しているとは限らない。
家族に愛されても縛られて生きたいように
生きられなかったり、家族の期待に
こたえるために無理したり。
近しい家族という存在ほど難しいものは
ないんだと気付かされる。どんなに近く
一緒にいようとも心に思っていることを
言葉にしないと伝わらない。
口に出して、伝えることの大切さを
改めて感じさせてくれた。
どんなに快活で、爽やかで、みんなに
好かれて頼りにされる人でも悩みはあり
そういう人こそなかなか本音を言えなかったり
苦悩を心に抱えていたりするのだなと思った。
だから表面的なことではなくその人の
本質を見てくれる人が必要なんだなと。
これはもがきながらもまっすぐに
生きようとする大人たちの物語。
そして、離婚や貧困、片親、ワンオペ
ネグレクト、虐待、介護などで
起こりうる問題も赤裸々に描かれている。
本当に助けが必要な人たちが
必要なサポートを受けられる世界に
なってほしいとこの本を読んで感じた。
そしてどんな形態の家族でも生きやすく
助け合えて、すべての人がその人らしく
自由に生き方を選べる世の中になって
ほしいと強く思った。
家族の在り方、親子の在り方、家族の形態は
こうあるべきと決めつけるものではなく
多様性を認めて独自の心地よい関係を
築いていける世の中になることを願う。
カフネを読んでいろんな家族の形
関わり方を考える機会をもらった。
なんて愛おしい人たちだろう。
心に深く沁みこむお話だった。
苦しみに中にいるときは、自分しか見えない。
窒息しそうなほど苦しんでいた主人公の元に一人の女性が現れる。
弟の元恋人の彼女とかかわることで、
主人公は少しずつ息ができるようになっていく。
外から見ただけではわからないそれぞれの苦しみが、
薄い紙をはがすように、ゆっくりと明らかになっていく。
読んだ後、きれいな空気をたくさん吸い込んだような気がした。
真面目な薫子は、突然夫から離婚したいと告げられ離婚し、弟・春彦の急死により悲嘆にくれていた。弟の遺した遺書には弟の元恋人のせつなにも遺産を遺したいと書かれていたことから薫子はせつなと会うことになる。
せつなは家事代行サービス「カフネ」で働き、薫子も週に一度だけカフネを手伝うことに。せつなと共に働きながら、薫は弟について知らなかったことを知っていく。
家事代行サービスでは薫子は掃除を、せつなは料理を担当する。
薫子が働く一日は、日々の生活で手一杯で自分からは助けを求めることが出来ない人たちのための一日だ。誰かが作ってくれる食事があるということだけで、ほんのひととき気持ちが解放される。
薫子も離婚、死別と続き悲嘆にくれているのに、誰かに助けてと言えない。そんなときにせつなの作ってくれる食事は薫子の心を少しずつ解きほぐしてくれる。
せつなにも薫子にはあえて言わないことがあった。
薫子とせつなが訪れる家庭で交わされる言葉や二人の背景、春彦の思いに心が動かされて中盤からずっと泣きながら読んでいた。
食事は大切だ。自分で作っても、誰かが作ってくれた食事でも、レトルトでもビタミン剤でも栄養は摂ることができる。
だが本を読むことでしか摂れない心の栄養がある。まさにこの本は心に栄養を与え、私の血肉となっていくだろう。
読ませていただきありがとうございました。
ぼろぼろ泣いたり、嬉しくなったりしながら、あっという間に一読し、興奮冷めやらぬまま、この感想を綴っている。主人公の薫子さんと、せつなさんの、矜持の美しさ、強さ。春彦くんの限りない優しさ。公隆さんの誠実さ公正さ。それらが繊細な言葉選びとリズミカルな文章で、するすると私の中に入ってきた。明日またこの小説を読み返すのが楽しみだ。
再読。冒頭の短い一行を繰り返し味わい、にまにましてしまった。
「死んだ弟の元恋人は、すでに十九分遅刻している。」
十九分ですよ、十九分。二十分でも二十一分でもなく十九分。いかに主人公がいらいらしながら待ちくたびれているかが、手に取るようにわかるじゃありませんか。
そして、せつなさんの作る料理の美味しそうなこと。玉ねぎのみじん切りとトマトとツナの、コンソメと豆乳の温かい素麺は、荒れて弱った心とからだに沁みわたるようだし、苺パフェはほんとうに魔法使いの仕業のよう。
物語終盤で次々と明かされてゆく事柄は、前半でちらりと触れられていた糸をほどいたら新たな絵が現れてくる感じだった。
こんかラストは予想もしていなかった。
最初は元婚約者と義姉のハチャメチャなやり取りに驚きながらも、ここまで言い合えたら気持ちいいだろうな。とまで思えた二人。
それがだんだん弟の本性が証されるにつれ変わっていく。
ミステリーさも感じられる不思議な物語。
真面目くさくて面倒臭い生き方も、損得無しに料理・掃除をする会社も、いい子で居続ける苦しさも、何もかも受け入れられてしまう。
人にはそれぞれ表に出せない理由があって、そんなに意識はしていなくても、言えない訳や気遣いが誰でもあることを思い出した
自分の思いさえもしっかりわからないのに、人のことをさもわかっているかのように勝手に思い込んだ言動をしたりしてるのかなぁ
人を思いお料理をするせつなが、自分のことはあきらめたような言動をすることに寂しさを感じたけど、無理矢理にでも寄り添おうとする薫子さんがそばにいてくれることに希望を持てた
侍のような薫子さん、少し堅苦しい気はするがとても好きだ
始めて読む作家さんでしたが、読みやすく、ゆっくりと流れていく中でも、途中、驚く出来事もあったり、人々の感情が伝わってきて、せつなくじんわりきました。
見えないところで、人それぞれ抱えてるものは、あるよな~
あまり気にせず、自分に正直に進むのが、1番なのかなと、思わせてくれました。
家事代行業で、お料理のシーンが、たくさん出てきて、卵味噌美味しそうで作ってみたくなりました!
冒頭は常識人の薫子と人嫌いなせつなという構図かなと思ったら意外に早い段階で懐いてきた感じ。
途中で食欲を刺激した骨付き肉🍖。これがまさか後で知る事実の前振りとは…。
食べることは生きることとよく言うが正にそれを描いた作品。これに弱った人が助けてと言える人がいることの大切さがテーマかな。
「おにぎりを作れるようになると人生の戦闘力が上がる」
主人公の薫子は不妊治療を経て夫と別れた41歳。
ひとまわり下の弟が突然亡くなり、弟の元恋人であるせつなが働く家事代行サービスに関わることに。
シスターフッドであり、家族の物語でもある。
上半期、あるいは2024年を代表するような一冊となると期待。
突然亡くなった弟・春彦は遺言書を遺していた。姉の薫子は、相続人に指定されていた弟の元婚約者であるせつなに会うが、受け取りを拒否される。激しくやりあううちに薫子は瞬時意識を失い倒れてしまう。心配したせつなに自宅まで送ってもらうがそこは……。
タイトルのカフネは、せつなが勤める家事代行サービスの会社だ。この後、何故か週一だけボランティアで掃除をすることになった薫子は、料理担当のせつなと共に依頼者宅を訪問することになる。
よくありがちな1話完結の連作で、いろんなパターンの家庭像を描くのかと思いきや、軸はぶれない。そして連作形式でもなかった。読み進むにつれ、すごいものを読んでいるなという実感が湧いてきたが、この作家はさらに上を行く。些細なことだが感じた違和感は伏線で、きっちり回収される。偶然はない。お見事!
強いて難点を挙げるなら、登場人物たちが揃いも揃って問題を抱えていることか。しかもこれ以上ないほどに辛いのだ。でも、だからこそ、誰かの優しさが染みるのだ。生きる力となるのだ。
ぼくの中で本年度ベスト10入りは確実な良作だった。
担当編集者さんのオススメ文を読み、リクエストしました。
食べることは生きること… まずはそこからだし結局はそれが大事なこと。
けれどもそれだけではない、しっかりと心に落ちてくるお話でした。
読みながら何度も何度も、主人公たちだけでなく、むしろ周りの人たちのことを考えました。
そうすれば何かがわかる、救われる気がして…
登場人物それぞれが、交わり、立ち止まり、そしてまた歩き出してく姿に、
勇気をもらえた気持ちです。 刊行したら是非購入したいと思います。
子どもの頃、苦手なピーマンを克服するために毎日ピーマンを食べ、
ピーマン柄のパジャマを着て寝ていたほどの努力家の薫子
でも、努力ではどうにもならないこともあって…
夫と離婚し、大切な弟を突然失い、半ば自暴自棄になりながら
それでも仕事だけはきちんとこなしている
真面目で「めんどくさいといわれるタイプ」の薫子が
弟の遺言書を執行するために弟の元彼女で料理人のせつなと会うところから物語は始まります。
平気で遅刻して謝りもしない
もらう理由がないといって弟の遺産も受取を拒否する
そもそも、実家に挨拶に来た時から頑なで…
分かり合えないはずの二人は、しかしなぜか
せつなが働く家事代行サービスが取り組んでいるボランティア活動で
一緒に働くようになり、その距離を埋めていきます。
読み進めるうちに、それぞれの喪失の物語が明かされ
また、ボランティア先の人々の問題もいろいろあって
誰も、何も悪いことはしていないのに
なんで生きていくのってしんどいこと、苦しいことが多いんだろう、と
つらい気持ちになる部分もありますが
それでも、救いはあって
前を向いて進もうという気持ちにさせてくれる物語です。
この先のふたりが気になります。
人とのつながりは、血の繋がりとか家族だからとかだけではない。
寧ろ、心を寄り添わせ、大切に想う血持ちが人とのつながりを強いものにしているのかもしれないと思いました。
主人公たちが家事代行サービスで訪れる家庭では、家族の在り方は本当に様々です。
これが正しいとか間違ってるとかはない。
明確な答えもない。
でも、支えあって助け合って、人は生きていくのだな…と。
すごく深く考える機会をもらった作品です。
ご飯も美味しそうでめちゃくちゃ魅力的でした!
ありがとうございました。
春彦を軸に展開する物語。姉の薫子と元恋人のせつな。春彦の死をめぐる謎がふわっと根底にあり、読み進むほど思いがけない展開となっていく。奥行きのある物語でどんどん引き込まれていった。人間の多面性に驚かされ、人と人との繋がりの不思議を思う。物語の中で重要な役割を果たしているのは生活を整えるための手助け。食事と部屋の片付けと掃除だ。いろんな事情で生活がうまく回らない人たちのため、美味しい食事を作るシーンと部屋を綺麗にする場面が数多く出てくる。相手のために細やかな配慮が行き届いただ美味しそうな食べ物の数々。ぐしゃぐしゃな部屋が綺麗になっていく様子。本当にちょっとしたきっかけで生活は回らなくなる。でも、ちょっと手助けしてもらえたらまた生活を整えることもできるのだ。家族というつながりは強く、時には足枷になることもある。分類できないつながりこそ大切なことがあると感じた。私は『おせっかい』が苦手であるが、薫子やせつなのように自分の正しいと信じたことを大切にして、相手に伝えることは悪くないかもしれない‥と思いはじめた。コロナ禍を経て、少し距離が出来た人と人との繋がり。でも。やっぱり誰かと繋がって困った時には助け合って生きていきたい。そんな世の中になったらいい、と夢見ることができる作品だった。
人は、自分だけがしあわせであればいいわけじゃなくて、誰かもしあわせで笑っていて欲しいものなのだ。
誰かの笑顔が誰かをきっとしあわせにしている。
やりきれないことも理不尽なことも、生きていれば山のようにあるけれど、どうか今日1日をなんとかやり過ごして、そうして繰り返していれば、いつか数十年に一度咲く花の姿を誰かと一緒に見ることもあるかもしれない。
一度はうちひしがれた薫子の不屈の精神に救われた物語でした。
厳しい現実やつらい人間関係のことも描かれている。けれども、この物語の根底に温かい、人を大切に想う心を感じる。人はいつも本当の自分を探しているのかもしれない。薫子とせつな、そして春彦を通して、必死に本当の自分を探そうとしてしまう。今の自分でいいのか…他人に自分をさらけ出すのは怖い…そんな葛藤を薫子たちと一緒に考え、成長できる物語だと思う。そして、作中の出来事を曖昧にせず、真摯に全て書いてくれている文章に絶大な信頼を置きながら読み進めることができた。素敵な文章との出会いに感謝。
急死した弟の遺言で彼の元婚約者と会い、彼女が勤める家事代行会社「カフネ」のボランティア活動を手伝うことになったアラフォーの薫子。生まれてくる事を選べず、厳しい現実ばかり降りかかる人生を、人との繋がりで少しずつ健やかにしていく再生の物語。
完璧主義者の主人公と、真逆に見える奔放な元婚約者と、二人を繋ぐ眩い弟。誰もが何かしら儘ならない悩みを抱えていて、しかし誰かにはそれすら羨ましく思えたり、環境によって蓄積された感性の隔たりを掬い上げ、気付きを与えてくれた。食と環境を整える事で視野が広がり、生活の中に埋もれがちな人の温もりを感じられるようになり、少しずつ息がしやすくなる。
心身を労る事の大切さを、美味しそうな料理を通じて、凸凹コンビが力強く体現してくれる、笑いあり涙ありの貴い作品。
主人公薫子は、自分の境遇の変化や大切な弟の死など、乗り越えられない悲しみを抱えて自暴自棄。
自分には価値を感じられずに生きている。自分など誰にも愛されず、必要とされないと。
が、誰かの役に立つことで、自分の足で立っていけるように自分を取り戻していく。
しかし、薫子は周囲の人たちもそれぞれ何かを抱えていること、よく知っていると思っていた弟の真実などを知る。
家族であることが、雁字搦めの鎖になってしまう場合がある。
その鎖も様々だ。家族がいなくても自分を搦めとる何かにもがく人たち。
彼らをすべて解放することはできなくても、何かの力になることはできる。
手を差し伸べる存在の大切さ、それによって希望が生まれ、行動の原動力になる。
その希望を描いた作品だ。
カフネの活動やせつなとの交流によって、人それぞれの生き方があることを教えてくれる良作。「多様性」という言葉の背景を詳しく知れるような今の世の中に相応しい物語でした。優しさの中にほんのりとミステリアスな魅力も持っている物語で、登場人物たちの秘密が次々と明らかとなる中盤以降の展開には胸を鷲掴みにされました。近年広まりつつある多様性について疑問を感じている人に特におすすめしたい物語だと思いました。
いろんな優しさが溢れているステキな物語でした。
みんながみんな不器用で、それぞれの思いがときにはもどかしくときにはあったかく、何度も涙を流してしまいました。
春彦の謎が解けないままかと思いましたが、最後はそうだったのかなぁと思わせてくれて良かったです。
自分を思ってくれる人がいるって幸せだなって改めて思います。
薫子は29才で急逝した弟の元恋人、小野寺せつなに遺言を伝える。ぶっきらぼうなせつなに腹をたてるがなりゆきで彼女の仕事を手伝うことになる。彼女がまとった鎧の下の傷ついた心とその理由を知り、ぶつかりながらも心を寄せてゆく。
せつなも薫子も登場人物みんなが迷い、つまずく。それでも「食べること」に助けられながら少しずつ前を向く。せつなの料理がとても美味しそう。こんな料理が冷蔵庫にあったらとりあえず生きてゆける、と思える。そして薫子とせつなが紆余曲折しながら良いバディになってゆく。読後感があたたかくとても良かった。
春彦の死を契機に出会った薫子とせつなの噛み合わなさが面白くて、会話の端々から2人の変化が読み取れて、一晩で読み切ってしまいました。たった2時間の家事代行サービスでも人とこんなに深く関われる。温かい食事と片付いた部屋でほっと一息つける時間、本当の自分でいられることの大切さ、誰かのことを深く知りたいと思う気持ち。寄り添うのって自分に余裕のある人だけができることじゃない。誰かに寄り添うことで自分が生かされる。愛されることを切望する人もいれば愛されることに縛られて苦しむ人もいる。色々考えさせられました。
阿部暁子さん、初読の作家さんでした。
不思議なタイトルと表紙に誘われて読み始めました。
誰からも愛される弟の突然の死、弟の遺言から弟の元恋人のせつなに会いに行き、ひょんなことから家事代行サービス「カフネ」を手伝うことになり・・・
とがって生きているせつなと、愛されたいのに愛されない薫子。
せつなと一緒に「カフネ」の活動のなか、様々な家庭の形を目の当たりにしていくと硬い殻の中にあるせつなが見えてくる。
せつない感情に包まれます。
水と油の二人が弟の好物を一緒に食べながら、距離が縮まっていく過程がとてもよかったです。
弟の四十九日、両親が急に自分に優しくなり、うれしい気持ちになった薫子だが代替品として必要とされる虚しさ・・・
弟の秘密、せつなの体調・・・とやや後半盛りだくさんになってしまい、最後の薫子の選択も突飛な気もしましたが、よい作品でした。
『カフネ』知らない言葉になぜか惹かれ、内容紹介と担当編集者さんのメッセージを読んで、ネットギャリー小説の第1作目はコレだ!!と直感。ダウンロードして読み始めてからすぐ直感が正しかったことを確信。終始、薫子主体で物語に没入しやく、一気に読み進めてしまいました。
誰が、どう見たかによって人の印象は変わり、また、どう見られているかによって自身も変化していく。だからこそ出会いは大切で、且つ、やり直しは出来る!と強く思える作品でした。
”わりと嫌いじゃないというぶっきらぼうなひと言で、今、命をつないだ。その言葉だけで、この先一ヶ月くらいは、きっと何が起きても生き延びられる。” 私も誰かに、そんな言葉を(そっと)伝えらたらいいな‥という理想を胸に、まずは『カフネ』をたくさんの人に紹介します!
最初に予想もできなかったストーリー、ラスト、読み終えて、読んで良かったなあと思える1冊だった。
薫子さんとせつなが徐々に心を開いていく過程が丁寧に描かれているので、読みながら自分もこの二人との距離がゆっくりと縮まって行くのを感じた。せつなの作る料理も全部まねしたい!
単に生存するのとは違い、”生きて”いくためには、大切に思い合える誰かが必要。
久しぶりに泣いた。苦しくなる。どうして?どうなっているの?どうなるの?この気持ちが、目を心を動かす。人はそれぞれに人に言えない、苦しみや悲しみを持っている。そしてその苦しみや悲しみは、自分だけにしかわからない。それでも生きていく。苦しくても、悲しくても、生きることは、悪くないと思う。
冒頭から不穏な空気が漂い、この謎めいた状況がどう展開していくか、気になってしかたがありませんでした。
まるで正反対のようでいて、本当は助けを求めているのに、芯の強さ、不器用な心ゆえ苦しむ2人。
様々な悩みを抱える人に関わりながら、彼らが本当に必要としているものを見つけだそうとしていくうちに、いつの間にか自身の心もとかしていく。生きるために欠かすことができない「食」を通して皆が幸せを感じる姿が生きる力につながっていくようで、食の持つ力を実感しました。最初に感じた謎めいた状況にも一人の物語があり、そういうことだったのか…と、最後には私の中でいくつもの感情が入り交じることになりましたが、とっても心にやさしい物語でした。
ひとは一人では生きていけないと強く感じる物語でした。助けて欲しい時に「助けて」と言える存在がそばにいる。それだけで人生全然変わってくるよなー、と自分の過去を振り返っても思います。
あと何やら美味しそうなものがたくさん出てくるので、おなかが空いてしまいました。
「美味しいものは最強!!」
作中に出てくる様々なお料理に思いをはせ、その味に癒されていく人々と一緒に私の心も癒されました。
「人間いつどうなるか分からない」
この歴然とした事実に、どう向き合っていくか。
大切な人たちの声を、気持ちをちゃんと知る努力と、自分の心の声を形に、その心を行動に移すことの大切さを改めて感じさせてもらいました。
いっぱい泣いて、いっぱい笑う。
心に栄養をくれる、温かい物語でした。
「一緒に生きよう」
これほど力強く、優しい言葉は他にない。
「人はひとりでは生きられない」とか、「人に頼ることも大事だ」とか、よく言われるけれど、真面目な人や頑張っている人ほど、この言葉は響かない。
この本は、そんな意地っ張りなほど「ひとりで生きていこう」と覚悟を決めた二人の女性のお話。
ひょんなことから、家事代行ボランティアを二人で一緒にやっていくことになるのだが、冷たすぎるくらい他人行儀なせつなと、暑苦しいほどお節介な薫子のコンビが良い。
「一緒に生きよう」
そう言ってくれる人がいること、そう伝えたいと想える相手がいること。
この二つが揃えば、人は最強になれるのではと思う。
生きる元気がじんわり滲み出るお話でした。
夫と離婚し、最愛の弟を亡くし、人生に絶望していた薫子が、弟の元恋人であるせつなとの関わりや家事代行サービスの仕事を通して再生していく物語。
最初はぶつかり合っていた薫子とせつなが、食を通して心を通わせるようになっていく過程が良かった。人それぞれ抱えている事情は違うし、悲しみや不安や喪失感はきっと簡単にはなくならない。けれど、部屋を綺麗に整えたり、おいしいごはんを食べることで、また前を向いて生きていこうと少しでも思えるきっかけになれたならそれでいいのだと思う。ラストは予想外で少し驚いたけれど、希望の見えるラストで良かった。
人は向き合うことを忘れてしまうと、
どんどん、自分の周りに殻を作って閉じこもってしまう。
誰からも理解されようとせず、共に生きていきたいとも思えない。
せつなも薫子も正反対にみえて、そこの生きる根底な部分がとても似ているように感じました。
いろんな生き方があっていい。
どんな生き方でもいい。
でも、一人じゃない。そう強く思わされました。
ミステリー寄りなのかと思いきやそうでもなく、
グレーな部分もあって、すべてがはっきりするわけではないけれど、詰まるところホワイトなのは物語くらいで「人生は小説よりも奇なり」なんて言葉もあるからこれがきっとリアルなんだと思う。
家事代行業のお仕事小説かと思って読み始めましたが、期待を大きく裏切る今年のベスト3に入る物語でした。物語の後半から展開される物語にすっかり飲み込まれてしまいました。 ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」という意味だという「カフネ」の意味が、じわじわと心にしみてきました
家事代行サービス「カフネ」のお話です。
家事に疲れた人に、手を差し伸べる短編集かと思いきや、利用者だけでなく、従業員にも焦点が当てられて、様々な角度から楽しめる物語です。
ネットギャリーで読ませてもらいましたが、実際に手元におきたくなりました。
また、車椅子テニスの選手ではなく、車椅子を作る職人に焦点を当てた阿部さんのパラスターを思い出しながら読みました…!!
一番最初の場面、遅れてくる小野寺せつなに心の中で毒づく薫子。
これを読んですっと引きこまれて、一気読みしました。
子どもが欲しかったのに授からなかった中年女、いつもニコニコしていたのに突然亡くなってしまった弟、いつも不遜な態度の弟の元彼女。
傍からはわからないが、誰もがなにか心に抱えるものがある。
物語後半で明かされる事実に涙があふれたが、すっきりもした。
片付けや料理の描写もキレがあり、読んでいて爽快だった。
最後はどうなるんだろうと思ったが、どういう形であれ、二人が納得できる結果になればいいなと思った。
責任感の強い主人公が自殺した弟の元恋人に会ったことをきっかけに、様々な人々と出会う過程で知ることになってゆく弟を取り巻く背景。一方で美味しい料理や荒れ果てた部屋の掃除が多くの人々の心を癒やして、変わってゆく関係が描かれていて、時にはぶつかり合いながらも、不器用な人たちの思いに真摯に寄り添う姿とても優しくて印象に残る物語になっていました。
久々に強く心が揺り動かされました。登場人物に心情が、ほんの少し登場する脇役ですら繊細に描かれていて、しかもそれが非常に腑に落ちて非常にリアルかつ、納得・理解できるもので、綺麗事ばかりのよのなかでなくても、その中で頑張って生きていこうと勇気がもらえるお話でした。また、伏線の回収のされ方も素晴らしく、本当に才能のある作家さんだと思います。別の本も読んでみようと思います。
辛い時、周りにSOSを出せない。辛い時こそ強くあろうとしすぎる。
身近にいる家族なのに考えていることが分からない。何がしたいのか。何を求めているのか。
だからこそ小野寺と薫子の関係性が眩しく見えるし、羨ましい。
もっと共助で生きていける社会にすべく、この小説を広めたいと思った。
初読み作家さん。感情が伝わってくる文章が素晴らしい。言葉ひとつひとつが綺麗でした。人生に疲れた人に差し伸べられる手は現実ではあまりに少ない。親はもちろん、なにかあったとき周りはそれほど支えてはくれないし、気にかけてくれることも少ない。身の回りにこんなに自分を気にかけてくれる人がいるのは羨ましいなと思いました。
不妊治療に失敗し、夫からは離婚され、大切な弟の急死に打ちのめされた薫子。弟が残した遺言書に基づき遺産分配の手続きに、弟春彦の元恋人せつなと会う場面の不穏さしかない空気感に多々不信感を持つ。終始不機嫌さを隠さないせつなに反発しながらも、自分の弱さを見せてしまう事態が起きる。食べることを通してこの物語が語りかけてくる絶対的な信念。個々人の抱える困難を代行することで束の間でも安息を得てほしい、そんな願いで「カフネ」は稼働する。外からは見えない春彦の苦悩、あるがままの自分でいるための闘い、真相は切ないものだった。薫子の一歩がせつなに届いた瞬間は光が差すようだった。
出てくる食べ物を想像しながら幸せな気持ちになる。もちろんお腹も空く。
部屋の清潔度ってそのときの心を表してるって本当だと思う。自分がいっぱいすぎて注意が外に向かないことにさえ気付いていない。
誰にだって突然心がポキッと折れてしまうこともある。誰にでも吐露はできることではないけれど誰かが手を差し伸べてくれたらどんなにホッとするだろう。
素っ気ないせつなの事情にも胸が苦しくなる。
人を愛おしく思うってどんなときだろう。
「カフネ」の意味がとても素敵。
寝る前に子どもの顔を見て頭をそっと撫でる幸せな瞬間。
それをかけがえないものと感じることのできる私も幸せなのだと再確認。
読んだあとは私も愛に包まれている感覚になった。
初めましての阿部暁子 さん
最初は薫子もせつなも苦手なタイプで、読み進められるかな?と思ったけど、気づいたら一気読みでした
カフネとは、ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指をとおすしぐさ」を意味する言葉だそう…なんと美しい!
「カフネ」で訪問する家には家事を滞りなく行うことができない、それぞれの事情があり…
その事情に胸が痛むこともあったけど、せつなのつくる美味しそうな数々の料理に
励まされて、そして薫子とせつなが不器用すぎるくらい不器用に距離を縮めていく様子にグッときました
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人にはそれぞれ事情がある
親しい間柄で何でも知ってると思っていても見えていなかった一面もあるかもしれない
それでも一人じゃない…と思える心強さ
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まさにやさしくもせつない、素敵なお話でした
不妊治療がうまく行かず苦しんでいるところに夫から突然離婚を切り出された薫子。さらに最愛の弟が急死してしまい心が壊れかけ何もやる気がなくなってしまっていた時、弟の遺産相続の手続きのために弟の元恋人であるせつなと会う。せつなの第一印象は読んでいるこちらも薫子と同じで「何だこの小娘!」という感じだったけれど、ともにやることになった家事代行のボランティアを通して少しづつ印象も関係性も変わってくる。親子、夫婦、友人、その関係性に関わらず大切な人を大切に想い、ときに手を差し伸べて生きていく。人は1人では生きられないし誰かを想って生きていくことの力強さと優しさを感じるとても素敵なストーリーでした。
ギスギスした始まりで、暗く重い話を想像しながら読み始めましたが、なんて素敵な話なのでしょう!
表に出さずとも人はそれぞれ苦しみを抱えていること、他者とつながることで助かる人もいれば、うまくつながることができない人もいること。
家事代行という形をとりながら、その人やご家庭の問題の本質に迫り、サポートする姿に心打たれました。
また、登場人物が個性的で、表現は違えど優しさにあふれているところも共感できる点でした。
阿部さんのほかの作品も読んでみようと思います。
著者の本を読むのは二冊目です。
前回の本もでしたが、普段の自分がどれだけ悪意ない偏見に満ち溢れているのかを突きつけられました。
本当に多種多様な事情をかかえている登場人物が出てきて、最初は印象から悪いやつ!と決めてかかってしまいましたが、最後はみんな人間なんだなぁとしみじみ感じました。
人生どん底の薫子は若くして逝去した弟・春彦の元恋人のせつなと接する中、家事代行サービスカフネでのボランティアを通じ生きる気力を取り戻していくが…。登場人物がそれぞれ抱えるものがとにかく重い。はじめ薫子の誘拐妄想にはせつな同様ドン引きしてしまいました。天使の様だった弟の死の真相とは?春彦が最後に残してくれたプレゼント、二人の縁がどんな形であれずっと続きますように。カフネというタイトルがとても素敵にだなと思えるラストで良かったです。
急死した弟・春彦の遺言書から、様々な人と人が必要とする場所、時に出会い、必要な助けや関わりを持つ物語だった。そんな意味を込めた家事代行サービス会社「カフネ」。常盤さんとせつなが出会い、せつなと薫子が出会う。薫子の知らなかった弟の姿を知り、人は食べ物で救われる事も繋がる事もできる。後半の薫子のせつなに対する提案に胸が熱くなりつつ、彼女たちの生きて行くだろう未来を応援していた。良い本を読めた!カラフルかカフネで本屋大賞ノミネート、何か賞を取ってもらいたい。『金環日蝕』『カラフル』『カフネ』と、今勢いある阿部暁子さん!
阿部先生の作品は間違いない。いつもそう思っている。
年の離れた弟を亡くしたアラフォー女性と、その弟の元恋人。弟の死をきっかけに近づいたふたりは家事代行サービスに共に携わる。全くタイプの違うふたりの距離が徐々に縮まっていき、最高のバディになる、阿部先生はそんな作品を創りだすのが本当に巧みでいらっしゃると思う。せつなと薫子が、映画を観るシーンがよかった。好きなジャンルが違うのに、死んだ春彦が好きだった映画を、ポップコーンとピザを食べながら観る。じんと来た。春彦の死にまつわる謎、薫子とせつな、それぞれの家族にまつわる物語を夢中で追っているうちに、あっという間に読み終えてしまった。
「カフネ」という言葉の意味の美しさが愛おしい。
最愛の弟の突然の死…。亡き弟の願いを叶えるべく会った弟の元恋人・せつなは血も涙もない人間に思えたが家事代行『カフネ』で彼女が作る料理は美味しいだけではなく、人の心に寄り添ったもの。無愛想で威圧感のあるせつなだが不器用な優しさの裏には何か辛い過去があるのではと読み進める。中盤からは泣けるシーンが沢山あり、語り手の薫子の不屈の精神には笑ってしまう。後半で謎だった諸々の事が判明するのも良かった。人間て面倒くさいし厄介だけど1人では生きていけないのだと優しく語りかけてくる様な物語だった。個人的にとても好きな作品。