あいにくあんたのためじゃない
柚木麻子
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刊行日 2024/03/21 | 掲載終了日 2024/11/27
ハッシュタグ:#あいにくあんたのためじゃない #NetGalleyJP
内容紹介
「他人に貼られたラベルはもうたくさん。自分で自分を取り返せ!!」
配慮、忖度、一切なし。柚木麻子が贈る、最強エンパワーメント小説が誕生!
痛快で爽快!軽快にこの世を生き抜くための短編集!
過去のブログ記事が炎上し、仕事を干されているラーメン評論家の佐橋はバッシングに耐え兼ね、謝罪文をSNSに掲載した。すると同業者より、佐橋がかつて取り上げてから出禁になっていたラーメン店の店主が、佐橋に来てほしいと言っているとのメッセージが届き――(「めんや 評論家おことわり」)
出産を控え、もどり悪阻とコロナ禍で大きな不安を抱えていた升のもとに、SNSで知り合った友人の母が訪ねてくるようになる。彼女の差し入れる食材と情報のおかげで元気を取り戻すが、ある話題をきっかけに、訪問が途絶えてしまい――(「トリアージ2020」)
キャスターを務めるワイドショーの打ち切りが囁かれている元アイドルの真木。起死回生を図り、動画がバズっている「MCワンオペ」を出演させようと居所を探し始めるが――(「スター誕生」)
おすすめコメント
社内も今作の話題で持ち切りです!
「これってもう、読むエナドリです!!」(20代男性)
「社会の重圧をかる~く吹き飛ばす柚木節、たまらん…!」(20代女性)
「どれも身に覚えのある辛さと痛さ……でも救われる爽快感がおもしろい!」(30代女性)
「短篇集だからこそわかる、過剰なまでの熱量を持ったストーリーテリング力に震えています。」(40代女性)
「毒もあるし過激…けれど、遠くに救いのあるような清々しさが流石と思いました。」(40代男性)
「歳をとっても人生波風だらけ。傷つき悩みながらも踏ん切り付けて次に進む主人公たちが愛おしくなりました!」(50代男性)
販促プラン
初回指定の希望がある書店の方は、ぜひ感想用紙をダウンロードしてFAX等で新潮社宛にお送りください!
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出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784103355335 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
ページ数 | 256 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
「ときめきをお金で買う必要がない人生こそ、最高に恵まれているのだ。ケチというのは、特権なのだ」
主に小説新潮にて掲載された短編集である。
デビュー以来、女性同士のビミョーな関係を描いていた柚木さんはいつからか女性の連帯を描くようになった。
そしてこの短編集は毒に潜んだユーモアかあるいはユーモアに潜んだ毒が胸をすく一冊。
誰かの「正義」誰かの「普通」それらの押し付けをはねかえせ!同じ出来事も、語り手が変われば見ていた世界はがらりと変わる。厳しくもなり温かくなる。必死で生きてる人から発せられる言葉。それは『あいにくあんたのためじゃない』自分のことしか考えていない人への痛烈なパンチ。存分に味わいました。目が覚める一冊。
今を縁取った、時代の空気の流れを物凄く表した短編6篇。
予定調和じゃなく計算された段積みあってのエピソード、生きてるリアルな会話にのめり込んで、あっという間に読み終えた。
エネルギーチャージ完了!
とにかく元気になった。
人を傷つけるような不届き者や自分中心の考えの人に、仲間で団結して逆襲する2つの短編がおもしろかった!
現代のテクノロジーを駆使して、作戦を立てて実行する物語に共感する人は多いはず。
また、仕掛けられた人が今一度自分を振り返るところは、希望が持てる終わり方で良かった。
現代を見事に映し出し、かつ愉快な作風に仕上げる柚木麻子さんに、感服いたしました。
最初のラーメン屋さんの話からグワっと惹き付けられてしまいました。
ラーメン屋さんの話が一番好きだったかな。
痛快なんだけど爽快。
今に寄り添いながらパワー全開な話たち。
読んだ人はチャージ完了。
明日からまた頑張ろ!
初読み作家さんの短編集。
お話にも言葉にも勢いがあった。
「あいにくあんんたのためじゃない」というタイトルだから自分のことしか考えてない話ばっかりなのかと思っていたけど、最後には、心地良くも悪くも、連帯感が生まれていて、おもしろかった。
どの話も短編にしては登場人物が多いのに、キャラかぶりもせず、みんな個性的で、とても魅力的だった。
自己肯定感は特に上がらなかったけれど、元気をもらえた。
著者の長編も読んでみようと思った。
久しぶりに柚木麻子さんを読みたいと思っていたところ、NetGalleyさんで新刊のプルーフを発見し、リクエストさせていただきました。
どのお話もスパイス‥いや、毒が含まれていてビリビリっと雷が走る
けど、読み終えるとスッキリ爽快な気分で元気が出たし、気持ちが上向きになりました。
シスターフッド、連帯というより共闘という言葉がしっくりくるような力強さを
感じました。
単行本が発売されたら、また読みたいです。
柚木麻子さんの作品は初期のもの(アッコちゃん、本屋さんのダイアナ)とエッセイを少々しか存じませんでしたが、本作は「スカッとする!」と人におススメしたくなる作品でした。
発想も構成もすばらしく、人のつらさとやさしさがユーモアと毒がミックスされて描かれ、ラストはほろりとする作品が多かったです。まるで短編ドラマを見ているようで、映像化を期待したくなります。
めちゃくちゃ元気をもらえる短編集。
最初の「ラーメン屋さん」の話から心を掴まれ一気に読み終えた。
一時、弱い立場に追いやられた人たちが一致団結して
見事に世界を変える。
最後の「ワンオペMC」もよかった。
爽快、痛快でチャージ完了!
物語に引き込む力が強くて一気に読んでしまった。情景やモノや季節までもそこにあるように感じられて、リアルで、コロナ禍の記録としても貴重なものになるのではないかという思いを持った。
正しいとは何なのか、この時代だからこそ色々と考えさせられる内容で、それぞれのキャラクターが読み終えた後も心の中にまだいる気がしている。
短編集ということもあり非常に読みやすいけど、ある意味劇薬なようなそんな気もしました。
柚木麻子さんの感じる怒りは、多くの人たち、特に女性たちの感じるものと通じている。無断で写真や動画をあげて、高みから中傷する輩、ぶつかりおじさん、自己中心的なものの考えしかできないひと。
エンパシーが足りない人たちへの、柚木さんの怒りの鉄槌!
シスターフッドのアンソロジーに所収されていた作品を含め、横のつながりで、悪いヤツらをぶった斬っていくさまが、も!の!す!ご!く!小気味よくて、心地よくて、スカッとする。
でも、柚木さんの優しさで、悪いヤツら、が、わたしとは違うあちら側の完全なる悪いヤツでもない、ようなところもある、、くらいの「あそび」の部分も覗かせてくれているところに、読後感がさらによくなる成分が含まれているように思う。
あー!ラーメン食べたい!
『めんや 評論家おことわり』
SNSの拡散性のマイナス面、デジタル・タトゥーの恐ろしさ。読んでいて、「ラーメン武士」のリテラシーのかけらもない書き込み、それの犠牲者の心情が辛い。でも、その辛さを糧に、仲間がいることを力にして、こんな、真逆を目指す対抗策にでるとは。10年以上も、〈辛さ〉を〈前向き〉に見事に変えて進んでいたことに、まさに拍手喝采。そして忘れてはならない。彼らは〈自分の力で自分を取り戻す〉ために立ち上がり戦ったのであり、〈復讐〉のためではないことを。だから、エンディングがこんなにも温かい。
『BAKESHOP MIREY'S』
未怜の〈やる気〉は〈やらない気〉を誤魔化すため。なにもしないことに憧れ続けていたから。
なら、最後のシーンで、香りに導かれ足を早めていく彼女は、秀実のノブレスオブリージュを期待してからか? そうかもしれない。でも、ひと口味わった時、更にその奥に潜んでいる《本当の気持ち》に気づくはず。そして、母親の軛を自ら外し、真っ直ぐに進んでいく。そう、信じてる。
『トリアージ2020』
トリアージは40年続く連続ドラマ。よこちんの母も40年の教職を務め上げ退職した。娘にとってだけでなく、母親にとっても人生と言う中で見てきた番組だったのだろう。だからこそ、梨子が抱いた疑惑。
でも、〈番組〉が人に与える勇気やつながりとは、これほどのものなのか。
『パティオ8』
ここは『パティオ(中庭)6』なのにタイトルはなぜ『8』? と首を傾げながら読み進めた。
コロナ禍によるリモート飲み会のやり取り。それは対面より話しやすいぶん、方向がそれでも爆進してしまう。その集団心理が現実でも続いていく。それをひやひやしながら読み進めると、いてはいけない人物の参加。
結局は「宮本」の一人負け、というより「美和」の一人勝ち。そして、数えてわかった。この企みの参加者は最終的には8人だったことに。
『商店街マダムショップは何故潰れないのか?』
人がたくさんいること。それが安全だと思っていた。だから、ショッピングモールの方が、シャッター街となった商店街より安心だと。
でも、ここでは違う。『ドゥリヤン』とその女主人がいるから。きっと、ずっとずっと。
そして『アンシャンテ』にも置物があった。だから、きっと〈私〉はここの主となっていくのだろう。置物を買った琴美もまた、いつかはこの地に戻ってくるのだろう。2人とも『次の世代』として。
『スター誕生』
自分のことがわかっているだけに、MCワンオペにこだわる2人。特に、配偶者であり最高に推してくれる舞衣を自分の鏡と見る真木にとっては、まさに切実なものだったのだろう。でも、拡散された動画によって彼女がどうなったか知り、自らの力で再起をかける。それは第1話『めんや 評論家おことわり』と対になっていた。
人の意思は強い。逆境に落とされてしまってもそれで道を切り開き、運命を逆転させていく。
そんな、〈自分〉として前に進んでいこうとする人達の物語が六つ詰まった、生きていくことへの賛歌。
だから装画は様々な付箋が貼り付けられたもの。それは、相手への想いが書き連ねられたもの。声では消え去る。だから消えない字として付箋に書きくて、相手に叩きつける。そうやって自分を肯定し、前に進んでいく。そんな躍動感を静かに秘めた装画。
痛快で爽快、短編集なのに、1話づつが、とっても濃厚で奥が深い。
パティオ8
中庭のあるマンションに住む住人たちが、コロナ禍で子どもたちを中庭で遊ばせて、その間に仕事をしていたのに、子どものいない住人の1人が中庭で遊ぶ声がうるさくて、エレワークの商談ができないと言ってきた。
それで、他の住人がオンライン飲み会で、相談して…。
想像を越えた結末で、驚愕。
そう、くるかーってかんじでした。
どの作品も、私の想像を越えたところが多く、斬新でした。
他にも、
めんや評論家おことわり
商店街マダムショップは何故潰れないのか?
が、すごく印象的でした。
トリアージ2020も、よかったなー。
柚子麻子さんワールドに、どっぷりはまらせてもらいました。
パンチのある痛快な展開を予見させるタイトルにも惹かれ、読み終えて、自分は自分として生きてていい!と元気をもらえた気分になった。それぞれの短編は、今巷を賑わせている様々な社会問題や身近なトラブル等が題材になっており、それぞれに言い分や立場が語られるが、そんなストーリーの中の人々や状況を、読者として外から眺めてみるといろいろと思うこと分かることがある、そのスタンスが小気味良かった。どの話も興味深く読んだが、私は「トリアージ2020」が一番心に残った。SNSのみで繋がっている人と、実生活でも交流し助けられる話は、独りでどうしようもない現状に付け込まない、人の温かさを感じ、警戒と覚悟の信用の秤が後者に傾き、良き読後感だった。
この現代ならではのお話の数々。
それぞれは全く異なるお話なのに、どれもタイトルのように痛快で
展開が気になり読み始めたら一気に読みたくなる面白さでした。
ドラマ化されたらどのキャストがいいかなんて考えながら楽しく読ませてもらいました。
痛快で、ひきつけられるようにどんどん読めます。
いい人だけ出てくる物語を好む人には、少し毒があって敬遠されるかも。
(特に、第1話)
でも、面白い。
そして、女性って強い…これが、一読しての感想です。
決して女性だけが主人公ではないのですが。
女性(マイノリティ?)が前に進むためのエネルギーを与えてくれる作品です。
『パティオ8』が爽快で良かった。コロナ禍でステイホームを余儀なくかれた、子育て世代の苦難と活躍が描かれていて、それぞれの立場を思いやる優しさや、周りが見えなくなって(自分たちの声が子どもより騒がしいこと)しまうのもリアル。実写化しても面白いだろうなぁ。
タイトルだけでもグッと引き寄せられるようなお話たち、各話にモヤッとイラっとするところ、スカッとするところが絶妙なバランスで配合されていて、価値観を問われるところ、ハッとさせられ考えさせられるところがあったと思えば、クスッと笑えるところも出て来たりするのが印象的です。
どのお話も短いけれど濃密なので、間に他の本をはさんで休憩しながら、じっくりゆっくり読みました。
ネットギャリーさんの作品紹介に
「最強エンパワーメント小説」
とあらますが、なるほど納得の読後感です。
柚木先生の作品は
『BUTTER 』
しか読んだことがないのですが、他の作品も読んでみたいと思いました。
タイトルの勢いそのままの短編集。
そうだ!と言いたくなる描写がたっぷり。
でも、男性と女性で感じ方が違うかもしれない(たぶん違う?)。
「覚醒するシスターフッド」のタイトルはそのままのほうが良かったかな?
ストーリーのあちこちに私がいる。胸がチクリとする。でもその痛みがクセになる、イヤ、快感になる。この柚木節、ちょっといいかも。今、生きていることに、息苦しさを感じている人に、おすすめします。きっと、みんな同じだと思って明日が迎えられるはず。
色とりどりの作品が詰まったお得で楽しい短編集。
トコトン腹立たしい輩がギャフンとなったり、
自分を見つめ直したりする話が多め。
爽快で面白いのですが、それだけにとどまらず
ジェンダーや親ガチャの問題も盛り込まれていて、
考えさせられる深みもあるんです!
マダムショップの短編も産院まわりの話を含め
勉強になりましたよ。
復讐劇ばかりでなく、再起を狙う男のあがきや、
不安の底にある女への救いなど、ドラマは盛りだくさん。
どのお話にも何かしらの
惹きつけられる要素がありましたね。
とりわけ『スター誕生』が凄い!
主人公が覚悟を決めるまでの流れもいいのですが、
妻のキャラが最高過ぎて。
推しと結婚した女のとびっきりで普通じゃない生き様、
みんなにもぜひ見て欲しいですよ。
(対象年齢は13歳以上かな?)
この作者が描く「ドロドロとした人間の底意地の悪さ」は極めて昭和的。にもかかわらずそれを令和のSNSという、これまた実はかなり意地の悪い悪意のコミュニケーションツールなどの小道具を使い、今どきの映えで展開してくれるのでものすごくリアルに感じる。だから令和の読者にも、私のような昭和の読者にも支持されているのだと思う。
SNSで手軽に発信できる時代、しかし発信には責任が伴う。無自覚に発信することの悪意がこの書には溢れかえっている。
最近、キラキラ女子が高級寿司屋をディスるSNSが話題になったが、たとえば冒頭の一編「めんや 評論家おことわり」はそんな騒動の出現を予言している。まさに時代を予言する物語だ。
それぞれの短編の源は、人々の日々の不満だったり、不安だったり、疑問だったりと、日常の一コマだ。そこから事件の裏を描いていく視線の鋭さには感服し、共感し、そして同時に戦慄を感じる。
時代を切り取っていくという意味では、間違いなくトップランナーの作家だ。
どの話もこれは一体どこに向かい、どこにたどり着くのだろう。と一瞬考えてしまうのに、読み始めるとそんな暇もないほど、あっという間に引き込まれてしまいました。最初に感じるなんともいえない重苦しい気分が、最後にはスッキリしたり、気持ちよかったり、勝利感が湧いてきたり。生きていれば苦しいこともあるけれど、失うことばかりではないのかもしれない。とげと共感と救いのある最高に面白い作品でした!
6つのお話が入っていますが、どのお話も「助ける」「助けられる」という関係がキーになっているように感じました。
なかでも私が好きだったのは、コロナ禍で妊娠し、不安な気持ちでいる女性が、物理的にも関係的にも微妙な距離感の女性に助けられる「トリアージ2020」と、コロナ禍で遊び場が制限され、育児と仕事に大変な思いをする女性たちが、共通の目的のためにある作戦を練る「パティオ8」でした。「トリアージ2020」は温かく、「パティオ8」は痛快で面白かったです。
「BAKESHOP~」は助ける・助けられるという関係の影に潜む支配がテーマに。「何でどいつもこいつも私に過剰な期待をかけるの?」という未怜の言葉が印象的でした。
「商店街の~」のある人物は、恐らく正義の味方的な存在なのに、なんでこんなに怖いんだろう…。映像化されたら、絶対何回か悲鳴を上げてしまいそうです。
「めんや評論家おことわり」「スター誕生」はどちらも無許可で動画をアップされた側とした側の話で、どちらも主に男性視点で語られることや自分の立場を上げるために人を利用しようとする共通点がありましたが、「スター誕生」の方がラストに明るさを感じました。シスターフッドはよく聞くけれど、本当は男性たちにも力や上下関係に依らない仲間がいたら、もっと生きやすいのかもしれないなと思いました。
柚木麻子さんの描写がリアルで、登場人物の気持ちに取り込まれそうになります。苦しい、助けて、誰かこのままの自分を認めて・・・どんよりと、しっぽりと、彼らの心に振り回されることになります。これは、どうやら、心して読み始めたほうが良いようですね。
ある意味、昔は、おとぎ話で、社会の怖さ、ひとの怖さの予行練習を知らず知らずにできていました。ところが最近はみんな言動に我慢が以前ほど無いようです。無防備な、他愛のない間違いを炎上というお仕置きで返されたりしてしまいます。この柚木麻子さんの作品は、現代におけるおとぎなのかもしれないです。
登場する人々の延々、続く言い訳。うまく行かないのには、これだけの理由がある・・・でも、それは、本心じゃないのです。それを、柚木さんは、言葉にはしないで、光をくれます。みごとに、柚木マジックに掛かってしまうのです。
強い言い訳の下に、本当の光がかくれているものですね。出会いと、勇気は一緒になって人生を変えてくれる・・・そんな光が、言い訳の叫び声の中に見え隠れします。ついには、臆病と怠惰で出来た厚い壁をホントの心が突き破る時が来る。その瞬間の光が読み手の心に残されます。文字で読んだわけでもないのに・・・
言葉はいつわります。とくに自分を弱いと思っているひとの言葉は。でも、どうでしょうか?ひとは、そんなに弱くわないですね。それから、ひとのホントはそんなによわくはないですね。
どっぷり使った思いつぶやきのあとなのに、ちょっとふしぎな、爽快感が残ります。全ては、これから、わたしの中で始まるようです。
素敵な、現代版おとぎ話。「あいにくあんたのためじゃない」・・・このことば、ホントですか?柚木さん。
ありがとうございました。
美味しそうなレシピと熱い人情。
そこに、驚くほどの毒っ気😱
人間の思い込みによる悪意って恐ろしい。
言いたい放題言い返したのを読んだあとは、
なんだかスカッとしている🤭
『めんや 評論家おことわり』
こんなラーメン屋があったなら🍜🤤
毒と悪意がすごい。簡単に人を傷つけられる
世の中なんだな、と、ずしんときた。
『BAKESHOP MIREY'S』
甘い香り漂う、夢の焼菓子店🍪🥮
善意が悪意に変わるとき。ゾッときた。
『トリアージ2020』
ドラマ「トリアージ」ファンのSNS仲間。
お母さんの差し入れの美味しそうなこと🍉🍹
関係が素敵でした。一番好きなお話。
『パティオ8』
マンションの住人たちのオンライン飲み会🍻🍺
羨ましいほどの団結!
『商店街マダムショップは何故潰れないのか?』
喫茶🍮☕の向かいの不思議な店と不思議な店主。
迫力満点で、痛快。
『スター誕生』
YouTubeでバズったMCワンオペ。
スターにはスターになれる理由があるのだなあ。
スカッとしたラスト。
6編、それぞれに面白さのある短編集でした。
タイトル通り、これぞ柚木麻子!というような短編集でした。
お腹の中に溜まっていたモヤッとしたものを出した爽快感。
笑いながら痛いところを突く感じは嫌いじゃない。
むしろ好き。
読んで元気が出るっこう言うことをいうんだなと感じるパワー溢れる1冊。
さすが柚木先生!ドーンと背中を押されて元気が出ました。
他人に自分のイメージを押し付けられたり、ラベリングされたり、評価されたり。そして全く議論にもならない噛み合わない会話のイライラ感など、日々感じる反発やもやもや感を全部吹っ飛ばしてくれました。
そして押し付けられた側だけでなく、押し付けた側にも気付きがあることにより最後はなぜかほっとします。
間違った正義感や身勝手な思い込みにより、自分もどちらの立場になり得るのだということを忘れないようにしようと思います。
リクエスト承認ありがとうございました。
どの作品も展開が気になり、読後はスッキリ!ですが・・・。
無自覚、無意識にあんた側に立っていないか、やらかしていないか怖さを感じながら文字を追いました。
単純に「面白かった」では済まない、故に多くの人に読んでもらいたい本です。
『めんや 評論家おことわり』ラーメン以外をねじくれた目線で「評価」して「ジャッジ」する評論家、
『スター誕生』自分で作り上げた虚構の世界を保つために周りの一般人のプライバシーなど知ったこっちゃないyoutber、意図せず「バズる」一般人、それを面白がる画面越しの他人、
ネットのどこかで見たことがあるような話を柚木さんの世界の中で再構築された二編も興味深かったけれど、
『BAKESHOP MIREY'S』熱く語られる夢に向かって一向に前進しない女の子に向けられる高貴なる女性のノブレスオブリージュ?
『トリアージ2020』コロナ禍、シングルで出産、SNSでつながった同じドラマを愛するあの人は本当にあの人なのか?
『商店街マダムショップは何故潰れないのか?』いやもう、まさにタイトルの通り、
こちらは現代を生きる女性たちならどこかで嗅いだことのある匂いの話というべきか、それを時に不穏に時にすがすがしく描いているこの三編が印象深かった。
今となると、やや忘れかけてきたこともある、あのコロナ禍の時期を描いた短編連作。目まぐるしく変わる状況にただ振り回されるだけだった自分に比べて、柚木麻子さんと言う人はこんな風に世間を見て、新たな物語を紡いでいったのかと思うとただただ感心するばかり。
人の心のザラリとする部分を刺激してくるところがあれば、ホロリとさせられるところもあり、完読後は拍手喝采したい気分になった。作品の並び順もとても良かった。
まさに“今”の話。
6編の独立したお話からなる短編集。
主役級の人物はもちろん、端役に至る登場人物まで、こういう人見かけるなあと思う人たちばかり。
そして、頷けるストーリー展開。
その中でも好きな話は、「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」。
私自身の子どもの頃からの疑問を解決するようなお話。
(そして、私の地元にも、こうしたマダムショップは点在している。なんなら、増えている)
あと、「パティオ8」も話の舞台となるマンションがいいなと思った。
トラブルはごめんだけど。
ラーメン評論家の佐橋の無作法な動画により、迷惑を被ったラーメン店、店員、顧客らが共闘して対抗する「めんや 評論家おことわり」
地方都市に転勤になった秀実が、お菓子を作ったこともないのにイギリス焼き菓子の店を出したいと夢みる、うどん屋アルバイトの美怜になぜか肩入れする「bakeshop Mirey’s」
コロナ禍、6世帯が住むパティオでは、中庭で子どもたちを遊ばせるのが常だった。そこに転居してきた101号室の住人から、リモワ中にうるさいと苦情が。これに対抗するために、他の住人たちがとった行動がふるっている。「パティオ8」
現代的なテーマ、ちよっと皮肉の効いた、痛快な短編集。
意外なところで「あいにくあんたのためじゃない」という題名がしっくりくる、6つの短編集。
主人公と思われる人物に感情移入していると、思いがけない展開が待っていたり、何やら秘密が隠されていたり。
それぞれの短編におもしろさがギュッとつまっています。
6編の短編集。
どれも内容が濃くて、私はサラッと読むことが出来ず、2度読んでそういう事か〜!と、柚木さんの洞察力の深さに感嘆しました。
○めんや 評論家おことわり
○BAKESHOP MIREYS
○トリアージ2020
○パティオ8
○商店街マダムショップは何故潰れないのか?
○スター誕生
どれも今の時代(SNSで知り合った、とか、コロナ禍で在宅ワークとか)を反映していて、その中で起こり得る問題と、それに対して真っ向から闘っていく人々が描かれています。
私は、団結して前向きに解決を図った「めんや 評論家おことわり」と「パティオ8」が特に爽快で大好きでしたが、それ以外も、面白かった。
例えば、「BAKESHOP MIREYS」で未怜が、夢を見ているのが楽しかったのに…という気持ち。親として、つい子供が何か言うとすぐ実現の手伝いをしたくなってしまうけれど、この作品を読んで、共感し、反省させられました。
「スター誕生」では、落ち目だった、アイドルから司会者になった真木と、YouTuberの、自己中心的な考え方から、ラストまでの心境と行動の変化は共感と希望を感じました。推しに対する妻の考え方も面白かったです♡推しと結婚する…私だったら、多分無理。毎日鼻血ダーの、何を話せば良いの?の、目の前に推しがいるなんて!無理無理無理〜、となりそうだけど…。
一つひとつがとても濃くて、
6冊の本を読んだような充実感を得られました。
短編の一つ一つの物語が全く違っていて一冊の本なのに何冊か読んだような気分になりとても楽しめた。駄目な人や嫌な人が出てくる小説は不快な気分になり早くその人が成敗されれぱ良いのにと思うけれど、その嫌な人にも光が当たって何だか希望が持てる小説だった。
この爽快感は誰かと共有したくなります!
おじさん、シングルの女性、シングルマザー、子育て仲間、商店街マダムショップが気になる地方暮らしの女性、低空飛行維持の元アイドル、世の中の片隅で必死に生きている人たちの短編集。
誰でも…と決めつけるのも良くないかもしれませんが「うっせー!」と言いたくなることってありませんか?古い価値観、他人の決めつけ、世の中の謎ルール、何より人の目と口!
ときめきをお金で買う必要がない人生こそ、最高に恵まれているのだ
この言葉は「BAKESHOP MIREY’S」の。不況に慣れた若い子にとって若い頃自分のしたいことをしてきた風の中年女性って不思議な存在なのかもしれません。この短編ではイギリスの生活やTV番組の記述があり、柚木さんらしいと思いました。
他の作品もパンチが効いています。最初の「めんや 評論家おことわり」は登場人物たちの個性が今まで読んできた本にはなくて、今後の展開が楽しみになりました。
あ〜面白かった!
ジェンダーバイアス・シスターフッド、そしてコロナ禍での人間関係。どの話も身近な出来事として身にしみたり、考えさせられたり。
ラーメンの“評論家”、確かに迷惑なヤツです。こんな人いるよねえ、チームプレーで迷惑を自覚させるシーンが爽快でした。
年齢差のある女性同士の交流が心地よい「トリアージ2020」、男同士だと絶対にこうはいかない。
ラーメン評論家氏と似た男性が出てくる「パティオ8」も面白かったです。自分は大きな仕事をしていると言い放ち、ご近所の顰蹙を買う中年男性。リモートワークあるあるてんこ盛りで、あの頃は日本中で同じような状況があったのではないでしょうか。発散の場を、大人にも子どもにも。
テイストが少し異なる「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」。監視する見守りマダムが格好いいです。
「スター誕生」は業界での生き残りを掛けた悪あがき3人が滑稽。妻とのセット売りを選択したタレントの今後が楽しみ。MCワンオペさん(柚木さんの言葉のセンス最高!)が職場や保育園で信頼されているのに、社会的に冷遇されているのには考えさせられました。
それにしても、作品中の料理描写にはため息が出ます。食材、味、調理、料理の名前、盛り付けと彩り。きっと柚木さんは料理好きなのでしょうねえ。
SNSの投稿が無法地帯で自分の意見が正しい。それが前提でマウントをとる。そんな攻撃で体も精神も壊される。そんな現代の風潮を指摘。著者の頭の中が短編で味わえる。痛快でご注意あそばせと柚木麻子ワールドが炸裂する。賛同する方もしない方も読んだ方がいい。なにしろ読みやすい。なんでSNSで炎上するのだろうか?
柚木さんは10作品以上読んでますが、トップレベルで好きでした。
美味しい食事の描写、女性を全肯定してくれるところ、は柚木さんらしいんですけど、全体的に今まで読んだ作品とはちょっとテイストが違う気がします。
まず男性目線でスタートしたのが驚きでした。
ダークな要素が少しありつつも、基本的にはスカッと終わる作品ばかりで読んでいて心地よかったです。
みんなにとってもおすすめしたいです。
表紙は少し柚木さんらしくない気もしましたが…
*めんや 評論家おことわり
冒頭の評論文のインパクトが強く、一気に話に引き込まれてしまいました。グルメ・リポートとSNSという最もポピュラーなものがタッグを組んだらこんなストーリーが生まれるんだ、と目を見張らずにいられない内容です。SNSでディスられた人達の復讐譚ですが、素材がラーメンという所が庶民受け。
*Bakeshop Mirey’s
「生きがい」って何だろうと考えさせる作品でした。未怜は夢を見ることそのものが心の支えなのに反して、秀実は夢を叶えてあげようとすることが心の支え。この二人の思惑は平行線でいることで均衡がとれているのに、秀実がおせっかいを焼いて無理やり二人の思惑を交差させてしまったという風に思えます。現実にありそうな人間の関係性がすごくよくあらわれていました。
*トリアージュ2020
SNSを通じて知り合った相手への疑問の膨らませ方が上手いなぁと感じた一遍。作中作であるシリーズ「トリアージュ」はほんのさわり部分を触れているだけなのに、このドラマを観たいと思わせるような雰囲気づくりが見事。オチが予想外に心温まる展開となり、読後感がとてもよく、本短編集の中ではこの作品が一番好きです。
*パティオ8
コロナ禍でリモートワークやZoom飲み会などが広まった状況ならではの一遍で、読んでいて、自分が参加したZoom飲み会を思い浮かべてしまいました。集合住宅が舞台となっているので、個性豊かな住人たちが登場人物が話を盛り上げていく様は「めんや 評論家おことわり」に通じる所があります。とある作戦に向けてのみんなの協力体制がちょっと出来すぎですが、最後のオチのひねりがきいていて面白かったです。
*商店街マダムショップは何故潰れないのか?
ちょっとホラーがかった一遍。自分が小学生だった頃、近所に洋風雑貨の店があって、こんなもの誰が買うんだろうという疑問がわいたことがあったことを思い出しました。本編とは違って現実にあった店はいつの間にか無くなってしまいましたが、あの不思議な存在がストーリーに使われると、何となく郷愁を感じてしまいます。
*スター誕生
冒頭から、これは一体どういう話なんだ?という疑問を持たせつつも、ストーリーは絶対に上昇気流には乗らず、むしろ墜ちていくんだよねという確信を持たせる展開。
柚木麻子さんの新刊。コロナ禍やSNSなど現代社会を描いた6篇からなる短編集。個人的に好みだったのは、「トリアージ2020」「パティオ8」「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」かな。特にマダムショップは…ほんとなんで?!って思うくらいお客さんがいなくても潰れないよね。どこにでもある。どれも読んでてさ、思わずこの作品のタイトルを口にしたくなっちゃう感じだった。読めて良かった。
パンチが効いたタイトル通りに色々めんどくさい人たちがお灸据えられる話に爽快感を感じつつ、それとは異なるテイストの作品も味わえる多彩な短編集でとっても楽しかったです。「トリアージ2020」はほんのり心が温かくなるし、「商店街マダム・・・」はちょっとホラー味ありつつノスタルジックな雰囲気も。確かに商店街に何故か潰れない謎の婦人雑貨店ありますよね。ベイクショップの話は、自分に中にもある嫌な部分を覗き見てしまった感じになりました。そして柚木さんらしく出てくる食べ物がどれも美味しそう!
はじめて柚木さんの作品を拝読しました。
最初の「めんや 評論家おことわり」から、こういう風に進んでいくのか…!と惹き込まれ、どんどん読んでしまいました。
自分にとっては、「たった、それだけ?」と思うようなことでも、他人の人生を変えてしまうこともある。
SNSの影響力は自分が思っているよりもはるかに大きくて、付き合い方を間違うととんでもないことになってしまうなと感じました…!
面白かったという言葉だけにとどまらず、なにやら、あらゆる出来事を多方面から見せつけられるような気持ちになった。物語の主人公は、登場人物全員であるということ。別の角度から見ると、主人公が脇役で脇役が主人公。そう思うと、あいにくあんたのためじゃないと言われた人にも、痛快なんだけど、同情を覚えてしまった。
個性的な短編集であり、読んでいると「あ、わかる!」「うんうん、そう思う時あるな」ってなってどんどん惹き込まれました。
人によって「正しさ」や「当たり前」は違います。
自分が正当だと思っていても、立場が変われば不当なことだったりしますよね。
モヤッとしたことを痛快に解決していく所が、ピリリとした刺激とともにすっきりするお話ばかりでした!
元気をもらいました!
ヒリヒリとした毒にあたりながら、透明人間になってこれらの成り行きを見守る緊張感にあふれる短編集。
言葉や行動が、他者をないがしろにし、傷つけ、その人生までも左右することに鈍感。
そんな存在に一矢むくいる共闘の物語である「めんや 評論家おことわり」。
胸糞悪いところから、胸がすくところまでの描写はこちらも息をすることさえ忘れてしまう。
それでもなお、わかっていなさそうなモヤモヤ感がのこるがここで、「あいにくあんたのためじゃない」というタイトルが
ピリッと効く。
そうなのだ、自分の人生として考えたとき、だれかのために生きている(部分もあるかとは思うが)というよりも
自分をきちんと保つために、生きることが大切なのだ。
しかも自分を害する存在のために、自分が左右されるのはお門違い。
だから、「スター誕生」にある、必死で生きている人から発された言葉はみんな熱を持っているという部分にも結実すると
思うのだ。
心の底をかき回してくれる短編集である。
私の中でフェミニズムといえば柚木麻子さん。
皮肉たっぷり、読了後かなりスカッとしました。
とある番組を思い出しました。
個人的としては「めんや 評論家お断り」と「パティオ8」のみんなで協力して悪者をやっつける話が好きでした。
男の人ってバカだよな〜って思ってしまう文章も最高でした。(分別のある男性すみません)
楽しい読書時間でした。ありがとうございました!
自分の世界のために正しいと思う行動する事で世界が動き、すっきりするのに全員がなんとなく救われる、優しくて痛快なお話ばかりです。
私も今の現状に対して何か少しでも行動・挑戦してみようと前向きになれました。
柚木さーーん!もうほんと好き。大好き。
最初はラーメンの世界で、あんまり興味ないなあと思ってだけど、柚木さんのインタビューを読んだら、そういう話だったのか!と思いました。
そこからまた読みを再開したら、もう一気読み。
敵を憎むしかしてこなかったけど、敵を知ることめ必要かもしれませんね。全然関わりたくはないけど。
これからも柚木さんのことは追って行きます。
6編からなる短編集。短編ながら中味濃かったです。うぬぼれた者を鋭く切り捨てたり、落ち目の元アイドルが何とか生き抜こうとするさまや、悪阻に苦しむコロナ禍の妊婦に手を差し伸べる人など、世の中多種多様な人たちがいるんだなぁと妙に感心してしまった。
キレッキレのタイトルにキレッキレの語り口。6話とも歯に絹着せぬストレートな物言いで、疾走感がある。現代人の手詰まり感がリアルだ。コロナ禍のあの空気感もみごとに再現されている話もあり、SNSでの危うい関係にも斬り込み、生きにくい今の世の中でもがきながら進むパワーを描ききっている。読みながらスカッとしてくるこの感じ、そうだよ、自分のためにやらかしたっていいじゃない。「パティオ8」と「スター誕生」が好き。
タイトル通り、登場人物たちはあんたのためじゃない。その精神でかつて虐げられていた人。かつて人気があったけれど落ちぶれた人。様々な人たちが窮鼠猫を噛む、ではありませんが、立場を逆転し、あるいは逆転させられる姿が人によっては痛快だろう。
中には、苦々しく見る人もいるかもしれない。しかし、これはコロナ禍を通じて実際に変化している男女、LGBTなどの意識の変化をしっかりと書いていると思う。
時々不思議な話もあるが、それでもタイトルからブレないお話たちがとても良かったです。
「パティオ8」のドタバタは面白かったし、「マダムショップ」は不思議な街に何とも言われぬ恐さを感じた。でも初っ端の「めんや」はのめり込めなかったなあ。いろんな訳ありが登場し、でもそれは無理にジェンダー問題にする必然性もなく、こんな扱いにかえって不快感を覚えてしまった。
概要
逆境に立ち向かい道を見つけていく登場人物たちの姿を描く6編からなるエンパワーメント小説。第171回直木賞候補作。
感想
本作はコロナ禍×ジェンダー×ネット社会などのテーマのもと、様々な登場人物たちがたくましく生きていく姿が描かれた短編集。ニュース記事によると著者の柚木麻子先生がコロナ禍で過ごしたワンオペ育児のなか小説を書いた日々が作品に反映されているそうです。
ネット社会の描写から突如としてジェンダー問題に絡んだカオスな物語が展開する「めんや 評論家おことわり」、コロナ禍という特殊な社会環境の中でもSNSやリモート飲み会で人の繋がりは廃れず、最後にさわやかな読後感や痛快感が得られる「トリアージ2020」「パティオ8」、ノブレス・オブリージュを下敷きにシスターフッドの顛末を描いた「BAKESHOP MIREY'S」、日常生活の中の何気ない疑問(何故あの店は潰れないのか?)に一歩踏み出した途端、ホラーな物語が展開する「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」、落ち目のYouTuberとテレビタレントが突如として現れたネット界の人気者にあやかろうとする「スター誕生」など、バラエティー豊かな物語が続く。突拍子のないシチュエーションも人物描写に長けた柚木麻子先生の手にかかり、説得感が醸し出され全作一流のエンタメ作品に仕上がっている。
おすすめポイント
各エピソードは一つの映画を観たかのような読後感が得られます。小説を読む際に頭の中で登場人物を俳優に置き換えて読むのがお好きな方は作品を堪能できると思います。個人的には「トリアージ2020」「パティオ8」が好みの俳優に置き換わった映像を思い浮かべながら楽しめました。