インサイド
この壁の向こうへ
佐藤まどか
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刊行日 2024/01/18 | 掲載終了日 2024/01/18
ハッシュタグ:#インサイド #NetGalleyJP
内容紹介
徹底した階級社会による深刻な格差が進んだ都市国家で、出会うはずのなかった別階級の6人の少年少女が集められた。共通点は、「不適切な行動」。豪華な食事と英才教育を施すこの場所はなんなのか…。
下流階級の孤児・キイとカイト、不法移民の少女マシュラ、父親の汚職を告発しようとした中流階級の娘マユ、国際文書偽造が発覚した特権階級の少年レイジン、そして戦争難民のタタンは、ある施設で、犯罪者として生きたくなければ資質を示せ、と試される。中・上流階級の欺瞞に嫌気がさしているレイジンとマユ。一方、キイ・カイト・マシュラは、下流階級出身の自分たちにまともに生きられる道などないと諦めていた。特権階級の排他策・ループ計画や身勝手な養子計画が明らかになり、憤る子どもたち。だが絶大な権力にどう抗えるのか。知らぬ間に操られていく自分たちの未来を変えるため、ここで出会った奇跡を逆手にとって道を切り開こうと子羊たちが動き出す。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784863897694 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
ページ数 | 224 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
極端な階級社会をもつ、地球のどこかにある都市国家キトー。その様は〈現代〉のディストピア。そこにある謎の閉鎖施設〈インサイド〉に収容された、別々の階層に属し、更に様々な来歴を抱えた6人の少年少女。 こんなオープニングから、よく読む児童文学とは全く違う、緊迫感をひしひしと感じてきた。
優遇される生活の一方で、突然行われる〈ストレス耐性テスト〉による不合理な罰。こんな年齢の、苦労し、歪み、不正を許せない、そんな子達に対しての一方的な行為。怒りを覚えるしかなかった。
でも彼らは乗り越えた。苦しみぶつかり合いながらも、自分たちを変化させていくことで。階級ではなく〈目の前のありのままの相手〉を見て判断し、その上で指摘し批判し反論していく。更に言われたことに、反発を感じながらも耳を傾ける。そうに、この6人は変わっていくことができた。それは、遠回りをするかもしれないが、より強く互いを信じる力、前に進む力につながるもの。
だから、彼らが〈アウトサイド〉に出ていった時、彼らは共に進み、改革の先駆けとなるだろう。
このような、不条理としか考えられない緊迫の続く児童文学を読むのは初めてだった。だから、ヒヤヒヤしながらも目が離せなかった。そして、6人の子どもたちが、この状況で〈自分達の関係性を変えていく〉ことに、状況に流されるだけでない『人間の強さ』を感じた。
佐藤まどか先生は、本当にさまざまな分野とアプローチによって、子どもが自ら変わっていく様子を、変われる力があることを描き続けてきた。今回、先生の新たなブレイクスルーと言ってもいい、この「緊迫の特殊設定児童文学」においても、やはり先生の描きたいもの、信じるものは、不変だった。
佐藤まどか著『インサイド』にレビューを書きました。#インサイド #NetGalleyJP
あさのあつこさんの作品を彷彿とさせるが、より今の時代とリンクしている。いま、現在の問題。厳然と存在する階級の壁。怒り、悲しみ、不満、からの脱却できるか。
「間違っているルールに服従」し、慣れるその先にあるものは。子どもたちの選択と行動をただ眩しがってるだけでは、ダメだ。我々大人は。
工藤純子さんの『ルール!』と並べて面出ししたい!
佐藤先生は、思春期の少年少女を生き生きと描かれる作家さんなので、既刊の作品はどれも面白いと信頼している。この作品で描かれる階級社会では、様々な生い立ちの登場人物たちが自分の未来をかけて「資質」を示さねばならない。そして、驚愕の「ループ計画」の存在が明らかになる。この作品の舞台は極端な設定ではあるが、現実の私たちの社会を顧みてどきっとする部分も多い。先行き不安な社会保障、国による個人情報管理、少子化…。読者に向けたメッセージが数多くちりばめられている。キイたち6人が現実の社会や政治に疑問を持ち行動を起こす姿にはっとさせられた。
この小説の中で描かれているような明確な階級はないけれど、わたしたちが今住んでいる世界にも目には見えない格差の境界線のようなものはあるように思う。将来的に特別階級と養子縁組させるための資質があるかどうかを見極めるために施設に集められた少年少女たちは、厳格に管理・監視され、ときにはストレス耐性テストのための理不尽な罰を受ける。その罰の正当性に疑問を持ち、冷静で理論的な意見を申し立て、それが改善される場面や、彼らがともに過ごす中で、お互いを知り、社会を知ることで、夢を持ち、未来への展望を見出す結末が、この本を読む人たちに響くのではないかと思いました。
最初読んでいて、この物語の社会構造の設定って破綻してない? なんて思ったのだけれどそうではなかった。現実世界の社会システムもすでに破綻しているという事実を突き付けられていたのだ。そこに恐ろしさと、また作者の強い憤りを感じた。
内容紹介では、そんな世界観の中で謎の施設に集められるとあった。このシチュエーションでよくあるのは生き残り合戦とかではないかと想像できる。
けれど、読んでみてほしい。そこには作者の人間性溢れるメッセージが溢れていた。
今、確かに世界は酷い。けれど、人はそんなに悪いもんじゃない。
そんなふうに思えた。
こんにちは。貴重な原稿を読ませていただきまして、大変ありがとうございました!大切なことが沢山つまったすごい本だと思います!非暴力で提案に漕ぎつけるところが印象に残りました。マユの「…行かないのと行けないのでは意味がちがう。」や、…食べものが美味しいというだけでこんなにも幸せな気分…、あとがきにある、…きちんとした食事と教育と医療を受けられますように。、…など、刺さりました。拝読しながら、周りの大人である自分が試されているようで大変勉強になりました。大変ありがとうございました!大変貴重な本だと思います!
「階級社会」というものが存在する国。「上流階級」「中流階級」「下流階級」そして「底辺」(ボトム)。各階級は混ざり合うことはなく、上から下に落ちることはあるが、下から上に上がることはない。食事も生活環境も全く異なり、あたかもひとつの国の中に「階級」という国が存在するようだ。
この物語では、異なる「階級」に属する六人の少年少女が「問題」をおこしたことがきっかけで、ある施設に収容され、寝食を共にすることになる。「底辺」(ボトム)に落ちる寸前の兄弟、兄のカイトと弟のキイ。中流階級のマユと上流階級のレイジン。そして不法移民のマシュラと戦争難民の旅芸人で唯一「まともな」タタン。この施設内に「階級」はなく、食事も同じものを一緒に食べる。指導者(コーチ)に反抗した者は厳しく罰せられる。カチカチの代替パン(クズパン)しか知らず、初めて口にするふかふかの小麦粉の高級パンにショックを受ける下流階級のキイ、高級パンと「クズパン」の間に位置する「流通パン」しか知らない、という中流階級のマユ、「クズパン」なら食べない方がましだ、という上流階級のレイジン。一体、どうやったら、この「階級」の違う彼等(彼女等)が互いを認めあい、更生していくのか、ページをめくる手がどんどん早くなっていく。
物語は単に「更生」の話に終わらない。収容された六人の少年少女が一緒に寝食を共にしていく中で、いかに相手の生活や事情を知り、理解し、「階級」を超えた友情に発展していくか、が登場人物一人一人に細かく焦点を当てながら、見事な筆致で読者の心に訴えかけてくる。また、下流階級に生まれた人間が「良い環境や教育」を与えられたら上流階級(ループ)にふさわしい人間になれるのか、遺伝子的に無理なのか、という難題まで考えさせられる。そして物語後半に明らかになってくるタイトルの「インサイド」の意味。あたかも海外文学のミステリーを読んでいるかのようなゾクゾク感がある。
最後に、本の「あとがき」で筆者の佐藤まどか氏が述べているように、この物語の設定は「架空の国」ではあるが「これに似た現実はあちこちに存在」している。同じく日本を離れ海外に長く住む者として、筆者の言葉には大きく頷いてしまった。英語翻訳版も期待したい。
日本は平等な国だって?そんなことない。
格差社会は広がっていることを、教育の場にいるとひしひしと感じる。
そこにこの佐藤まどかさんの『インサイド』だ。
キトーの階級社会の様子を描く筆からは「上流だから恵まれているでしょ」「下流だからかわいそうでしょ」という目線ではなく、そこに生まれたことの一様な不条理が読み取れる。
ではその様々な階級の子たちが一同に会したらどうなるのか。
それも「不適切な行動」として、親や社会構造からはじかれた子どもたち。
豪華な食事と英才教育を与えられたら、人は変わるのか。
これもまた、与えるほうの目線でしかないことに、与える側が気づく。
もちろん、衣食住が担保されることが子どもたちの心の平穏につながる面もあるが、そんな生易しくはなく、
不合理な掟などが提示されていく。
さてそこで子どもたちは変わっていくのか、またはどうなるのか。
読み応えがあり、また考えさせられる一冊だった。
一気読み必至のの面白さでした。不穏な空気を纏いつつ、主人公たちのまっすぐさに救われながら読み進め…。超強烈な階級社会。このお話を架空の世界と言っていいのか、考えさせられます。これまでの日本だったし、これからの日本かもしれない。なんなら今現在の地球上に同じような閉塞を味わってる国もあるかも知れない。主人公たちの言動、行動に、これからの社会を作る子どもたちへの強いメッセージを感じました。ただのエンタメ作品ではない深みを味わえます!
徹底した階級社会による深刻な格差が進んだ都市国家キトーで、とある実験を受けるため、閉鎖施設に別階級の6人の少年少女が集められた。
下流階級から抜け出すために、または、更生したことを示すために、理不尽なルールにでも羊のようにおとなしく従うことができるか。
一見、地球の近未来か、はたまたどこか他の星での話なのか、まるでSF物語のような設定なのだが、今現在、実際にこの地球上に存在する社会構造だ。
そして、それは、どこか遠い外国の話でもない。
下流階級の子は、そのままの階級を甘んじて受け入れるよりほかないのか。
下流階級から抜け出すには、犯罪や暴力など、腕に物を言わすより他ないのか。
上流階級の子は、そのまま、生まれながらにしての特権階級で、のうのうと暮らしていくことができるのか。
そもそもこの国に存在してはならない不法移民の子はどうなるのか。
とてもスリリングで、一気に読んでしまった。
各階級の差を感じさせる食品や服装、寝具の描写はもちろんだが、各階級の子どもたちの心理描写もとても素晴らしかった。
将来、この子供たちは、この階級社会を取り壊すような、大人になるのだろうか、なってほしい、なれるはずだ、というような、希望を感じるエンディングだった。
未来のあり得るかもしれない世界に、引き込まれた。
様々な階級にいる少年少女が、自分たちの立っている世界を見つめなおす物語だと思った。
さて、インサイドで見つめたもの、つかんだものをアウトサイドでどうしていくのか・・と
ワクワクしたところでものがたりは終わってしまう。
これからが読みたかった。
続編として、アウトサイドが出されることを期待している。
人権という言葉が意味をなさない程に階級格差のすすんでしまったある国家で、出会うはずのなかった様々な立場の6人の少年少女が集められた謎の施設。それぞれが起こした問題行動のわけ、それを矯正するためのいきすぎた試練、架空の設定とは思えない程リアルで苦しい描写もありましたが、歪んだ社会へそんなのおかしいと声をあげる子どもたちの自分で考え導きだした“意思”がひしひしと伝わってきて、まだ道の途中ではあるけど、迷いながらも獲得した未来への明るい兆しが感じられるラストがとても良かったです。
みんながみんな、考えていることをストレートに言葉にできるわけではないから、もやもやを抱えている子がこの本を通して声をあげるきっかけになれば素敵だな、と感じました。
徹底した階級社会に生きる6人の少年少女。特権階級の者たちだけがのうのうと搾取することを許され、上、中、外+底辺の階級にある者は、甘んじてそこに留まるだけが生きる術。
ある施設に集められた6人は、自分の資質を示し、「不適切な行動」をした犯罪者として貶められる立場から抜け出すチャンスを試されている。理不尽なルールを押し付けられ、始めはギクシャクしながらやりとりしたが、やがて彼らは必要な権利を捥ぎ取る行動に出る。正々堂々と管理者にぶつかったのだ。<インサイド>の不条理を乗り越え<アウトサイド>で生きる糧としようと誓い合った彼らの成長が眩しかった。どれほどの苦難が待ち受けていることだろうと気が遠くなるが、希望の灯を絶やすことなく戦い続けるのだろう。変えていけるという手応えを掴んだのだから。