国歌を作った男

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刊行日 2024/02/12 | 掲載終了日 2024/02/13

ハッシュタグ:#国歌を作った男 #NetGalleyJP


内容紹介

毎日1編。笑いと涙、驚きに満ちた13日間をお届け!
宮内悠介の紡ぐ世界は、唯一無二で面白い。

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21世紀前夜にアメリカで大ヒットしたゲーム「ヴィハーラ」。新作が出るたびに人々を熱狂させ、夢中にさせた国民的ゲームの裏側にいたのは、一人の孤独な男、ジョン・アイヴァネンコ。
友人は少なく、幼い頃からプログラミングと音楽に親しみ、たった五年生のときに「ヴィハーラ1」をつくりあげた。
その彼がアメリカンドリームを掴むまでに一体何があったのか、そしてそれでも拭い去れなかった孤独の影にあったものとは。
やがて「国歌」とまで謳われるほど膨れ上がった「ヴィハーラ」音楽の作曲者。
その生涯を描いた一遍をはじめ、13篇を収録。

宮内悠介のつくりあげる世界は、美しいだけでなく温かい。
笑いと涙、驚きに満ちた短編集。
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■■ 著者・宮内さんよりコメント ■■

本作は、「国歌を作った男」という『群像』に掲載された短編を中心に、ここ七年ほど、散発的に書いてきた短編から十作あまりを集めた、ノンシリーズの短編集となります。内容はミステリーや世話物、SFからフラッシュフィクションと雑多ですが、全体的に共通するのは、「テクノロジー」、「ノスタルジー」、「人情」あたりでしょうか。私にしては、可愛らしい作品集になったのではないかと、ひそかに気に入っています。

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■目次
ジャンク
料理魔事件
PS41
パニック ―― 一九六五年のSNS
国歌を作った男
死と割り算
国境の子
南極に咲く花へ
夢・を・殺す
三つの月
囲いを越えろ
最後の役
十九路の地図

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著者/宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ、1992年までニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部卒。在学中はワセダミステリクラブに所属。2012年の単行本デビュー作『盤上の夜』は直木賞候補となり、日本SF大賞を受賞。2013年、『ヨハネスブルグの天使たち』も直木賞候補となり、日本SF大賞特別賞を受賞した。同年に「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。2016年、『アメリカ最後の実験』が山本周五郎賞候補になる。2017年、『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞、前年芥川賞候補となった『カブールの園』で三島由紀夫賞を受賞。2018年、『あとは野となれ大和撫子』で第49回星雲賞(日本長編部門)受賞。2020年『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨新人賞受賞。


毎日1編。笑いと涙、驚きに満ちた13日間をお届け!
宮内悠介の紡ぐ世界は、唯一無二で面白い。

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21世紀前夜にアメリカで大ヒットしたゲーム「ヴィハーラ」。新作が出るたびに人々を熱狂させ、夢中にさせた国民的ゲームの裏側にいたのは、一人の孤独な男、ジョン・アイヴァネンコ。
友人は少なく、幼い頃からプログラミングと音楽に親しみ、たった五年生のときに「ヴィハーラ1」をつくりあげた。
そ...


出版社からの備考・コメント

★校了前の仮データを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

発売前の大切なゲラをご提供させていただいております。弊社では、下記のような方からのリクエストをお待ちしております。
○発売に向けて、一緒に作品と著者を応援していただける方
○NetGalleyへレビューを書いてくださる方
○自分には合わない内容だった際、どういったところが合わなかったかなど、建設的なご意見をくださる方

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読み終わりましたら是非NetGalleyへレビューをご投稿ください!
著者・担当編集ともに楽しみにお待ちしております。

※発売前作品のため、ネタバレや、読書メーターやブクログなどNetGalley以外の外部書評サイトで発売前にレビューを投稿することはお控えください。

ご協力の程、何卒宜しくお願いいたします。

★★★
作品の拡材や指定配本をご希望の書店様は
恐れ入りますが<講談社 出版営業局>まで直接お問合せをお願いいたします。

★★


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★★★
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恐れ入りますが<講談社 出版営業局>まで直接...


出版情報

ISBN 9784065331408
本体価格 ¥1,800 (JPY)
ページ数 336

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NetGalley会員レビュー

全13篇の短編集。どれもテンポ良く読めて面白い。ジャンルも様々なので、次は一体どんなお話だろうかと、わくわくしながら読み進めた。
2話目の「料理魔事件」は、ひょうひょうとしたコミカルな筆致。しかし意表を突いた結末も含めて、短いながらも推理小説として十分に楽しめる。
「パニック」は、1965年にSNSが存在したパラレルワールドの日本が舞台。実際にベトナム戦争を取材した開高健を題材に、一人歩きするデマや集団心理など、「つながる」社会の怖さを描いて読み応えがある。
表題作の「国家を作った男」では、孤独な天才プログラマーであり、国家と言われるほどアメリカ人に親しまれたゲーム音楽を作曲した男の、短い生涯が描かれる。淡々と描かれる主人公の人生に同情や共感を誘うような描写はほとんどない。しかし、筆者がはっきりとそう描いている訳ではないものの、彼が移民の子でなければおそらく起きなかったのではないかと思われる悲劇に人種問題の根深さ、虚しさや残念さを感じる。
超短編「死と割り算」には思わずあっけにとられ、少し切なくて優しい「国境の子」に希望を見る。「最後の役」では、主人公の一風変わった癖によく分からないながらも笑ってしまう。やはり超短編の「囲いを越えろ」は、あとがきを読んで納得。
孫と祖父の絆を描いた「十九路の地図」を読んだ後は、とても暖かい気持ちになる。短編集を締めるのにふさわしい作品だ。
すべて読み終えると、作者のそれまでの人生がうっすらと浮かび上がってきて、次の作品も是非読んでみたいと思わせてくれる。

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スパイスの効いたタイトルに惹かれて手に取ると、ちょっとユニーク、というか経験したことのないメニューの短編集だった。最初に登場する「ジャンク」は、なるほど筋金入りデジタルネイティブの作者の原点はここにあるのかと思わせる一品。なんとなく温かさを感じさせる筆致で、次のミステリー仕立ての「料理魔事件」にもその温もりは続く。「PS41」に至って、本作は初見全く味わいの異なる話が、デジタルテクノロジーとアメリカがキーワードでつながっていることに気付く。作者のニューヨーク体験がベースになっているそうで、体内にダイバーシティの感覚を持つことは、自在な創作のためにも大切なんですね。
メインの前に、敢えてデジタルワールドとアメリカのダークサイドを提示する「パニックー1965年のSNS」をテーブルにのせ、そしていよいよ「国歌を作った男」が登場。
国歌とはRPG世界を彩る背景音楽のことでした。ウクライナ!にルーツを持つ主人公のジョンが、ニューヨークの閉じた居場所から大成功するRPGを生み出し、その背景音楽が国歌と呼ばれるまでになるサクセスストーリー。そこには、日系人タテヤマやアングロサクソン系のチームメート等様々なバックグラウンドと能力を持つ人物が関わっている。これこそが、アメリカの力であって、世界中が憧れる部分ではないだろうか。一方でこのヒーローは、ハリウッドならいつも脇役になるコンピュータオタクの少年であり、それ故の屈折した人生が丁寧に描かれ、ハッピーエンドでは終わらない。作者は「アメリカという幻想の讃歌を書いたという点で、ジョンの曲は、正しく国歌であったのだ」と書き、誰でも参加し闊歩できる世界を、アメリカの幻想であり影だと言う。でも、それを表にしていきませんかというのが本当のメッセージではないか? 自身もタテヤマもアメリカ人だと明言する主人公のジョンは、閉じた影の世界からアメリカの光を信じているように思える。
さて、立派なメインの余韻に浸ってデザートを期待していると、さにあらず。「死と割り算」で突然リセットされる。確かにまだ半分残っている。何だこれは? 読み手によって受け取り方は様々だろうが、ちょっとキツめの箸休めに、まだまだ考えが浅いですねとチャレンジされていると感じた次第。
この後本当のメインが来るのか、それともまさかのフルコースをもう一度なのか、不思議な感覚で臨んだ後半戦の第一篇「国境の子」は、宮内さんは基本人が好きなんだなとホッとさせてくれる。そしてアメリカというより世界がキーワードだった。
その次の「南極に咲く花」は、言葉を操るプロフェッショナルとしての世界観が垣間見える。こんな知的な会話ができるカップルには憧れますね。
これが「国歌を作った男」の裏バージョンかと思わせる「夢・を・殺す」。やっぱりコンピュータオタクの少年が登場する。その才能を活かし一般的に言えば成功している彼のストーリーを通して、作者の人間に対する洞察があふれる。人それぞれが、簡単には理解しきれない大きな世界を持っている。
人の心、というか感じ方や思考は、易易とは解明できないよと「三つの月」で念押しした後に「囲いを越えろ」。もしあの東京五輪が中止になっていたらとの前提のフィクションかと思いきや、登場人物の心情描写以外は歴史的事実。前のパンデミックの時には疲弊が生む忘却という状況があったらしいが、我々は、今回はパンデミックで学んだこと、例えば他者への思いやりや温かさ、ウィルスに国境は意味をなさないこと、を忘れてはならない。これらはいずれも人間の想像力が生むものだ。分断に抗って協調と融和を。絶望ではなく希望に満ちた世界を。なるほど作者の意図が少し見えてきたようだ。本当につけたかったこの本のタイトルは「国家を作った男」かな?
「最後の役」。宮内さんの身に起こっていることらしい。こんな短編集をまとめ上げる作家の頭脳って本当に不思議です。
〆となる「十九路の地図」。ユヴァル・ノア・ハラリの言うホモ・デウスとはこんなイメージなのかと思わせる愛衣の祖父。彼の一喝は筋が通っていて気持ちがいい。デジタルテクノロジーも囲碁も、考え出し進化させてきたのは人間だ。信念、想像、創造は人間にしかない。AI、恐れるに足らず。少なくとも優秀な作家にAIは勝てないだろう。

デジタルネイティブだが、デジタルを生業とするわけではない宮内さんによる本書は、アナログ世代の小生を、更にテクノロジーが進化するこの先の世界もそんなに悪くないかもと思わせてくれた。ダブルフルコースなのに、満腹というより爽やかな読後感でした。

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文体も明晰でとても読みやすく、短編と言うことで、結末もいずれもすっきりとした印象だった。最初のジャンクという作品を読み始めた時点で、あぁ、これは楽しみながら一つ一つ味わいながらじっくり先を急がずに読んでいこうと思った。パニックという作品は、個人的には一番楽しめた。私は最初の東京オリンピックの前の年に生まれているのだが、はじめは何だか騙されそうになったけれど、あぁ、これは小説なんだと納得。、でも実名の小説家が出てきたりしてそのいじり方も楽しめた。表題の国家を作った男はとても読みごたえがあった。一人の男の一生を淡々と描写しているのだけれど、ドキュメンタリーみたいなそんな面白さもあり。国境の子は、静かに心を揺さぶる読みごたえがあった。夢・を・殺すは、共に同じ時間や場所を過ごしていても、感じかたや捉え方は全く違う。そのうすら寒さを感じた。また20代に事務員として転職した会社が店舗向けのPOSシステムを作ったりする会社だったので、用語などから、その時代を思い起こせたのも楽しかった。三つの月は、登場人物に心を寄せて、心穏やかに読めた。囲いを越えろは、今回のコロナ下のオリンピックかと思って読み始めたら...あれっという...。非常に短い小説ながらも、ワクワクした。十九路の地図は、後半のじいちゃんの勢いに意表を突かれた。あとがきがあり、一作ずつ説明がある。なるほどと思うものや、かえって意味がわからないのもあり。結局は自分が読んで受けた印象が一番。この作者の他の作品も是非読んでみたいと思った。

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全体を通して繊細で理知的な世界観を楽しませて頂きました。
麻雀等盤上ゲームやコンピュター/NSX等著者の趣味や世界観。(個人的にはNSXは懐かしい)多岐なジャンルでの良いセンスが散見されていたと思います。「パニック」の開高健等 一見俄かに信じてしまいそうになる。最後の「十九路の地図」でほっこりとした気持ちで終わる。多方面での短編作品をあとがきで見事に読み手を整理して1本の作品としてとても良くまとめてあるとも思います。 1篇1篇奥も深くとても楽しませて読ませて頂きました。

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この作品集には、時代と社会を縦横無尽に横断して語られる物語が連ねられています。読者は、作品を跨ぐ毎に、次の世界に導かれ、その世界観に浸る事ができます。どの作品でも、流麗な表現による心地良い響きが感じられます。細切れに読むのも良し、一気に読了するのも良しの、小さな名品集です。

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『ただ、古いプラットフォームの開発は、技術がまだ人の手のうちにあった時代を思い起こさせるんだ。ことによると私は、技術を人の手に取り戻したいと願っているのかもしれないな。(p14)』いろんなものが人の手から離れてしまった。宮内悠介さんも同じテイストの作品は繰り返さないお方、「ラウリ・クースクを探して」と似た雰囲気の短編群は好ましいこと限りなく、さらに「ヨハネスブルグの・・」や「偶然の・・」など自分の好みのものばかり期待したり、いい加減芥川賞なり直木賞を取ってほしいと思うもファンのワガママなのだろう。年始早々ちょっと得した気分の #NetGallyJP 読書でした。

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恥ずかしながら、作者のことは何も知らなかった。
この本を一読しながら、作者がコンピューターテクノロジー業界に従事したことがあり、米国在住経験を持ち、音楽にも関わっているのだと思った。このうちのいくつが正しいのかは知らない。
さて、この13編からなる本は、掌編、ミステリ、現代の世相を写したもの(SFと捉える人もいるかもしれないが、個人的には異なると思っている)など様々な作品が収められている。どれも興味深く、楽しい体験だった。
それは、私が想像した作者のバックグラウンドと、私自身に類似したところがあるためかもしれない。
でも、そうでない人でも、想像の翼を持つ人であれば楽しめるであろうと思っている。

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冒頭は秋葉原のジャンク品店からつながる世界のお話で、
思い出すのは「あの頃は闇のように輝いていた」というフレーズです。
ハード側の知識を持つSEとか、古いPCや電子機器を愛する人が読んだら泣いて喜びそう。
私もこのお店に行きたいです。

あとのほうを読み進めて、「輝く闇」というワードと共にハイデガーの名が出てきました。
そこから検索をかけて、
今までサブカル等を通じて得た断片的な知識がつながりました。

ハイデガーもニーチェもドイツの人でした、しかも、あの恐ろしい時代に関わっている。
第二次大戦時のその恐ろしさと、今ウクライナやガザで起きている恐ろしさは同種のもので、
そして、この本の題名になっている「国歌を作った男」ジョンが、ほぼ一人で作り上げた地下世界のお話によって伝えたかったことでしょう。

美食がらみの推理物、東村アキコ先生も描かれてましたね。
もう、笑うしかありません。愉快というか、とんちが効きすぎてます。
プロの犯行です。刑事2人も、普通のようでなかなかの方たちです。

子どもをかわいがりながら本心を理解はせず、特に本人が望まぬ無機物を与え、成長に必要な栄養を与えない生育環境。
三島由紀夫をもっと生き永らえさせたかもしれない、でも現代で確かに危険視されるSNS。
なんてことはない人々の気持ちとその集合が成す恐怖の怪物。
そのトリガーとなるのは、時としては、切実かつ純粋な悪意。

私はゲームが好きですが、基本自分でプレイするのが怖いです。
それでも怖いもの見たさのあまりにネットのゲーム実況で消化してしまったタイトルがいくつもあります。
けっこう古本にもお世話になっています。お金も物質ももったいないと思ってしまいます。
申し訳ありません。

今のポケモンは、世界中の子供と大人をつなげて、みんなを幸せにしていますよね。
わかんないとかしらんとか言わないで、今の時代はただスマホだして思いつく単語でググればいいのに。。

この本が正式に発売されたら、定価で購入します。

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少し時間があるときに楽しめる「〝夢〟十参篇」。だからか、ついつい本当にあったことなのかと、ネットサーフィンをしながら読み進めてしまう。特に、ITに纏わるリアル感は際物で、人間のエゴと絡み合う『パニックー1956年のSNS』はお勧め。緩い変化球仕込みのサスペンスがお好みであれば『料理魔事件』が懐に刺さる。心地よい文学作品を味わいたいのであれば『夢・を・殺す』を一気読み。何れにしても、ちょっと昔を振り返りながら予測できない未来を楽しめるショート・ショートは令和版・星新一さんです。

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洋風おせちのような読後感。ワインのように、ソムリエの知識で堪能できる作品もあれば、デザートのように蘊蓄なく楽しめる作品もある。Contextの理解を前提としている(と思う)作品は共感を得るには世代が限定されるかもしれないが、わからないところは読者が調べてみればいい。私はパソコン創成期の世代なので、微妙に没入感が得られなかった部分もあったが、contextは理解できていたので、特に「パニックー一九六五年のSNS」の設定は開高健も楽しんでくれるかも。読者がこの作品から開高健の思想やそのリアルなしゃべり方また小田実へと展開してくれると読書の楽しみが広がるのであろう。個人的には「夢・を・殺す」が面白かったのだが、「機械の中の幽霊」の引用の仕方はちょっと違和感があった。これは作品の主題にも関連するので、何かもう少し工夫があってもよかったのではないか。

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残念ながら、私には少し難しく感じた。色んな情報が詰め込まれていて、架空の話として読めばいいのか、現実の話として読めばいいのか迷う感覚があって混乱してしまった。その中でも、料理を作って帰る犯人の話と、韓国人の父親をルーツにもつ主人公話は、スッと心に入ってきた。

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最初タイトルを見た際に、どんな作品なんだろう?とタイトルに惹かれて読むことを決めました。中身は短編集で、家族で店を営む話から料理を作る犯行話に至るまで、本当に多岐にわたるジャンルで、作者の世界観を楽しく味わうことができました。特にお気に入りだったのは「ジャンク」。始めはジャンク店の経営がうまくいかないことや両親の仲についてなど不穏な空気が漂っていましたが、徐々に主人公が前向きになっていき嬉しかったです。「ハズレのジャンク品でもいい」という言葉に元気をもらいました。

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秋葉原のジャンクショップ、通信カプラ、MSX、パソコン通信、フォーラム。役目を終えて退場しようとするモノたちが書き手によって消えない物語へと昇華する。

作家の経験が想い出がベースになっている、私小説とも創作ともとれる作品たち。
シニカルな視線の中にも、悲痛な叫びの中にも、ポワンと灯る温かさを感じる。
それが読み手の中に残る記憶にも火を灯し、あらゆる方向に向かって物語が動き出す。

あとがきでも書かれていますが、一作ごとに工夫を凝らしているのではないかと思う。対象とその時の自分にあわせてタッチをかきわける画家のようだ。
故にどの作品が好きかで読み手の好みがわかる。
……ちなみに
「ジャンク」、「三つの月」、「十九路の地図」が好きです。
こういう話が好きなんだな、と自分を再確認できました

ブックレビュー漫画 本の漫画「国歌を作った男」
https://www.dropbox.com/scl/fi/1qo7t0r4hfa42ldwhoato/.jpg?rlkey=3c09ie92duekzqbgf1gr3fkto&dl=0
公開できないので上記からマンガの画像をダウンロードしてください。

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本の漫画
書評マンガ
https://www.pixiv.net/user/8678694/series/155805
読んだ方が読みたくなる……といいのですが

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どこまでは現実で、どこからが想像なのか、その境界がドロドロと溶け合っていて、読んでいるうちにめまいを感じ、やがて陶酔する。そんな不思議な感覚の短編集。
集められた13遍には共通点はない。あえて言えば、現実と虚構の境界が曖昧な13遍というあたり。
冒頭の「ジャンク」が好きだ。
秋葉原の外れのジャンクショップ。2階が住まいになっているこの店に、心身を壊した主人公が戻ってくる。店を手伝い始めた時、父親が倒れ、1人で店を維持していかなければいけなくなってしまう。
そして、技術者としてのスキルを活かし、AI開発用のシステムを組んで売り出したり、その解説のオリジナルガイドを作ったりと、自分なりのジャンクショップに変えていく。
秋葉原のジャンクショップには、どうやって経営が成り立っているのかわからないところがいっぱいある。昔はオーディオのジャンク品が多かったが、ある時点からコンピュータに一変した。BTOの高性能パソコンからいかにもジャンクというノートパソコン。部品取りにしかならないようなものから、ちょっと手をかければ再生できるようなラッキーパソコンまで、まさに宝の山だ。かつての香港の電脳街もこんな感じだった。そこに海賊ソフトの出店が集まり、独特な街を形成していた。
そんな混沌とした匂いがこの小説にはあった。
「パニック ー 一九六五後年のSNS」は、巧みに現実の固有名詞と虚構の創作を組み合わせた小説。音響カプラーでコンピュータ同士が繋がっていた時代にSNSがあったらというもので、NECのPC-9801をイメージした「イザナギ」というコンピュータを使ったコンピュータ通信の世界で「開高健がベトナムで行方不明になった」という呟きがなされた事件を扱う。
この事実と虚構のバランスが絶妙。ニヤッとできるところがいいのだ。
年齢的には私の15も下だが、知識や感覚がとても近く、非常にシンパシーを感じた。
8ビットっぽい表紙もいい。

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第170回直木賞ノミネート『ラウリ・クースクを探して』の原型となる表題作「国歌を作った男」を含む多彩なノンシリーズ短編集。

2ページ足らずの掌編からひょうきんだけどしっかりしたミステリまで、いろんな世界観と感性を味わえる1冊。
秋葉原のジャンク店を題材にした「ジャンク」が特に印象深くお気に入り。ジャンク品に自分や人を重ね、そのあり方について考えていく主人公。自分に重ねると少し卑屈になるが、人・特に自分が好意的に感情を向けてる人に重ねると良く見える。そんな人間心理が窺えて興味深かった。
著者の体験談と創作の境がわかり難いところも更に好奇心を擽り、深く惹き込まれていった。「あとがき」と『ラウリ・クースクを探して』を読んでから、再読するとまた新たな発見があって面白くなりそう。

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様々な起伏や濃淡を楽しめる短編集。
「ルーツ」や「思考×電子」に興味が向いているように伺える。
凪いだままや起伏に溢れたもの、思わぬところに落とし穴が待ち構えているものと様々にあり、一瞬たりとも気が抜けない。穏やかなテンポが多いのに、なぜか緊張感が漂うように感じてしまうのは、何かを記したい、突き止めたいという欲求なのだろうか。
思考の広がりを囲碁と重ね合わせた最終編がなんとも味わい深い。

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「国歌」とまで謳われるほど膨れ上がった「ヴィハーラ」音楽の作曲者の生涯とささやかな願いを描いた表題作ほか、13篇を収録した連作短編集で、以前読んだ作品から数ページの短編までバラエティ豊かな構成になっていて、著者さんの試行錯誤や引き出しの多さを感じさせてくれるなかなか印象的な物語が多かったです。

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超短編から中編に近いものまで、
作者の思考実験の軌跡をたどるような短編集。
なんとなくSFの人、という個人的印象を「ラウリ・クースク」で覆されて、
次に手に取ったのが本作。

本当に同じ作者?と思うような、毛色の違う短編が並ぶ。
SFやエンタメの空気をまといつつ、どこか純文学的な香りも漂う。
その塩梅が独特かつ絶妙で、作者ならではのバランス感覚を感じる。

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