彷徨う者たち

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刊行日 2024/01/26 | 掲載終了日 2024/01/22

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内容紹介

「あの日、流された絆があった。」

災害公営住宅への移転に伴い解体作業が進む仮設住宅の一室で見つかった他殺体。発見場所は出入り口がすべて施錠された完全密室、被害者は町役場の仮設住民の担当者だった。笘篠誠一郎刑事と蓮田将悟刑事は仮設住民と被害者とのトラブルの可能性を想定し、捜査にあたる。そこで遭遇したのは、蓮田にとって忘れがたい決別した過去に関わる人物だった。在りし日の友情と恋。立ちはだかる悔恨と贖罪。選ぶべき自分は刑事か、友か――

復興が進む被災地に根ざす人々の間で激しく揺れ動く心情と人間模様を描いた、著者渾身のヒューマンミステリー。「宮城県警シリーズ」三部作、堂々の完結編。

「あの日、流された絆があった。」

災害公営住宅への移転に伴い解体作業が進む仮設住宅の一室で見つかった他殺体。発見場所は出入り口がすべて施錠された完全密室、被害者は町役場の仮設住民の担当者だった。笘篠誠一郎刑事と蓮田将悟刑事は仮設住民と被害者とのトラブルの可能性を想定し、捜査にあたる。そこで遭遇したのは、蓮田にとって忘れがたい決別した過去に関わる人物だった。在りし日の友情と恋。立ちはだかる悔恨と贖...


おすすめコメント

社会派ヒューマンミステリーの金字塔、ついに最終章へ。

「宮城県警シリーズ」累計50万部突破!(単行本、文庫、電子書籍含む)

宮城県を舞台に起こる殺人事件に迫りながら、事件の関係者を通してその地に根差す人々の人間模様を描いた社会派ヒューマンミステリー「宮城県警シリーズ」。生活保護制度を題材に、佐藤健さん主演で映画化された第一作『護られなかった者たちへ』、震災からの復興とその闇ビジネスを描いた第二作『境界線』、そして、2024年1月26日発売予定の最新作『彷徨う者たち』では、職務と友情との狭間で揺れる絆を描きます。つねに鋭く社会問題に切り込み、かつ色濃く人間ドラマを描いたストーリーは多くの感動を呼び、シリーズ累計発行部数が50万部を突破。

最新作となる本作では、孤高のベテラン刑事・笘篠誠一郎のバディを務めてきた若手刑事・蓮田将悟が物語の軸に。蓮田の若き日の後悔と決別が思わぬかたちで邂逅したとき、彼は刑事の職務と友情のどちらを選ぶのか。ひとりの人間としての葛藤を描きながら、中山七里氏の代名詞“どんでん返しの帝王”らしい密室殺人の謎に迫る展開も読み応え十分です!

社会派ヒューマンミステリーの金字塔、ついに最終章へ。

「宮城県警シリーズ」累計50万部突破!(単行本、文庫、電子書籍含む)

宮城県を舞台に起こる殺人事件に迫りながら、事件の関係者を通してその地に根差す人々の人間模様を描いた社会派ヒューマンミステリー「宮城県警シリーズ」。生活保護制度を題材に、佐藤健さん主演で映画化された第一作『護られなかった者たちへ』、震災からの復興とその闇ビジネスを描いた第二...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784140057414
本体価格 ¥1,700 (JPY)
ページ数 296

閲覧オプション

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NetGalley会員レビュー

仮設住宅から公営住宅への移転が進められる2018年、密室での不可能殺人の遺体が発見される。

大切なものを失った者と何も失わなかった自分との分断に心を痛める刑事の蓮田。
彼は海辺の町での幼馴染みとある出来事から疎遠になっていた。

そして彼がたどり着いた事件の真相とは。
失ったものと護るもの、その狭間にある思いとは。

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仮設住宅で起きた密室殺人。
それを聞くと本格の気配を感じるけれど、宮城県警シリーズにあるのはとことん社会派である。
事件の不可解さを探り、捜査を進める過程で浮き彫りとなるのは復興の美名に隠れてしまった被災者の声。そして再開発に漂うきな臭さ。
前者、復興進捗の問題は現実でも取り沙汰されていたことであり、社会派ミステリとして確かな手応えがある。
何かをやり直すために出てくる弊害。時が経って、被災者とそうでない者の間に隔たる認識の差異。
復興事業という言葉の響きに私が抱いていたものは、あくまでも自分の稚拙な想像の上に成り立っていた幻想でしかなかったのだと思い知らされました。
その愕然を知れただけでも本作を読む意義があったと思います。
また、再開発のきな臭さには蓮田自身の問題が絡み、そこにある「彷徨う者たち」の痛切な訴えが常に心を叩いてきました。
なぜ、彼らは仮説住宅に居住し続けるのか。
復興や再開発がもたらすのは希望か。
天災によって引かれた境界線。彷徨う者たちは決して自ら進んでそうなったわけではなく、故にどうしようもない疵に、私も蓮田と同様の苦しみを味わったのです。
密室のトリック、ホワイダニット、そして決して覆せない疵からの向き合い方。
特に終盤からの畳み掛けがすごくて、本筋に関するホワイダニットが非常に印象深かった。
シリーズ完結が惜しいですね。

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2作目と同じ震災を題材に、1作目と同じ役所の職員の殺害事件を主軸に展開する本作のメインは笘篠というより、相棒蓮田だろう。
震災を機に奪われた者とそうでない者の立場の差に悩むなにも失くさなかった蓮田。自分の不用意な一言で断たれてしまった過去の友情と恋。刑事という立場で私情と公務に揺れる彼の苦悩を追いながら、笘篠と蓮田は粛粛と目指す犯人に迫っていく。
が、明確にならない動機。多分ここに中山さんお得意のどんでん返しのヒントがあるはず。ない脳ミソを振り絞って辿り着いた結末は、どんでん返しのどんでん返しに合うという、もの凄い結果に(笑) あ~~、久々に中山さんらしい社会派ミステリーを堪能させていただきました。シリーズ完結が残念なくらい素敵な作品でした。

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宮城県警シリーズ最終章。 災害の公営住宅への移転が進む中、仮設住宅で起きた殺人事件。 震災で大切なものを失くした者と、何も失くさなかった者。 復興が進む地域と、全く進まない地域。 そして、それぞれの思い。 このシリーズは本当に辛いが、今作も読み応えのある作品だった。

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震災被害で建てられた、仮設住宅内での殺人事件。
事件を調べるにつれて浮き彫りになっていく、
驚きの事実。
そして、疑心暗鬼になっていく人間関係。
「容疑者が、もし自分の旧友だったら、あなたはどうしますか…?」
という究極の問いを突き付けられるようでした。
刑事としての覚悟と、友人を信じたいとい気持ちで揺れ動く、
蓮田刑事の苦しい心の機微が、伝わってくるようでした。
バラバラになっていたピースが集まり、少しずつ修復していくような、
再生と回復の人間ドラマ。
ラストの真実に辿り着いた時、熱い涙が流れました。

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「護られなかった者たちへ」が好きだったこのシリーズ。今作も社会派ミステリーでしたが、事件にはあまりスポットは当たっていなくて社会派要素が強めな気がしました。
東北とは縁遠く、震災も経験していない身なので、このようなことが実際に現地で悩まれているのか…と目から鱗でした。
もう少し幼馴染4人の関係性が読めたらよかったなと思いました。

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宮城県警シリーズ最新作 とのことで、迷わずリクエストさせていただきました。

中山先生の作品らしく、一旦読み始めたら先が気になってどんどん加速、どんどん面白くなってゆくので、すっかり物語に没入してしい、あっという間に読み終えてしまいました。

震災などの災害は、起きた直後は各誌各局、どこでも広く報道され、私たちも注目しますが、しばらくすると新たな出来事などに気を取られる中、関心を寄せなくなってしまいますが、そうなってからも現地では震災の爪痕に苦しむ人がいるのだと突きつけられた気がしました。「迷惑系NPO」など、存在も知らなかったので、勉強にもなりました。

また事件関係者の心理や人間模様なども丁寧に描かれているので、自らの価値観を問い直すきっかけにもなりました。

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失った者と、失わなかった者。その間に流れる溝は、深く、そして底が見えない。東日本大震災により被災し、仮設住宅に住み続ける三世帯の家族。ある日、仮設住宅の中で命を奪われた男が発見される。

事件の謎を追ううちに、刑事・蓮田はかつて決別した幼なじみ達と再会を果たす。とうに過ぎ去り、二度と戻っては来ない過去の前に佇む蓮田の苦悩とともに物語は進んでいく。

失った者と、失わなかった者。

そのどちらであるかにより、この作品から受け取るものは異なるのだろう。私は前者であり、東日本大震災ではないが、住む家も持ち物の大半も失った身だ。だが、その出来事を詳らかに語ってみたとしても、多くの人々にとっては数あるニュースの一つであり、「そんなこともあった」と微かに記憶を掠めるに過ぎないのだろう。

当事者以外の人間にとって、すでに起きてしまった出来事は、あまりにも遠い。

失った側に立つ人間は、たとえ報道されなくなり、人々の関心が薄れた後も、己の中にだけある孤独と向き合うしかないのだ。その孤独を、深く、深く掘り起こした傑作だった。

この重厚な物語を読み終えたとき、この作品の中で傷ついた登場人物達の、いったい「誰」が悪かったのだろうと考えずにはいられなかった。

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災害とは人の生活を一変させる。
理不尽にも家族を奪われ、生活を奪われ、仕事を奪われ、住むところを奪われる。そうなると日常は一変する。
今日は昨日の地続きだが、明日は今日の地続きとは限らない。
特に災害は我々の想像を超えた全く別のレイヤーで起こるのだから始末に負えない。そのレイヤーに置かれた人間がどんな行動を取るのか。
このシリーズは、宮城県警を舞台に、震災に絡んで起こる事件を描く社会派だ。
ほんの一瞬で起こった震災だが、その影響はずっと続いている。もう10年を過ぎているのに、その爪痕はまだ残る。今振り返っても、自然の脅威、偉大さを実感させられる。
このように小説で丹念に描写していくことで、ことを思い返し、記憶に再び焼き付ける。そうすることで記憶は常にアップデートされ、経験は大いなる教訓となっていく。

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刑事となった蓮田と幼馴染の親友3人は、ある事件を機に疎遠となっていたが、東日本大震災を境に、14年後に復興仮設住宅で起きた殺人事件で再会することに。被災地となった故郷で親友への疑惑に苦悩する蓮田。序盤の密室から終盤のどんでん返しと、喪失を超えた彼らの友情に嗚咽すること間違いなし。映像化まで期待の星5つ!

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震災からこれほどたっても人々の心は癒えないのか。震災当時は被災地の方々を心配したのに、今はもう過ぎ去った過去と感じていたことが恥ずかした。
読んでいて、震災の傷跡が癒えずに歪んでしまっている人たちが哀れだった。それは事件関係者だけではなく、刑事である蓮田も。
その蓮田は、刑事としての立場に疑問を感じながらも、かつての親友貢を容疑者として証拠固めに奔走してしまう。そして取り調べ室での2人の緊迫したらやり取りを、息を潜めながら読んだ。頑なで、すれ違い、理解を拒絶する両者。でも、それさえも、本当の気持ちに達してはいなかったのを知り、唖然とした。
真実に関わった者全てが震災によって人生が変わった、その被害者であるだけでなく、みな真剣に誰かを何かを守ろうとしていた結果だったとは。
事件は解決した。たしかに解決はしたが、その根底にある問題はまだまだ続いていく。それを忘れてはいけない、と感じた。

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国や自治体が制度を整え、復興に向けての道筋を準備しても被災者の気持ちがすぐに追いつく訳ではない。「心が彷徨っている」の喩えが胸に響いた。死者、生者にかかわらず彷徨っている心が今なお、たくさんあるのだろう。それを忘れてはいけない、忘れないでくれ、という思いがひしひしと伝わってきた。

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「護られなかった者たち」のシリーズなんですね。2作目は読んでないのですが出だしに既視感を感じてしまうのは意図的にされていた事なんでしょうね。

今回の主人公は若き蓮田刑事。被災時に失ったものがなかったことが失った者に対して引け目を感じてしまうことになる事は実際にあるものなのか?それよりは蓮田の父が新聞記者としてスクープしたことが友人たちから奪ってしまった事を引きずっているように感じたが…。

仮設住宅で見つかった町役場の仮設住居移転担当者の他殺体。犯人は移転により利益を享受する建設会社や議員なのか?と振っておきながら最後は…。少し拍子抜け。そしてラストで知る真実。めでたしめでたし?かな。

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震災の傷跡。失ったことのない人にはわからない。確かにその通りかもしれません。少しでもそうしたことが理解できた気持ちになる本でした。ミステリーについて言えば、全く予想できませんでした。そんなに他者にためにできるのは凄いです。他方、密室トリックは思いつかなくても、なるほどと腑に落ちるものでした。

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映画化もされた生活保護制度をテーマにした第一作、復興と闇にスポットを当てた第二作、震災が奪ったものと奪えなかったもの、密室殺人事件と幼馴染みたちとの友情の間で揺れる刑事の葛藤を描いた、社会派ミステリ「宮城県警シリーズ」三部作の完結編。

失ったものの大きさは誰にも量れないのに、良くも悪くも比べてしまう心。震災で何も失わなかった事を後ろめたく感じる気持ちなど、当事者じゃないとわからない複雑な心の機微が伝わってきた。国の制度、復興への想い、結束力が間違った方向に転がる様が非常に痛々しかった。
幼馴染みたちの中で最初から最後まで逆恨みが正当化されたままだったのは、少しモヤモヤが残った。

仮設住宅のイラストがあると、事件現場をイメージし易くなってもっと良いと思った。

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震災を軸に、人の心について深く斬りこんだ作品。
主人公の宮城県警の刑事の蓮田は「自分は震災で家族を失っていない」ことが、引け目となっている。
そして、以前の自分の一言がまねいた、幼馴染との亀裂も決して心のなかで修復できていない。

それから震災後の真の復興とはなんぞや?という視点にも踏み込んでいる。
結局のところ、震災を契機に利権が生まれ、そこに付け入る者、自分のことしか考えないで勝手な行動をとる者。
法がありながらもそれがすべてではないという点を、法を守るべき刑事が様々な感情と闘いながら一つの事件を解決していくさまは、複層的でそしてスピードがある。

月日がたつと震災復興も遠く感じてしまう遠隔地の人たちへの強烈なメッセージでもある。
そしてこの本を読み終わった翌日に起きたのが「能登地震」。まだ全容も明らかではないし、被災者の人たちの
苦労を考えると胸がつぶれる思いだ。

このようなことはあってはならないが、この本は人の心への警鐘を鳴らす本でもある。

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復興が進む被災地で、いまだ癒えない傷に悩む人々の葛藤の物語でもある。あの震災が原因で突然奪われた日常。その悔しさを胸に秘め、淡々と自分のやるべきことをやりながら生きる登場人物の姿に胸が締め付けられる。被災地の復興に関わる社会派ミステリである本作は「宮城県警シリーズ」の3作目である。ただ、前作を読んでいなくても十分楽しめる内容である。誰かを想い、彷徨う人たち…重厚な読後感に包まれた。

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中山七里さんの「宮城県警シリーズ」、「護られなかった者たちへ」「境界線」に続く本作が完結編。
震災で失くしたものと失くさなかったもの、縮まることのない両者の溝。
復興っていったい何なんだろう、例え何年経とうとも、失くしたものは戻らず、心の傷が癒えることはない。
中山さんの社会派ミステリー、心に響くものがありました。
元旦の能登半島地震直後に本書を読んだので、同じことの繰り返しになることなく、失った者たちへ前回の学びを元に何かが変わることを望まずにはいられませんでした。

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震災後の被災地の現状、失った者と失わなかった者の間にある大きな溝。被災しなかった者には想像もつかない苦しみが未だにあるのだと知らされました。
ミステリーとして素晴らしいことは言うまでもないのですが、こういった現状を世の中に伝えていく1つの手段として小説があるのだと教えてくれる作品でもあると思います。

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昔の幼馴染が、片や犯人で片や警察。
片や被災者、片や被災していない者。
読んでいる先から石川県の大地震があって、
仮設住宅や復興の話は身近に感じてしまいました。
そして、実際にこういうことが起こっていたりするのかな、とも。
(政治利用や、追い出すための地上げとか。)
密室殺人の天井まで死体を担ぎ上げて窓から落とす、のは、
少し無理があるような気がしました。
死体って重そうですよね。暗がりだし。
護られなかった者たちへ 同様、映画化に期待します。

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災害大国の日本では、復興が追いつく前に次の大きな災害を迎えてしまい、それと共に人の関心も移ってしまう…
物語はそんな復興の最中に起こった密室殺人事件の真相を追う刑事を通して、被災者たちの心の叫びを代弁しているようだった。
私も被災者に必要な復興とはどうあるべきかということを全くわかっておらず、この本に教えられた。
作中の「被災した人たちは今も拠り所を失ったまま彷徨っている」という言葉が頭を巡る。

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この時に読むと、また違う気持ちになる。被災そして復興、何が復興でどこまでが復興なのか。いやがおうにも時は経ち、日常と呼ばれる日々が取り戻されたあと、その場所が注目されることも少なくなり、時に忘れられる。しかし、そこで起きていることは変わらず、失ったものは戻らない。つらい。

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ほとんどの住民が災害公営住宅へ移住した後の東日本大震災仮設住宅で殺人事件が起きる。刑事の蓮田将悟は聞き込みの中、幼馴染の知歌と再会する・・・。
皮肉としか言いようもないが、能登半島地震発生して間もなく読了しやりきれなさがより強い。嘘偽りのない願いである筈の「復興」の陰で存在し続ける2つの立場の溝は、「遠き地」に「いた」という理由で目を背け続ける、瞑る「免罪符」を持っている気になっている自分には辛くも感じてしまう。唯一とも見えてしまう救いは、幼馴染関係の変化の理由が震災だけではなく、震災前の家族の行動に遠因があることを匂わすことで、震災ですべてが一変するだけでなく、日々の営みでも絶え間ない変化が起き得ていることを忘れがちな私たちに指し示しているかのようです。
意外ながらも納得の真相に、巧みなトリックも堪能できるミステリ。

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震災前に読みましたが、年明けて心痛める思いを下に、再度丁寧に読んでみました。被害の大きさを日々伝えるニュースを見ながら、自然と自分を重ね合わせ、本の一貫したテーマである、失ったもの、失わなかったものの苦悩に苛まれる蓮田の心象風景に揺らいでいきました。震災はビジネスだ、という本音も見えつつ、実際にそこで暮らしていかねばならない被災者への寄り添いの気持ちを、今回この本で本当の意味で知ったような気がします。

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密室殺人事件発生。
震災によって仮設住宅に住む人を巡る、役所やNPO法人、政治などの思惑や心情が丁寧に描かれていました。
震災などの災害を経験していない私には、この話で知った状況などが沢山ありました。
失った者と、失わなかった者。
災害による影響は計り知れないものがあります。
それらの一端を知れたことも読んでよかったです

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読み始めたのが、調度能登半島地震の時でした。こちらは宮城の地震を題材としているので、まぁ余り気分が進まない割にはすんなり読めました。確かに自然災害もそれに関わる人災もじわじわと心を絞め殺されるような感覚になります。幼馴染の4人がそれぞれの葛藤を上手く書き表していると思います。最後がとても以外でした!又中山七里さんの次回作が楽しみです。

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東日本大震災をテーマに描いたシリーズで、
1作目、2作目読了、更に映画も観に行きました。
映画化された『 #護られなかった者達へ 』
生活保護制度がテーマでした。
復興に関わる闇ビジネスを描いた『 #境界線 』
そして、3作目の今作は、
震災から7年。
仮設住宅から災害公営住宅への移転問題を取り上げています。

まずは、能登半島地震で被災された方々に
心よりお見舞い申し上げます。

この作品を読めば、
どうしても能登の方々の事を思わずにはいられません。
私の中では、東日本大震災も記憶に新しいのに、
またしてもこのような大地震が起き、
しかも、今なお余震が続く…
日本は地震大国なのだという事を
改めて実感させられます。
 
私は東日本大震災以降、
今もローリングストック法を始め、
地震に対する備えを考え得る範囲で行っていますが、
本作のような問題には考えが及んでいませんでした。

地震は、まずその時、如何に命を守り、
自らどうやって生き抜くか、を考えておく。
そしてそのあと、
自分の人生を再生していかなければならない。
長い年月で「復興」を考えなければならないんだと、
改めて感じました。

では、人生を再生させるとはどういう事か。
経済的に生きられればそれで良いのか。

また、個人から見た自分自身の復興と、
国という観点から見た復興は、違う、という矛盾も知りました。

どうしても今起きているショッキングな事に目が行きがちですが、
これからも大地震は起きる、そういう国に住んでいるのだ、と、思うと、5年後、10年後、15年後、被災地にどんな問題が存在きているのか、を、みんなで意識して考えていく必要があると感じました。

これが最終章なのは惜しいと思います。
当事者の方が沢山いらっしゃるデリケートな問題を、
社会問題として提起して下さったからには、
実際に東北にその時が来るまで、
本当に復興がなされた姿をもって、
宮城県警シリーズ完結にしてもらいたいなぁと、
個人的には希望します。

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シリーズ最後の主役は、翳りがあって口数が少ない敏腕刑事の笘篠ではなく相棒の蓮田だ。密室状態の仮設住宅で死体が発見される。捜査を始める蓮田は辛い過去と、震災で『失わなかった者』の罪悪感と闘う。本当の意味での『復興』とはと考えさせられる。震災に遭った人々に寄り添う『復興』は本当に無理なのか。元日に起きた能登半島の地震。人を主軸にした復興が成される事を願う。震災が無ければ起きなかった犯罪を3作読んで本当に支援になる事は何なのか考えなければならない。真の復興はまだまだ終わらない。

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辛くて切なかった。
蓮田は震災で何も失ってないようで、でも喪失感がある。それをひしひしと感じた。
事件を通して蓮田と幼馴染たちとの関係がどうなってしまうのか、父親の出来事と震災がなければ関係が修復できたのだろうかと思うと読んでいて辛いと思った。
事件としては、まったく予想できなかったというか考えもしなかった真相だった。

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密室殺人が起こったところで一瞬、本格なのかな?と思ったけれど
あくまで社会派ミステリでした。

大災害で大切なものを失った者と、失っていない者
嫉妬やうしろめたさ、不条理さ
現実にもいろいろ感じている人がいて
それを、当事者でない者はすぐに忘れてしまっている
そんなことを感じさせられる作品でした。

前作を読んでいないので、これまでの伏線はわかりませんが
一冊だけでも十分楽しめます。
とはいえ、登場人物をもっと知りたくなったので、前作も読んでみようと思います。

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そこまで登場人物が多くなく、読みやすかったです。ただ、読みやすかっただけに派手な展開も無く、犯人は予想が出来てしまいました。自分も被災地出身なのですが、なにも失ってはいない蓮田と同じ立場でした。その為、当時、身近に被災者も見ており、尚且つ蓮田の立場もわかるという視点で読みました。その上で、正直ちょっとしっくり来なかったです。作者の本は好きでよく読むので、期待して読んだのですが、震災というテーマと、親友と確執が生じた原因が上手く絡まなかったような気がしてしまいました。

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震災の悲劇は、終わる事がないのか。
過ぎてゆく月日が凍ってしまった心を溶かし、日常へと戻っていくこともあるが、震災は命だけでなく、残された人の財産や、心の拠り所、これまでの日常の全てを奪ってしまう。
この本は、今もなお、苦しみ、立ち直るためにもがき苦しんでいる人の思いがいっぱい詰まった本だと思います。
声に出せない人達の苦しみを救いとる作品であり、胸がいっぱいになりました。

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東日本大震災から7年後の仮設住宅で起きた密室殺人。「宮城県警シリーズ」の3作目らしいが、私は中山七里の作品を読むこと自体が初めてだ。
 作者が巧妙なのは、三陸育ちでありながら、「震災でたまたま何も失わなかった」刑事を主人公に据えたこと。おかげで被災地以外の土地に住む大多数の読者は、蓮田刑事が家族や生業を失った容疑者や参考人、そしてかつての幼なじみたちと向かい合うとき、彼の抱える「いわれのない負い目」を共有しつつ、物語を読み進めることになる。
 ハードボイルド系の作品では、主人公が「過去の悔恨」を抱えていることが定番なのだけれど、「何も失わなかったこと」が過去の傷になっているという設定はユニークですね。
 全体的にも、密室トリックに主人公たちの過去のしがらみを絡めた構成はなかなかよくできていたし、人間描写も上々。頻出する捜査会議の描写は(本当にリアルなのかどうかはよく知らないが)リアリティがあった。
 さらには復興事業を巡る地方政界の汚職問題に話をつなげた社会派的な視点によって、殺人を端緒にした物語の普遍性も膨らんでいる。個人的には「地域のつながりが切れるのが嫌で仮設住宅から出られない」という被災者の気持ちはあまり理解できないのだけれど、それは本作の評価とは別の話ですね。

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この生活に未来があるのか。この先を信じていいのか。とても胸が苦しくなる物語でした。
でも決して目を逸らしてはいけない。
そんな鏃を受け入れるために突きつけられるような感覚はこの先もずっと持っていかないといけないなとしみじみと感じています。
いまも、被害に遭われて避難生活を送っている地域のニュースを毎朝、観ています。
この悲しみ、苦しみを忘れないように。
これからもずっと人は歩み続けなければなりません。
今作は忘れないようにしておくための物語だと思います。

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護られなかった者達へ、境界線 に続くシリーズ3部作の完結編。

同じ被災地で失った人と失わなかった人との溝、失わなかった人が感じる引け目、自分自身は当事者ではないけれど、とても考えさせられる。
先日の能登の震災もあり、復興の終わりとは何か、そもそも終わりはあるのか、ぐるぐる考えてしまう。
読みごたえあるシリーズでした。

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東日本大震災によって失われたものを抱えて生きる人々の哀しさが胸に迫る作品であった。
この作品はフィクションではあるが、誰もが傷つきながらも“復興”という名のもとに嫌でも“日常生活”に戻っていかなくてはいけないというやりきれなさを感じた。
この度能登で起きた震災で、再び多くの人々が苦しんでいる。
皆に本当の意味での“復興”の日が訪れることを願ってやまない。

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解体と復興、援護と庇護...各章のタイトルにもあるように、本作は相反する
意味の感情が人間の心に同時に沸き起こるその時の葛藤を描いているように
感じた。
職務か友情か。震災で何も失わなかった者が失ったものに引け目を感じる。
震災は建物だけでなく、人の心も破壊する。

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人は皆彷徨いながら正解を探しているのかもしれません。失ったものと失っていないもの。同じ震災被害者でも感覚は大きく違い、本当はそんなことはないはずなのに申し訳なさを感じてしまう感覚も分かる気がした。
舞台は絶賛退去推進中の仮設住宅。
町役場の担当者が密室で殺害される場面から物語が始まります。
ただのサスペンスではなくその背景に何重も隠された社会情勢や人の感情がどんどん渦巻いていきます。仮設住宅が建つところは安全な一等地。永住する場所でもなく最終的には撤去することが初めから決まっています。
引越した先はコミュニティから隔離、同じような生活が送れるとも限らないし家賃もかかる。
復興は誰かの犠牲によってなっている。ということも忘れてはならないと思いました。
お正月に石川県沖地震が起きました。作品を読み自分に出来ることをしようと再確認しました。
色々な気持ちが溢れてくる作品でした。
犯人はすぐに分かってもいい、その先のことを読んでもらいたい。と雑誌のインタビューで話されていました。
中山さんが人気な理由が分かります。
シリーズ3部作の最終巻とのこと。前作も読みたくなりました。

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事件は南三陸町の仮設住宅で起きる。災害公営住宅の移設に伴い住民達は期限内への転居を迫られ、残った住民の説得に当たった担当者が殺害される。宮城県警の蓮田は南三陸出身だが被害から逃れていた。その負い目と後悔を持ちつつ、被疑者となる友人達への捜査を進める。情を排し、職務を全うしようにも心は揺れる。能登の地震で仮設住宅の建設が急がれる中、その先の復興という名のもとにたむろって来る輩たちの悪徳ビジネスが起きないように願うばかり。国の施策が住民の心に寄り添ったものでありますように。

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今作は笘篠の相棒蓮田が主人公。震災で何も失わなかったことを負い目に思って生きている。確かに東日本大震災はひどい被害だったけど、そういう感じになるんだろうか。東北の被害が大きかったところは、今どんな感じになっているのだろう。とりあえず迷惑なボランティアにはならない様にしようと心に刻んだ。

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災害、被災者、暗い話なのはわかってるから余り好きではないテーマだけど、中山七里さんの作品は好きなので読みましたが、やはり苦しい話でした。
でもミステリーとしてはとても面白く、最後は一気に読んでしまいました。

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宮城県警シリーズ3作目。解体を予定している仮設住宅の一室で、町役場の仮設住民の担当者の他殺体が密室状態で見つかる。今回は笘篠刑事ではなく、共に行動する蓮田刑事視点。幼馴染たちとの関係がある出来事で崩れ去った過去がある彼だが、時を経て事件関係者と刑事という立場で再び出会うことになる。彼らとの間には更に別の境界線ができていた…。家を、仕事を、大事な人を亡くした人の想い。何も失くさなかった人の持つ罪悪感と痛み。報道から感じていた復興の意味を考え直さずにいられない。読後「彷徨う」という言葉の重みがずっしりと残る。

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入居者が残りわずかとなった仮設住宅で、仮設住宅担当の町役場職員の遺体が発見される。現場は密室の不可能犯罪。笘篠刑事と蓮田刑事は捜査を開始するが、聞き込みの最中に出会ったのは蓮田の幼馴染み達だった。

被災地の復興は喜ばしいことだと思っていたが、そのために無理をしなくてはいけない人達がいることを知った。同じ被災者で負い目を感じるというのも想像できていなかった。町は復興しても人の心までは元通りにはならず、喪失感や悔恨がずっと胸の奥にあるのだろう。まだまだ彷徨っている人たちはたくさんいる。

東日本大震災を忘れたつもりはないけれど、やっぱり過去のことという気持ちになっていた。迷惑系NPO法人のことも知らなかった。もっといろいろなことを知らなくちゃいけないと思う。
完結編と言わずもっと続けてほしいシリーズ。

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東日本大震災から13年経った。五年くらいで形状の復興で国は幕引きをしようとしているのではないか。そんな七年後の仮設住宅も残り3世帯になった。解体工事のプレハブで土木課の職員が鍵の掛かった密室で殺された。捜査する刑事は地元の幼馴染を調べる中で再会する。ちっとも復興なんかは終わってない。震災で家も家族も近所の絆も失う。長い仮設住宅生活にもつかれ移転するのも金銭的や精神的にも。震災直後からカネが悪の道へ導く。以前の日常はこない。さて密室だろうが答えはある。そんなミステリー小説。

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中山七里さんの東日本大震災をテーマに据えた「宮城県警シリーズ」3部作の完結編ですね。仮設住宅の内部で起きた密室殺人事件。被災地で金儲けを企む悪い奴らの醜い構図。密室トリックと意外な犯人の趣向はミステリーとしてまずまずの満足感が得られました。しかし人間ドラマとしては未完の不満が残りました。過去の不幸な事情により決裂した人間関係が修復されず平行線のままなのが悲しいです。互いに歩み寄って友情を取り戻す物語を著者には書いて欲しかったですね。未来に希望を抱かせ心の通うストーリーを望みますね。

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震災のあの日、どこにいたかで生死が別れた。善き人であったから助かったのではない。悪事を働いたから助からなかったのでもない。災害を契機に社会から取りこぼされて生きている人々をに焦点を当てた重厚なミステリだった。
この作品では、刑事の蓮田とその同級生が中心となって物語が進む。かつて決別した大切な友、想いを寄せた相手。彼らは仮設住宅で起きた殺人に関わっているのだろうか?登場人物の立場や心情が複雑に絡み合い、真相にはなかなかたどり着けない。毎作品感じるが、七里先生のどんでん返しは期待を裏切らない。読後、悲しみややりきれなさが残りつつも、救いもあり、自分の心が大きく揺さぶられた。

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宮城県警シリーズ第三作ということを知らずに読んだ。

一作目の『護られなかった者たちへ』は映画化もされており、読みたいと思っていたのだがこれまで機会がなかった。
前二作をすっ飛ばしていきなり最終章と言われる小説を読んだのだが、とりあえず読むことはできた。
東日本大震災で同じ県内で被災していても、それがどの地域で被災したのか、どれくらいの被害を受けたのか、身内を失ったのか...人によって状況はまるで違う。
それがかつて同じ地域に暮らした仲間達に隔たりを生む。

復興復興と政治家は調子よくいうけれど(最近は言いもしなくなった)、三作目を読んだだけでも震災の爪痕が癒えることはないのではないかとおもってしまう。
これは『護られなかった者たちへ』『境界線』を読まねばなるまい。

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