「泣ける話」をひとつください。
あきらめの悪い編集者と忘れ去られた推し作家
いのうええい
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刊行日 2023/12/20 | 掲載終了日 2023/12/10
ハッシュタグ:#泣ける話をひとつください #NetGalleyJP
内容紹介
魔法をかけよう。
少しだけ、この本の世界が、あったかくなるように。
奈良を舞台に「泣ける話」を巡って巻き起こる、
編集者VS作家の「泣けて美味しい」攻防戦を召し上がれ。
☆ ☆ ☆
【ゲラを読まれる方へ大切なお願い】
・校了前のデータを元に作成しています。刊行時には内容が異なる場合があります。
・レビューなどでのネタバレ行為はネットギャリーのみならず、外部サイトやSNS等の多くの方が目にする場でもお控えください。
・自分には合わない作品だった場合、今後のためにも建設的なご意見をよろしくお願いします。
※今作は作者のご厚意によって提供いただいた校了前の大切なゲラを公開をしています。
※今作にこれから出会うであろう多くの読者のためにも、ご理解の上、素敵なレビューによる応援とご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
☆ ☆ ☆
【あらすじ】
文芸編集者の柴桜丞(しば・おうすけ)には、どうしても原稿を書いてほしい作家がいる。
その名は鈴代凪(すずしろ・なぎ)。彼は、幼い頃の柴に「物語の愉しさ」を教えてくれた恩人だ。
幼い柴に凪が語ったのは、昔話の「ハッピーエンドアレンジ」。
たとえば『マッチ売りの少女』。最後のシーンがつらくて読み進められない柴に、
凪はふんわりと幸せな要素をちりばめた、でたらめなラストを語って聞かせ――。
……そして大人になった柴は、マイペースな執筆活動(ほぼ消息不明扱い)を貫く凪に、
彼の作風とは違うが売れ筋の「泣ける小説」を書いてもらうため、彼の開く「古書店兼小料理屋」へ今日も通い詰める。
しかし、柴が凪にそれを書いてもらいたい理由は、本当は別にあって――。
【目次】
前章:おれの推し作家は「泣ける話」が書けない。
柴の栞:はじまりの頁
起:泣き虫赤鬼のトモダチ大作戦
柴の栞:本と猫と、推し作家
承:マッチ売りの少女はひとりきりで目を閉じない。
転:人魚姫の愛は言葉を超えたっていい。
蒼井の栞:無愛想同期のひとりごと
結:王子とツバメの幸福を探して
終章:世話焼き同期は黙って飯を食えない。
凪の栞:ちょっと疲れたら旅日和
◆著者について
いのうえ えい
奈良県出身。2018年より、小説投稿サイト「エブリスタ」にて作品を公開。
2021年、ことのは文庫『ヨロヅノコトノハ やまとうたと天邪鬼』にてデビュー。
現代日本語学専攻だが、ときどき文法やイントネーションが変だと言われる。
好きな四字熟語は「笑門来福」、苦手な四字熟語は「整理整頓」。
◆イラストレーターについて
Tamaki(たまき)
イラストレーター。『鬼人幻燈抄』シリーズ(双葉社)、『滴水古書堂の名状しがたき事件簿』(講談社)、『いつかの冬、終わらない君へ』(ポプラ社)など書籍装画多数。
出版社からの備考・コメント
◎拡材や新刊配本のお申込みにつきましては、
【マイクロマガジン社 販売営業部】までお問い合わせいただけますと幸いです。
件名に「ことのは文庫 12月新刊の注文」と明記の上、
「番線 or 番線情報」「書店名」「ご発注者様名」をご記載いただき
【hanbai-bceigyou@microgroup.co.jp】までメールにてご連絡くださいませ。
※受注状況によってはご希望数より調整が入る可能性がございます。予めご了承ください。
※価格は予価です。
◎こちらの新刊タイトルのお申し込み締め切りは2023年11月13日迄承っております。
おすすめコメント
◆編集者と作家、それぞれの「泣ける話」に対する思いが胸を打つ。思いやりあふれるヒューマンドラマ。
いつかお互い違う形で、この世からいなくなることが決まっている。
そんな二人が、相手を大切に思い、自分ができることを精一杯したいと試行錯誤する姿に非常に心を打たれます。
◆昔話のハッピーエンドアレンジが、どれも泣かせる!
「マッチ売りの少女」「人魚姫」…有名な哀しい結末が、本作の中で優しさいっぱいのアレンジでよみがえります。
著者オリジナルのラストシーンは、笑顔と優しい涙を誘うこと間違いなし!
◆出身作家ならではの目線でお届けする「ご当地小説」
舞台のモデルは「奈良」。奈良出身作家ならではの視線で描かれる、
古都の魅力と美味しいご飯、素敵なおとぎ話に満ちた、あたたかな世界観が魅力です。
販促プラン
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拡材に使わせていただきます!
①応援レビューを拡材(帯またはPOP)やECサイトに使用させていただきます!
期間内にいただい応援レビューを、拡材に使用させていただく場合があります。
掲載文字数に制限がありますので、一部抜粋の上、整理した文面になります。
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※掲載時には事前にご連絡・確認をいたします。
※サイン本の発送は国内に限らせていただきます。
※出版社にメールアドレスを開示設定されていない場合は、送付先の確認のご連絡ができかねますのでご注意ください。
《拡材用の応援レビュー募集期間》
~2023年11月10日(金)午前10時
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《特設サイト応援レビュー募集期間》
~2023年11月10日(金)午前10時
作品の拡材や指定配本をご希望の書店様は、
恐れ入りますが『マイクロマガジン社 販売部』まで直接お問合せをお願い致します。
出版情報
発行形態 | 文庫・新書 |
ISBN | 9784867165058 |
本体価格 | ¥710 (JPY) |
ページ数 | 256 |
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NetGalley会員レビュー
賞まで獲ったのに書籍が出版されず行方知れずになってしまった凪さん。もう一度凪さんのお話を望む編集者の紫くんはついに凪さんと会うことが叶います。紫くんの凪さんへの熱い想いがひしひしと伝わってきます。少年時代の図書館で紫くんが惹かれた美しい人、その人の語るお話は悲しい結末をアレンジされていて涙を流さなくてもいいように、優しく終わりを迎えます。
喧嘩ばっかりしてる同僚編集者の蒼井さんが思いの外、紫くんを理解していて微笑ましかったです。
めでたしめでたし、じゃなくても人生は続いていくから………。本と優しい想いが繋ぐ凪さんと紫くんのお話に温かい気持ちになりました。想い続けるって素敵なことですね。
幻の作家鈴代凪は難攻不落だ。
天使のような容姿、
掴みどころのないふわっとした性格、
心地よい穏やかな凪の声が聞こえてきそうだ。
そんな凪に振られ続ける編集者柴とのやりとりがとても愛おしい。
と同時にとても寂しい。
私も蒼井と一緒にこの難解なお伽話の行く末を見届けたい。
幼かった柴を救ってくれた凪に、どうか限りなく優しいめでたしめでたしを。
柴と凪がふたりでいる時、そこは幸せな空間になる。お互いがお互いを必要とし、思い遣ってはいるものの、肝心なところでは柴も、凪もわがままだ。けれど、それは少しでも長く一緒にいたいと思うからこそのわがまま。幼い頃、悲しい結末を嫌った柴に凪が語って聞かせた優しい結末の物語や、凪が柴に作る料理から愛情があふれ出ています。凪が書く、「幸福の王子」の結末がどうなるのか、ふたりで過ごす時間の中で、ゆっくり紡いでいくといいなと思います。
どうか柴と凪のこの温かで幸せな時間が永遠に続きますように!と願いつつ読み進め、
読み終わった後はより一層強く願ってやまず。
随所随所に懐かしい絵本や物語のお話が出てくるので、いろんな記憶も織り交ぜながら楽しめます。
最終章の旅は柴だけでなく読者のこちらまで旅している光景が目に浮かぶくらいワクワクして、
これで終わりではなく、この先もふたりの時間は続いていくような余韻を残していて安心。
柴の同僚の蒼井もふたりに負けじとなかなかな存在感。こんな同期がいたら柴も心強いに決まってます。
良い意味で書名の印象から裏切られました。
小学生だった自分に「誰も泣かない話」を語り聞かせてくれた鈴代凪に
今度は「泣ける話」を書いてほしいと望む柴桜丞。
編集者と作家という立場で再会を果たした二人の駆け引きめいたやり取りが面白く、
柴が凪に「泣ける話」を書かせたい理由や凪が抱える事情を知ったときに思わず涙がポロリ。
柴と同僚の蒼井の掛け合いも愉快。
今よりもっと本を好きになれる、温かくて心優しい物語。
どうしても凪に原稿を書いてほしい柴。
凪は幼い柴の願いを叶えどんな物語もハッピーエンドにしてくれる魔法をかけてくれた人だった。
なぜ凪は小説を書かないのか、そしてなぜ柴は「泣ける小説」を書いてほしいのか。二人のほのぼのして優しい関係が心地よく、なぜという思いを持ちながらも、ずっとその関係が続いてほしくて答えを知りたいようで知りたくない、そんな思いで読み進めました。
子供のころ読んだ本がたくさん登場し懐かしい気持ちになりました。子供のころ読んだ本って大人になってみると、あれ?こんな結末だったかなと思うことありませんか?凪がかけてくれた魔法のように子供なりにハッピーエンドアレンジをしていたのかもしれないなと思いました。
奈良の商店街、おしゃれな書店、そしてラストシーンの場所。
よく知る風景が思い浮かび、柴と凪とともに奈良の町をのんびり歩きながら眺めているようでとても楽しかったです。
主人公の「おれ」柴桜丞のあだ名が『豆柴』なのには思わず吹いた。でも、彼の独り語りを読んでいるうちに、その人柄に引き込まれていった。その優しさ、誠実さ、一生懸命さ。更に、相手を悲しませることに対する怯えにさえ。そんな彼の「編集者の今」と「かつての小学生時代」を行きつ戻りつ、慈しみに満ち穏やかな雰囲気に包まれた、凪とのやり取りを追っていく。
そんな関係がいつまでも続いて欲しい。ずっと浸っていたかった。だからこそ、幕間劇での蒼井と凪とのやり取りは辛すぎた。でも、そこでの蒼井の最後の言葉、それに救われた。読み手も、そしてあのふたりもきっと。
だからこそ、『結』をとても丁寧に読んだ。桜丞の想いに寄り添うように、凪のありようを確かめるように。
そして『最終章』。蒼井から見た最終章。2人が紡ぐお伽噺話をずっと見守る役目を買って出た、彼にとってはこれからの最終章。
そして凪から見た最終章。これからずっとずっと続いていくだろう、ふたりの日常の一片。
そう。これは、相手を想い続けることと、その想いを受け取っていくこと、その両方の大切さ、素晴らしさを教えてくれる、物語。
本好きにはたまらないお話なんじゃないだろうか?
主人公(の一人)の柴が、本の編集者ということで、童話や物語について触れられることがとても多い。柴は泣いてしまうお話が苦手だから、凪がこの話をどう良利するのだろうと考えるのも面白かった。
全編通して、ほんのり暖かい何かが通奏低音のように流れていて、そうした物語だと思っていた。
柴が幼い頃に通った図書館って、どんなところだったのだろうと考えている時も、まさかこっちに話がいくとは思っていなかった。
起承転結の「転」に当たる、「転:人魚姫の愛は言葉を超えたっていい。」で、「あれ?」「???」と思い、
次の章、「蒼井の栞:無愛想同期のひとりごと」で、そうなのか!と理解する。
同期の蒼井は、そのことをはっきり理解しているけれど、一方の柴は、なんとなく分かっているようなそんな感じ。
この2人の関係も、柴と凪の関係に劣らず、面白い。
巻末に参考文献が掲載。作品中に出てきた童話や小説が掲載されていて、嬉しい。
子どもの頃、孤独を感じていた柴をすくうきっかけになった先生の言葉。
図書館で出会った美しい人とのやわらかくあたたかな時間。
大人になり編集者となった柴と、落とせない作家凪との出会い。
美しい人は賞を取りながらも行方不明になっていた凪。
凪と柴の日常の風景がとても優しく、あたたかな気持ちになる一冊。
お互いの想いも事情もあるけれど、ひとつひとつの言葉も優しく、心に伝わる作品です。
本は人の心を豊かに、人の言葉も人の心を豊かに優しくするのだなと思います。作中に出てくる作品を思い出しながら、または、新たに読んでみるのもよいかと思います。
頭の中の気持ちを伝えたいのにうまく言葉できない…柴の気持ちがわかりすぎて、頷きながら一気に読みきりました。周りの支えの大切さに改めて気づかされました。もちろん伝えないと伝わらないけど、急ぐ必要はないんだなって。
ページをめくるごとに相手を優しく包み合う
編集者と作家の思いやりの逆マトリョーシカのようなお話でした。
この2人の物語に終わりがきませんようにと、祈るような思いで読み、まだまだ先のお話を読み続けたい気持ちでいっぱいです。
凪のレシピも本当に美味しそう!
こんなふうに人が人を思いあえれば、もう少し優しい世の中になっていけるのにと思いました。
惚れ込んだ作家に「泣ける話」を書いてもらうべく、彼の営む「古書店兼小料理屋」に日々通い詰める編集者。自分を本の世界に引き込んだ飄々とした作家との、優しさの交流を描いたちょっと不思議な物語。
「本」への愛情はダイレクトな二人なのに、肝心な所はいつも互いに顔色を窺って、大切だから踏み込めない不器用な葛藤が繊細に描かれていた。
幸せにアレンジされた少し悲しい昔話に、ポジティブな気持ちをわけてもらえて、自然と笑顔になった。
背伸びせず、等身大の日常への感謝が込められた作品に、特別過ぎない心地好さを感じた。
美味しそうなご飯や、夢のような「脳内旅行」など、お伽噺の中じゃなくても出来るちょっとした気分転換もリアルで面白かった。
ところどころに差し込まれる童話があたたかみを増す。小さい頃に出会い、失っていた人との再会。でもその再会には隠された秘密があり…。社会人になっても子どもの頃のたいせつなものは変わらない。しっかり心に留めて大きくなった柴とのやりとりがあたたかい。
奈良公園近くの隠れ居酒屋が舞台の小説。あまり奈良色は出ていませんでしたが、奈良在住の私にとってはうれしかったです。昔、読み聞かせしてもらっていた絵本を通して、様々な物語が静謐なタッチで描かれており、読後感もよかったです。
幼い頃に本を読み聞かせてくれた図書館のお兄さん。成長して敏腕編集者になった柴は、その時のお兄さんにもう一度物語を書いてもらうべく、猛アタックをしかけるが…。
柴と凪、柴と同僚の蒼井のかけあいが面白く、遠慮がない中でも互いに気遣っているのが、ところどころで垣間見えるのが素敵。
「泣かなくていいお話」をねだった少年・柴と、「泣ける話」を執筆してほしいと請う編集者・柴。
一見相反する要望に「?」となりながらも読み進めていくと、その裏に込められた想いに胸が熱くなる。
少しミステリ要素も含みつつ、全体的に心がぽっと灯るような、温かなお話。
文学賞を受賞しながらも姿を消した作家とその謎めいた作家と接点を持つ編集者の交流。
眉目秀麗な作家と一途な編集者の交流は、謎めいた部分が多々ありながらも穏やかで優しさに満ち溢れています。少しずつ謎が明かされていくと同時に高まる不穏な気配を宥めるかのように提供される美味しそうな料理と心温まるような絵本の数々。絶妙なバランスの中で徐々にたかまる結末の予想はせつなさを増していくかのよう。そして余韻を含ませる着地点は秀逸です。
本(物語)の力を最大限に活かし、信じているような作品。
編集者・柴と、“推し作家”で不思議な小料理屋店主・凪とのやりとりに心和まされた。
凪が柴に語る物語や心尽くしの食事に柴へ向ける愛情を感じ、胸の辺りが温かくなった。
ふたりの関係が途切れてしまうのではないかという不安を感じつつも一気に読み切った。
ずっとずっとふたりを見守っていたくなる一冊だった。
そして、凪の料理は本当に温かそうで美味しそうで、自分も食べてみたいと思った。
凪さん、子供の頃に出会っているはずなのに、変わっていなさそうなので、???と思いながら読んでいたら、そうですかーと読み進めてびっくりしました。違和感は気のせいではなかったんですね。ほんわかした気持ちになるお話でしたが、これ途中?と思う終わり方でした。続編ないのでしょうか?
読み終えたとき、あたたかい気持ちと寂しい気持ちになりました。
凪の柴を思う気持ちが、兄のような、母のような時に恋人のようないろんな愛の形を持っているように感じました。
喧嘩ばかりだという同僚の蒼井からも、実のところ見守られている感が微笑ましかったです。
『王子とツバメ』がどんな最後になるのかこっそり聞きたいです。
優しい時間が流れる文体で、不思議な雰囲気を包み込むように感じながら読みました。
恋愛要素がないのに、人を愛おしいと思う気持ちがそこかしこに溢れているところがとても素敵でした!
人を想い、人に想われることで存在するのは凪だけではなく、私達もそうかもしれません。
まだまだ、凪と柴の優しい関係が続いて行くとこが嬉しいラストでした!
後半から今まで想像していた物語のイメージが一気に変わり、何かあるとは思いながら読んでいましたが、まさかこんな展開になるとは。
涼やかに流れる風の中にふんわりと優しい光が灯される。
柴と凪の関係をそんなふうに感じました。
ずっとずっと何気ない幸せな時間が続きますように。そう願わずにはいられないとても心に残る物語でした。
読み終えた後も何度も何度も思い出す心を温かく優しく包み込んでくれる作品でした。
幼い頃に近所の図書館で童話絵本を読み聞かせてくれたお兄さん・凪(なぎ)を慕い「泣ける話」を書いてもらおうと古都・奈良の某所の古書店兼小料理屋に通う今は出版社で働く柴(しば)と彼を豆柴と呼ぶ嫌味な同期の蒼井の3人がおりなすミステリアスな幻想系ファンタジー小説の怪作です。冒頭を読むと凪を美人と表現している点から私の苦手なBL小説なのかな?と一瞬思いましたが違いましたね。二人の友情の進展と謎の作家・凪の正体が意表を突いて怖面白く、世界の童話が幸せ色にアレンジされる物語も楽しめましたね。
とても優しく、心に沁みる物語でした。
柴が子供のころに通っていた「ある噂」のある図書館でお話を聞かせてくれた美しい男性。
編集者になった柴がまたあの美しい男性、凪に再会し、凪に泣ける話を書かせたいと凪のお店に通い詰める。
凪はお話を書こうとはしないし、なぜ泣ける話が苦手な柴が凪に泣ける話を書かせたいのかがずっとわからなかったが、最後に判明して心がジュンとした。
図書館は不思議なところだ。
大声でしゃべっていた二人が、図書館に入るなり小声になる。
学習机ではイヤホンをした学生が参考書に取り組んでいる。
丸テーブルには虫眼鏡を片手に新聞をのぞき込む老人がいる。
何冊も本を積んで熱心にメモを取る男性がいたり、窓際で日向ぼっこをしながらお気に入りの本を読みふける女性がいる。絵本コーナーでお父さんが子どもに読み聞かせをしている。
皆が皆、自分だけの時間を自分なりに満喫し楽しんでいる。
そんな図書館で柴と美しい人は出会った。そして図書館が持つ不思議で異次元な空間と時間には何がいてもあってもおかしくないのだ。
子供の頃の柴は悲しくて怖くて涙が流れる話が嫌いだった。だから童話の結末はいつもハッピーエンド。
そんな柴は編集者となって謎の作家となった凪と出会う。子供の頃と違って柴は凪に「泣ける」話を書かせようとするがことごとく失敗する。
なぜ「泣ける」話なんだろう。大人になった柴は人一倍泣き虫になっていた。悲しくて怖くて泣くんじゃない。嬉しいときも誰かを大切に思うときも心がゆすぶられたときも、涙は自然と流れる。柴はそんな話が欲しかったんだ。
客のいない店で凪が作るおいしい食事は何のためなのか。蒼井が感じる不吉な感覚は何なのか。
読み返すたびに新しい想像力を掻き立てられる話だ。
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