ブラックバードの歌
カチャ・ベーレン 作 千葉茂樹 訳
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刊行日 2023/10/19 | 掲載終了日 2023/11/28
ハッシュタグ:#ブラックバードの歌 #NetGalleyJP
内容紹介
フルートの演奏が生きがいだった少女アニー。
音楽学校に入学するための準備をしていたが、母親が交通事故を起こし、乗っていたアニーは大ケガをしてしまう。フルートへの夢はあきらめるしかなかった。
近くに深い雑草地があった。そこに近づくと音楽が聞こえた。それは、2羽のつがいのブラックバードのさえずりだった。
ある日、ブラックバードが何者かに襲われた。オスは死に、メスは歌わなくなった。アニーは、メス鳥のために再びフルート吹き始めた。すると、メス鳥もいっしょに歌いはじめた。アニーとメス鳥に希望が押し寄せた。
アニーは、再び音楽学校を受験する決心をした。提出する制作曲は、メス鳥とともに歌った曲だ。ブラックバードとのふれあいによって、自身の希望と母との絆を取り戻す感動の物語。
出版情報
ISBN | 9784751531761 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
ページ数 | 112 |
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NetGalley会員レビュー
「ブラックバード」とは、日本ではクロウタドリと呼ばれるツグミの仲間。日本にも冬鳥としてたまに訪れ、その囀りの美声は有名。それだけは以前から知っていた。そう、単なる知識として。
世界に満ちた音楽の中で生きるとは、どんな感覚なのだろう。そのメロディ達、それらが合わさるハーモニーの妙。心を天に導くような。
アニーの体に流れる音楽がフルートから流れ出る。そのフルートの音(ね)が見える彼女の瞳には、音楽が彩る世界はどのように映るのだろう。
一瞬だが経験したことがある。それは学生時代の混声合唱団のコンサートで歌った時。世界が音楽と同義になった瞬間を。でも、いくら憧れても、その瞬間だけだった。そんな世界の中をずっと生きてきたアニー。眩しいばかりの憧れを感じた。
でも、その世界が交通事故で一変するとは。音楽でなくなった音が針となる。叫びとなる。それはきっと、アニー以外の誰にもわかることができない、世界からの拒絶感からの苦しみ。
ノアが導いたブラックバードの巣。まわりの音を歌に変えていくブラックバード。世界中に音楽を見出すブラックバード。まさにかつてのアニー。そのつがいが彼女に音楽を戻してくれるのだと信じて疑わなかった。
ところが、ブラックバードも独りとなる。共に音楽という世界を失った、アニーとブラックバードのメス。何ということ。
だから、アニーは決心したのだろう。自分の為ではなく、初めて相手の為に。だから、できたのだ、きっと。そして、相手を救うことは自分を救うこと。クロウタドリは夫をしのび、雛を慈しみ。アニーは自分の痛みと苦しみを清めるために。共に相手と自分を救い、一緒にシンフォニーを創りあげていく。
そうしてアニーは、母親を優しい瞳で真っ直ぐに見る。自分から声をかける。そして、音楽で満ちた世界へと、いや、音楽だけでなく更に人がいる世界へと足を踏み出していく。
音楽は心を癒してくれる。それは人だけでなく、それで結びついた音楽を知る存在全てにとってそうであること。それに気づくには言葉は必要ではなく、そのイメージを噛み締めながら、この本を読み終えた。