ともぐい
河﨑秋子
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刊行日 2023/11/18 | 掲載終了日 2023/12/20
内容紹介
明治中期の北海道。人里離れた山中で、犬を相棒にひとり狩猟で生きる男“熊爪“は、ある日、熊と人間の足跡、そして血痕を見つける。足跡を辿った先に倒れていた男は、冬眠していない熊=穴持たずを追っていたと言うが……。
時に目をそむけたくなるほどなのに、ページを繰る手は止められない圧倒的描写の連続。
人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑流動物文学の決定打にして最高到達点。
明治中期の北海道。人里離れた山中で、犬を相棒にひとり狩猟で生きる男“熊爪“は、ある日、熊と人間の足跡、そして血痕を見つける。足跡を辿った先に倒れていた男は、冬眠していない熊=穴持たずを追っていたと言うが……。
時に目をそむけたくなるほどなのに、ページを繰る手は止められない圧倒的描写の連続。
人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑流動物文学の決定打にして最高到達点。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784103553410 |
本体価格 | |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
生みの親を知らず、養父に森で生きる術を習い、人里離れた森の中で自然とともに生きてきた熊爪。
彼の人生は至ってシンプルだーー生きるために狩る。
時に米や煙草を得るために町に売りに行くかともあるが、町の人間の複雑さは面倒くさい。
そんな孤高の熊爪をかっこよく思っていたが、ある出来事からそんな単調で望ましい「日常」が崩れていく……。
この先は詳しく書かないほうがいいと思うけど、"北海道女"のかっこよさを見た。
河﨑版「デルスウザーラ」といったところか。
アイヌの里で育った養父に育てられ、山でたった独り生きる熊爪の物語。
「人にも熊にもなれんかった、ただの、なんでもねえ、はんぱもん。でもそれでいい。それで生きる」
命の覚悟を描ききった紛れもない傑作。
熊小説は大好きで何冊か読んできましたが、こちらは力強い筆力に圧倒されました。
たったひとり山奥で猟師として生きてきた男の生き様、獲物へのリスペクトなど胸打つものが多くページを捲る手が止まりませんでした。
後半の妻をもらうくだりからガラリと変わり、男の人生は完成したのだと感じました。
熊小説ということで、人が熊に喰われる悲惨な事件を描いたものかと想像しましたが、思ってもみなかったアプローチでとても素晴らしい読書体験をさせて頂きました。
ありがとうございました!!
大地と獣の匂い、人間の体臭、町の喧騒と腐敗、生への足掻き、様々な匂いが、色彩がたちのぼってくる。
「颶風の王」を読んでから河崎氏の作品に魅せられてきた。
大地に根差した泥草さえ漂う力強い命のやり取りに魅せられる。
「肉弾」も凄まじかったが、この作品も容赦ない。
主人公の男は、北海道の山中で孤独に生きる。狩猟を生業とし、時に鹿を捕まえ、兎を捕え、熊を倒すこともある。
俗世との関係を拒絶する生活だが、唯一の接点は獲物を買い上げてくれる店の主人。なぜか男を気に入り、獲物を売りにいくと歓待し、酒を振る舞い、風呂に入れてくれる。その代償は、男の語る物語だ。男にとっての日常が、主人にとってはたまらない刺激になる。
様々な要因によって、その理想的な関係値が狂っていく様の展開が見事。ストーリーは韓国映画のように、淡々と残酷な沼地に足を踏み入れていく。
実はこの作品の白眉は「人間の業」にある。動物の本質は「本能」だ。しかし人間の本質は「業」の深さにある。それがこの作品を読むとよくわかる。
こんなにも人を絶望に陥れる作品を久々に読んだ。
明治中期の北海道が舞台。
そこで犬を相棒とし狩猟を行い山のなかで一人で生きる“熊爪”
穴持たずと呼ばれる冬眠していない熊の姿は、今年ニュースで話題となったヒグマの「Oso18」を重ねた。
北海道の厳しい冬、獣たちの鳴き声、仕留められたときの姿、そして臭いまで伝わって来る。とても凄まじい人間と獣との命の対峙を目の当たりにし、生きるということ、命を奪うということを考えさせられた。
熊爪には山のなかで一人で生きる理由があった。
家族の温かさを知らない彼が、その温かみを求めるようになる。
そこでかけられた一言「どこまでも行け。どこででも死ね」熊爪への祝福の言葉であり、呪いの言葉でもあった。
この言葉が最後まで心に止まり、熊爪の最期の姿の場面でもこの言葉が自然と思い浮かんだ。
残酷な描写もありながら、熊爪の生き方を見届けたい思いで読む手を止められなかった。そして読み終えてただ呆然とし、打ちのめされた。
ここまで打ちのめされても、この作品を読むことができて良かったです。
ありがとうございました。
この作品からまず浮かぶキーワードは「壮絶の極み」。
孤高の猟師熊爪VS穴持たずや赤毛など凶暴な熊たちとの闘いのシーン。負傷した人間に対する荒治療の数々。訥々と生きながらも豹変する陽子の殺戮の場面。
これでもかと畳みかける凄まじい描写が、どれも「壮絶の極み」であり、まったくもって容赦ない。
しかし読み終わって残るのは、名もなき茶色い犬の存在だ。自分の寝言で起きるような愛すべき猟犬は、主人である熊爪の亡き後も、明治時代の北海道の美しい自然を賢く生き抜いていくのだろうなぁと思わせてくれた。
濃密で重厚な傑作との出会いに感謝です。
日露戦争を目前にした北海道を舞台に、たった1人で山中に暮らし、猟をして生きる男・熊爪の物語。
冒頭の牡鹿を仕留めて解体するシーンの凄まじさに心をもっていかれた。ガキの頃に読んだ大藪春彦の『ヘッド・ハンター』を思い出したが、あちらと異なりきちんとストーリーがある。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、ある事件をきっかけにして熊爪の生存理由が大きく変化する。前半は自由でありながら様々なしがらみにとらわれていたが、そこから解放された後半は自分のためだけに狩りをする。熊爪が生きる理由を模索する様は哲学小説のようだ。
そしてタイトルの「ともぐい」も二重の意味が込められているように思った。
初読みの作者さんでしたが、圧倒的な筆力と文章から醸し出される濃厚さに圧倒されました。明治の終わりの頃の 猟師としての生き様が物語の端々から感じられ、予想もしなかった結末で、ページを捲る手が止まりませんでした。
明治時代の北海道。
釧路の隣りの白糠町の山の中が舞台。
そこで、狩猟をしながらたったひとりで犬と
暮らす男がいた。
すごい!
まさに狩猟のプロフェッショナル。
命をいただくってこういうことだ。
その描写は生々しく、グロテスクでもあるけれど、私たち人間は、そうして命をいただいて生きている。
目を背けてはいけない。
熊爪の、命に対する強く真っ直ぐな考え方が、
グッサリと胸に突き刺さった。
最初から最後まで獣臭と血臭が漂い、
苦手な人もいるかもしれない。
タイトルから想像できるシーンもあり😱
それでも、動物園にいる鹿やうさぎと、
スーパーでパックされた生肉しか知らない
現代人に、広く読んでほしいと思った。
そして、何より愛すべきは熊爪の犬!!
忠実で賢くて、たまらない。
最後の1ページまで、大好き🐕
数年前にニュースで見たショッキングな鹿と
同じ状態の鹿が登場したのも印象に残った。
迫力の、山男の人生の話。面白かった!
喜び、怒り、痛み、そして匂いまでも、あらゆる感覚が文章からリアルに入ってきて、その苦しさからまともに一字一句読めない箇所がいくつもありました。こんな読書体験は初めて。最初から最後まで熊爪と完全に同化してました。
リアルな表現に圧倒されました。表面的な熊との戦いだけではなく、そこにある深い感情に目が離せませんでした。狩りへの興奮、生と死への冷静な考えという極端なものが想像に交わりゾクゾクと引き込まれます。そこに人間の気持ち悪い部分が加わり、圧倒されました。
大自然の中の生の凄まじさをまた描いてくれて嬉しい。待ってましたお帰りなさい。重厚な傑作。
道東で羊飼いをしていた彼女の作品は北海道の過酷な自然の中での人と動物の生き様を描いたものが多い。最近は幅を広げて人間を主人公にしたものも何作か読んだ。奇妙な言い方になるが、彼女の場合、人間は特別な生き物ではなく自然の一部に過ぎないのだ。そして今、やはりこの迫力は、本領発揮、水を得た魚のようのよう。息を詰めるようにページをめくり、唸らされる。
一人きり山に生きる男、一匹の犬以外そばにおかない。
命のやりとり。目を背けたくなるような残酷な場面の数々。
彼の生活には、命がけで対峙するヒグマたち、気が進まないが生活のために里に降りるとそこにいる人間たち。出会いを通じて生活や心持にも変化が起きる。
作家の筆は常に厳しい。情緒、感傷や予定調和を一切排除した、淡々とした筆。震えるほどだ。この迫力をもってずっと書き続けてほしい。
新聞に出ていたエッセイでソロキャンプの話を読んだ。いい場所にテントを張ってさあ寝ようかなった時、周囲に自分だけしかいないことに気づいてしばし考えた。
<私事ながら年内に熊撃ちの小説を刊行予定なのだ。ここで軽率な真似をして熊にやられでもしたら、『熊に殺された作家が書き残した熊撃ち小説!』とか物騒なPOPが書店に並びそうな気がする。そんな死亡商法はいやだ>
貴重な作品のゲラをありがとうございました。
読み始める前は熊が人間を襲い、その熊を倒す所謂熊パニック物と思っていたが、主人公である山に1人で暮らす猟師・熊爪と鹿のシーンを読んで、思っていたのとは違う雰囲気に心して読まねばと気持ちに力が入った。舞台は明治後期、日露戦争の空気が漂い始めた頃だろうか。猟師が獲物を仕留める緊迫した迫力の場面はもちろん、日々の生活自体が現代を生きる私には全て壮絶に感じた。その一方で季節や自然、動植物に対する主人公の心持ちを羨ましくも感じる。物語は熊爪の生涯を描いているが、哲学的に思える心情が読みどころだ。熱量の凄い作品だ。
自然と同化することに「生」の意義を見出だそうとした男の生涯。山が音、湿度・温度、色と様々な表情を見せる中で、一見するとぶれていないように思える男の内心が、他者との関わり、人以外の「生」との関わりを経る枚に揺れ動くのが興味深い。また、自然と同化・調和しながら生きるとみなされているアイヌの方々その者ではなく、教えを引き継ぎつつある孫弟子のように記されている(明記はされていないが)のがなんとも「紛い物感」を出しているように思えてしまうのが皮肉だ。人が自然と完全に訣別する寸前の慟哭に見える物語。
直木賞ノミネート、納得です。
受賞しても何ら不思議はない完成度でした。
今年は熊による被害がたくさん報道されましたが、同じようなニュースを見る度にきっとこの物語を思い出すと思います。
人と獣との違いとは何なのか、深く考えさせられる作品でした。
とにかく凄かったです。人間という動物の生というものがむき出しな感じでした。山で1人狩りをして暮らす熊爪の、自然や熊との対決。「生きる」という事はこう言うことなんだと、圧倒されました。最後の終わり方にも驚きでした。
血に臓物に獣臭に体臭と実に生々しい狩猟他の現場の描写は圧巻。
人間と熊との壮絶な闘いを予想したが、そうではなく、人間も動物もそして新たな時代も皆ともぐいをしながら命を繋いでいると言いたかったのだろうか。
第170回直木賞候補作。
明治後期、北海道の山奥で暮らす猟師の物語。
社会に属さず1人で自然と向き合う主人公、彼は人だったのか獣だったのか。
容赦のない描写と予想外のラストは圧巻だった。
河崎さんの熱量がすごい。
圧倒されました。
要はシンプル。
生きるか死ぬか、狩るか狩られるか。
自然の中一人暮らす熊爪の生き方はまさに「野性」そのもの。
生き抜くための強靭さを持ち、自然と共存し秩序を守る様は頼もしく、
無骨さも熊爪の魅力となる。
熊と熊爪の闘争シーンは圧巻。
荒い息遣いが聞こえてきそうなほど緊張感があり、血の匂いが漂ってきそうなほど生々しい。
命を懸けて狩る、食べる、生きる。
そして、陽子もまた女としての生き方は「野性的」であった。
明治中期の北海道の山中で一人で野生動物を狩る猟をして暮らす孤高の男・熊爪が人生で初めての試練に遭遇した。圧倒的に手強い熊・穴持たず(冬眠していない熊)との壮絶な戦い。傷つきながらも全く怯むことなく強大な宿敵との勝負に人生のすべてを賭けて一心不乱にのめり込んでいく熊爪の気魄に心を鷲掴みにされました。人と熊との一騎打ちの場面には時間を忘れて没入し凄まじい迫力の描写には深く感動しましたね。彼は生涯を賭けた一世一代の大仕事を終えた後にとうとう予期せぬ最期を迎えた時にも何の悔いもなく心から大満足だったと思いますね。そして彼の相棒の忠実な名もなき犬は素晴らしい生き物で最後の最後まで主人に寄り添って仕えた姿に不覚にも涙がこぼれましたね。直木賞受賞がうなずける私にとっては素晴らしい一冊でした。