奥州狼狩奉行始末
東圭一
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刊行日 2023/10/18 | 掲載終了日 2023/11/26
ハッシュタグ:#奥州狼狩奉行始末 #NetGalleyJP
内容紹介
第15回角川春樹小説賞受賞作
「狼との闘いの描出には秀でたものがある」北方謙三
「一種の『チームもの』『バディもの』としてもよく出来ている」今野敏
「時代小説の持つべき要諦をキチンと押さえている」今村翔吾
「『狼狩奉行』という役職に着目した点が鋭く、ミステリータッチの部分も効果的」角川春樹
選考委員、満場一致!
静謐なるデビュー作。
時代小説の本流を継ぐ、新人誕生。
江戸時代、馬産が盛んな地域にとって、狼害は由々しき問題だった。そのため、奥州には狼を狩る役――狼狩奉行が存在した。その狼狩奉行に就くよう藩から申し渡された、岩泉亮介。父が三年前に非業の死を遂げ、家督を継いだ兄も病で臥せっている。家のため、勤め上げることを受けた亮介だったが、今、狼の群れは「黒絞り」という見たこともない大きな頭目に率いられ、かつてないほどの狼害を引き起こしていた。だがその「黒絞り」を追う内に、父の死の真相、藩の不正問題にまで繋がり……。狼狩を通じて描かれる、自然と人。時代小説に新風を吹き込む静謐な世界。
(著者略歴)
【東圭一】(あずま・けいいち)
1958年大阪市生まれ。神戸大学工学部卒業。2012年に九州さが大衆文学賞受賞。2018年第10回角川春樹小説賞最終候補。2023年に『奥州狼狩奉行始末』で第15回角川春樹小説賞を受賞。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784758445036 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
三年前に非業の死を遂げた父の死の真相とは。
なり手のいない狼狩奉行の役目を仰せつかった亮介。
狼狩奉行とはその名の通り狼から馬を守るために設けられた役職である。
黒絞りという大狼の賢さとその義理堅さに震える物語。
狼という自然との戦いと、不正を暴くミステリーがとても良い塩梅で合わさって、一気に読んでしまいました。
本を正せば人が原因である狼害と、それを利用する人間の狡猾さ。そこから見えてくる黒絞りの高潔さのようなものが、果たして何が悪で正義なのかを問いかけてくるようでした。
亮介が口にした、狼を討つことは本当に正しいのか、という問いは、現代の我々も問いかけ、考えていかなければならない問題だと感じます。
面白かった。
面白い。
一気に読み終えた。
黒絞りと呼ばれる狼との対峙。
狼害に隠れた不正。
暴いていく過程で感じられる黒絞りとのつながり。
勧善懲悪ものと言ってしまえばそれまでだが、文章の巧みさに惹き込まれる。
タイトルの通り、奥州の狼狩奉行の物語である。父親がなんとも不思議な死を遂げた、その次男亮介が、黒絞りという、大きなリーダーの狼を追いながら、狼害で馬が被害に遭うのを調べていく内に、ある不正を知らされる。兄や、許嫁でいずれ婿養子に入る戸村や馬の医者、弓矢の得意な者などと、悪事の証拠を掴もうとするのだが…。今では絶滅してしまった日本狼は賢く、強い。黒絞りとの攻防も読み応えがある。そして物語は、大団円へと向かう。非常に読後感さわやかなストーリーだった。
狼狩奉行──本当にそんな役職があったのかは知らないが、あっても不思議ではないと思わせる説得力がある作品だった。
現代よりもずっと人と自然が近かった時代。人の活動に伴う様々な理由で餌となる獣が減少し、生きるために人が飼育する馬を襲う群れを率いる、ひときわ大きく賢い“黒絞り”と呼ばれる狼がいた。猟師たちは恐れて手を出せず、狼狩奉行に任じられた岩泉亮介は弓の名手である足軽の竜二を相棒に挑むが……。
狼との知恵比べかと思いきや、亮介の父の死にまつわる陰謀劇がメインだった。狼をただの凶暴な獣として描いていない点も好印象だった。
奥州には狼を狩る役職、狼狩奉行。
実際に狼狩奉行という役職があったのかは分からないが、馬産が盛んな地域では狼害があったのではないだろうかと思ってしまう。
狼の群れの大きな頭目「黒絞り」
「黒絞り」を追ううちに、見えてくる父の死の真相。そこからさらに藩の不正問題まで、とても静かな語り口なのに、その闘いは熱くとても面白かった。
「黒絞り」の存在感は圧倒的で、ただ狼害を引き起こすだけの存在ではないという描かれ方はとても良かった。
「狼狩奉行」というやや聞きなれないお役目を基に描かれる話は、現代よりも自然と人の距離が近く支配・制御しようという関係ではなく、近い距離ながらも妥協点を見つけ出し営もうとする姿で、一陣の風のような潔さが漂う。一方、家族の絆、主従の絆、縁故の絆と集の力で挑む姿と蠢く陰謀は今も昔も変わらない人の姿であることがなんともおかしみを感じさせる。
自然の清々しさと人の生々しさが調和し、静謐な雰囲気を醸し出す作品。
「黒絞り」と呼ばれる賢い巨狼の率いる群れは統率がとれており、狼狩りがままならない。その影響か、ここ三年ほど狼害が増えていた。
狼害を防ぐために奔走する狼狩奉行の岩泉亮介と、それを助ける弓使いの足軽・竜ニ。
彼らと黒絞りとの鬼気迫る命のやり取りと、三年前に非業の死を遂げた父親の死の真相に迫っていくストーリーに引き込まれ、一気に読んでしまいました。
恥ずかしながら、藩士の役職や階級などに明るくはないのですが、文脈でそれとなくどういう位置に居る人なのかが分かるので、特に違和感なく読み進められました。
時代は江戸、狼害から馬を守る「狼狩奉行」の役を兄の代わりに受けた亮介。未曾有の被害を引き起こしている巨大な狼「黒絞り」率いる群れと対峙していく中で、三年前の父の死や人的被害への疑いを抱く。夜の山で狼に対する自然との戦いと、同時に沸き上がる不正の謎を解く時代ミステリ。
野獣との一進一退の攻防は、先人達の工夫が知れてとても興味深かった。少しずつ仲間を得て、強く正しいものが先を行く。人も狼もそう変わらない気がして、そこもまた面白かった。
正直ラストの展開は想像通りだったが、そこに向けての丁寧な立ち回りに夢中になり過ぎて、意外性がなくても興奮が勝った。
人が自然を壊し、いずれは人をも壊す。自然から人への教訓のような作品。
間違いない時代劇ものが読めました。
時は江戸時代。奥州では狼による馬の被害を阻止するために「狼狩奉行」が存在した。
岩泉亮介は、3年前の狼による父の死の仇をとれよ、となりてのいない狼狩奉行に任じらる。
周囲の人々の助けを借りて、運命の相棒、弓の名手の足軽の竜二とこの地に隠された疑惑を探ることに…
黒絞りという大狼との力というより知恵比べのような戦いも読みどころです。今騒がれている熊との戦いを彷彿とさせます。自然との関わり方、それを利用する者も出てきます。
バディもののような、1人の青年の成長物語ような。ドラマになりそうです。
父の不審死は狼の祟りなのか?誰も受けたがらない狼狩奉行という役職を押し付けられた武家の次男亮介が謎を追う。馬医者の中川先生、義姉の妹美咲、足軽の竜二、猟師の権蔵と、少しずつ信頼できる仲間が増えていく面白さがいい。狼の頭目黒絞りを追う内に、自然の連鎖や生きるための営み、人の愚かしさを鋭く描いている点にはっとさせられる。時代小説であり、ミステリであり、命の物語でもある。一冊で楽しめる要素が盛り沢山だ。
ラストの一文、胸熱!
奥州のとある藩では、度重なる狼害により藩の産業である馬産に甚大な被害が出ていた。狼退治を命じられた主人公が策を練る中で見えてきた、馬産を巡る疑惑と父の死の繋がり。心強い仲間との出会い、狼との対峙、やがて明らかになる謎がテンポよく描かれ、時代物としての魅力が詰まった中編。なぜ狼害が起こるのかという点においては、現代に通じる問題も考えさせられた。