リラの花咲くけものみち
藤岡陽子
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刊行日 2023/07/20 | 掲載終了日 2023/08/21
ハッシュタグ:#リラの花咲くけものみち #NetGalleyJP
内容紹介
獣医師を目指し、北農大学獣医学類に通う岸本聡里。幼い頃母を亡くし、再婚した父と継母とはうまくいかず、祖母・チドリとペットたちと暮らすうち、獣医師を志すように。面倒見のよい先輩の静原夏菜や加瀬一馬、トラブルを経てともに励まし合える仲になったルームメイトの梶田綾華、同級生の久保残雪らに囲まれ、動物病院でのバイトや学業に奮闘する日々。一年の夏の臨床実習で馬のお産に立ち会うが、難産の末死産させねばならない場面に立ち会い、逃げ出してしまったことも。伴侶動物の専門医になりたいと思っていた聡里は、馬や牛などの大動物・経済動物の医者のあり方を目の当たりにし、さらに祖母・チドリの死をうけて”命”について考えさせられることに――
ネガティブだった聡里が、北海道の地で人に、生き物に、自然に囲まれて大きく成長していく姿を描く感動作。
おすすめコメント
丁寧な心情描写とストーリーテリングの巧みさに定評のある著者。リアルな描写で”獣医学大学”のニッチで魅力的な世界を描く。北海道・京都(著者の地元)の書店さんにPRしたい作品。
丁寧な心情描写とストーリーテリングの巧みさに定評のある著者。リアルな描写で”獣医学大学”のニッチで魅力的な世界を描く。北海道・京都(著者の地元)の書店さんにPRしたい作品。
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初回指定のご希望がございましたら、
FAXにて希望数をお送りいただくか、
光文社書籍販売部 近藤、川原田までご連絡ください!(☎03-5395-8112)
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出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784334915414 |
本体価格 | ¥0 (JPY) |
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リラの花咲くけものみち。
なんてさわやかなタイトル。これを読んでる時点では、仮、になっているけれど、とても心ひかれる、手に取るきっかけになる題名。
リラ冷え、という言葉を久しぶりに聞いた。この本を読み終えたいま、札幌ではライラックが花盛りの季節で写真などでよくみる。その言葉の通りに急に気温がさがった、同じ道内に住む友に、寒いね、リラ冷え、というのかな、と口をついてでてきた。夏は過ごしやすく冷房もいらない北海道だが、冬の寒さは厳しく、毎日が自然との戦いになる。リラ冷えという言葉も寒さを美しく表現ししのぎやすくする工夫なのかなとおもった(渡辺淳一氏が広めたのであろう)
ナナカマド、ハリエンジュ、ラベンダー、マリーゴールド、クリスマスローズ、ガーベラ、シラカバ、リラ。各章を象徴するような植物の名前がはいっていることに途中からきづき、次はなんだろうと楽しみになってゆく。
東京で生まれ育った聡里(さとり)は苦しい体験を重ねた少女時代をもつ。獣医になるための勉強をしに、はじめて北海道の地を踏む。彼女の成長記をともにたびしながら、日頃都会ではめにすることがあまりない、わたしたちの生活に様々にかかわる生き物たち、そこで生きる人々のことに思いを馳せる。
ずっとまえから擦り切れるほどに読み、セリフも覚えている、獣医学部を舞台にした有名な漫画、を思い出しながら読んでいました。
喜びも悲しみも、すべてが生き生きと描かれ、楽しかったです。ありがとうございました。
『いつまでも白い羽根』『晴れたらいいね』で著者の作品を好きになり、しばらく藤岡さんの作品を追っていたことがある。今回、新作を読めるとあって、すぐリクエストした。
北海道にある大学の獣医学部に進学した岸本聡里。初めはおどおどしていたけれど、その彼女がどのように成長していくかの物語。
獣医になるって、本当に大変だ。動物が好きなだけではとても難しい。ある意味割り切れないと、心が病んでしまう。それはどの職業も同じだとは思うけれど。
また、聡里の家庭環境も、本人だけではどうしようもない問題があって、それもまた、彼女がどう乗り越えるていくか、目が離せなかった。
物語の最初と最後では、聡里の印象がガラリと変わる。いや、芯にあるものはきっと同じなのだろうけど。
聡里と関わった人たちのその後も、とても気になった。
みんな、幸せになってほしい。
一気に読みました。
主人公が、とても芯が強くて、真っ直ぐで一途な姿に心打たれました。
周りの人たちもとても温かく見守り続け、ハッピーエンドでした。
当初は、引きこもりがちでしたが、周囲の導きを素直に受け取り、過酷な獣医師を志し、実現しました。
祖母の命を削るほどの強くて優しい愛情に支えられて、とても大きく成長していきます。
寒い北海道が舞台ですが、登場人物が皆魅了的で熱い人達ばかりです。
人生に本気で向き合う素敵な物語でした。
前にペット番組を作っていたことがある。番組の看板犬が全国、いや世界まで旅をするというコーナーが名物の人気番組で、私は番組立ち上げと終了のプロデューサーを担当した。
番組スタート時、獣医の先生に話を聞きに行った。番組全体の監修をお願いし、ペット番組を作る上で気をつけることなどを伺うためだ。それまで家で犬を飼っていたことはあるが、主に面倒を見ていたのは家族なので、あまり細かなことがわからない。
例えば犬であれば、玉ねぎをあげてはいけない。そんな基本的なところから学ぶ。なにしろ犬は日本中を旅するので、何が起こるかわからない。看板犬には長生きをしてもらわなければならないし、何よりペット好きな視聴者に嫌われてはいけない。
話を聞いていると、獣医もなかなか大変な職業ということがわかった。町場の獣医の先生なので、犬、猫だけでなく、フェレット、ウサギなど、様々なペットが連れてこられる。しかも当時はまだペット保険が出る前だったので、治療費もなかなかの高額になる。そこも悩みだという。
人は高額のかかる医療でも保険があるから自己負担は数割だし、高額になれば高額医療費控除制度もある。この人間の保険にヒントを得てペット保険を開発したベンチャーを取材したことがあるが、これは時代の需要にベストフィットする発明だった。
この小説の舞台は北海道。数ヶ月前まで北海道のテレビ局のために番組を作っていたので、ロケで北海道には何度も行った。なかなかいい場所だ。ロケは主に札幌で行っていたが、中心地を外れると自然が残るのんびりとした土地だ。
そこで獣医を目指して大学に通う女性が主人公。家族事情が複雑で、祖母が家を売ったお金でやっと大学に通う。
冒頭、主人公は祖母と一緒に北海道にやってくる。寮に着くと、祖母はすぐに東京に戻る。空港まで送るという主人公に「交通費のことを考えるとここでバイバイするほうがいいの」と告げる祖母の言葉ですっかり心を掴まれる。新千歳空港はちょっと郊外なのでけっこう電車代は高い。こういう細かな描写が物語に深みをもたらしている。
獣医の成長小説としても読み応えがあり、主人公の成長物語としてもグッとくるものがある。
マンガに「動物のお医者さん」があるが、それとは全く違う視点から主人公の成長が描かれていて、人間味という意味では個人的には今作の方に強く惹かれた。人生ってなかなか思うようにはいかない。だから人生は面白いし味わい深い。
作者の方は全く存じ上げなかったが、スボーツ新聞の記者の後、タンザニアの大学に留学、結婚後、看護師資格を取得したとある。なかなかの人生だ。こちらも興味深い。
数奇な人生経験があると、小説には独特な深みが出てくるのだろうか。
藤岡さんの『きのうのオレンジ』を読んだとき、命についてここまでリアルな感情を込めて描けるのかという衝撃が忘れられない。それ以来新作を楽しみにする作家さんの一人になった。
獣医師を目指し、北農大学獣医学類に通う聡里(さとり)が主人公。
命の輝きを感じるだけでなく、その命を救えない現実にもぶつかる。
聡里の先輩である夏菜の「無理だと思うなら、やめたほうがいい」この一言が突き刺さる。私も看護師をしていたころ壁にぶつかったとき同じことを考えた。命を扱うということはそれだけの責任がある。だからこそ夏菜の言葉は突き放した言葉ではなく、現実をそのまま言葉にしたのだと感じる。
章ごとに植物の名前が付けられ、その花言葉の意味もとてもいい。
北海道の美しい自然の描写と、獣医師を目指す聡里の成長、聡里に関わり彼女を見守る人たちの優しさ。
命についてのリアルさが心に何度も突き刺さる。藤岡さんの作品で第1章から泣いたのは初めてだ。とても心が潤う作品を読ませていただきありがとうございました。
2023年を代表する教養小説。
小4の誕生日に心臓に持病のある母を亡くした聡里は再婚した父の連れ合いに辛く当たられやがて祖母に引き取られる。
祖母の支援のもと北海道にある大学の獣医学部に入学。
誰かと人生とともにある、自分の存在が誰かの暮らしの一部になる獣医師の仕事を聡里は邁進してゆく。
好きな作家である藤岡陽子さんの作品。
藤岡さんの小説は、いつも救いがある。
新しく迎えた妻に夢中で、我が子を顧みない父。
地獄のような日々から救い出してくれた祖母。
祖母の愛情に包まれて歩き出していく聡里。
愛する祖母との別れ。
できれば今更父親面をしようとする父と、継母になんらかの禍が起こればいいのにと思ってしまう。
そんな事が起きないのが藤岡さんの小説の余韻がよいところでもあるのだけれど。
獣医は動物の命を救うだけじゃないーー厳しい現実に心が折れたり、逃げ出したくなったりしつつ、また、家庭環境も複雑で、消化できないものを抱えたままの聡里。
でも、聡里をずっと見守り続ける祖母のチドリさんがいて、大学で新しく出会った友人や先輩がいて、実習先で出会った人々がいて。
ともすると、20歳前後の時期は不安定で、自分なんて何もできないと不甲斐なさに打ちのめされそうになるけれど、
でも見方を変えれば、その心の柔らかさは何でも吸収できるし、何にでもなれるっていうことなんだよーーそんなエールを感じました。
若い人にぜひおすすめしたい一冊です。
なんとしても孫娘を守る。
決然とした祖母の姿に、覚悟に、生き様に、心を打たれずにはいられませんでした。
不器用でも、一生懸命に期待に応えようとする主人公も素敵でしたね。
獣医への道が過酷な部分まで含め、生半可でなく掘り下げて描かれていて、息をのむようなリアリティには驚かされっぱなしでした。
特に衝撃だったのは、心が折れそうになったときのエピソード。
視覚、聴覚、嗅覚にまで訴えてくる臨場感には、こちらまで打ちのめされましたよ。
主人公に限らず、それぞれの心情を追体験できるのも魅力でしたね。
それだけ丁寧に、丁寧に、描かれていた印象。
だから、魅力ある人がやたらに多い!
特に、主人公が苦境に陥ったときに先生や先輩、同期からかけられる言葉には、心に響くものがたくさんありました。
ドン底から抜け出して、羽ばたこうとする主人公のあゆみは、私にも勇気を分けてくれた気がします。
心根の美しさが力にも癒しにもなる一冊。
多くの人に知って欲しいです。
(対象年齢は13歳以上かな?)
「北海道」「獣医学部」と言うとある有名なコミックを思い出すが、それとは全く違う方向性。人の生き方を見つめるこの物語に、真摯な気持ちで臨んだ。季節の花にそって語られる物語に。
北農大学獣医学部に入学した、口癖が「すいません」の聡里は、その生い立ちのため消極的で人と交わるのが苦手。
そんな聡里の心情と彼女の周りの人々の様子が、丹念に丹念に綴られていく。北海道と言う土地柄の中で、真剣に取り組む獣医学部生達。彼らの一言一言を読んではっとする。そんな人々に囲まれてるからこそ、聡里は先が見えなくて戸惑ったのだろう。だから臨床実習の途中で東京に逃げ帰った彼女。でも立ち返るきっかけを与えたのは、人と関わり自分を見つめ直すことができたから。このように変わりゆく聡里や、彼女を変えていく友人や先輩などの言葉を追っていくのは、心温まる体験だった。理学部生物学科での自分の経験と重なる部分もあったから。
告げる前に終わった恋、祖母との死別とそこに残してきた愛犬パールの骨。そんな彼女をずっと見守ってきた人がいた。よかった。
そして5年目。意欲的に動き、挑戦し、呼ばれたら顔を出す聡里がいた。その謙虚さは変わらずに。そしてとうとう聡里は、自分の「居場所」を口にする。それは入学した最初の頃とは違うもの。でも、自然に口から出るまでに、その方向を意識せずともずっと向いていたんだろう。彼女の来し方を振り返ると、確かにそう思えた。
さらに6年後、彼女の新たな旅立ち。今度はつがいの鳥のような旅立ち。その後を追うように、彼女を祝福するようにリラの花が咲き誇る。
その様を思い浮かべて、祈るように本を閉じた。
北海道の大学で獣医師を目指すために入学した聡里
引っ込み思案で人見知りな性格で満足に話すことも出来ず友達もいない
動物のことでなら話すことが出来た
馬の出産に立ち会うことで一度は大学を辞めようと決意する
北海道の大自然に触れ、良き友達も出来人として成長した聡里の進路とは
はじめはどうなるかと思っていた聡里の人となりがあることがきっかけで成長し見違えるようになる
それは温かく見守ってくれたチドリおばあちゃんのおかげ
友達もできて、後輩からも慕われ、恋もした
大自然に囲まれて過ごす
なんだかちょっぴり羨ましかった
藤岡さんの本は大好きで、最初の本から全部読んでいます。
読んでいくと、静かに浄化されていく気がします。
軽く楽しく前向きに生きていくことがもてはやされる傾向がある今、
そうでなくてもいいんだ、愚直に生きていても良いんだと
柔らかく肯定されるようで息を吸うのが楽になります。
今回のお話の主人公も、不器用で一生懸命に生きています。
傷つき内にこもってしまった日々を超えて、手探りで獣医の道を
切り開いていく姿が胸にしみていきます。
動物を診るというのはどういうことなのか、
きれいごとではすまない診療とはどういうものなのか、
淡々と語られる文章を追っていくと、
知らなかった扉がひとつずつ開いていくようでした。
読んでよかった。
今回もしみじみとそういう思いをかみしめました。
リラの花咲くけものみち 藤岡陽子 著
藤岡さんの著書はいつもそうだけど、本作も自分が物語に入り込んで傍観者になっているかのような臨場感がある。獣医学生の聡里をとりまく医療の現場が徹底的にリアル。成長の物語という言葉では物足りなくて、彼女は「人生を変えようとしてここにいる。」
唯一の家族である祖母と同じくらいかけがえのない犬のパールの存在。伴侶動物がそういう存在になり得るんだと知った。
獣医師になるために大学に入った聡里は入学時点では祖母の後ろに隠れてしまう人見知りで相生大丈夫か?と思わせる。
そんな聡里は幼い頃に母を亡くしその後、父が再婚した継母から虐げられてきた事で不登校になっていたが祖母チドリに引き取られ獣医学部を目指したという過去があった。
動物好きだけでは務まらない仕事に対して怖気付いたりもするが聡里の成長が伝わる作品でした。
チドリさんの最期は読んでて涙が溢れてくる切なさを感じました。
あどけない少女が、強く逞しく育っていく。
笑いと悲しみと困難を乗り越えて。
その姿に勇気をもらいました。
これでいいのか。いいのだろうかと
日々模索する毎日のなかで、
やりたいこと、将来についてよく考えるように
なりました。
直感で、自然と口から言葉が出たような最後の描写にも彼女の姿をじっくり読んだからこそ、
そうだ!きっとそれがいいと思わされます。
変わらないよね。変わったよね。
きっとどちらにしても素晴らしいことです。
幼くして母を亡くし、継母との噛み合わない生活の中で、飼い犬に依存する少女。心を閉ざした少女を救ったのは、祖母とペットたち。言葉は通じなくても、温もりが伝え合う“命”の尊さ。両極端であり紙一重の「生と死」を、獣医師を目指す聡里を通し、シビアに描く生命の物語。
広大な北海道の地を感じられる珍しい鳥や動物たちの他にも、植物や食べ物が出てくるのも舞台を活かしていてとても良かった。
海と川の魚の違いを人間に当てはめた喩えなど、生物に無駄な線引きをせずにフラットな考え方を持っている登場人物が多いのも、作品の大きな魅力の一つ。
出来る事は出来る、出来ない事は出来ない、それぞれがその時に出来る精一杯をただやるだけ。“命”の前ではひたすらシンプルな事に、よりリアルさ感じた。
動物を通して学ぶ、人付き合いや家族の在り方。ままならない恋心。広大な地での壮大な物語の中での、繊細な心の変遷が、深くに沁みた。
北海道の獣医学部に入学した聡里が、周囲の人たちの中で揉まれながらも成長していく物語。北海道の自然を舞台に、生き物と向き合い、自分の道を見出していく姿が一章ごとに心に残った。主人公がおばあさんのチドリや大学の先生、先輩、仲間たちと、背伸びする事なく、一つ一つに丁寧に向き合っていく真摯な姿に共感した。
獣医師になる若者たちの日々の暮らしを北海道の壮大なスケールの中で丁寧に物語を紡いだ作品。これまで獣医師は人間を診る医師に比べて、人命を預らないだけ気が楽だと思っていましたが、本所を読んで自分の考えが以下に浅はかであったか痛感させられました。6年後で終わってしまいましたが、父親との葛藤が消化不良だったので、10年後、20年後の物語を是非読んでみたいです。
すっごく良かった!
獣医師を目指し、北農大学獣医学類に通うことになった岸本聡里は祖母のチドリに付き添われて東京から北海道の寮にやって来ます。
聡里はある事情から中学は不登校となり、高校もチャレンジ校に通ったため、人付き合いにも自分にも自信がない。この理由とそれを救った祖母チドリのエピソードは涙無くしては読めません。フィクションなのに、子供の不登校で悩んでいるリアルの友人に思わず熱く語ってしまったほど。
動物が好きで獣医師を目指したが、命と向き合う現実は甘くなく、何度も心が折れそうになる。
伴侶動物と産業動物(経済動物)という言葉をこの作品で初めて知りました。
聡里の獣医師としての成長と、自分を守ってくれる唯一の存在だった祖母から離れて自立していく姿、そして、動物病院や収入源のために飼育している産業動物達の抱える現実の問題。
特に、普段身近で感じることの出来ない産業動物とのエピソードはどれも想像したことのなかった現実で、でも、確かに日々食卓にのぼる彼らの存在。
ラストでも驚きの展開があり、最後まで何度も泣かされてしまいました。
独り立ちできてよかった。そして何より、心許せる人たちと出会えてよかった。自分の幸せを守るためとはいえ、大の大人が、しかも母親を亡くして日が浅い子どもに対する接し方ではない。完全なる虐待。それを、児相も学校も気づかなかったのだから、現実ではもっと見つけられない子どもは多いだろうと思い胸が痛む。祖母に助け出され、未来を与えられた。その祖母の行動力と見事さと、手放すそして背中を押す潔さもいい。
北海道を舞台に、獣医になるために青春を捧げる女学生の物語。冒頭から聡里の生真面目さ、繊細さに不穏な感じを受けていたが、予想通り臨床実習でのリアルな馬の出産で心が折れてしまい、一度は挫折してしまう。自分とは相入れないと思っていた人がいつしか親友になり、恋もし、後輩もできて、ひ弱だった聡里が周りから信用されるように社会に地をつけて歩み出した時、いつも見守ってくれていた一番近い存在が寄り添っていたのには親のように安堵した。季節ごとに咲き誇る美しい花々に囲まれて青春を費やした聡里の清らかさ、純粋さが表紙絵によく出ていると思った。
獣医師を目指し北海道の大学で学ぶ聡里。
獣医師は想像していたより大変な仕事なんだと初めて知った。
動物が好きだというだけではなれない。
時に残酷な現実と向き合わなければならず聡里は逃げ出してしまう。そんな時に支えてくれる周囲の人たち。
聡里の幼少時は複雑で、この物語を読み始めた時はこんなにタフになるとは思わなかった。
祖母との別れや父親との決別に涙が溢れる。北海道の壮大な自然の中で、本質は変わらずでも変わっていく聡里をこれからも応援したくなりました。
本当に良い本でした。おすすめです。
北海道の大学で獣医学を学ぶ岸本聡里が、様々な困難を乗り越えながら成長していく物語。
子どもの頃に母親を亡くし、再婚した父親や継母と上手くいかず、ネグレクトされていた聡里を救い出してくれた祖母のチドリ。
チドリに背中を押され、獣医師を志し、北海道までやって来たものの、獣医学という道のあまりの厳しさに何度も挫けそうになりながら、大学で出会った仲間たちに助けられながら、強く逞しく成長していく聡里の姿に胸を打たれ、思わず涙腺が緩みました。
伴侶動物(犬や猫など)、経済動物(牛や馬や豚や鶏など)という呼び方や、酪農や畜産、動物の保険についてなど、初めて知ることばかりでとても学びの多い一冊でした。
獣医師を志す主人公の成長物語。
暗闇から抜け出して広い空に羽ばたこうとする姿は勇気づけられる。
動物にも癒されるが、人の心を動かすのはやはり人なんだなと感じる。
ライラック(リラ)、ナナカマド、ラベンダーなどの花の香りや、大自然の
澄んだ空気感を思いっ切り感じられるなど、北海道が舞台の臨場感が溢れる作品だ。
北海道にある獣医学大学に進学した聡里の成長物語。獣医師と聞いて私が思い浮かべるのは動物病院の獣医さんだったので伴侶動物、産業動物という言葉を初めて聞き獣医師にもいろいろある事を知りました。救えない命がある事に私でさえ胸が苦しくなるのに獣医学生の気持ち、無力感は相当なものでしょう。残雪君のプロポーズ凄く良いなぁ。一目でこの人だってわかってそばで見守ってくれていたなんて素敵過ぎます。チドリさんの強さに、遺言には涙しっぱなしでした。聡里なら厳しい北海道の自然環境の元でも力強く生きていける、そう思える程成長した姿にただただ感動です。
この主人公の祖母はストックキャラクターのように「のんびり」「穏やか」なおばあちゃんとは、少し違います。
おばあちゃんにベッタリの主人公に変わり、テキパキと引っ越しを済ませます。
対して主人公の学生は読みながら心苦しくなるほど、内にものを溜め込んでしまうタイプのようです。
知り合って間もない先輩や友人にすら、もっと思うことを言っていいんだよと教えられるほどです。
そんな主人公がどのような「他者と心を通わせる」体験を積み重ねていくのかが、この小説『リラの花咲くけものみち』で終始一貫して注目すべきポイントとなるのではないかと思います。
香り豊かな美しいリラ、ライラック。北の大地の、雄大な敷地をもつ北農大学、舞台を彩る花としてぴったりだ。モデルとなっている大学に馴染みがあるため、読んでいて風景が目に浮かぶことが一読者として嬉しい。獣医師は命を預かる職業なのだから、なまやさしいエピソードばかりではない。主人公を含め、登場人物の心の葛藤の描写の見事さは、さすがの藤岡先生だ。少しずつ、一歩ずつ成長して行く学生たちがまぶしい。
母を亡くしてからの家庭環境に苦しんだ岸本聡里が、救ってくれた祖母とペットに支えられて獣医師を目指し、北海道の獣医学大学へ進学する物語で、大学に進学する筋道を作ってくれた祖母のチドリさんの存在、悩める彼女を支えてくれるかけがえのない人たちの存在も大きかったですが、それ以上に聡里自身が何度も心折れそうになりながらも立ち直って、これからの進むべき道や、自分の居場所を見出してゆく姿を応援したくなりました。
聡里の思考がどうしてもネガティブになってしまうのも、わからなくもない。なにをするにも勇気が必要だし、自信なんてはじめから持てるはずもない。
ああ、もうどうにかしてやりたいとヤキモキしてしまいました。
辛く苦しんだ分だけ彼女は、より人の優しさに気付くことができるのではないだろうか。
祖母チドリや、大学時代に知り合えた人々の優しさに支えられて成長していく姿にどうしたって涙が滲む。
チドリおばあちゃん、あなたの愛は大きく温かいね。
ああ、ダメだ。思い出してまた泣いてしまいます。
藤岡陽子さんの作品は、いつも温かく優しい。
獣医師は、過酷な選択を時に迫られる仕事なんですね。
動物が好きだという気持ちだけではできない。伴侶動物や産業動物という言葉も今回初めて知りました。
すごく素敵な物語だった。
北海道の獣医大学に通う総里が主人公。
友人や家族との関係性、とても繊細で瑞々しいものでした。祖母であるチドリの愛に泣きました。
畜産物を育てるのは可愛いだけではない。
愛着を持って育てていてもいつかは命は絶たなくてはいけないこともある。
北海道の厳しい自然の中で成長する総里の力強さに私もパワーをもらった。
少し前まで娘が獣医を目指していたこともあって、どんなふうに進路選択をしていくのか、実習はどのように行われるのか等興味深く読ませていただきました。
私はコメディカルなのですが、学生時代を思い出して奮い立つ気持ちになりました。脳神経の覚え方が自分の知っているものとは違ってとても面白かったです。
これは紙でも読みたい!そう思わせてくれる本でした。
藤岡陽子さんの作品はほとんど読んでいますが、今回の作品は獣医師を目指す北海道の獣医学大学生、聡里これまでに医学関係のお話は感度も書かれていますが、獣医学をこれほどまでにくわしく書いたものはないと思います。実習の苦しみや挫折そして立ち直った時の清々しい感動を覚えました。それと祖母チドリとの関係も感動しました。心震える感動作間違いなしの大傑作あなたもぜひ読んでください。そして成長した聡里を見たいのでぜひ続編をお願いします。
題名の通りまさにけものみち
人間として生きてきた聡里の人生もそうだし、大学生から社会人になっての獣医学に関わる本当のけものたちとの生活もそう
人間として生活できてなかった時のことは心が痛くて、大人としての親に対する憤りが大きく、チドリさんがいなかったらこの子はどうなってたんだろうとつらかった
そんな中でも聡里のことを思ってくれる人が何人かいて、聡里自身もだんだんと人と関われるようになって、学年が上がるにつれ、しっかりと自分のことを考えていけるようになる
獣医師を目指して淡々と努力していく姿にとても力をもらった
この物語で生きていくことの大切さ、共に生きること、時には辛いこととにも立ち向かいながら、それでもできることをして、力一杯生きることを学んだと思います
自分もチドリさんのように、若い人たちから前向きに力一杯生きている人だと思ってもらえるようになりたいな
幼い頃母を亡くし、再婚した父と継母とはうまくいかず、学校にも行けず引き籠っていた聡里が祖母に救い出され、愛犬に癒され、祖母に励まされ獣医師を目指し北海道の大学へ。大好きな漫画「動物のお医者さん」ののほほんとした雰囲気とは違い、知識や情熱、頑張りだけではなんともできない現実に直面し、時に挫けつつも、それを乗り越え成長していく聡里の姿には親目線で胸が熱くなった。自分を支えてくれた祖母の死に直面して自分を放り出した父と決別する姿をみて、本当に強くなったなと驚く。命関わる仕事はこの先も厳しい局面も多いと思うが、聡里ならきっと大丈夫。
社会からも家族からも孤立した子ども時代を過ごした聡里。彼女の命をつなぎ、心が壊れないよう守ってくれたのは、愛犬パールと祖母のチドリだった。自分を無条件に大切にしてくれるチドリのもとで、聡里が見つけたのは獣医師の道。動物たちの命とまっすぐに向き合い、葛藤し、一歩ずつ着実に進む姿は、みずみずしく、しなやかで、強い。
特に印象に残ったのは大学の先輩である一馬の言葉。「絶対にしなくてはいけないことなんて、この世の中には一つもない。できないならできないと素直に告げて、自分のできることをすればいい。」
自分にできないと思えることはどのような道に進んでもきっとあるけれど、それは決してその道の行き止まりではないのだと思うことができた。これから自分の道を決める人も、今突き進んでいる人も、どんな人にもエールとなる1冊だ。
動物を愛するすべての方に読んで欲しい感動の物語です。今年2023年で作家歴14年になられる著者の藤岡陽子さんは私にとっては初読み作家さんでした。本書は自信を持ってお奨めできる素晴らしい一冊ですので、ぜひ多くの方に読んで頂いて著者がブレイクすればいいなと願いますね。ヒロインの聡里は不幸な少女時代を優しい祖母のチドリと愛犬パールに支えられ獣医師になる道を目指して北海道の獣医学大学に進学し次第に自信を得て数々の苦難にぶつかりながらも懸命に乗り越えて一歩ずつ成長していくのです。本書は涙なしには読めない感動作です。重く厳しい場面が多くあって読むのが辛くなる事もありましたが、最後まで行くと読み終えるのが惜しくなるような私にとっては稀有な読書体験でした。地味な物語ですが読後に必ずや深い感動と満足感を味わえる一冊ですので一読を心から強くお勧めしますね。
母を亡くし新しい家族との関係が上手くいかず引きこもりになった聡里。支えてくれたのは犬のパールと祖母だった。夢を抱き北海道の獣医大学で学ぶ日々は苦難が多かったが新たな友人や先輩が彼女を支える。リアルな実習体験は過酷でそれを乗り越えた獣医師のすごさを知る。祖母との別れ、父との再会の場面に落涙。ラストはバッドエンド?と思いきや新たな人生がスタートし、聡里と一緒に駆け抜けたような気持ちになった。
多感な時期の10代前半に、母の死、父の再婚、義母からのネグレクトで心を閉ざし不登校になった聡里が、祖母と暮らすようになり、勉学に励み、北海道の獣医学部のある大学に進み獣医師を目指す物語。
ストーリーもさることながら、獣医学部に関するところがとてもリアル。ペットブームにより、軽い気持ちで獣医師を目指す人も増えたかもしれないが、これを読んだら、獣医師って、こんなにもたいへんで、重労働なんだとわかるかも。
犬猫や小動物を診るだけが獣医師ではなく、牛や馬など大動物も診て、酪農家を支えるのも獣医師の仕事なんだと感心した。
ペットブームで獣医師を目指す人が増えてるかもしれないが、獣医師の現実は厳しく、精神も体力も必要。
このような作品を読んで、獣医を目指すリケジョが増えることを願ってます。
悲惨な家庭境遇から救い出してくれた祖母チドリが、背中を押してくれた獣医師への道。北海道の獣医学部に進学し、まさに一歩ずつの歩みを始めた聡里。
不登校だったため、友人の作り方も付き合い方もわからない聡里の悩みながらの日々は、学業の厳しさとともに葛藤と成長の繰り返しだ。
経済動物、伴侶動物、それぞれに問題は山積。命の重みを肌で知っていくことは、聡里を徐々に強くした。
学びの中にある真実、進路への逡巡。実習から感じる手応え。
北海道の美しい自然に心広げる聡里の中に胆力が宿る。強くなった。しなやかになった。感涙でした。
子どもの頃の過酷な生い立ち、祖母チドリの言葉が心に沁みて読み始めから涙がにじんできました。傷つき、悲しみを背負い生きてきた少女が自らの力で人生を切り開いていこうとする。でもそれは決して簡単なことではなく、その過程での苦難や試練の連続を周囲の人々の支えられながらも乗り越え成長していく。その姿に感動しました。人との出会いや関わりの大切さ、しっかりとした意思を持つことの大切さをいのちを通して丁寧に描かれているとても素敵な作品だと思いました。
母親の死、父の再婚、継母、異母妹の誕生、ペットの犬、不登校、祖母等から、はっきりした目標が見つからない中、動物の命と獣医師を目指す聡里が、東京から北海道の北農大学での6年間で見つけた自分の道。祖母チドリの気持ちや考えの大きさに圧倒される1冊だった。聡里が手放せなかった箱の中、周りの人との関わり、父への結論、18歳だった聡里は30歳になるまでに自分の中の困難をどう乗り越えてどんな未来を見つけたか。リラの花咲くけものみちを見上げた先に。