運び屋円十郎
三本雅彦
この作品は、現在アーカイブされています。
ぜひ本作品をお好きな書店で注文、または購入してください。
出版社がKindle閲覧可に設定した作品は、KindleまたはKindleアプリで作品を読むことができます。
1
KindleまたはKindleアプリで作品を閲覧するには、あなたのAmazonアカウントにkindle@netgalley.comを認証させてください。Kindleでの閲覧方法については、こちらをご覧ください。
2
Amazonアカウントに登録されているKindleのメールアドレスを、こちらにご入力ください。
刊行日 2023/06/07 | 掲載終了日 2023/08/04
ハッシュタグ:#運び屋円十郎 #NetGalleyJP
内容紹介
〈運びの掟〉
一つ、中身を見ぬこと。
二つ、相手を探らぬこと。
三つ、刻と所を違えぬこと。
約束の物は何があっても届け切る。それが〈運び屋〉。
母は病に倒れ、父も道場の経営に失敗して体を壊した。
自力で稼がなくてはならなくなった円十郎は〈運び屋〉を営む〈あけぼの〉に雇われることになった。
腕のいい〈運び屋〉として江戸の街を駆け回る円十郎だったが、
荷を運んでいたある夜、攘夷の志を口にする武士と手練れの忍び(?)に立て続けに襲われる。
一体何が起きているのか?
円十郎は知らず知らずのうちに時代の大きな渦に巻き込まれていく……。
オール讀物新人賞受賞の大型新人が放つ、幕末時代活劇。
おすすめコメント
約束の物は何があっても届け切る、〈運び屋〉の円十郎。運び屋に託されるのは当然ワケありの荷物ばかりです。どんどんたくましくなっていく円十郎。ともに鍛錬する土方歳三と沖田宗次郎。敵か味方か、幼なじみに大男につれない猫――。そして複雑な愛と憎しみを抱きながら“ある思い”を秘める父・半兵衛……とにかく人物たちが魅力的な一作です。
もちろん荷物を奪い「運び」を邪魔する者たちとの決闘シーンは、文字を追っていることを忘れさせるほどの大迫力。第97回オール讀物新人賞受賞の大型新人が描く、大江戸版『トランスポーター』の誕生です。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784163917054 |
本体価格 | ¥1,800 (JPY) |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
〈運び屋〉として幕末の江戸を駆け回る円十郎。
運びの掟 一つ、中身を見ぬこと。
二つ、相手を探らぬこと。
三つ、刻と所を違えぬこと。
この掟を守り円十郎は約束のものを届ける。
そこに譲位の志を口にする者が現れて......
円十郎が「柳雪流躰術道場」で鍛練を積むが、違う場所に身を置こうと剣術を習いに行くのは「天然理心流」の道場。そしてそこで共に鍛練する土方や沖田。
天然理心流、水戸藩士、歴史にさほど詳しくない私でも幕末といったら思い浮かべる言葉なのでとても楽しめました。
〈運び屋〉と〈引取屋〉そして円十郎を襲う謎の集団との決闘はその素早い動きが見えるようでした。
円十郎が為すべきことのために動いたとき、真介の志を語る言葉がとても心に残りました。真介だけでなく円十郎を取り巻く人々がとても魅力的です。だからこそ誰が味方なのか敵なのかと、時にぞくぞくしながら読むことができ、とても楽しかったです。
病の父に代わり、曰く付きの荷を届けるべく幕末の江戸を疾走する「運び屋」の円十郎。錯綜する情報、交錯する想い、疑心暗鬼に陥りながらも前進していく青年の心身の成長を描いた時代活劇。
先祖代々受け継ぐ「躰術」を活かした仕事から得るスリルと自尊心。ドライに掟と荷を守り、ウェットに家族を守る、まだ幼さの残る円十郎のギャップにとても好感がもてた。
荷を狙う組織対策で通い始めた「剣術」道場での土方や沖田との出会い。幕末の男たちが抱く、周りを顧みない「志」に懐疑的だった心が、その「志」を持つ者たちにとかされていく。随所に見られる対比が面白い。
刀での斬り合いメインではなく、総合格闘技のような何でもありの決闘だったので、動きにバリエーションが多く、時代小説が苦手な方や初心者の方でもわかりやすいと思った。
泥臭い男たちの闘いにそぐわない女たちや黒猫、多くを語らない父など、真意を秘めた魅力的なキャラたちの心の強さに魅せられる作品。
読後に最終章の題「手のぬくもり」が何重にも効いて胸が熱くなった。全体通して文句なしに面白かった。
世間には知られてはいけない「運び屋」稼業。
幕末の江戸を舞台に、運び屋として生きる円十郎と父。
元締めも、女中も、時には敵対する「引取屋」も、様々な思いを抱えながら日々を過ごしていく。動乱の幕末に生きる裏稼業の哀切が伝わってくる。
「運び屋」としての仕事を通して成長していく円十郎の物語。
身体の鍛錬には土方歳三と沖田宗次郎が絡み歴史的事件にも触れつつ、
円十郎の仕事に、理緒とお葉の女ふたりの働きもありつつ、
父との意思疎通の下手さは現代にも共通するもので、
そんな親子を見守ってくれる元締の日出助の存在も大きく、
どの章もいろいろな要素が絡み合い、
時代小説という難しさを感じさせない読みやすい作品。
猫にも癒されます!
安政5年、18歳の円十郎は良い仕事に出会えたと感じていた。
託された荷物を指示された場所に運ぶ「運び屋」である。
運びの掟は、中身を見ぬこと、相手を探らぬこと、ときと所を違えぬこと。
それぞれにとっての<志>に戸惑う円十郎。
その行く先を問う。
人々の目を掻い潜り、約束のものを約束の場所へ届ける“運び屋”を生業にする円十郎。
仕事を完遂するため、己を守るため、運びの掟を遵守し黙々と預かった荷を届ける日々は危険も伴うが自分に向いていて達成感もあり仕事に満足していた。ただ、円十郎の心に影を落とすのは道場の経営に失敗し体を壊した父の存在。志に飲み込まれた父にどう向き合えばいいのか分からず避けてしまう。
そんな中、運びの最中に遭遇した強敵“引取屋”に打ち勝つため、道場へ通い出す円十郎。そこで出会った一緒に切磋琢磨する仲間、自分を心配し思いやってくれる身近な存在、運び屋になる前からの友。周囲の魅力的な人たちの思いが少しずつ影響を与え円十郎を成長させていく。悩みながらも愚直に行動し考えることをやめない姿は普段、時代物を読まない人にも読みやすい要素かも。なにより、幕末という時代のドラマチックさもあり、もりもり読めました!そして、円十郎とお葉、猫のヒメの今後も気になります。
運び屋稼業の円十郎を中心に幕末の新選組やら、引き取り屋、水戸藩士など、さまざまな不穏な渦中にありながら己の腕をあげ、自分の仕事に集中し、成長していく主人公。それを取り巻く人々のあたたかさ、野良猫のヒメ、父と子の関係など、息をつかせぬ展開の中でも、ほっとするようなエピソードを交えながら読ませていく物語の面白さに夢中になった。
依頼主から荷を預かり指定の時間に指定の場所へ届ける運び屋。運びの掟は…一つ、中身を見ぬこと。二つ、相手を探らぬこと。三つ、刻と所を違えぬこと。息を呑む様なアクションから始まる物語はこれでもかと闘いシーンに溢れている。かと言って単なるアクション小説ではない。友との再会、淡い恋心、同志との繋がり、親の想いと子の想い、出会いと別れなどなど読みどころばかりの一冊だ。登場人物も魅力的な人達ばかり。特に誰もがその名を知る『あの2人』の人物描写にはワクワクさせられる。続きを期待させる終わり方に期待感が高まる。
『「俺の志は、大きく言えばこの国を想うものだ。だが小さく見れば、おまえやあの女、そして理緒だ。一人ひとりの幸せを守ることが、国を守ることに繋がっている」(p270)』時代小説は着物を着た現代小説、と割り切れば、これはチャンバラ小説の新章(主人公がほとんど刀を使わないにしろ)、そうでないにしても良質のアクションエンタメと面白く読む。 #NetGalleyJP でなければ出会えないかもしれず、感謝の一冊でした。