ぼくらは星を見つけた
著・戸森しるこ 絵・エミ ウェバー
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刊行日 2023/05/16 | 掲載終了日 2023/05/09
ハッシュタグ:#ぼくらは星を見つけた #NetGalleyJP
内容紹介
野間児童文芸賞受賞作家の最新作は
「新しい家族」をつくるドラマチックでうっとりする物語。
幸福な予感が幻想的な世界で描かれます。
丘の上の青い屋根のお屋敷に、彼女たちは住んでいました。ご主人のそらさんと、十歳の星(セイ)。そしてハウスキーパーのシド、白猫のダリア。そらさんの旦那さんは、十数年前に亡くなった、天文学者の桐丘博士です。
専属の庭師と、そらさんの主治医が出入りするほかは、現実から切り離されたように静かなところでした。
ある日、「住みこみの家庭教師」という募集を知って、お屋敷にひとりの男性がやってきます。それが岬くん。この物語の主人公です。
岬くんは元美容師で、手品や楽器という特技も持ち合わせています。そらさんは岬くんを家族の一員として迎え入れ、星は紳士的でユーモラスな岬くんにすぐに懐きました。けれど無愛想なハウスキーパーのシドだけは、なかなか心を開きません。不器用だけど本当はやさしく思いやり深いシドに、岬くんは惹かれていきます。
その家族にはいくつか不自然な点がありました。
「本当の家族」を求め続ける岬くんが、奇跡的な巡り合わせで「運命の人」にであう物語。
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【著者・戸森しるこ】
1984年、埼玉県生まれ。武蔵大学経済学部経営学科卒業。東京都在住。
『ぼくたちのリアル』で第56回講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。同作は児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2017年度青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部の課題図書に選定された。『ゆかいな床井くん』で第57回野間児童文芸賞を受賞。その他の作品に『十一月のマーブル』『理科準備室のヴィーナス』『ぼくの、ミギ』『レインボールームのエマ』『すし屋のすてきな春原さん』 (以上、講談社)、『トリコロールをさがして』(ポプラ社)、『しかくいまち』(理論社)、『れんこちゃんのさがしもの』(福音館書店)、『ジャノメ』(静山社)などがある。
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おすすめコメント
●金原瑞人さん、推薦!
「ロマンチックで、ちょっと切ない。忘れられない荷物をひとつ心に残してくれます」
●書店員さんから、反響続々!!
「背負わざるを得なかった「闇」があるから、光かがやく主人公たちに、心打たれない読者はいないでしょう。」 ──紀伊國屋書店横浜店花田優子
「不器用にしか生きられない。そんな、愛すべきキャラクターたちが、すこしずつ「家族」になっていく姿から目が離せませんでした。」 ──クレヨンハウス 鏡鉄平
「人は「母」に出会い、世界は宇宙のように広がっていく。」 ──ブックスページワンIY赤羽店 風穴真由芽
「ここには、家族を愛する不器用な人たちの姿があります。新たな変化を受け入れた登場人物たちに、安堵の気持ちでいっぱいになりました。」 ──丸善丸の内本店 兼森理恵
販促プラン
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出版情報
ISBN | 9784065307311 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
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しんみり、ゆったりした幕開け。そして、読み聞かせのような語りで柔らかく進んでいく物語。挿絵がその雰囲気になんと合っていることか。
空が大好きなお婆さんのそら、その養子の小学5年生の星、ハウスキーパーのシド。その3人に、家庭教師という立場で家族として迎えられた岬。
皆のさり気ないやり取りが、メルヘンのように積み重なっていく。
そして、3人の真の関係を岬が知った時、家族とは何かを改めて考えてしまった。歪んでいても心安らぐ家族、その演技。その中に入っていこうとする岬の決心さえ、穏やかで柔らかく、でも真っ直ぐに。その思いは、皆を結ぶことができるのか?
でも、それは演技ではなかった。互いに明かさないだけで、3人は心でしっかりと結び付いていたとは。だから岬の思いは、優しく優しくそれを表に押し出してくれた。そら自身と、シドの髪と、岬自身のシルクハットをその代わりとして。家族として、しっかり結びつけてくれた。
そう、これは、雲一つない空と静かに光る月が、まばやくばかりの星を見つけるのを、海に張り出し見晴らしのよい岬が取りなした物語。涙がそれを曇らしてしまわないように、そっとそっと読み終えた。
イラストがまず良い。雰囲気があって、物語の中に引き込まれそう。
あらすじを読んで、これはきっと優しく切ない世界に連れて行ってもらえると確信し、読むことに決めた。
登場人物は少なく、ほとんど家の中の出来事で済んでしまうお話だけど、まったく退屈しない。
皆、外への表れ方は違うけど、思いやりに満ちている人たちばかり。
着地点はおそらく決まっているのだけど、そこへどう辿り着くか。微笑ましくて、とても優しい物語でした。
家族ってなんだろう。どういう定義が正しいのか、いや正しい定義なんてないのかもしれない。
そんな問いが読みながら生まれ、それがだんだんと大きくなり…そして家族とは意識だ。と考えるようになった。
この本の登場人物達は、何かしら心に抱える大きなものがある。自分自身で抱えていて、決してそれは誰かを傷つけたりするものでもなく、しかし自分一人では時に抱えきれず持て余してしまうようなもの。
それを一緒に持ってくれるのが、家族。
主人公の1人、そらさんはその家族のつながりを持てる適切な配置が見えている。
そして家族の物語につきものの代替わりに対して、きっちりと配置が動いてハマるように配慮していくのだ。
最初は謎に満ちた物語も、岬青年とともに明らかになっていき、いつしか星くんとともに家族が繋がって欲しいと願いながら読んでいる自分に気づく。
家族ってただそこにいるから家族なんじゃない。心の繋がりを持てる、お互いを思いやることができるから家族なんだ、と、読後自分の周りの人達を大切にしようと思える本。
戸森さん、今度は家族をテーマに泣かせにきましたね。
挿し絵も物語の雰囲気にぴったりで、優しく包まれます。
奇妙な関係に思われた擬似家族も、実は全て繋がっていた。それを分かっているのに、それぞれがそれぞれの気持ちを押し込めて暮らしていた。
でも端々に滲み出てましたけどね。
あらすじを読んで、ステップファミリーの話かな?と思い読み始めましたが、すぐにその世界観に惹きこまれました。絵本のような、海外文学のような、優しいファンタジーのような雰囲気で、あたたかく愛に満ちた語りでお話が進んでいきます。
親に捨てられた子という重い題材であるはずなのに、魔法のように優しく、ユーモアもあり、あたたかい気持ちになり、しずかに泣きながら読み進めました。
作者さんの作品が好きでほとんど読んでいますが、これまでの作品とはまたちがったタイプの、とてもよい作品でした。読むことができてよかったです。
自分に、大好きな人への贈り物にもぴったりの本ではないでしょうか。
現実世界なのにおとぎ話のような不思議な世界観の物語でした。一見、おままごとのようにも思えるそらさんたちの生活ですが、それは一度途切れた絆をどうにかしてつなぎ直そうとするそらさんたちの精一杯だったのではないかと思います。すこしせつなくて、でもあたたかい物語でした。
ぼくらは星をみつけた・・・タイトルにあるように、「星」を見つけたのは「ぼくら」なのです。
岬くん、星(せい)くん、シドさん、そらさん・・・そして、読んでいるこちらがわのわたし。
タイトルの「星」は、きっと、なにを持って「家族」というのか?・・・そのいちばん大切なもののようです。
戸森しるこさんの語り口調は、さりげなくあたたかです。たんたんと。
1+1=2。数学者ならこの数式ににロマンを見るといいます。たとえば湯川秀樹博士は1+1はいつもイコール2ではないんだよって思える。だから、数学者には、数式に物語さえ広がる。でも、ふつうは、わからないですよね。
この戸森さんの語りは、1を語り、次にまた別の1を語る。でも、その間の関係が、プラスなのか、マイナスなのかは、こまごまと語らない。なのに、読んでいる私の心の中で、その1と1は、時に足し算に、時に引き算に、時に掛け算になります。気づくと頬を涙がつたい続けているのです。ちょっと、あれ、なんで自分は泣いてるんだろう?そんな不思議な作品です。
エミ ウェバーさんの挿絵。モノクロなのになんてカラフルなんでしょう。200ページあまりの作品ですが、その何倍も深く、この戸森さんの語りを支えます。物語の1と1の間にある意味を無言に、雄弁に支えています。
「空はとても大きい。そのことを忘れずにいることは、当たり前すぎてかえって難しい」・・・私たちは、すでに生まれたときから大きな幸せの上。それをわすれて、小さな小さなことを他人と比較して、不幸になりたがっているのかもしれません。ちゃんと、向き合ってみてください。自分の気持ち。愛する人の気持ち。あなたがしあわせって心から湧き出すように思えたら、もうそれは誰がなんと言おうと、しあわせなんです。そう、教えてくれた作品です。ちょっと、もうこの「見つけた幸せ」は忘れそにないですね・・・ありがとうございました。
優しいイラストと、静かな語りで始まり。きっとほんわかした物語なんだろうと読み始めたら、それだけではなくとても切ない場面もありました。
十歳の星(せい)が同級生を引っかいた時に言われた言葉がとても悲しかったです。同級生はその意味を知って発した訳ではなく、大人の言葉を真似しただけでした。意味も分からず発してしまう言葉があるということに改めて気づき、私も気を付けたいと思いました。
「本当の家族」とはいったいなんでしょう。
登場人物それぞれの背負ったものの重さも、抱え込んだ思いもあり、星を見つけるまでの道のりは平坦ではありませんでした。
でもとても心の深いところまで温めてくれるお話でした。これは冬になったらもう一度読みたいですね。
家族の在り方。シリアスで重くなりがちなお話しがこんなにもロマンチックで幻想的に、なのに心にはずっしりとした切なさを残していく…
なんとも不思議な経験だった。
人は誰でも自分を愛してくれる人、自分が愛する人を探しているのだ。この途方もない大きな空の下で。
始めはそれぞれ心の奥底に隠している秘密を、それぞれがわかっているのに素知らぬふりをしていて、ギクシャクした感じがしたけれど、ゆっくりゆっくりと家族になっていく温かい物語でした。
みんなが見る空は一つだけ。星くん、ちょっぴりおませでしっかりものだけど、本当は寂しがり屋さん。
雰囲気のある装画と、外国人の名前のような呼び名で、おとぎ話のような雰囲気でした。
切なくも優しい物語で、大人の女性に一番響きそうだと思いました。
著者は、いつも登場人物の名前の付け方がうまいと思うのですが、今回もしかり。
タイトルも素晴らしいと思いました。
文中に出てくる「やさしい空の下」という言葉も二重の意味でとることができます。
新しい家族の在り方の物語だと思って読み始めましたが、家族再生の物語でした。
読んでいて、キリスト教の教義を思い出しました。
クライマックスがクリスマスの時期と重なったからかもしれませんが、自分の犯した罪を認め、それを受け入れ、許す、という一連の様子がそう思わせたのだと思います。
その上で、これから家族として生きていく、という強い意志を感じ、彼らの未来は明るいのだろうなと思いました。
家族って不思議なものです。ずっと一緒に暮らしていても、心の中までは見えないから、勝手に大丈夫だと思い込んでしまっていることがあります。ケンカをしたときに初めて相手の本心がわかることもあります。
お互いに大事だと思っていても、それが伝わっていないことだってあります。大事だからこそ干渉しすぎてしまうこともあります。
大事なことは、自分の気持ちをきちんと伝えることなのかしら?相手の気持ちをきちんと受け止めることなのかしら?
どうやら、その両方なのだと岬くんは気づいたようです。
住みこみの家庭教師の求人募集で、丘の上にある青い屋根のお屋敷に出向く岬くん。おとぎ話の中の心優しい魔女に似た家主のそらさんの即決採用により、家庭教師兼家族になった桐丘家。ほがらかで暖かい、思いやりに満ちた家族のなかに、岬くんはうっすらとした“ぎこちなさ”を感じます。不思議に思いつつも岬くんの個人的事情もあり深く追求せず、それでも見守るように過ごしていたのですが…。
物語がすすむにつれ明かされていくそれぞれの関係性や事情は苦しくて痛々しい部分もありますが、全体にただよう凛とした静かな雰囲気が緩和してくれているように感じます。家族とはなんなのかをフラットな気持ちで考えられる、戸森しるこ流のやわらかなかたちの家族の物語。
優しい気持ちになるお話です。
誰もが心の奥に傷や悲しみを抱えて生きているけど、
その傷や悲しみにはそっと蓋をして、
周りを思い遣りながら前を向く、
そんな人達を優しく描いています。
誰かを思い遣ることは、自分が幸せになる方法なのだ、と。
物語の全体的に柔らかいメロディが流れているような、そんなステキな読書時間でした。
まず表紙が素敵で、目が惹かれた。
優しい語り口で、どこかファンタジーのような雰囲気の中、明らかになる複雑な家庭環境。
星くんやそらさんの思惑を知らずに、家庭教師としてお屋敷に住み込むことになった岬くん。彼もまた、一筋縄ではいかない人生を歩んできた。
そして、素っ気ない態度の家政婦シドさん。彼女の過去にも何か事情がありそうで…。
だんだんと明かされてくる真実に驚かされ、けれど不快な感じはしない。それは、物語全体に流れている優しさのおかげかも。バラバラに集まってきた人たちが、一つのコミュニティを築くお話。
独特の雰囲気をもつ物語で、作家さん初読みの人はちょっと戸惑ってしまうかも。散文詩みたいに進んでいくのかもと思っていたら、大人向けのファンタジーというスタイルだった。物語中にでてくる「星の王子様」が底辺に流れるつくりなんだろうなあ。作家さん、大人向けの小説にかじをきるときがきているのかも。児童書という世界ではもう手足を大きく伸ばせなくなっているのではないのかなあと心の隅でちょっと感じました。読ませていただきありがとうございました。
多彩な芸を身につけた若者が、住込みの家庭教師として、ミステリアスな雰囲気をまとう人たちが暮らす家に赴きます。
その家には「子どもに先生と呼ばせてはいけない」という特別な決まりごとがありました。
不思議であったかい家族の物語ですね。
「運命は自分次第で動き出す」という言葉にKOされたな~。
ちょっと生意気な少年のキャラクターも、物語が進むにつれていとおしくなっていきましたよ。
女主人の隠された真意とは何なのか?
主人公の心からの願いがどうなるのか?
ぜひ注目して欲しいです。
(対象年齢は10歳以上かな?)
これほど厳しい状況を、こんなにやさしい気持ちで温かく解決できる世界を描けるのだと作者に脱帽です。「一つの空の下」という表現は昔から言い古された表現だけれども、いろんな作家が様々な形でそれを描き直しているのだとこの作品でも感じました。時には温かく時には熱さを届ける日中の太陽とは対照的な夜の冷たい星の世界。しかしそれを見上げる人々は温かな気持ちと静かな願いを秘めて、いつかは叶う夢を求め続けています。物語の中でそれぞれの人物が持つ思い出の品々や謎解きのようなそれぞれの名前がひも解く世界にいつしか引き込まれていき、読書の最後にそれらが知恵の輪がほどけるように目の前に現れます。世界は捨てたものではないと思わせてくれるこの物語は、そんな世界の一員に読者も加えてくれます。星空を見上げた時に思い出す物語になりそうです。
星空の下で、澄んだ空気に包まれているような気がした。
お伽話のような不思議な世界だ。
中に出てくる魅力的な人達は、みんな心に暗い闇を持っている。
人と触れ合うことで、彼らの闇の中に星がともっていく。
一つ、また一つ‥とともっていき、心の中の闇は最後に満天の星空になる。
闇を消すことはできないけれど、それでいいのだと思えた。
星を一つずつともしていけば、笑いあうことができる。
生きていくことができる。
そんなことを教えてくれた本だった。
このラストの開放感! チープな表現だけれど、ほんといい話。本を読み終えてこんなに気持ちが晴れやかになったのは久しぶりな気がするってくらい。
登場人物がもう本当に素敵です。直接描かれないそれぞれの過去と、その悲しみが、直接描かれてきないからこそなのかより伝わってきて、それがさらに読み手を物語へ引き込みます。それが人物の魅力にさらに磨きをかけるのでしょうか。
登場人物は皆が本当に魅力的ですが、やはり僕も(そういう方は多いと思う)シドさんが好きです。
また、自分は東京都北区に在住しているので、洋館や苗字に作者の北区推しを感じてニヤリとしてしまいました。
私は今回電子で読ませてもらいましたが、これはぜひ紙の本で挿画や装丁や手触りを楽しみながら読むことを味わうことを勧めたい本。物語だけでなく、絵が加わることで、かけ算で世界が広がることを感じられる本だと思います。
メルヘンチックな物語が展開されて行くのを、優しい気持ちで読み進めると…!
誰にでも心当たりがあるのでは? あなたの親だから! あなたの子どもだから! というピリピリするどうしようもない感情に振り回されてしまうこと。
でも、奥底には柔らかい感情があって、だからこそ厄介で。岬くんのハットのように、大切で厄介なんですよね。
このお話はきっと、そんな思いを経験した人、今まさにそんな感じだよという人、多くの人にささるのではないかと思います。
味わい深い挿絵まで含めて、美しい佇まいの物語でした。
後悔と自責の念に絡め取られながらも、この物語のみんながお互いに惜しみない愛を注いでいる。不器用でうまく伝えられないままの日々に、風穴を開けたのは家庭教師の岬くん。
でも、きっとそらさんは全部お見通しだったのだろう。過去は変えられない。でも、これからの未来の時間はみんなで擦り合わせることができる。
鎧った心がほどけていくまで根気よくシドにアプローチした岬くんもまた家族を切望する立場にあった。読みながら、夜の空を見上げたいという思いに駆られ、大切なものをやっと手にしたこの家族の新しい一歩を静かに祝したいと思いました。
とてもかわいい小説だと思って読み始めました。
もちろん可愛くてのどかな場面がたっぷりあるのですが、大人の読者のわたしでもぎくりとしてしまうような場面もあります。
ステンドグラスを「憧れ」のメタファーのように受け取りました。
序盤に1度しか出てこなかったのですが、キラキラとしていて、凝縮していて、ぎゅっと押し固められていて。
家族の形を模索する者たちの物語の家にぴったりだと感じました。
これって…
児童書なんですよね?
いや、大人でも十分読み応えのある、素晴らしい一冊なんですけど!!
小学高学年のお子さんや中学生になら内容は理解できると思いますし、その親御さんにも是非読んで頂きたい本です。
児童書だけのカテゴリーに入れておくのは勿体無い作品です。
内容は敢えて詳しくは語りません。
お互いのことを思えば思うほど、気持ちを素直に表に出せなくなるような、不器用で深い家族愛の物語です。
世の中には、様々な家族関係があって、ただ、血がつながっているだけで、家族と言えるほど単純なものではないし、家族とは何かを考えさせられました。
人それぞれ家族に求めるものは異なりますが、主人公の岬くんを通して、家族のあり方は、それぞれの形でいいのだと感じました。
丘の上のミステリアスなお屋敷で「住み込み家庭教師」になった多彩な経歴の岬くん。歪な「家族ごっこ」の隙間から溢れる複雑な想いを、各々が敏感に掬い取り繋ぎ止める。儚い期待と思い遣りに包まれた、切なくも強いたった一つの家族の物語。
多様な家族の形があって、そこに正解はない。何が幸せかは一人一人が決める事で、形に固執する必要はない。ユニークな登場人物たちの光と闇に触れ、じっくりと導かれるような壮大さを感じた。現実的なのにファンタジーのようで、センスの光る異国風のニックネームも相俟って、ふわふわと無重力の宇宙と重なった。
雅な挿絵が世界観を広げるアシストを控えめに担っていて、とても良いバランスの作品。
すべては解決しない、そんな当たり前を手探りで進む「新しい家族」に、優しい気持ちをもらえました。
戸森しるこさんの作品はいくつか読んだことがありますが、童話スタイルは珍しいかもしれません。
未亡人のそらさんには星くんというお子さんかいる。ある青年が住み込みの家庭教師募集のお知らせを目にするところから物語は始まる。
個性ある愛らしいキャラクターたち。それぞれの過去は悲しい内容なのかもしれないけれどそこまで悲観的にならない優しい文体。
緩やかに静かに進む世界観。物語にイラストがすごく合っていておとぎの国に迷い込んだような気分で読み進めました。
心の中に火を灯してくれるような優しい気持ちになりました。
宝石箱の中にそっと取っておきたいそんなお話でした。
お屋敷の少年の家庭教師としてやってきた青年。ハウスキーパーと庭師もいるその屋敷の人々はそれぞれ謎めいた秘密がありそうで…。美しい挿画と温かみのあるやさしい文体 に安心して心ゆだねつつも、ミステリアスな設定にどきどきときめいて惹き付けられます。10代から読めるけれども、大人にも読みごたえのあるストーリーでした。表紙から受ける印象以上に大人っぽく深い内容に感じます。
独特の世界感で、人物の繋がりが少し複雑だったので、初めは児童向けかな?と思いながら読み始めましたが、読んでいくとその独特の静かで優しい語りが落ち着くように馴染んできました。
いろいろな家族の形がある中でまた、距離感が程よいこの作品がとても気に入りました。
実際のものを見るとさらに、素敵な装丁のデザインで手に取ると宝物のお話になりそうな一冊になっているなと思いました。
舞台も、登場人物も、文章も、すべてが美しい物語でした。
過去の苦しみを抱えた人間が、実は必然的に集まっていて、最後は距離を縮めることができたところは、読み終えて安心できた部分でした。
個人的に心に残ったのは、長い髪を編むことで、過去をひきずるように生きていたシドが、その長い髪を通して岬くんと近づき、最後はショートヘアーになって幸せになるところです。
戸森しるこさんの作品は大好きなのですが、今作はロマンチックでありながら、真の家族の在り方、繋がり方に迫る鋭い切り口もあり、とても興味深かったです。
当たり前のことですが、はやり戸森さんは、うまいです。
今後のご活躍も楽しみにしております。
読ませていただき、どうもありがとうございました。
『住みこみの家庭教師募集。男性歓迎。子ども好きでどちらかといえば器用な方』丘の上の屋敷に家庭教師として雇われた岬。たんなる家庭教師ではなく『家族の一員』として迎えられる。未亡人のそら、養子の星、ハウスキーパーのシドの4人家族だ。読むにつれ3人の関係性や、岬の役割などが少しずつ明らかに。『家族』は血の繋がりだけではないもっと大切なものがある。自身の気持ちを口にしない3人だが、その心には確かな愛情がある。そらがシドに『ごめんね』ではなく『ありがとう』と言ったところでは泣かされた。静かで優しい物語。
日本が舞台でありながら西洋の雰囲気を色濃く漂わせるお話です。未亡人の老女そらの10歳の一人息子・星(セイ)の家庭教師を募集する広告を見て館を訪れた青年・岬は一発で面接に合格し家族の一員として迎えられます。ハウスキーパーの若い女性のシドはどこか打ち解けない性格で、岬はこの一家にどこか違和感を覚えながら溶け込もうと日々努めるのでした。物語が進むにつれて解き明かされていく人間関係の謎と哀しい過去の秘密。でも主人公の岬が全員の心を開かせて段々と理想的な関係へ導いていき人は悲劇も愛の力で克服できると教えてくれます。最後は感動で心が震えて胸一杯になり無上の幸福感に包まれる家族の愛の物語は子供も大人も心から楽しめるとてもドラマチックでロマンチックな一冊でしたね。
すごく心に残る本でした。最初は、透明感のある、でもさらっとした読み心地に思っていたのですが、読み進むにつれ、心を掴まれる切なさに、言葉が見つかりませんでした。切ないけれど、前を向いて生きていく登場人物に救われつつ、小学校の図書館に置くには複雑かなぁと感じました。
子供の頃に読みたかったなぁ。大人になった今でも刺さる物語だったけど、多感な子供の頃に読んだら、私は一体どんな感想を彼らに持つのだろう。大好きなエルマーシリーズのような本当に素敵な大切にしたくなるような表紙は、ページを捲る前からこの先どんな世界が広がっているのか、ドキドキさせるに十分な一つの仕掛けでした。奇跡のようなお伽話の中に、大人の事情がシリアスに入り込んだ時、一瞬のさざなみがこの世界を揺らしましたが、大人だからこその着地点で感動さえ覚えるラストに感服です。
最近家族間の悲しいニュースが多いときに読むと家族って血が繋がってるだけじゃ「家族」としての役割が機能しないんだなと思った。お互いのことをお互いが尊重して大事にしあうことが根幹にある関係でないのなら、距離を置けるように支援や見守りが児童相談所と家庭裁判所にできたらいいのになぁと思う。