上海灯蛾
上田 早夕里
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刊行日 2023/03/20 | 掲載終了日 2023/06/18
ハッシュタグ:#上海灯蛾 #NetGalleyJP
内容紹介
栄光か 破滅か
闇に生きる男たち
1934年 魔都・上海。灯火に引き寄せられる蛾のように熱狂して燃え尽きていった男たちの物語。
第159回直木賞候補作『破滅の王』の著者が放つ、歴史エンターテインメント小説
(あらすじ)
1934年上海。「魔都」と呼ばれるほど繁栄と悪徳を誇るこの地に成功を夢見て渡ってきた日本人の青年・吾郷次郎。租界で雑貨屋を営む彼のもとへ、謎めいた日本人女性が熱河省産の極上の阿片と芥子の種を持ち込んできた。次郎は上海の裏社会を支配する青幇の一員・楊直に渡りをつけるが、これをきっかけに、阿片芥子栽培の仕事へ引き摺り込まれてしまう。
やがて、上海では第二次上海事変が勃発。関東軍と青幇との間で、阿片をめぐって暗闘が繰り広げられる。熱河省から新品種を持ち出されたことを嗅ぎつけた関東軍は、盗まれた阿片と芥子の種の行方を執拗に追う。
一方、次郎と楊直はビルマの山中で阿片芥子の栽培をスタートさせ、インドシナ半島とその周辺でのモルヒネとヘロインの流通を目論む。
軍靴の響き絶えない大陸において、阿片売買による莫大な富と帝国の栄耀に群がり、灯火に引き寄せられる蛾のように熱狂して燃え尽きていった男たちの物語。
(著者プロフィール)
上田早夕里 うえだ さゆり
兵庫県出身。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞する。SF以外のジャンルも旺盛に執筆し、18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『夢みる葦笛』『リラと戦禍の風』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。
出版社からの備考・コメント
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出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784575246025 |
本体価格 | ¥2,100 (JPY) |
ページ数 | 528 |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
上田さんの作品はいつも楽しみにしています。
最初の場面に出てきた方は誰なのか、登場人物たちの関係性がどう変化していくのか、を気にしながら読み始めました。あっという間にそんなことを忘れてしまって、大事件が起きてからはからは止まらない物語にのめり込んでしまいました。なんとも言えない気持ちで読み終え最初の場面を思い出して、表題の意味を少しは理解できた気持ちになりました。
満州アヘンスクワッドを彷彿とさせるプロット。1930年代の上海が舞台。謎の日本人ユキヱが持ち込んだ阿片から、青幇の殺し屋楊直と結託し一獲千金を目論む主人公次郎。中国裏社会を牛耳る青幇の利権を巡る抗争を関東軍特務機関が追う。時代に翻弄される3人の矜持の結末を描く、著者初となる長編クライムノヴェルは意欲作
日本の雪深く貧しい農村の生活を捨て、上海に夢を追いかけ渡った青年・吾郷次郎。彼の営む雑貨屋に現れた女性原田ユキヱ。彼女は香水をつけていなくても甘い香りを纏う芳香異体という体質の持ち主だった。
ユキヱが持ち込んだ「最」という極上の芥子の種。この種をきっかけに次郎は上海の「青幇」という裏社会と繋がり芥子の栽培に引きずり込まれる。「最」は架空の品種だが大陸において日本軍が栽培していたのは事実だという。
「最」の行方を追う関東軍と、上海の裏社会「青幇」との戦いは戦時中の時代背景と、人間模様が複雑に絡まりあい読みごたえがあった。登場者一覧がないのでメモをしながら読み、出てくる地名の場所を検索しながら読みすすめた。
「日本人」という括りに拘らない次郎と、「日本人」になりたいのに自らの生い立ちからなりきれないと悩む伊沢。自分自身を決めるものはいったいどこにあるのかと考えさせられた。
「最」に群がり熱狂する男たち、そして甘い香りを纏うユキヱの真の狙い、525ページのボリュームに飽きることなく彼らの戦いは読みごたえがあった。
私が生まれ育った田舎では満州に住んでいたという老人もいたが、もうその話は聞くことはできない。小さい頃通報しなければいけない芥子の見分け方を祖母から教わったことを思い出した。著者の後記を読みながら生きた歴史を知る機会を逃したのだと改めて感じる。だからこそ史実に基づいた作品に今後少しずつでも触れてみたい。
『いまのやり方を続ける限り、早晩、日本は戦争に負けるだろう。それは、開戦前から専門家の分析によって指摘されてきた。にもかかず、日本政府はその分析結果を退けた。(p359)』#NetGalleyJP 主人公はチンピラ、話は非合法な麻薬を奪い合うヤクザの抗争なのだが、抗争の一方、日陸軍特務機関という合法的な暴力装置への復習譚にして何より舞台が魔都上海ともなればそれは俄然良質なエンターテイメントに化け果せる。合わせて読んだ加藤陽子さんの「歴史の本棚」もあいまってこの道はいつかきた道的なやるせなさも大きい。
魔都市、上海。
貧しさゆえに故郷を捨て上海で一旗揚げようと試みる吾郷次郎。
貧しさからのし上がってきた楊直。
ある取引から二人は義兄弟の契りを結び阿片製造に乗り出す。
欲が欲を呼び、青幇、関東軍と入り混じった争いがおき、否応なく二人は巻き込まれていく。
欲望、自尊心、メンツ、怒り、悲しみ。
混然一体となった感情と争いの中で次郎は命を落とす。
歴史の中に片鱗も残らない存在。
吾郎は、楊直は、死によって救われたのだろうか。
読み終えてからも、しばしば本書のことを考えてしまいます。
それぐらい胸に残る作品でした。
物語の舞台は第二次世界大戦下の上海。
長崎に原子爆弾が投下された、1945年8月9日から始まります。
その日、上海の裏社会で死体処理に関わってきた梁(リャン)という男のもとに、一体の遺体が持ち込まれます。
依頼主からの希望に沿って、黄浦江(上海を流れる川)に沈められた遺体。
そしてここから時計の針は1934年へと戻っていき…。
怒涛の展開に、ジェットコースターに乗っている気分にちょっとなりました笑
あらすじだけ読むと重苦しい話なのかと思いますが、意外にもそんなことはなく。
そのような作品に仕上がったのは間違いなく、物語の重要人物の1人・次郎のおかげだと思います。
貧しい寒村で育ち、成功を夢見て無鉄砲に日本を飛び出した次郎。
ギラギラはしているけど、「ここだけは譲れない」という芯の強さもあり、また同時に、ある種の無邪気さ、無垢さを兼ね備えた魅力的な人物です。次郎の存在ゆえに、物語にさらに引き込まれたと感じました。
タイトルも大変秀逸で、「蛾が灯りに集まるように、魔都”上海”に魅了された人間たちの業」が本作には描かれています。
また、本書を読む前に「五色の虹――満州建国大学卒業生たちの戦後」(三浦英之 著 集英社)を読んでいたことで、作中のあるエピソードにものすごく心を打たれました。関連図書として強くお勧めします。
本書は作者が「戦時上海・三部作」と呼ぶシリーズの最終作。
実はまだ残りの2作品(「破滅の王」「ヘーゼルの密書」)を読めていないので、早急に読みたいと思っています。
夢と理想に熱狂し燃え尽きていった者たちの物語が心にガツンと打ちこまれました。
元々、マフィアや裏社会をとりあげた作品が好きなのもありますが、それを差し引いても非常に面白く楽しめました。近代史には歴史の空白が少ない印象です。しかし、この作品は上手く史実と創作を織り交ぜており、とても面白かったです。
主人公をはじめとしたキャラクターのカッコ良さと憐れさに痺れました。特に主人公の次郎は自由を誰よりも渇望しているのに、変なところで意固地な性格にヤキモキしつつも好感が持てます。
夢と理想と欲望に…復讐。さまざまな感情と思惑が交錯していき、いつ誰が死んでもおかしくない展開にヒヤヒヤしつつも彼らと熱狂できる物語に夢中でのめり込みました。読了後、序章に戻ってきた時の寂しくも達成感に満ちた、言語化できないこの感覚を是非みな様にも味わって欲しいです。