カプチーノ・コースト
片瀬チヲル
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刊行日 2022/12/06 | 掲載終了日 2022/12/05
ハッシュタグ:#カプチーノコースト #NetGalleyJP
内容紹介
しんどいときほど、周りに頼れない。
自分を見つめ直すひと月の物語。
早柚(さゆ)は、パワハラがきっかけで会社を休職中の26歳。ちょっとしたことから、毎日、地元の海岸のゴミ拾いをするようになった。そこで出会う人々や出来事を通して少しずつ変わっていく心を繊細に描く、静かな感動作。
著者:片瀬チヲル(かたせ ちをる)
1990年生まれ。明治大学文学部卒業。大学在学中の2012年、「泡をたたき割る人魚は」が第55回群像新人文学賞優秀作に選ばれる。著書に『泡をたたき割る人魚は』(講談社)。
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おすすめコメント
傷つき、他人の言葉にひどく敏感になっている主人公が、ゆっくりと自分と向き合う物語です。
理解ある彼氏も、癒しを与えてくれる家族も登場しないところが好きです。
しんどいときほど周りに頼れない、そんな人にぜひ読んでほしいです。(販売担当)
傷つき、他人の言葉にひどく敏感になっている主人公が、ゆっくりと自分と向き合う物語です。
理解ある彼氏も、癒しを与えてくれる家族も登場しないところが好きです。
しんどいときほど周りに頼れない、そんな人にぜひ読んでほしいです。(販売担当)
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★★
出版情報
ISBN | 9784065300251 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
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主人公、早柚(さゆ)は優しい。浜に打ち上げられたサメの子にとって、助けてくれる人に触れられた時、その手がどれほど熱かったろうと、想いをいたす。立場の違うものの身に寄り添う力の強さ。
ふとしたきっかけで始めた海のゴミ拾いは、胸や手足に溜まったぬるぬるした悪い言葉を無意識に払っていく作業ともいえる。傷ついた早柚の回復の一ヶ月、友人は来るが、恋人も家族も登場しない。海で出会った人との関係にも慎ましく距離を保っている。
孤独だろうか。しかし孤独という単語に纏わる否定的なニュアンスは存在しない。それは孤独ではなく自立といえよう。
回復ののち、彼女はどこへ行くのか。さりげないラストが印象的だ。
会社を休職中の早柚(さゆ)。彼女には仕事を休職する正当な理由があった。
彼女に出会う人たちが「今日はお休みですか?」そう聞くことに悪気はない。悪気がないのは分かっているのに、話を繋げるだけの一言に心がざわついてしまうことが私にもあるので、彼女の気持ちに共感していた。
タイトルの「カプチーノ・コースト」とは波の花のこと。
美しく見えるその白い泡でも怪我をすることがあるという。
美しく見える言動も色々な思いを含んで混ざりあった時、波の花と同じように誰かを傷つけてしまっているのではないだろうか。
早柚は毎日海岸掃除をして、変わっていった。それは大きな変化ではなく気付きのようなほんの些細なことだった。
世間のいう正しさではなく、自分のなかの揺るがない正しさが一つあればいいと思った。
そして、最後に早柚の呟いた一言を私も真似してみたい。
主人公ぽくない主人公が、主張しすぎない感情で生きていく日常の中、海岸のゴミ拾いというスパイスが加わることにより、少しだけ生活が色づいていくが…彼女自身は何も変わらない、ただ自分の役目として日々を全うしていく。普通ならそこから恋愛や友情などに発展していくが、変わっていくのは周りだけで彼女自身は自分を一貫して俯瞰で見ているのが印象的だった。
初めて読む作家さんです。
辛くても誰にも頼れない主人公。優しすぎて、ちょっとした言葉に傷つく繊細な人。
だけど、海でゴミを拾いながら、様々な人に会い、少しずつ変わっていく。
劇的な変化もなければ、恋愛が絡む話でもない。ただただ、静かな日常が繰り返されていく毎日。だからこそ、小さな変化は見逃されそうだけど、紛れもなく主人公は前に進んでいる。
タイトルが波の花を意味するのだと知り、納得。
休職中の早柚(さゆ)が夢中になるのは海岸にあるゴミを拾うこと。ビーチクリーンを趣味にする人たちがいることを初めて知った。
パワハラ上司の元で我慢しながら、意味のなさそうな仕事をするよりも、ボランティアで収入にならなくても環境保護に役立つゴミ拾いの方がやりがいはありそう。ゴミ拾いだけじゃ生きていけないことは分かってる。それでも辞められない早柚の気持ちが分かる気がする。
大きなゴミをみんなで協力して解体したり、空のゴミ袋がいっぱいになるまでゴミを集めたり…
作品全体に、「このままじゃいけない」という早柚の焦りが感じられて、ヒリヒリする。職場復帰した早柚の行き先はどこなのか。ラストはあっけなく終わるように見えるが、早柚の本当に行きたいところはそこなのだと納得できる終わり方だった。
世の中の後ろ暗い部分が丸出しでとても苦しいです。
世界的な結果には繋がらないかもしれないけれど、ひとつ小さな良いことをしてみるのは自分にとってとても良いことだろうと考えました。
読後思えば主人公が他のお掃除にも手を広げずにずっとビーチクリーンにこだわる理由にぴんとくるべきでした。
職場に戻ってからの彼女の姿を見て、やっとこれまでの休まらない休職期間に気がついてあげることができた気がします。
大人の事情、くだらない仕事なんてぜんぶ潰れてしまえばよいのにと思いました。
〜〜〜〜
めでたいだけでは終わらない、
やさしいだけでは救われない世の中の生き残り方。
〜〜〜〜
いままで見えていなかったものにふと、目がいく瞬間。
完璧に善良な人間にはなかなかなれないので、せめて自分が良いと選んだことをして生きていきたいです。
〜〜〜〜
主観と客観の境がぼやけるその時、これを信じたいと必死に掴めるものが誰のこころにもあるといいなと願います。
〜〜〜〜
会社を休職中の2ヶ月の間、海辺でビーチクリーンのボランティアをする早柚。
海洋ゴミ拾いについて詳しく書かれ、まるで映像を見ているようにイメージできる描き方がすごい。
また早柚が、ビーチクリーンを通じて、その都度一期一会の仲間との出会いに信頼や親しみを感じたり、続けることでひとつひとつ地道に積み上げる実感を得る様子に共感を覚える。
日常に行き詰まったとき、そこから少し離れ、違う世界に身を置くことは、きっと前に進むことだ。大切にしたい物事が自分を支えてくれると信じられる、静かであたたかな物語だった。
物語の中で私も日常から離れて深呼吸しているような気持ちになる。
生きずらさや違和感、見て見ぬふり、打算的なやりとり。
社会に溶け込むことは容易ではないと思う。
良かれと思ったことが人を傷つけてしまうこともある。
どうすればよかったのかと彼女と共に戸惑いを感じた。
不用意に落としたものが、流れ着き海の生き物たちを苦しめ、またゴミとなる。
ひとつひとつ拾い集めながら、浜がきれいになっていく様は気持ちのよいものだが、終わりはなく次の日にはまた新たなゴミが漂着してしまう繰り返しは日常の葛藤と重なるようでした。
1日の終わりはよかったなと素直にそう思える日を私も作っていきたいと思った。
海沿いで育ったので潮風の匂い、様々なものが岸に漂流してきたことも思い出しました。
パワハラによって休職中の早柚。浜で腕時計を紛失したことから、海岸のゴミの存在に気づき、拾い始める。
ひとり黙々とやるうちにビーチクリーンをする人々と自然に知り合うようになり、いろいろな観点を知る。
心の疵を抱えて、未だことばにはできない。自分のしてきた仕事の意味、役に立たない仕事に嫌気が刺す。我慢しながらお金のために働くこと、納得できないまま上司に従うこと。
やさしすぎる早柚の心の襞に挟まった滓は溶けないまま。社会と馴れ合うことができない人間の真面目さが自分を擦るのだ。
正しさとか善良さとかでは解決できないことがあると認めるのが悔しい。
ある事情で2ヶ月の休職中の早柚は、自宅近くの海岸でゴミ拾いを始める。最初はほんの思いつきだったが、ゴミ拾いを通じて知り合いもでき、装備もスキルも充実していく。
疑問に思ったことや、間違っていると口にできない性格の早柚が、海岸美化活動を通じて成長していく話……というわけではなかった。2ヶ月ばかりの体験では性格は変わらないのが逆にリアルだ。
地球規模で広がる海洋汚染や、ブラック企業の問題は孤軍奮闘ではどうにもできない。ただ、彼女の中で、確実に何かが変わったのは間違いない。
『カプチーノ・コースト』
会社を休職中の26歳女性の主人公が始めたのは海でのゴミ拾い。
そこで出会った人たちとの新たな関係性によって少しずつ変わっていく。
海に行けばゴミが漂着している。ゴミを拾うと何かの役に立っている気がする。役に立たない仕事なんてないと人は言うけれど、本当はあるかもしれなくて、その穴埋めでもあるのかな。
人のことを考え過ぎてしんどくなり、今の状況から逃げたくなる。でも、どうしていいかわからなくて、誰も知らない別の場所に身を置きたくなる。一定の距離をとった人間関係、心地良いのは分かる気がする。
みんなどっか詰まって無理してるのかな。こういう物語は心にしみ渡る。
見て見ぬふりって毒に思えた。見て見ぬふりをすることは出来るのかもしれないけど、それは自分に対しての嘘でしかないのであってつらいことだと思います。自宅近くの海岸でゴミ拾いを始める。このモチーフはわかる気がするがちょつと苦手。
初読みの作家さんでしたが、とても、とても良かったです。毎日海でゴミ拾い⁈‥‥
なんで⁈という感じで読み始めましたが、早柚が、毎日ゴミ拾いをする意味、気持ち、大切にしたい事が丁寧に綴られていました。きっと気持ちが十分に元気な人には、悪気無くわからない事ってあるのだろうと思う。どうして海で拾ったゴミとバーベキューで出たゴミを一緒に回収所に捨てては駄目なのか?と言ったスーツの男性のシーンは象徴的でした。
コンプライアンスがどうのとか、働き方改革とかいう言葉が聞かれるようなになって随分経ちますが、我慢すること、波風を立てないことが美徳とされるような風潮はまだまだ続いてゆくのでしょうか。
パワハラが蔓延る職場で心が疲れてしまった主人公は、かつて私もそうだった、「ごく普通」の「会社員」の最大公約数のような存在、彼女の心情には共感できるところ、身につまされるところが多かったです。
地の文にも会話文にも心の琴線に絡まるような表現が溢れて、何度も立ち止まりながらアレコレ考えてしまう作品でした。
「一日に一度でいいから、よかった、と呟けるような仕事がしたいと思った。」
という主人公を応援したいと心から思いました。
初めて読む書き手さんでしたが、他の作品も読んでみたいです。リクエスト承認ありがとうございました。
休職中に砂浜でゴミを拾う主人公。どれだけ綺麗にしても、翌日にはまた新しいゴミが漂着している。お金にならない行為を繰り返す彼女に、周囲の人の目は冷たい。
多くの人にとってビーチクリーンは目的ではなく手段でしかない。いいことをした気になりたい、それを通じて仲間と繋がりたい。だが彼女にとっては砂浜を綺麗にすることこそが目的だっだ。
目の前にある問題を見過ごせない。不毛かもしれなくても抗う。だがそれが当事者にとって有難い行為であるとは限らない。海を綺麗にすると言った時、流木を拾う人がいる。ビーチクリーンのゴミと生活ゴミを混ぜる人がいる。何か間違っている、でもそれを上手く伝えられないまま誤解される。
お金を稼ぐために働くことは必要だ。だが海のゴミを拾うことはインターネットの海にゴミ記事を撒き散らす仕事(私が心から憎んで止まない所業の最たるものである)よりも尊く正しい。彼女の行動原理は罪滅ぼしだ。まるで罪悪感を払拭するようにゴミを拾う。
カプチーノ・コーストとはカプチーノのような泡が海から大量に押し寄せる現象である。嵐により海中のプランクトンや化学物質、海の中の不純物が攪拌され発生すると言われている。柔らかく害がなさそうに見える泡が人の善意のようで、読み終わった今もずっと心がざらついている。
嫌なことがあったとき。黙々と手を動かして何も考えないようにすると楽なときがある。
主人公は休職中に海に行き、時計を海に落としてしまったきっかけからゴミ拾いを始める。
初めは手で拾い集めていたが、出会う人にアドバイスなどを貰いゴミ拾いのレベルアップとブラッシュアップをしていきながら、自らとも向き合っていく話。
拾うものや考え方にも様々な人がいて
一緒くたにしてはいけないんだなと思ったり、
処分するのにも費用がかかるので全てボランティアだけでは出来ないということや
イベントにも良し悪しがあって
海を大事にする人の想いも千差万別だということ。
知らないことがいっぱいだった。
(ゴミ拾いを手伝うふりして結局自分の持ち込んだ家庭ごみを中に入れるところには自分もモヤモヤした)
自分と向き合い静かに受け入れていく過程の読み心地がとても穏やかなもので素敵な作品だと思いました。
何もかもから逃げたくなった経験があり、その上主人公早柚の性格は自分に重なる部分も多くて、かなり共感を覚えました。さほど親しくもない相手と交わす当たり障りのない会話は苦手。ただ、自分もその苦手感を相手に与えないように気をつけたいと思った。狭い世界観の中で、世の中の人間関係を上手く描いてるなと面白く読みました。ふたたび海岸に戻って来た早柚、このあとどうするんだろう。
カプチーノコーストとは波の花のこと。海中のプランクトンや海に溶けている化学物質が混ざってふわふわの泡になっているそうだ。見た目の美しさでなめてはいけない。人間は自然の美しさに牙を剥かれることがある。
ごみの判定はひとそれぞれで違う。正解はひとそれぞれで違うということは社会生活でも同じ。海のごみを拾うことは間違いなく正しいこと。だから心の拠り所になる。見た目の美しさではなく本質を見極めて生きていくこと、海で見つけた大切なことについて描かれている作品だ。
海で出会った人に、「普段は何をされている方なんですか?」とたずねる。
普通に働いて、毎日を普通に過ごしている人からすると、きっと何でもない質問で。
でも、その質問に当たり前に答えられない人もいて。
聞かれたくない人もいて。
良いと思うことも、嫌だと思うことも
本当に人それぞれなんだなと感じました。
海岸のゴミを拾っているうちに、無心になり、やがてそれが自分と向き合う時間になる。面白い着眼点でした。繊細で丁寧な心理描写が印象的。陽気な人のガサツな一言に傷つく人もいる。自分も気をつけようと思いました。心に染み入るような一作。