タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース
窪美澄
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刊行日 2022/12/15 | 掲載終了日 2023/02/01
ハッシュタグ:#デスバス #NetGalleyJP
内容紹介
2022年第167回直木賞受賞作家、窪美澄最新作!
都心の古ぼけた団地で5歳上の姉・七海と暮らすみかげ。未来に希望が持てず「死」に惹かれる彼女の前に団地警備員を名乗る老人が現れ、日常は変わり始めていく。
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【著者プロフィール】
窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR−18文学賞大賞を受賞しデビュー。11年同作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞受賞。12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、19年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞 、22年『夜に星を放つ』で第167回直木賞受賞。そのほか『さよなら、ニルヴァーナ』『よるのふくらみ』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『私は女になりたい』『朔が満ちる』など著書多数。
出版社からの備考・コメント
今回アップしたデータは、校了前のものです。刊行時には内容が異なる場合があります。ご了承ください。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784480805096 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
ページ数 | 224 |
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タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース 窪美澄 著
イッキ読みしてタイトルを見直した。生まれたことを誰かと祝えるように、死ぬ時はひとりにならないように。窪さんは心に刺さる言葉とともに、私から見えていない場所を見せてくれます。都心の老朽化した団地の物語
直木賞作家、窪美澄(さん)の何がすごい。それは世代を超えたすべての倫理観をいずれかの年齢の読者に読ませる事です。
わたしはすっかり七海ちゃんのファンになりました。後半登場が少なくなりすこし悲しかったです。
それは主人公の、姉である七海ちゃんからの親離れを意味します。
静かな姉妹ふたりの家族の暮らし。
知らぬ間にぽんと、大きな次第に巻き込まれてしまう驚きと、何でも闘うたくましい仲間がいることのしあわせを読みました。
生命力逞しく生きている人たちの物語だった。
生きづらさを抱えていて、登場人物たちは私なんてダメなんだとか言うけど、それでも力強く生きている人たちだった。
自分よりも大切な存在のために必死で生きていく姿が眩しいくらいだった。
一人でも多くの誰かにこの物語が届くといいなと思いました。一番は物語の中に出てくる子たちと同じような境遇にいる子に。読書の習慣がなかったり、経済的にも精神的にもそんな余裕がないかもしれないと思うと歯痒くなるけれど、それでもどうしたら手に取ってもらえるかと考え、学校や図書館にあると手に取りやすいと思う反面、そればかりでは作家の方の糧にならないから、良い作品を書き続けてもらうためにはせめて私みたいな立場の本好きが微力だけれど身銭を切る必要は大前提だろう、などなど読書後に色々と思いを巡らせずにはいられない素敵な本でした。ありがとうございました。
昭和のオリンピックの頃に建てられた老朽した団地。時代は現在。十五歳のみかげは、五つ年上の姉と、互いが居さえすれば大丈夫、という慎ましい生活を送っている。ある日、団地警備員を名乗る老人ぜんじろうさんに、名を呼ばれ、一緒に活動しなさいと言われる。公共空間の掃除、独居老人の安否確認、屋上のフェンスの補修など。孤独死と自殺を防ぐ為。
ぜんじろうさんの、ぶっきらぼうな態度が好きです。そして、学校の友達むーちゃんと倉梯くんのキャラクターと家庭背景も。
誰でも、死ぬ時と誕生日には、ひとりでないといいな、と思いました。
生きることに精一杯な七海とみかげが、どんなに辛くてもお互いを思いやり、
支えあう姿に胸が詰まった。
体が弱く、常にお金の心配をし、いじめられて友達なんていなかったみかげ。
一人の老人に出会い、団地警備員という役目を貰うことで、生きがいと友達
を得て、人生前向きに生きる光を手にした。
「誰かのために何かをするということはとても人を強くする。」
「死をもって生の喜びを知る。」
この二つを教えてもらった。
もう、なんていうのかしら。
社会問題が山積みで、読みながらなんともできない腹立たしさと歯痒さが込み上げる。
打ち捨てられたような団地の住人。
人生に絶望して命を投げ出す人々。
そんな中での老人ぜんじろうさんとの出会い。学校で初めてできた友人たちとのやりとり。
みんな何か寂しくて切なくて…あったかい。私はこの作品が愛しくてたまらなかった。
人は所詮、孤独ないきものかもしれない。一人で生まれ一人で死んでいくけれど傍らに生を祝い死を悼み弔う人が一人でもいるといいな。
嬉しい時に一緒に喜び、辛い時に寄り添い合う存在があればいい。
古い団地に姉と二人で住み、夜間高校に通うみかげ。身体も弱く自分の思いを伝える事が苦手。そのみかげが自分が好きになった人たちと自分を好きでいてくれる仲間に出会う事で変わってゆく。覆っていた殻が少しずつはがれ落ち光を放つ。社会の片隅かも知れないけれど、そこがみかげの世界の真ん中。そこで輝く小さな星たちに幸あれと願う。こんなに愛おしい小説に出会えたことが本当に嬉しい。
あなたの苦しみはなんですか?
みんな日々、何かしら悩みや苦しみを抱えていて、その大きさは人と比べることなどできない。
みんな、日々つらくて、しんどくて。
それでも、そのつらさを少しでも和らげる方法があるのだとすれば、
どこかで誰かと繋がること、
なのかもしれない。
誰かに話を聞いてもらったり、時には少しだけ手を差し伸べてもらう。
それはこのデジタルの時代にあっても、昔と変わらず重要で、そんな人との繋がりが大きな力をもっている。
その分、人っておせっかいで、面倒くさい生き物だけどね。
何をしてくれるわけでもないけれど、傷ついた心にそっと寄り添って、背中を撫でてくれる友人に会い、
少しだけ前を向く勇気をもらえたような、
そんなふんわりと優しい、だけど心強いお話でした。
窪美澄さんの作品は好きなものが多く、こちらの作品も気になったので読んでみました。
「人が死ぬところを見てみたい」「人の死体を見てみたい」という感情を持っている人って、意外と多いのかも。
湊かなえさんの『少女』みたいに。
でも、たとえ興味があったとしても、実際に死体を見たときの衝撃は計り知れない。みかげ同様に。
多くの人の死を通して、成長していくみかげたちの姿に感動しました。
古い団地に住む姉妹(七海とみかげ)は、幼い時に父が死に、母に捨てられた。それからはこの団地で2人きりで暮らしてきた。
喘息で身体が弱いみかげは、昼間は週3回ケーキ工場で働き、夜間高校に通う。姉の七海はいわゆる夜の仕事で生活費を稼いでいる。いつかお金が貯まったら、美容師の学校へ行くのが夢。みかげは夜間高校のむーちゃんと倉梯君と仲良くしている。それぞれ夜間高校へ来る事情を抱えていた。ある日、団地のベランダにいたみかげは、知らないお爺さんに呼ばれ、団地の独居老人に声をかけて回ることに付き合わされる。その上、団地警備員に任命される。おじいさんはぜんじろうさんといい、団地の独居老人の安否を確認したり、食べ物を配ったりしている。また自殺で有名なこの団地の屋上も見回る。
みかげの頼りなさが少しずつたくましさになっていく。それは姉と2人だけの狭い世界からちょっとずつ外へ出て行くから。
友人のむーちゃんの秘密、倉梯君の吃音、団地の下の階の小学生、類君など社会的には弱者で他人からはいじめなどを受けている人たちが、優しさを持ち続けていることの救い。
読後感がよくて救われた。
どこか淋しく悲しい感じが漂いながらも、人によって、癒やされ、自分の進むべき道が見えてくる希望を感じる。劣悪で不条理な環境でも、心の温かい友人や、頼れる大人がいれば、安定した心持ちで生きていくことができる。そこまで熱意と決意を持って、人と関わるのは容易なことではないけれど、まずは関心を持つことから始めて、自分のできることをやっていけば、自分自身が救われるのだと思った。
多分、窪美澄さんは初めて読む作家さん。
最初はみかげの境遇への理解が出来ず、ぜんじろうに不審者感も感じてなかなかページをめくるペース遅かったけど最後は勢いづき…。
この先、みかげたちが幸せになれるといいな。
今年読んだなかで一番辛い作品で、半分以上泣きながら読んだ。
「死」というものに触れたいというみかげ。
彼女のその思いが無邪気すぎる。でも悪意はないはずなのだ。
それは興味であり、死というものがあまりにも実感がないものだからだ。
そんなみかげの幼さもありつつの、他者への思いがフラットで何度もはっとさせられる。
いびつな形の社会問題を問いかけられ、読後の思いを消化するのには時間がかかる作品だと思う。
今度はどんな世界を見せてくれるのだろう、いつも新作を前にしてあれこれ想像してしまう作家さん。予想通り前作とはガラリと異なる異世界を魅せてくれた。古ぼけた昭和の負の遺産のような団地で、ひっそりと暮らす人々に焦点を当てて物語は進んでいく。昔は皆闊達で周囲を世話し合う昭和のあるべき風景が、ときは令和になり忘れ去られたようなゴースト・タウンに朽ち果て、そこにはやはり忘れ去られたような人々が、ぜんじろうさんのような団地警備員になんとか支えられて日々生きている。皆どこか弱い立場にある人々ばかりが出てくる物語だが、その中でも親に捨てられたみかげ、在日韓国人のむーちゃん、頭はいいが吃音の3人の友情が一際輝いていたのが印象的だった。
老朽化した団地で5歳上の姉と暮らす少女と、その周りの人々が見つめる死と生の話。この団地も出来た頃は、高度成長期で未来には明るい世界しか見えなかった。しかし、時が経ち、様々な死がこの団地にも訪れ、人の心も変わっていく。親子関係すら希薄で、今にも取り壊されそうな団地は、死の時を迎えようとする。それでも、人々は支え合い、心は通じ合う。死を見つめていた少女も死と向き合うことによって新たな世界を感じていくのだろう。苦しみの中にある人々の優しさと絶望の先にある希望を見つめる物語だったように思う。
夜間の高校に通う「みかげさん」と5歳年上で夜の仕事をする「七海さん」の成長するお話し。
親に捨てられ、古い団地で姉妹二人、お互いを気づかいながら生活する日々、いじめの高校生活から
夜間の編入、そこで出会った、初めての友達、そして不思議な老人との出会い
友達との会話の楽しさ、老人からは人との触れ合いを学び、少しずつ成長してゆく
そして老人との永遠の別れ、団地の取り壊しによる住まいとの別れ、悲しい悲しい別れですが
「みかげさん」はみんなの支えで未来に向けて歩き出す迄に成長していました。
現在直面する「孤独死」「老人問題」「いじめ」「生活保護」など考えさせられます。
「明日もいいことあるからガンバッテ!ガンバッテ!」と応援したくなる一冊です
東京の古びたアパートに住む姉妹。父親とは死別、母親は2人を置いて出て行ったきり。厳しい家庭環境の中、姉の七海は自分の体と心を削って病弱な妹を守っている。妹のみかげは高校でいじめにあい、今は定時制高校に通う傍らパン工場でアルバイトをしている。姉に負担をかけていることを申し訳なく思い、ぼんやりと死について考えたりする。そんな折、団地警備員という正体不明の老人と出会ったことから、みかげを取り巻く状況が大きく変わっていく。自分を見守り続けてくれる人がいるということの有り難さや、人は一人では生きて行けないことを改めて感じさせてくれた物語だった。この姉妹の未来が明るいことを祈る。
こちらの窪美澄さんもすごく良かった。
親に捨てられ姉妹2人で慎ましく過ごす古びた団地での生活。
姉の七海は夜の仕事をしていて妹のみかげは工場で働きながら定時制高校へ通っている。
「人が死んでいるところを見てみたい」
そんな欲望を叶える為におかしな爺さん(ぜんじろうさん)に誘われ団地警備団に入団することに。
初めは興味本位のみかげだったが、段々と色んな局面が見えてくる。
ぜんじろうじいさんについて、初めはやばい人だ!って思ったけれどストーリーが進んでいくに連れて想いを知りギュッとなったし、
姉妹同士お互いを思う愛や
クラスメイトとのかけがえのない関係性も
すごく素敵だった。
それぞれのキャラ立ちが良くて読みやすかったし、心に訴えかけてくるストーリーだった。
興味本位だった「死」に現実的に直結したときや親に期待して裏切られた時の何とも言えない重い感覚がとてもリアルだった。
1人でも多くの方に手に取って欲しい作品でした。
窪美澄先生の作品は、まだ何冊かしか読んでいませんが、読めば必ず気付きを得て考えるチャンスを与えられている気がしています。
今回も生きることについて、死ぬことについて、家族について、親子について、生活について、お金について、たくさんのことを考えることができました。
自分こそが手を差し伸べてもらわなくてはならないような身の上なのに、もっと弱い誰かに手を差し伸べたいと思う主人公の心情を思うと涙が止まりませんでした。
問題意識を持つことは大切、だけど気付きのその先、どこへどう歩みを進めたら良いのか、分からなくて立ち止まってしまうことは多いですが、著者はそんな私に一例を示してくれたと思います。 (色々な読み手がいるので、「そんなに上手く行くかな?」というような声もあるとは思いますが…)
最初からたいそうなことができなくてもいい、できることから、自分の足元から、改めてそういう気持ちになることができました。
承認ありがとうございました。
ぜんじろうとの出会いをきっかけに、みかげの世界が少し広がる。
自分の足元だけでなく、他人に目を向けられるようになる。
みかげ自身も余裕なんかないのに、相手のつらさがわかるから、助けたいと思ってしまう。
素直で一生懸命なみかげに、すっかり心奪われてしまった。
終盤には「みかげ、大きくなったなぁ」と、成長を見守るみたいな気持ちになっていた。
感想を書くのが難しい。主人公みかげが幼くて、高校生ということに驚いた。姉、友人、ぜんじいたちと共にどんどん成長していく。昭和の高度経済成長期に建てられた典型的な団地の老朽化に伴い、住んでいる人も年をとる。家族の問題、貧困、性、いじめ、在日、孤独など、あらゆる問題が凝縮されているが、みかげの優しい目線でみることができた。類くんがどうなったのか気になる。#NetGalleyJP
古い団地を舞台に、社会問題の坩堝のような現実を抱えながらそこに暮らす人々のこと、生や死について、夜間高校に通うみかげの視点で描かれる。日々の生活の困難は変わらなくても、虐めも裏切りもなく等身大の自分で話せる友達がいることは、救いや生きる糧となり人を強くする。また助けになってくれる大人の存在も頼もしい。しんどい仕事をしながらいつも妹を守ろうとしてくれる姉の支えに応えたいと思いながら、それを果たせずにいたみかげ。幾多の困難な局面が姿形を変えやってきても、気持ちを伝える術を得たみかげならきっともう大丈夫と思える希望の物語だった。
母親に捨てられて幼い時から姉と2人で暮らすみかげ。姉妹が住む古く老朽化した団地には一人暮らしのお年寄りや問題を抱えた人たちが多く住んでいる。みかげの生活する狭い世界の中に、いじめや高齢化、貧困、ネグレクト等々様々な社会問題が満載で、それでも自主的に団地警備員をするおじいさんや学校の友人や姉等みかげの心の支えになる人もいて、人生の辛い部分と心温まる部分、そして生と死が描かれていてとても良かったです。
後半から泣きっぱなしだった。
私はこの作品に出てくる七海・みかげ姉妹が好きだ。ぜんじいが好きだ。むーちゃんが、倉梯くんが好きだ。
この作品に出てくる人たちが大好きだ。
姉妹間の、友達同士の、名のない関係間での互いを思いやる気持ちや辛いことを一緒に乗り越えていく姿に、生きることの尊さ、愛おしさを感じて、人のことが好きになる。そんな作品だと感じました。
父と死別、母には置きざりにされた古い団地に住む姉妹。姉は高校に行かず生活費を稼いでいた。
この団地にいるのは、いわゆる弱者の生活保護、貧困、独居老人が多い。そんな中にあって、みかげは自分の未来を描けないでいた。
定時制高校の友達は在日コリアンや吃音があったりするけれど、やはり学校の中の弱者でもあるけれど、団地警備隊として関わるにつれ、彼女にさす光は変わっていった。
見過ごされがちな貧困や生活弱者は現代を表しているように思えた。
表紙のイラストからは想像しなかった内容。
物語の序盤は、いわゆる親ガチャに外れた姉妹の暮らしぶりに、読むのがしんどく感じたのですが、
ぜんじろうさんが登場して、主人公がどんどん変わっていくところから一気に読み進めました。
さまざまな社会問題を扱いながら、誰も断罪せず、徹底して人への優しさと愛情と信頼に満ちた、素晴らしい物語でした。
幼いころに父を亡くし、母にも捨てられたみかげ。
みかげを育ててくれたのは5歳年上のお姉ちゃん。
いじめの問題とかどんなに大変だったんだろうと思わずにはいられない。
夜の学校でできた友達やぜんじいとの出会いで、みかげの生活が変わっていく。
出会えて本当に良かったと思う。
始めは暗いなと思っていた物語に、だんだん日が差していくことにホッとする。
今後のみかげ姉妹や友達の行く先が、明るいものであることを願う。
スラムと化した荒れた団地。
そこに住むしかない住人。
まさかと思うほど最悪な環境だけど、東京のその団地だけではなく、日本のあちこちにも確実にありそうな。私が見ようとしていないだけで。
そんなどん底の暮らしの中で育った、少女の物語。
ポカリ一本で何日生き延びられるのかはわからないけれど、団地警備員は国で予算出して欲しい。
強気な姉の七海の、中学生から今まで生きてきた苦労と覚悟は涙が止まらない。
昔、遊びに行った友達の家で、「また来てね」と、その家のお母さんからたくさんお土産を持たされたのを思い出した。あのお土産の重さの分だけ、思いがあったんだなあ。
主人公が姉ではなく、妹だったのもよかった。大変な状況でも、頑張りすぎていないのがいい。それでいい。
たくさん泣けたのに、そんなに悲壮感もなく、ラストは力強さも感じ、最高の読後感でした。
私は直木賞受賞作よりも好きな作品。
窪さんぽくない表紙絵とタイトル。読み進めるとネグレクト、いじめ、差別、貧困とハードな問題をみかげという少女によって優しい語り口で紡ぐ。老朽化した団地の末路は決して絵空事ではなく現実問題だ。人がいる時は賑わいコミュニティも形成されるが高齢者だけが残される。みかげと七海の姉妹は2人で寄り添い団地の中で生きてきた。救いの手を差し伸べる大人がいたからだ。そんな団地を守るためみかげと友人達は行動を起こす。小さな一歩が大きな力となり彼等を変えていく様はグッとくる。こんな窪作品もいいな。
かなり暗い内容のエピソードが前半は多く、その暗さが匂い立つような昭和の古い団地の雰囲気を強調していたが、登場人物たちの成長や変化に伴い、暖かくはないものの、生まれ育った場所として見え方が変化していくのが印象的だった。
枝葉の部分があって成長していくのだけれど、主軸となる物語がぶれず、最終的に団地警備員の話に戻ってくるのがとても良かった。
父は死別、母は出奔、5歳上の姉と二人で暮らす主人公の前に、団地警備員と名乗る老人が現れ、主人公を同職に任命する。主人公はいじめから逃れて定時制高校に通い、働いている姉に引け目を感じているが、団地内の事件の解決に奔走する老人や友達と過ごすうちに前向きに変わってゆく。救うことで救われる、爽やかな人々の繋がりの物語。
都心にある老朽化した団地を舞台に、5歳上の姉・七海と暮らすみかげの物語。みかげは定時制高校に通いながら、週3日パン工場でアルバイトをしている。ある日、団地警備員を名乗る老人と出会ったことから、彼女の日常は変わり始める……。
これまで読んだ窪さんの作品とはだいぶ違う雰囲気だった。対象年齢がみかげに近いYA世代なのだろうか。ぼくのようなおっさんが読んでも大丈夫だろうかとドキドキしながら、作品世界を堪能した。
悪いことばかりでも、いいことばかりでもない。現実はつらくきびしいが、一歩一歩踏みしめていくしかない。そんなことを考えながら読了した。
都心の古びた団地で姉と暮らすみかげ。 死に惹かれ、死が身近な環境に暮らしながらも、団地警備員を名乗る「ぜんじい」との出会いによってみかげの日常が少しずつ変わっていく。
この習慣にも生と死がつながっていく。
いじめ、吃音、打ち捨てられる団地、孤独、ネグレクト、様々な斜頸問題を内包した作品だと感じる。