植物少女

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刊行日 2023/01/06 | 掲載終了日 2023/01/15

ハッシュタグ:#植物少女 #NetGalleyJP


内容紹介

 美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき――


「小説トリッパー」掲載時から共同通信、読売新聞、小説新潮などの文芸時評で話題となった作品。現役医師作家が唯一無二の母と娘のあり方を描く。

 美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき――


「小説トリッパー」掲載時から共同通信、読売新聞、小説新潮などの文芸時評で話題となった作品。現役医師作家が唯一無二の母と娘のあり方を描く。


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出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784022518842
本体価格 ¥0 (JPY)

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NetGalley会員レビュー

娘を出産時に脳出血になり、それ以降ずっと植物状態で寝たきりの母を持つ娘と家族の物語。
この設定だけで想像もつかない物語が始まるのだと覚悟した。
娘が足繁く母の病室に通う様子や、妹が欲しいと父にねだる様子はギョッとさせられる。
全体を通して娘の視点や感覚などは想像力を掻き立てられた。
芥川賞を受賞しそうな作品だと感じた。
「私の盲端」も是非読んでみたい。

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世間から切り離されたような母の病室。静かで穏やかと言いながらその日常は異様に映り、そこで過ごす美桜の感覚に違和感を抱きながら物語にしがみつくように読み進めた。一方、祖母や父、他の患者の家族の悲しみに涙が出る。けれども、成長していく美桜を追いかけるうち、物言わぬ母への愛着が痛いほど伝わってくる。読み終わると、あの病室がかけがえのない場所だったと思えて、再び涙が溢れる。命を生き切るということの本当の姿を教えられたと思う。忘れられない一冊になった。

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『私の盲端』を読んだとき、オストメイトの生活や心情ががリアルに描かれていてとても驚いた。現役医師が今作ではどんな作品を描いたのかとても気になりリクエストした。

美桜の記憶のなかでは母親は植物状態。
口に運べば食事は摂るし、排泄もする。痛み刺激にも反応する。
娘はその姿をそのまま受け入れる。だって生まれたときから母親の姿はこれしか知らないのだから。
父親や祖母にとっては、また意思の疎通ができるのでは?と思う妻であり娘だ。美桜とは違い元気な頃を知っていると受け入れがたいだろう。そんな家族それぞれの心情、そして病室の音や臭いの描写がリアルで病室にいるような錯覚に陥った。

生きていることに意味など見出だせなくても、ただ呼吸し生きる毎日。日々の生活に大きな喜びも悲しみもなくてもいい。ただ生きていることを願ってくれる人がそばにいてくれたら、それでいいのではないだろうか。

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自分が生まれることによりに母が植物状態になってしまったと悲観的に捉えるような感情が描かれてはいないことが私には印象に残る。
ただ呼吸をして呼吸をして在り続ける命。
少女が成長すると共に沸き上がる感情をもしかしたら、そんな母だからこそ打ち明けぶつけられたのではないかと思う。
甘えから母の乳首に吸い付いていた感覚を俄に思い出してしまった。
読みながら大きく一息つく。
私もまた呼吸をして生きているということを改めて感じる作品でした。

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なんだかすごいものを読んだ気がする。
生まれた時から植物人間状態の母親と過ごした娘の視点から語られる回想。母親から抱きしめてもらったり、語られることはなくても、生理的な反射で、母親の手に自分の手を重ねれば握り返してくれたり、乳児期にはおっぱいを咥えたり、お腹の上で母の呼吸に合わせて眠ったり…
母親として子どもに何もできないと自分を苛むことがあるけれど、何も行動や言葉にできなくても、ただそばにいるだけで子どもに残すことができるものが確かにあると、この物語から教えられた。
もちろん何を受け取るかは子ども側に委ねられるのだけれど、それでもただ生きて、息をしているだけで、人の記憶に何かを残すことはできるのだ。

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なんと不埒で生々しい介護生活だろう。序盤を読んでそう感じた。生まれてすぐに植物状態になった母、介護する少女は今でいうヤングケアラーだ。母とのふれあいを知らずに育った少女の介護は母との触れ合い。いじめも、父への感情も、父の新しい恋人のことも、寝たきりの母にささやく。ラストにさしかかるにつれて、他者との繋がり、命のつながりをこのように描きたかったという意図を感じた。

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出産時のアクシデントで植物状態になった母と
子どもを中心とした家族の物語。
生まれてからずっと母の寝ている姿しか見たことのない娘。それが当たり前だと思っている。
元気な頃を知っている家族。記憶の中にいる母はそれぞれ形が違う。祖父母の想いに胸が苦しくなる。
美桜の成長に伴って変わっていく母との関係や病室という異質だけどかけがえのない居場所。目を覚まさず息をして横になっているだけでも生きているだけで、存在するだけでいい。
匂いや音、空気感など、現役医師の作者さんだからか院内の描写がすごくリアルだった。私自身、病院に勤めていたことがあるが、そうじゃなくても容易に想像出来ると思う。
今は制度の問題や病院側の都合で
すぐに出されてしまうことが多いけれど、
昔の病院はいつまでも入院出来た。
年単位でいる患者さんも少なくなかった。
面会開始時間から終了時間まで毎日来ている人もいた。
どんなことを思ってお見舞いに来ていたんだろう。声掛けを必ずしてから患者さんに触れるようにしていたけど伝わっていたんだろうか。
すごいものを読まされた。
色々なことを考えさせられる作品でした。
「私の盲端」も読んでみたい。

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一度でいいから、母と話してみたかった。
その苦悩を小説越しに読んだわたしは涙が止まらなくなってしまいました。

読者として追体験するならば涙を流すことしかできない。けれど実際その人は泣くことも喚くこともできないほど打ちのめされている、そういうことは世の中にきっとごろごろとあるのだと思います。

はじめ何も疑問を抱いていなかった主人公すら、素直ないい子だなという感慨を超えて悲しいものに見えてきます。

母になって初めてわかる母というもの。
わたしにはまだ朧気で、読んで触れた何かがあった気がします。

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時が止まったような病室で過ごす物言わぬ母と娘の物語。生まれたときから植物状態の母と寄り添い、成長していく娘。そこにはネガティブな感情はなくフラットなのが不思議でもあり、自然にも感じた。母の乳房、最後は背中に寄り添う娘の姿が印象的で、エンディングも物悲しさは一つもなく、そよ風に吹かれているような読後感がよかった。

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娘の出産が原因で植物人間になってしまった母。娘は成長して小学生、中学生、そして大人になっても母は変わらず病院のベッドで寝たまま。元気な姿を知っている祖母や父とは違い、娘にはこれが母の普通であり日常なのだ。
足繁く病院に通い母との時間を過ごす。話しかけても返事はないが、決して一方通行ではなく、娘に何かが満たされていくのが感じられる。意志の疎通出来ないもの言わぬ相手でも側に寄り添い続けると通じ合い得るものがあることを感じました。

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主人公が生まれた時から彼女の母親は所謂『植物状態』だった。そんな母親の葬儀のシーンから物語は始まる。幼児、小中高生、社会人になり主人公自身も結婚し母親になる。そんな25年間の母親との関係が描かれる。身近にこの作品の様な状態になった人の居ない私は物語の冒頭は主人公や病院関係者に若干の嫌悪感を感じた。主人公の気持ちを理解するのが難しく、第三者的に外側から眺める様な感じだった気がする。『呼吸』が生きてる証であり、そのリズムが合う事で母娘だと再認識し安心感を得たのかなと思うと何とも言えない気持ちになった。

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これまでに読んだことのないテーマの作品のようだったので、承認をいただいたものの、なかなか読み始めることができませんでした。

読み始めてもどういうお話なのかがすぐには分からず、全体を通して独特で不思議な雰囲気が漂っていましたが、意外にも読みやすかったので、駆け抜けるように読めてしまいました。

体温、匂い、音など、生の生々しさがとても具体的に描かれていて、人間は生き物だということが実感されます。

意識を持たず、意思の疎通ができない家族を持つということはどういうことなのか、それが母で、産まれてから一度も抱きしめられたことも、話したこともないというかのはどういうことなのか、意識がなくてもなお、人は生きているといえるのか、など、さまざまなことを考えました。

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成長していく主人公美桜と植物状態の母の物語。
美桜の母親は植物人間。その母のいる病室には同じように息をしているだけの人たちがいて美桜は細々と世話を焼く。始めはそれをオモチャにしているように感じて不安や嫌悪感を抱いた。
でも美桜にとっては生まれた時から母は寝たきりで、世話を焼いてみたり動かない腕の下に潜り込んだり物言わない母に愚痴をこぼしたりする、それが当たり前の状態。
対して他の家族は違う。いつか目を開けて喋ってくれるのだと願っている。
祖母が自分の酸素チューブを外して植物状態の娘に充てているシーンは胸がギュッとなった。
ただそこで息をしているだけの存在が周りの人たちに様々な感情を抱かせる。
病室の空気感や匂いがリアルに感じられました。

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これはみおという一人の娘にとっての母と娘の物語。たとえその母が“植物状態”と言われるものであったとしても、みおにとってはそれ以外の母は母ではない。話したり笑ったり鼻歌を歌ったり、走ったり料理をしたりみおを抱きしめたり、そんなことをするのはみおの母ではない。
途中、目を背けたくなるような行い、耳を塞ぎたくなるような言葉を母に向ける時期も訪れる。そのような時期を含め毎日病院の母の元へ通っていた娘が、いつか成長して自分も母になるまでが描かれていて、感動というより感嘆した。
毎日そばにいて、多くの言葉を交わし、一緒にいろんなところへ出かけて絆を強める母娘はたくさんいるだろう。でも、ぴたりと寄り添って呼吸を同期させたり、唾液の匂いの違いを感じたりできる母娘が果たしてどのくらいいるだろう。友だちのお母さんがしてくれるようなことは何ひとつしてもらえなかったとしても、唯一無二の母娘の関係を築けたことはやはりみおにとっての宝なのだと思いたい。

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「わたし」が生まれた時に植物状態になった母親と娘の関係が 決してネガティブではなく
どこか不思議さと神聖さと生々しさと、生きることへの力強さを感じさせてくれる
ちょっと今まで感じたことのない読書体験だった。

植物状態の母親に身体を預け、母親の呼吸を感じている時
「わたし」は、美しく非現実的な夢の中の感覚を漂う。

人間の体臭や、病院の無機質な音や臭い、同室の4人の植物状態の患者達の異様な雰囲気や、「わたし」にまつわる人間関係の面倒くさい現実とのギャップに
違和感や、不気味さを感じながらも、
美しい文章に引き込まれる。

物言わぬ母親に抱いていた聖母のようなイメージから、生きることへの渇望を知り、現実へと羽ばたいていく力強さに感動が湧き上がる。

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出産時の脳出血により植物状態になったみおの母。幼い頃から母を見舞いながら、その病室で大きくなったといっても過言ではないみおの回想は、時に生々しく時に読み手の想像を超える馴れが感じられる。
植物状態の理解が始め及ばず、ただ身体機能をなくし、動けないものだという認識しかなかったわたしにとって、みおの母が口から食事をとり咀嚼し、手の反射運動や、生理が来たりすることに驚くばかりだった。
祖母や父が元気だった頃の母のことをしきりに話し、それがみおの記憶に残るようにという配慮を毛嫌いする彼女にとって、母はベッドの上で静かにされるがままになって、みおと対峙する存在なのだった。語らずとも、一方通行でも、全てを受け入れてくれるのが母なのだった。
母に語りかけることで精神の平衡を保つみおにとって、それは抱きしめられることのない母であっても最高の存在であり続けたのだ。
唯一無二の母娘の愛の形がここにあった。

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題名から予想もつかなかった、母子の長きに渡る物語でした。
脳死状態の母に甘える、幼児の、小学生の美桜。あまりにもその欲求にストレートな甘え方。それを全身で受け入れる、意識のない聖母。2人だけで閉じた世界。それは、美しい文章で綴られる、肯定したくなる違和感でした。祖母や父たちの生きる現実が描かれれば描かれるほど。
そして、意識がない母の呼吸を「生の充実」と実感した高校生の美桜は、前に進み出します。母を少女のままとして。でも母の時間も動き出していたとは。それさえも同期していたなんて。
現実に非現実がいつの間にか染み込んでいた、稀有な読書体験でした。

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植物状態の母親と過ごす日々を娘の視点で語る物語。
母親が元気だった頃を知る家族と、植物状態の母親しか知らない美桜の見ているものはまったく違っていて、たぶん抱えている苦しみや悲しみの種類さえも違うのだと思う。
他の家族のように直接言葉を交わすことができなくても、一緒に出かけることができなくても、美桜が植物状態の母親と過ごすとき幸せそうで満たされているように見えるのがとても印象的でした。

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読んだ感触を言葉にするのがなかなか難しい作品。主人公にとっての母は、今自分が相対している存在がすべて。その状態の母をありのままに受け止めている。だから、彼女は彼女だけの母との結びつきを持っていて、それは「意識のある」母親と接したことがある小説の外の私たちの感覚とも、植物状態になる前の状態を知っている父親や祖母たちの感覚とも全く異なるもので、外の尺度は通用しない世界に感じられた。この世界を描こうと思った作者の方の想像力がすごい、というのが正直な感想かもしれません。本来だったら触れられない世界を垣間見させてもらった気分です。

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ひっそりとした道を抜け、母のいる部屋に会いに行く小学生のみお。そこには母と同じベットに横たわり、どこを見ているのかわからない目をし、よだれをたらしながらスプーンで食事をもらう人々が生きていた。

芥川賞ぽい作品だった。みおが母を恋しいと思う行動、他の老人のお世話をする姿が幼さ故の暴力に感じて怖いと思う一方、この病室で育ってきたんだと寂しく感じた。
母とみお親娘の話であるが、祖母と母みゆきの話でもあると思うと胸が苦しくなる。

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自分の誕生と引き替えに植物状態になり、病室で寝たきりの母の元へ積年通い続けた娘の、赤裸々な独白体小説。
現役医師の専門的な視点で作品にリアリティが増し、残酷なまでに希望を砕く言葉たちと前向きな言動に隠れた覚悟に、深く呑まれた。
静しか知らない娘の無邪気な好奇心が、動を知る父と祖母の受け入れ難い心の葛藤にあてられ、歪められていく多感期。寝たきりでもかわらず息吹く母のバイタリティに、たくさんの不安を抱えながらも成長した主人公を通し、救いを描いた作品。

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生まれてからずっと植物状態の母親。それが当たり前で受け入れて過ごす美桜と家族の間の微妙な空気感がとても切ないけれど、病院での美桜と職員さんや同室の入院患者さんとのやりとり(と呼んでいいのかな??)は時に微笑ましくもあったり、それはやりすぎだろうと突っ込みたくもなったり、ほとんどが病室での話なのに、引き込まれました。美桜とお母さんの間には確実に絆があったと思うな。

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自分を出産した時脳出血になり、植物状態になった母が亡くなるまで見守り続けた美桜。入院している母だけでなく、母と同部屋に入院している患者たちの面倒もみながら、看護師たちとの交流を通して、葛藤しながら成長していく。母から褒められたり叱られたりすることはないけれど、自分の話を聞いてもらい、母の呼吸を聞くことで安心感を覚える。歪かもしれないが、そもそも母娘の愛は当事者たちしか理解し得ないものなのかもしれない。静謐な世界の中に込められた「生きる」とは何かを問いかけるメッセージが、いつまでも心の中から離れないでいる。

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