月の三相
石沢麻依
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刊行日 2022/08/23 | 掲載終了日 2022/08/22
ハッシュタグ:#月の三相 #NetGalleyJP
内容紹介
デビュー作にして芥川賞受賞作『貝に続く場所にて』に続く、瞠目の受賞第一作。
「フローラが失踪した」。
旧東ドイツの小さな街に広がる噂が、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語を呼び醒ます。分断の時代を越えて、不在の肖像をたどる旅。
旧東ドイツに位置するその街では、誰もが自分の「肖像面」を持っていた。面に惹かれて移り住んだ三人の女たち――望、グエット、ディアナは、失われた「顔」を探して、見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街で、歴史と現在、記憶と幻想が交差して織りなす、世界の肖像。
≪『月の三相』推薦コメント≫
――多和田葉子
傷だらけの歴史、その交差点に花開く魂の仮面劇。生命のリアルはどこに宿るのか。新次元の世界文学が誕生した。
――亀山郁夫
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出版情報
ISBN | 9784065288382 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
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旧東ドイツの小さな村。そこに暮らす月にちなんだ名前を持つ三人の女性(ドイツ人、ベトナム系ドイツ人、日本人)。村に伝わる『面』の文化。月の表裏、面の表裏。西ドイツと東ドイツ。三叉路の多い迷路のような街並み。さまざまな青。蝶。見えるもの見えないもの、言葉にできることできないこと。興味深いモチーフが美しい言葉や独特の比喩で語られて、読んでいる間は長い夢を見ているようでした。一方で悲しい歴史や今もある分断、差別、無理解などの描写には激しい怒りや恐怖も感じられたし、クライマックスの舞台のシーンはとても映像的で神々しさすら覚えました。こういう、まさに文学的な表現にひたる喜び、久しぶりでした。芥川賞受賞作もいつか読んでみたいです。
と言いつつ、実は最初三分の一まで読んで脱落。その頃は美しい日本語をゆっくり味わう精神的な余裕がなかったようで。時間をおいて再挑戦してNetGalleyの期限残り4時間でギリギリ読了しました。間に合ってよかった!
物語と言うよりは表現を堪能する詩集のようだった。肖像面を作る風習のある架空のドイツの一地方。面には時が刻まれる。まるで蔦が生い茂るように。それは消えた少女の面にも。"ない"ものを"ある"とすることで少女は過去にならず、その不在が際立つ。一方時を刻まない眠り病の面もある。月に纏わる名を冠する三人の女性達。ルーツは顔に現れる。だが実際には彼女はその地を踏んだことがないかもしれない。顔とは仮面の一種なのかもしれない。ラストは情熱的に燃え盛る炎のように舞い上がり、消えた。舞台の幕が閉じた後には静謐が残された。