無垢なる花たちのためのユートピア
川野芽生
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刊行日 2022/06/21 | 掲載終了日 2022/06/20
ハッシュタグ:#無垢なる花たちのためのユートピア #NetGalleyJP
内容紹介
地上からはるか遠く離れたところにあるという楽園を目指し、天空を旅する一隻の船。
そこでは花の名前をつけられた少年たちが、導師と呼ばれる大人たちのもとで寮生活を送っていた。最も大切なのは心の純真さであると教えられた少年たちの暮らしは慎ましく清らかで、船の中はこの世界のどこよりも楽園に近い場所と思われた。
ある日、白菫という少年が舷から墜落する。皆が不慮の事故としてその死を悼んだが、親友の矢車菊は白菫が落ちる直前の様子を知り、彼がみずから身を投げたのではないかと疑問を持つ。だが、希望に満ち溢れたこの美しい船に、いったいどんな不幸があるというのか――親友の死のほんとうの理由を探して、矢車菊は船内の暗い場所へと足を踏み入れる。幻想文学の新鋭による初の小説集。
おすすめコメント
著者は歌人で、2021年には第一歌集『Lilith』で現代歌人協会賞を受賞した注目の若手です。幻想的で心惹かれる世界を描きながら、世の中の差別や抑圧に対して毅然と否をつきつける、極めて現代性の高い作風が持ち味です。
著者は歌人で、2021年には第一歌集『Lilith』で現代歌人協会賞を受賞した注目の若手です。幻想的で心惹かれる世界を描きながら、世の中の差別や抑圧に対して毅然と否をつきつける、極めて現代性の高い作風が持ち味です。
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出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784488028589 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
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NetGalley会員レビュー
詩人である著者の、幻想小説集。
タイトルにもなっている1作品目を読んで、この作品の雰囲気が好きだなと思いました。
その後の作品も、著者が作った世界を舞台に、なんとなく夢の中にいるような、雨の中から眺めているような、そんなぼんやりした風景の中で、ストーリーを読んでいるような、そんな小説集でした。
そして、最後の「卒業の終わり」。ラストに希望の光を見ましたが、この続きは語られないでしょうから、そのまま余韻として楽しみました。
むせてしまうほど濃厚な花の香りがページから漂い、くらくらとめまいのするような幻想。楽園を目指す美しい少年たち。全てが美しく平和な旅であるかと思われたが、「白菫」の死から事態は一変する。この花園のような船の中で本当は何が行われているのか。真実を知ったときの「無垢なる花たち」の絶望と葛藤が胸をしめつける。美しさの中の哀しみを感じ、しばらく立ち直れませんでした。ずっと夢の中にいるようで。これぞ「幻想小説」素晴らしかった。
それなりにたくさんの本を読んできたつもりでしたが、こんなにも文が美しいと思う小説には初めて出会いました。
小説を読んだというより、あまりにも壮大な自然を見て圧倒された、もしくはケーキを食べたと思ったらとてつもなくしょっぱいケーキだったみたいな想像すら出来なかった予想外の体験をした気分です。