ベリングキャット
デジタルハンター、国家の嘘を暴く
エリオット・ヒギンズ
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刊行日 2022/03/28 | 掲載終了日 2022/04/27
ハッシュタグ:#ベリングキャット #NetGalleyJP
内容紹介
激動のウクライナ情勢。
不確かな情報とフェイクが乱れ飛ぶなか
かれらは再び立ちはだかる――
いま世界中から注目される調査報道ユニット、ベリングキャット。
今回の戦争で、ロシア側が流す安直なプロパガンダ映像の噓をいち早く指摘。使われている武器弾薬の特定、発射地点や軍隊の位置特定まで、どの大手メディアよりも詳細な情報を発信し続け、日本でもその名を目にすることが増えてきている。
いったいかれらは何者なのか?
メンバーは世界中に散らばり、オンライン上で連絡をとり協力して調査にあたるという。すでにかれらには、2014年にウクライナで起きた民間機撃墜事件にロシア軍が関与した証拠を突きとめた実績がある。使われたミサイル、ロシアからの搬送ルート、担当部隊とその指揮官の名前にいたるまで明らかにしたのだ。そのせいでロシア政府からは「敵性メディア」と名指しされ、クレムリンから執拗なサイバー攻撃を受けている。
どんな調査をしているのか?
かれらが使うのは、インターネット上に公開されたオープンソースだけだ。独自に開発した検証スキルを駆使し、錯綜する情報の渦のなかから権力者たちの不都合な真実をあぶり出す。注目のベリングキャット、その活動の実態を、創設者みずから初めて明らかにする。
【べリングキャットの実績】
◎マレーシア航空17便撃墜の黒幕を特定
◎シリア・アサド政権のサリン使用の証拠
◎ISISシンパの居場所特定
◎犬泥棒の捜索
◎海外で暗躍するロシアの暗殺班の身元特定
◎Qアノンらの米議会襲撃を予言 ……他多数
始まりは、自宅のキッチンテーブルで見た〈アラブの春〉の現地動画だった。
ここはどこだ、映っているのは本物なのか――
オンラインゲームにはまっていた中年オタクは、ネット上の仲間とともに、まだ誰もしたことのない調査に乗り出した─
【目次】
Introduction
1 ラップトップ上の革命──ネット調査の可能性に気づく
マスコミ瀕死、ニュース万歳/シリア──取材のできない戦争/情報戦争と樽爆弾/『ニューヨーク・タイムズ』の第一面/化学兵器の露見/どこまで行けるか
2 〈べリングキャット〉の誕生──探偵チームの形が整う
知らぬどうしの集まり/欺瞞と証拠/モスクワを指弾した学生/凶器の「指紋」/世界じゅうの探偵
3 事実のファイアウォール──デジタル・ディストピアへの反撃
反・事実コミュニティ/防火壁を築く/ネットの憎悪(ヘイト)が実社会へ/罠を無効化する/一般の人々を巻き込む
4 ネズミが猫をつかまえる──スパイ事件が時代を画する事例に
オープンソースの範囲を越える/仮面を吹き飛ばす/第三の男/29155部隊と「研究所」/リスク
5 次なるステップ──正義の未来とAIのパワー
未来の戦争のための青写真/AIの危険と可能性/ここからどこへ
補遺 暗殺者と対決──〈べリングキャット〉、暗殺団に電話する
「チーム」が真のチームに/ベルリンのオートバイ殺人あとがき──日本の読者のみなさんへ
【著者プロフィール】
著者●エリオット・ヒギンズ Eliot Higgins
オープンソース調査集団として何度も表彰された〈ベリングキャット〉の創設者。カリフォルニア大学バークレー校の〈ヒューマン・ライツ・センター〉の研究員で、国際刑事裁判所の技術顧問委員会のメンバーでもある。2019年、『プロスペクト』誌によって世界最高の思想家50人のひとりに選ばれた。
訳者●安原和見(やすはら・かずみ)
翻訳家。訳書にマティザック『古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル』、グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』(以上、ちくま学芸文庫)、『フレドリック・ブラウンSF短編全集』(全4巻、東京創元社)、カプラン『人間さまお断り』(三省堂)、アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』(河出文庫)他多数。
出版社からの備考・コメント
今回アップしたデータは、校了前のものです。刊行時には内容が異なる場合があります。ご了承ください。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784480837226 |
本体価格 | ¥1,900 (JPY) |
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NetGalley会員レビュー
インターネット探偵団に一体何ができるのか?自宅に居ながらにして、ネットを駆使して、別の国で起こった事件、それも多くの偽情報によって事実を歪められようとしているものの真相を次々に明らかにしていくべリングキャット。一般人の趣味の延長で始まったネット上のオープンソース調査が、メディアを驚かせ、国家にまで影響を与えるようになるまでの脅威的な成長の軌跡。
ウクライナでの惨状が毎日報道されている。自分も何かできないのだろうかと誰もが思っている。それを10年も前から自宅のパソコンで始めた人がいる―それは大きな驚きだ。誰もが見ることができるオープンデータをインターネット上から拾い、場所、時間などを特定して事実を検証し、権力の不正を暴いていく。いくつかの仕事を渡り歩いた普通のサラリーマン(とてもそう思えないが本人はそう書いている)が始めた事実の検証が協力者や仲間を増やし、今や国家が犯している犯罪に立ち向かう力になっている。
力のないネズミが獰猛な猫にベルを付けてすぐに逃げられるようにしたい。しかしその猫にベルを付ける役はどの猫がするのか―大きなリスクをとってその猫になったべリングキャットの仕事は改めてインターネットの力を感じさせてくれる。今起こっていることはすべてインターネットの世界にあり、記録されたものは私たちの目の前にはっきりと示されているのだから。世界はフェイクニュースであふれているけれど、何が真実なのか、それを確かめるにはべリングキャットのような事実の検証こそが重要になるのだと考えさせられた。本書でその貴重な活動を知ることができ幸運だった。多くの人に読んでほしいと思う。