雌犬

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刊行日 2022/04/20 | 掲載終了日 2022/03/31

ハッシュタグ:#ピラールキンタナ #NetGalleyJP


内容紹介

これはわたしの犬《むすめ》。

もし何かしたら、殺してやる。

この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける……

人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳!!

【推薦のことば】

「全篇に乾いた〈距離〉が満ちる。
   人が愛に渇いて、世界中が愛の雨を枯渇させて、乾いて。
      物語はまさに〈断崖〉の上に立つ。」
――古川日出男

「『雌犬』は、真の暴力を描いた小説だ。作者キンタナは、私たちが知らないうちに負っていた傷口を暴き、その美しさを示して、それからそこに一握りの塩を擦り込んでくる」
――ユリ・エレーラ

「この本は、あなたを変える。残忍であると同時に美しいコロンビア沿岸の荒々しい風景のなかで、母性、残酷さ、自然の揺るぎなさに注ぐまなざしがここにある。結末は忘れられない」
――マリアーナ・エンリケス

「この飾り気のない小説の魔力は、一見何かまったく別のことを物語りながら、多くの重要なことについて語ることにある。それは暴力であり、孤独であり、強靱さであり、残酷さだ。キンタナは、冷静で、無駄のない、力強い文体により、読者を驚嘆せしめるのだ」
――フアン・ガブリエル・バスケス

☆2018年コロンビア・ビブリオテカ小説賞受賞

☆2019年英国PEN翻訳賞受賞

☆2020年全米図書賞翻訳部門最終候補

☆RT Features制作による映画化決定!!

Pliar Quintana, La perra(2017)

これはわたしの犬《むすめ》。

もし何かしたら、殺してやる。

この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける……

人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳!!...


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784336073174
本体価格 ¥2,400 (JPY)

NetGalley会員レビュー

この短い本は、無駄がなく決して平静を失うことのない文章で、子を持つことを望みながらそれができなかった女の犬に注ぐ愛情を、妬みを、余さず描く。それは母が娘に向ける嫉妬に似て、根が深く、救いがない。人の心をあまりに鮮烈に描き出す恐ろしい本がまた一冊現れた。

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まだ生まれて6日目の雌犬をもらうことになった。まだミルクを自力で飲めない子犬に必死でミルクを飲ませ、寒くないように温め、気がついたらその雌犬の母親のように働いていた。

 その雌犬を溺愛する自分にビックリし、でも不思議な充実感を感じているダマリス。夫とも町の人たちとも、どこか距離感を感じつつ生きてきた彼女にとって、雌犬は生きがいであり、自分のすべてだったのかもしれない。

 だから、この雌犬が家から逃げた時の衝撃は大きかった。これまでに経験したことのない驚き、怒り、悲しみが押し寄せてきて、自分にこんな感情があるということを初めて知ったのでしょう。

 自分の中に持ち続けてきたモヤモヤしたものを、雌犬に対する愛情で埋めてきたはずなのに、それがなくなってしまったら、この気持ちをどうすればいいのかわからない!

 その気持ちはとてもよくわかるし、とてもよくわからない。

 彼女はこの後、どうやって生きていくのかしら?

 それとも、もう生きている意味はないと考えるのかしら?

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コロンビアの作家の作品という事に興味を持ち読んでみた。
舞台はコロンビアの僻地。崖の上の家、近くのジャングル、野性動物、想像もつかない自然の中の暮らしがそこにはあった。

子供の授からない女性が、雌犬をもらい育てる。
国は違っても子供を授からない夫婦、ことに女性には心ない言葉をかける人がいて、子供を授かるために医療だけでなく民間療法のようなものにすがる姿は同じなのだなと改めて思った。
子供のように愛情深く育てていくのだろうなと、読み進めていくととんでもない展開に心が裂かれそうになった。

あとがきには、作者のピラール・キンタナがこの物語を書いた経緯が書かれていて、彼女がこの作品を書いた思いを知ることができて良かった。

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最高に面白かった。冷え冷えとした荒涼な表紙がすごくいい。子を欲しがる妻が1匹の子犬に愛を転化していくが、その愛が暴走していく様が狂気と紙一重に綴られている。人を寄せ付けず孤立しがちだと、たった一つの存在が失われた時、慰めも共感も得られず、こうと危険な状態に人はなるのだろうか。私は母親だから、妻の狂気は行き過ぎとは思いつつ、無償の愛にしっぺ返しを喰らった妻の衝撃と悲しみにはどこか共感を覚えた。素晴らしい小説に出会えたことに感謝。

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望みながら子を持てなかったダマリスの葛藤や苦しみ。
そして、それに代わるかのように溺愛していた雌犬に対して芽生えた暴力や残虐な行為に驚くと共に、人に備わっている悪意から目が離せなかった。
彼女が許せなかったもの、その想いに、描写に、ただただ圧倒される。
物語全体がモノトーンの世界のように感じられた。

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舞台はコロンビア。ジャングルと海があり、買い物一つも船で行かなければならない。生活も貧しい。そんな場所で主人公の女性は子供が出来ず雌犬を飼う事に。我が子の様に溺愛するが、ある事を境に雌犬に対する気持ちが変化してゆく。残酷とも思える行動を取りながらも心の隅には罪悪感や寂しさも感じる。決して好きにはなれない主人公ではあるが、その気持ちの変化は否定しきれないものがある。

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コロンビアのとある海辺の僻村を舞台に、荒々しい自然とともに生きるひとりの女、ダマリス。40歳目前にして子どもを諦めざるを得なかった彼女の母性の燻りが、ふと貰い受けた雌の子犬に向けられていく。溺愛することで築き得たかに見えた犬との関係は、思わぬ綻びを見せ始める。放蕩の限りを尽くすかのような、一連の逃亡、妊娠、出産、そして育児放棄の堕落した母親ぶり。ダマリスはそこに自分がなし得なかった「女」を重ねて見るようになる。娘同様に思ってきた犬に近親憎悪のような感情を持つ。どの行間にもうっすらと漂う死の匂いが明らかに感じられるようになっていくのに時間はかからなかった。刹那的で衝動的な暴力の発露。ジャングルは果たして彼女を受け入れただろうか。圧倒的な死の予感に打ちのめされつつ、ざわつく心を抑えられない。

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南米コロンビアの鄙びた村を舞台に、40代黒人女性のダマリスとその夫ロヘリオ、そして飼っている犬達が登場する。もらってきた雌の仔犬を溺愛するダマリス。彼女が抱えてきた悲しい過去、夫婦の関係の変遷、圧倒的な自然の力が描かれる。

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凄いものを読んだ。
世界中に衝撃を与えたらしい、非常に短いが激しく重たい印象を残すコロンビア文学。太平洋に面した断崖の上に立つ家。ジャングル。文明から取り残されたような(テレビはある)村。
短い、簡潔で乾いた感じの文が連なる。何かを読み解こうとすると苦しくなる。
多くの犬が毒にあたった死に方をする。毒に当たって死んだらしい母犬。11匹の子犬たちから、一匹の雌犬を選んで連れて帰る場面から始まる。子供のない黒人女性ダマリス。犬は作品を通して、一貫して、雌犬、という言葉で表される。ダマリスが、娘が生まれたらずっとつけようと思っていたという名前を与えたにも関わらず。
人々の質素なくらしと残酷なまでに厳しい自然が語られ、望んだ子供が得られない夫婦のリアルな在りようも淡々と描かれるが、後半突如トーンが変わる。
ダマリスと雌犬との関係から目が離せなくなる。
後書きを読んで、この文明から取り残されたような断崖の上に実際に著者が暮らしたことがわかる。
コロンビアの女性作家の作品は過去にないようなので、内容の凄まじさ、表現のリアルさ、白と黒、冨と貧、生と死、さまざまなテーマが含まれている。今後、読み解く評はたくさん出てくるであろうし、南米文学の研究対象として広く読まれることになるのでは、という気がする。

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