自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと
清田隆之(桃山商事)
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刊行日 2021/12/14 | 掲載終了日 2024/03/17
ハッシュタグ:#自慢話でも武勇伝でもない一般男性の話から見えた生きづらさと男らしさのこと #NetGalleyJP
内容紹介
「男の考えていることはよくわからない」のか?
「感情の言語化」と「弱さの開示」の先にあるものとは?
劣等感、権力欲、マウンティング、ホモソーシャル、処女信仰、ED、DV etc.
見たくなかった自分と向き合った男たちの、切実な「自分語り」の記録。
どうして、男ってこうなのか、と思い続けた。
そんな私も男なので、思うだけじゃなく、
考えないといけないーー武田砂鉄(ライター)
ホモソ大国、ニッポン。
“何かを勝ち得たり他者に与える存在である”ことでしか、
自分自身を愛せないし、他者からも受け入れてもらえない。
そんな恐怖に縛られた男性たちが、
自分の弱さを許せるようになるための指南書
ーー辻愛沙子(クリエイティブディレクター)
男性たちの率直な語りには、怒りや悲しみ、加害者性や被害者性、競争意識や逃避癖、女性蔑視や男性嫌悪、プレッシャーや特権性、優しさや残酷さ、純粋さやしたたかさ、成熟や未熟、計算や衝動、上から目線や劣等感、反省や自己弁護、視野の狭さや懐の深さ、暴力性や愛情など……実に様々な要素が混在しており、表面がつるつるにコーティングされた「一般男性」という存在の内実が、実は複雑で混沌としたモザイク模様になっていたことがおぼろげながら見えたんじゃないかと思う。(本書より)
目次
はじめに――「男の考えていることはよくわからない」のか?
順調なサラリーマン生活と
「無能」がバレる恐怖と自傷的な自慰行為
(進藤涼一さん 40代 インフラ関連企業勤務)
コミュニケーションが苦手で低身長
劣等感と権力欲から逃れらずに
一発逆転の作家デビューを目指す
(大宮康平さん 30代 介護職アルバイト・作家志望)
「スペックのかけ算では負けない」
東大生の僕が経験した挫折と恋愛と処女信仰
(有村隼人さん 20代 東京大学学生)
売れっ子芸人を目指してM-1に出場
おもしろい男になりたい!
顔もキャラも「普通」だけど
(内田英行さん 30代 お笑い芸人)
EDに悩みながら
マッチングアプリで会った複数の女の子と
同時並行でセックスしています
(久保章太郎さん 30代 飲料メーカー勤務)
「告白したい」「認められたい」「ついオナニーをしてしまう」
年上女性上司への倒錯した感情
(渡辺慎一さん 30代 出版社勤務)
不妊治療で悩んでいる妻の気持ちをちゃんと受け止めたい
でも、このままでは自分が潰れてしまう
(秋山公助さん 20代 建設会社勤務)
妻に暴力を振るって
一番大切にしなければいけない人を
自分自身の手で苦しめてしまった
(猪又康宏さん 40代 医療職)
離婚して父子家庭だけど子供との時間を大切にして
「人並みの家庭」を目指しています
(中田亮さん 40代 物流系企業勤務)
賢い男だと思われたくて
借り物の言葉でマウンティングをしていた僕が
「自分の言葉」を獲得するまで
(吉原卓也さん 20代 外資系IT企業勤務)
おわりにーー「感情の言語化」と「弱さの開示」の先にあるもの
※プライバシー保護のため、本書に登場する人物の名前はすべて仮名にしてあり、年齢や職業なども一部実際のものと変更しています。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784594089535 |
本体価格 | ¥1,400 (JPY) |
閲覧オプション
NetGalley会員レビュー
それぞれの人生、それぞれの悩みがあるのに、「一般男性」とまとめられてしまう属性の人々から10人のサンプルを選び出し、インタビューをしたノンフィクション。普通の人間関係だったら話さない様な個人的な思いや事情を知ることで、理解が一歩進むかも知れない。
男性10人に対し仕事・恋愛・コンプレックスなどについてインタビューを行い、そこから見えてくる「何か(価値観やメンタリティ)」を探る本だと思いました。その何かがジェンダー問題の核かもしれません。
私自身は恋愛の点でマイノリティな存在です。よく、もし自分がマジョリティ側の人間だったらどんな考え方の人間になっていたのかなーと考えているので、この本の概要を見て読むことを決めました。
結果非常に興味深い内容でした。マジョリティの人生にも一定の法則が感じられるような気がしました。
ドーバー海峡横断部の下りが世界の果てまでイッテQの企画と書かれていたのですが、ウリナリだったような記憶
全ての話に同意できる訳もないし共感もできないものもあるのだが、でも、しかし、恐ろしいことに全ての話に一定の理解ができる。わかってしまう自分にちょっと怖さも感じてしまった。そして人の話を聞くという面白さが半端ない。男性の皆さん読んでおいた方がいいですよ。
ここで取り上げられた男性のほとんどは自尊心が高い方ばかり。インタビューに応じてくれる時点で自分のことを話したい思考の方なのでしょうけれど、清田氏の聞き出す力に驚きました。
ジェンダー問わずさまざまな人にも聞いてみた続編がありそうですね。
男性の知り合いはいるけれど、こんなに深い話はしたことがないので、男性がどういうことに悩んで、どういうことに躓いて生きているのかを初めて知りました。
「男性だから」こそ良い思いをすることもあるし、逆に苦しい思いをすることもあるんだという当たり前のことに気付かされました。「女性にステレオタイプを押し付ける(ある程度の年齢になったら結婚しなきゃとか、料理が上手くて当然とか)のは止めよう」ということは少しずつ(本当に少しずつだけど)社会のお約束になってきているように気がするけど、「男性に対してはどうなんだろう?」ということにもっと目を向けていかなきゃなと思いました。
「どんな人にもドラマになる人生のエピソードが1つはある」
これは私がテレビ番組を制作する中で感じていることだ。たぶん街録などのインタビューロケをしたことにある人ならばみんなそう思っているはず。それを信じて一般の人のエピソードで作られている番組も多い。
この本に収められているのも、さまざまな男性の人生エピソード。
人それぞれに人生模様が異なっているが、なかなか人に直接聞ける機会はないのだから、ぜひ貴重な経験として活かしたい。
「東京の生活史」より聞き手がプロの分、深く話を聞けている。
まーリアルですね。このご時世にどうしてマチズモに囚われてしまうのか。既得権益を手放したくない昭和のオッサンの名残りなのか。きょうびの女はためらいなくサッサと出ていき、愕然とすることになる。
なぜ自分の思い通りにすべてが運ぶと傲慢に考えられるのか。チヤホヤされて育った人、毒親に脅されて育った人、どこかで学ぶ機会はなかったのか。
すべてをなくして自分の愚かさを知り、修正し、やり直してほしい。
女性の立場から、女性とは違う男の社会の中での生きづらさや辛さはあるんだなと認識を新たにする一方で、女性の生きづらさの一端も垣間見えて、読んでいる間、話者に「共感したいけれど寄り添えない」という感情が湧いていた。
男性も女性も持って生まれた性に左右される思考や行動はあるだろうが、男性の承認欲求と優位に立ちたい欲求の強さに驚く。
以前読んだトランスジェンダーの男性(女性から男性)が、手術ようやく男性として生きていけると安堵した一方で、男らしさや強さを基準とする男の世界に極度に緊張し、自分がトランスジェンダーだとわかったらどうなるのだろうと怯えたという話を思い出した。彼はトランスジェンダーとして、女性男性どちらの世界を知ったことを本を通して共有してくれた。
本書も「一般男性」という言葉にマスクされ、見えにくい男性の本音を届けてくれた。普段なら話すことは憚れる性的なことまで赤裸々に語ってくれた勇気に敬意を払う。同時に本書を読んだ女性の反応にも目を向けて欲しい。そうすることが相互理解と、「男だから」「女だから」の呪縛からお互いが抜け出せるきっかけになるのではないだろうか。本書の存在がそこに一石を投じるものになることを願っている。