冬牧場
カザフ族遊牧民と旅をして
李娟
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刊行日 2021/12/24 | 掲載終了日 2022/05/06
ハッシュタグ:#冬牧場 #NetGalleyJP
内容紹介
芥川賞受賞作家・李琴峰氏推薦!
「温度計も測れない厳冬、羊のフンに囲まれる地中の家、果てしない荒野――。過酷な環境とともに描き出されるのは、遊牧民の人間味溢れる暮らしと営み。クスッと笑うこと間違いなし」
中国文学における最高栄誉の魯迅文学賞や上海文学賞、人民文学賞、第二回朱自清散文賞など、多くの文学賞を受賞している李娟の代表作『冬牧場』がついに日本刊行!
世界で一番海から遠い都市、新疆ウイグル自治区のウルムチから届いた極上の紀行エッセイ。著者と、新疆ウイグル地区アルタイ地方にある冬の牧場で遊牧をしているカザフ族との約3カ月にわたる心温まる交流が綴られている。遊牧民の生活は、中国の政策によって近いうちに遊牧民たちも定住を選ぶ時代になるかもしれないという時代に、非常に貴重な記録ともなっている。
販促プラン
【発売記念!&NetGalleyFMラジオ番組紹介記念!『冬牧場』献本キャンペーン】
『冬牧場』刊行記&BFM791 NetGalleyFMラジオ番組「ネットギャリーで発売前の本を読む」でのレビュー紹介を記念して、レビュー投稿者の中から、抽選で新刊書籍を3名様に献本をプレゼント!
NetGalleyを通じて、多くの読者に本書の魅力をお届けできればと思っています。
みなさまのご感想、レビューをぜひお寄せください。
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BFM791 NetGalleyFMラジオ番組「ネットギャリーで発売前の本を読む」
毎週火曜日朝7:20~ (再)土曜日12:00~
NetGalleyに掲載されている作品と集まったレビューをご紹介している10分間の収録番組です。
『冬牧場』のレビュー紹介は、12月28日(火)です。
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2022年1月 全国紙で宣伝予定
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784908184307 |
本体価格 | ¥3,400 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
なんて贅沢な冬なんだろう。
この本はタイトル通り、遊牧民の冬の話。温度計では測れなくなる程の寒さ。水の調達の困難さ、そんな過酷な環境においても動物達を世話して生活する人々との交流がとても心を温めてくれる。
筆者の李娟さんは周囲にヒマを持て余すのでは?という心配を他所に、ヒマを怖がらず「ぶらぶら」したり石を拾ったり。情報過多の現代社会において、周りを観察したりのんびりしたり、それこそ贅沢な時間の使い方に思えた。
読み進めていくうちに、辺境の地なのに、どこか懐かしい気持ちになった。なぜ懐かしいのか。家族が牛の初乳を食べる場面で腑に落ちた。私の生まれ育った家の裏山には牛小屋があった。そこで牛の出産の時は同じように、栄養たっぷりの初乳を分けてもらって食べた経験があるからだ。牛の出産という場面も、彼らと同じような身近な出来事だったのだ。
もしかしたら、彼らは定住を選びもう冬を過ごした地下の家、地窩子(ディウォーズ)には住まなくなるのかもしれない。彼らと過した冬を通して李娟さんが世界をりんごの木の森の例えた箇所がとても心に残った。
私もこの本を通してまだまだ成長していく「知っている」ことと「知らない」ことを受け止めて自分自身の成長に繋げたいと思う。
私たちが心地よく感じる豊かな生活とはなんだろうか。
温度計で計り得ない極寒の冬の荒野、マトリョーシカの如く着込んだ寒さをしのぐ衣服、一緒に暮らす動物たちの命を頂くという行為、遊牧民にとって他人の助けやおもてなしを無条件に受けることは至極、当たり前だということに読み進める度にじんわりと感動してしまう。
日常に、明日への希望が満ち溢れていて生きるというシンプルな尊さがそこにはある。
体験したわけでもないのに、なぜか懐かしさに胸が締め付けられた。
泣きながら笑っている読後の私がそこにいた。
真っ赤な光が広がる朝焼け。
世界が金色に染まる夕焼け。
キラキラとうつくしい雪解けの水。
どれも、息を飲むような光景だ。それは、極寒の地で冬を越す遊牧民族への、自然からの特別な贈り物。
本書は、カザフ族と共に羊を放牧しながら、ウルングル川周辺の「冬牧場」でひと冬を越した著者の紀行文である。
それにしても、と思った。カザフ族の遊牧民たちは、本当にわたしと同じ地球に住んでいるのだろうか。少なくとも、わたしの現在の暮らしとはかけ離れている。そもそも、遊牧民族についてじっくり学んだことはあっただろうか?本の中にはわたしの知らない世界が果てしなく広がっていた。
早朝三時に起き、一時間以上かけてお茶を飲む。夜明けの光に照らされる頃、馬にまたがり、砂漠を移動し始める。夕方、 次の野営地に到着すると、テントを張る。雪を温めた水を飲み、少しの食事を摂る。家畜の世話をする。砂漠の中で野営する。
ここまでは、想像の範囲内。
朝は零下三十五度まで下がる。
放牧中に、果てしなく広がる礫砂漠で、感じる孤独。
羊を追って帰る夕方は、頬は数十回ビンタをくらったように痛み、頭はこん棒で殴られたみたいに痛い。
こういう辛さは、経験した人にしかわからない。
それでも、遊牧民族たちの暮らしの中には、ささやかな喜びが見つかる。
辺り一面単調な砂丘では、一粒の小石さえ美しく思われ、心が揺さぶられる。小石は、どんな宝石にも変えがたい輝きを放つ。
自由気ままなラクダ、わざと別々の方向に走っていく三頭の子牛、いちばん自由でどこでも走り回る馬、群れるのが好きな羊たち。そして個性豊かな人々。
孤立した生活を営む遊牧民族たちの、寂しさや貧しさを描きつつ、クスッと笑える話や心が温まる話も織り込まれ、まるで様々な感情の糸で美しく編まれたタペストリーのような物語だった。
地球の営みに従って動物と人間が共存する、美しくも厳しい世界。そこで遊牧民として生きるカザフ族という民族。カザフ族のことを初めて知った。遊牧民というとモンゴルを思い浮かべるが、全く違う文化を持った民族だった。信仰する宗教はイスラム教で、刺繍で家中を装飾することが大好きな民族らしい。その民族のとある家族と漢民族である著者が生活を共にする。読み進めていくにつれ、漢民族のこと、カザフ族のことが少しずつわかってくる。動物たちとのエピソードや大黒柱のジーマの人間くささなどもアクセントとなっていて楽しい。新疆ウイグル自治区の一面を知ることのできる素晴らしい本。
著者が、カザフ族という遊牧民の一家とひと冬を過ごした、体験と日常が綴られていました。自分が一瞬であってもできそうにない冬牧場での生活も、誰かの経験を通して共有できるというのは、読書の素晴らしいところだと改めて実感しました。大自然の過酷さと美しさ、その中で営まれる日常。私が目を見開くような出来事も、ジーマたちにとっては当たり前のことなのだというのが、当たり前に腑に落ちました。途中から遠くの知り合いの話のような親しみを感じ始め、読み終わった後、また本を開いてその話を聞きたくなりました。
寒い地方の話か、確かに寒さ、て体験しないとそこで日常を過ごすということが想像を超えてるっていうことはある、なんでそんな寒いところで生きていけるのと思うことはある、と思っていた。それは日本の中でもある。零下20度を下回る所の暮らしってこんなだよ、と語れば東京の友達はびっくりする。そのくらいのレベルのことなら少しわかる、人生観がそこで変わるということも言える。そう思っていた。
が、想像を超える世界がある。それは世界のどこかにはあるということは文字の上では知っていたけれど。
極上のエッセイ、と銘打たれているが、衝撃的だった。
極限の自然の中にいる、ということは、人の生の営みを、ただただ、生き延びること、に収斂された極限のレベルまで結晶のように半端なく研ぎ澄ます。大自然の中では人間なんてちっぽけだ悩みなんて小さい、と感じる、とはよくいうが、それを生と死の極限まで突き詰めたようなものだ。
新疆ウイグル地区ウルムチ在住、という言葉だけでもいろんなことが想像できる。衝撃的な本だった。
序文の前に写真がたくさん出ている。
そして序文には、これから語り始めることの概要と、そこでひとときを共にした人々と、今は連絡方法を失い、彼らがどうしているかわからない、ということが語れられている。読む前に、彼らのいまにアクセスする方法が失われていることを読者は知る。写真が一枚も載せられないのは、肖像権のことについて連絡が取れないからという。読むものは皆そう感じるだろうが、読んでいるうちに一緒にいるような気がしている人々が、いまどうしているだろうか、健康で暮らしていてほしいと願わずにいられないだろう。
ゆっくりゆっくりまた読み返したい。哲学書の趣がある。
2010年、私が体験したのは遊牧民の寒くて寒くて寒い冬ー
著者・李娟が新疆ウイグル自治区アルタイ南部のカザフ族の遊牧民の一家と共に旅をして一緒に暮らしたノンフィクション。
バタバタとした(主に服装の)準備から始まり、遊牧民との旅、生活、出会いと別れ、何事もとにかく寒さをしのぎ、水を得るため戦いであり、困難の連続。それが今を生きる人の目で丁寧にかつ軽やかに描かれている。これは李娟の筆致によるもので、彼女は私が持っていた強い中国人女性とは異なり、なんともほわほわとしたところもあるごく普通の女性だ。
彼女と生活を共にする人たちも、ごく普通の、それぞれに素敵な能力を持つ人たち。彼らは黙々と日々の暮らしを営んでいる。少ない食料と単調な仕事。テレビは大好きでみんなで噛り付いて観る。子供はどこにいても元気。ごくありきたりの生活なんだろう。でも読んでいると、地窩子(地下穴の家)で彼らと一緒に極上のミルクティーを飲んでいるような、温かくほのかな幸せを感じられる。
遊牧民の彼らはその後は政府のプロジェクトにより、定住しなければならなかった。その記憶を残すために李娟により書き留められた記録。日本を含めた世界中で起きていることだろうけど、古くから伝わってきたものが失われていくのは寂しいかぎりだが、李娟が書くことによって日本にいる私がこの牧場に立ち寄ることができたのは貴重な体験だ。
新疆ウイグル自治区という地名に構えてしまうも、これは李娟の3か月に及ぶカザフ族の遊牧民の家族との暮らしを事細かに綴ったエッセイだ。とはいうものの、遊牧民の暮らしをイメージでしか捉えていなかったわたしには衝撃的なノンフィクションとして迫るものがあった。
ことばも満足に通じないジーマ一家と、慣れぬ遊牧の仕事を手伝い、圧倒的な確かさでそこにある茫漠とした大地と空の下で感じることどもの手応えに、生きることのひとつの真実を見る思いがした。
温度計では計れないほどの厳寒の荒野で、水の確保は難しく、一本の枝すらない礫砂漠の荒涼とした風景の中で「生活」すること。そこにはただ粛々と生きる力強さがあった。繰り返される日常に迷いはない。共に生きる動物たちから糧を得て、想像を絶する範囲の放牧に疲弊しながらも。
愛すべき変人のジーマの言動には、作者李娟の素直な揶揄が逆にユーモアを放っている。等身大のことばで、見たこと、感じることを書き綴る日々は、きっとその奥に生と死の思惟もあったに違いない。
ジーマ一家とは、今はもう会うことも話すことも叶わない現実が、この冬牧場の世界を一層堅固な印象で象る。
読ませていただきありがとうございました。
読んでいて、想像を絶する寒さにこちらまで冷え冷えとしてくる。
ぬくぬくした暖炉のそばや、こたつの中で読みたい作品。
描写はとても興味深く、移動式の人たちはすべて春夏秋冬「ゲル(パオ)」の中で生活しているんだと思っていました。
昔大学でロシア語を取っていた時に、モンゴルからの留学生さんたちと大学の敷地内にゲルを作ったことがあります。確かに簡単に作れて便利だなと思った覚えがあります。でも確かにあんなの寒いに違いない。
羊のふんで作られた地中の家、想像もつかないし、やっぱりそれでもとても寒そうだけれど、色々と工夫しているんだなあと思いました。
彼らとの3か月間、くすっと笑わされることもあり、とても興味深いエッセイでした。
若い女性が遊牧民家族に同行し、冬の放牧地で動物の世話をしたり、地下穴の家で生活を共にした体験記。雪を集めて生活用水にする、羊のフンは建築資材にも燃料にもなるという事実に一つ一つ驚きがあった。著者の繊細かつチャーミングな描写が、なめらかな日本語に訳されており、隔絶された雪の世界と人間味溢れる家族達のやりとりに入り込めた。