デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
河野 啓
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刊行日 2020/11/26 | 掲載終了日 2021/11/30
ハッシュタグ:#デスゾーン栗城史多のエベレスト劇場 #NetGalleyJP
内容紹介
2020年 第18回 開高健ノンフィクション賞受賞作。
2021年 Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞、ノミネート。
両手の指9本を失いながら“七大陸最高峰単独無酸素”登頂を目指した登山家・栗城史多(くりき のぶかず)氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ、SNS時代の寵児と称賛を受けた。しかし、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。
彼はなぜ凍傷で指を失ったあともエベレストに挑み続けたのか?
最後の挑戦に、登れるはずのない最難関のルートを選んだ理由は何だったのか?
滑落死は本当に事故だったのか? そして、彼は何者だったのか。
謎多き人気クライマーの心の内を、綿密な取材で解き明かす。
≪選考委員、大絶賛≫
私たちの社会が抱える深い闇に迫ろうとする著者の試みは、高く評価されるべきだ。
――姜尚中氏(政治学者)
栗城氏の姿は、社会的承認によってしか生を実感できない現代社会の人間の象徴に見える。
――田中優子氏(法政大学総長)
人一人の抱える心の闇や孤独。ノンフィクションであるとともに、文学でもある。
――藤沢 周氏(作家)
「デス・ゾーン」の所在を探り当てた著者。その仄暗い場所への旅は、読者をぐいぐいと引きつける。
――茂木健一郎氏(脳科学者)
ならば、栗城をトリックスターとして造形した主犯は誰か。河野自身だ。
――森 達也氏(映画監督・作家)
(選評より・五十音順)
【著者略歴】
河野 啓(こうの さとし)
1963年愛媛県生まれ。北海道大学法学部卒業。1987年北海道放送入社。ディレクターとして、ドキュメンタリー、ドラマ、情報番組などを制作。高校中退者や不登校の生徒を受け入れる北星学園余市高校を取材したシリーズ番組(『学校とは何か?』〈放送文化基金賞本賞〉、『ツッパリ教師の卒業式』〈日本民間放送連盟賞〉など)を担当。著書に『よみがえる高校』(集英社)、『北緯43度の雪 もうひとつの中国とオリンピック』(小学館。第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞)。
出版情報
発行形態 | ハードカバー |
ISBN | 9784087816952 |
本体価格 | ¥1,600 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
栗城さんは、私の持つ登山家のイメージとは異なる存在だったんだと感じました。副題の“エベレスト劇場”も、読んでみると納得です。栗城さんに対して、にくめないやつ、と言ってる方もいましたし、とんでもないことを考える登山家もいたんだなとは思いますが、どこか孤独です。
うーんうーん、してしました。
著者ご自身も判定はレフェリーである読者の皆さんに委ねたい、とあります。
あるけど、ありますけど、
反論の出来ない相手(栗城さん)に対してこれはフェアじゃないんじゃないかとも。
真実を伝えることが果たして本当に正義(正解)なのか、あらためて考えさせられました。
インターネットの普及で風化してしまったことも今は探そうと思えばそれほど労力を要さず探せてしまうことは良い面も多分にありますが、
本人や周りがいくら反省し償ったとしても、だからって罪を犯していいわけじゃないし、それは一生償っていくことだとは思うけど、当時を知らない、関心のない市井の人々の耳目を集め、その当事者を物事を再び暴き、話題にすることが簡単に出来てしまいます。どこまでが本当に必要なことなのでしょうか。
とてもとても怖い世の中になってしまったと思います。
本著を読んで、著者はどんな気持ちでこれを書いたのか、どれほどの覚悟をしたのか。だいぶ思いを巡らせました。
人の人生、なんだと思っているのかと。
ジャーナリズムって一体なんなんだろうと、ジャーナリズムも説明できないぼんやり平和ボケですが、
そうまでして伝えなくちゃいけないことだったのかと、よくわからないのが本音です。
栗城さんと交流のあった女性達が数人登場するのですが、皆さん言葉の選び方が素敵で「聡明」ってこういう人たちのこというのねーと、うんうんしました。
山の魅力に取り憑かれた男が、幾度も困難に阻まれながらエベレスト登頂に挑戦する。
高度な技術、ギリギリの判断、葛藤、孤独、朋友との絆、超人的な忍耐力、無駄に語らない山の男…
そんなステレオタイプな山の男の話だと思い込み読み進めた。
著者は取材開始当初、命をかけて山を登る登山家栗城に対し恥ずかしくないほど自分は真剣に生きているだろうかと、引け目のようなものまで感じている。
そこからゆっくりと栗城氏に対する思いが変化していく様子が丁寧に描かれていた。
栗城氏の周辺の人々や、ネットの反響、登山のプロフェッショナル達の弁…さまざまな角度から見た栗城像が語られる。
型にはまらない栗城スタイルには賛否両論あるのかもしれないが、私は著者の言葉の中に最後まで変わらぬ愛を感じとった。
『エベレスト劇場』と辛辣な副題をつけつつも、どこかに愛を持って栗城氏の人間味を描ききったノンフィクションであった。