サハマンション
チョ・ナムジュ
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刊行日 2021/06/21 | 掲載終了日 2021/07/20
ハッシュタグ:#サハマンション #NetGalleyJP
内容紹介
日本版『82年生まれ、キム・ジヨン』コンビによる衝撃が再び!
韓国版136万部、日本版23万部突破、映画化にもなり社会現象を巻き起こした異例のベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の最新長編小説を刊行します。「少数者、非主流と呼ばれる人々の物語を書きたかったのです。主人公のような密入国者たち、老人たち、女性たち、子供たち、性少数者、障害者などがマンションで生きている姿を描きたかったのです」(韓国の「毎日経済新聞」著者インタビューより)
ディストピアの底辺で助け合い、ユートピアを模索することは可能か?
この新たな衝撃作を日本版『82年生まれ、キム・ジヨン』と同じ斎藤真理子さんの訳でお届けします。
超格差社会「タウン」最下層に位置する人々が住む「サハマンション」とは?
30年前の「蝶々暴動」とは?
ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の最新長編小説。
ディストピア「タウン」最下層の人々が住む場所で相互扶助を夢見る。
「世界でいちばん小さくいちばん異常な都市国家」である「タウン」。そこでは……。
「口にしたり書いたり印刷したりしてはいけない単語があった。…歌ってはいけない歌があり、読んではいけない本があり、歩いてはいけない通りがあった」。
その中で、「サハマンション」は「唯一の通路もしくは非常口のような場所だった」。
そこには犯罪を犯して逃亡してきた者たち、「タウン」から排除された人々が流れついていた。
【著者プロフィール】
チョ・ナムジュ
1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』(民音社)で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』(タサンチェッパン)、2019年『サハマンション』(民音社)、2020年『ミカンの味』(文学トンネ)、2021年、民音社から新作短編集を刊行。日本語版→『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、2018年筑摩書房)、『彼女の名前は』(小山内園子、すんみ訳、2020年筑摩書房)、『ミカンの味』(矢島暁子訳、2021年朝日新聞出版)刊行。新作短編集は小山内園子、すんみ訳で2022年筑摩書房から刊行予定。
【訳者プロフィール】
斎藤 真理子(さいとう まりこ)
翻訳家。『カステラ』(パク・ミンギュ、共訳、クレイン)で第一回日本翻訳大賞を受賞。『ヒョンナムオッパへ』(チョ・ナムジュほか、白水社)で第十八回韓国文学翻訳賞文化体育観光部長官賞受賞。訳書に、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)、『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出書房新社)、パク・ミンギュ『ピンポン』(白水社)、『ダブル サイドA』『ダブル サイドB』(筑摩書房)、ファン・ジョンウン『ディディの傘』(亜紀書房)など多数。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784480832177 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
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NetGalley会員レビュー
韓国が抱える議論や問題が物語を通して浮き彫りにされる。
一度、滑り落ちてしまうと立ち上がるのは容易ではない現実。
それでも、人々は助け合いそこで生きていく。
劣悪な環境下でも、なんとか生きていく姿に
目を覆いたいのに目が離せないないと言うべきか。
新作が出る度に追いかけて読んでいる作家さんですが
また、新たな一面を知ったような気がします。
韓流ドラマやK-POPなどのエンターテイメントの世界での活躍も目を見張りますが、
韓国文学の幅の広さにも驚きを隠せません。
なんか、うまく言えないけど
すごいわ。
近未来の小さな都市国家。その実態は決して見えないのに、厳然としてある格差社会。その中でも最底辺の人々が吹き溜まりのように肩寄せ合って暮らす、奇妙なコミュニティー、サハマンション。傷つき流れ着いて、それでもどうにか生きようとする者を決して拒まない場所。差別され排除され、どうあがいても這い上がれない社会構造の中で、嘆きつつ、もがきつつ生きる人々の底にあるパワーは一種異様に凄まじい。
マイノリティーのメンタルの折れそうな弱さこそが、逆にひしがれた強さを見せるしぶとさに圧倒された。
ジンギョンの最後の叫びと決意に、その魂が宿る。
チョ・ナムジュさん、ますます目が離せない書き手になっていきます。
近未来の都市国家から排除された人々が集うコミュニティ「サハマンション」。様々な理由で集まった住人たちが、自分の生活を維持することだけでも厳しい中、互いを支え合い何とか共に生きようとしている姿が、痛々しくもあり逞しくもある。フィクションと理解しているつもりでも、限りなくノンフィクションに近いようなリアルさがあり、思わず目を背けたくなるような描写でも、読ませてしまう作者の筆力の高さを感じた。最後のジンギョンのセリフに、未来に対する強い決意が込められている気がして、胸が熱くなった。
酸素が少しずつ薄くなっていくような感覚が最後まで続いた。
最初からチャンスを与えられない人や、一度でもレールから足を踏み外した人たちが集うサハマンション。住民たちは逞しいように見えて、それは内面の寂しさ、絶望、不安などを隠す殻を日々塗り固めていったからにすぎない。本当はみんなギリギリだ。
そう思うとサハマンションの住民たちの未来がまったく他人事に思えず、私の周りの酸素がどんどん薄くなっていったのもそのせいなのかも。
チョ・ナムジュさんの作品を読んだのはこれで三作目。理不尽を強いられることの苦しみを常に突きつけられて、つらいけれど読まなければならないと思う。
近未来のディストピア。固定化された格差社会の最底辺に存在するのが『サハ』と呼ばれる人々。這い上がろうにも術の無い状況に愕然とする。読者である私が愕然とする中、物語の中の人々は助け合い肩を寄せ合って暮らしている。そんな姿を知れば知るほどに何とも言えない怒りが湧いてくる。大切な家族や友人と一緒にいる為に戦う強さや心の叫びは凄まじいものを感じた。
近未来の都市国家。その中で最底辺を生きるサハマンションの住民たちの物語。韓国の現状を投影された作品だけれど、香港の現状とか世界各地に広がっている格差問題にも通じます。作者の作品、『82年キム•ジヨン』同様解決策が提示されるということはなく、主人公が、読者である私たちがそれぞれの問題に向き合わされます。
やむを得ずサハマンションに住むことになった住民たちには健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などありません。でも肩を寄せ合い、お互いに助け合い生きています。読後、日本の現状、世界の現状と未来について考えずにはいられませんでした。
『82年生まれ、キム・ジヨン』ですごく注目した作家さんの新作なので迷わず読みたいと思いました。
今回の作品もまた読み手に色々な質問を投げかけてくるような作品でした。いろいろと考えながら読み進めました。
まず出てくるのが格差社会、そして近未来のディストピア。サハに住んでいる人のそれぞれの人生からいろんなことや彼らの生き方について考えさせられます。現在各地で自然災害が起きていたり、コロナだったり、アフガニスタン問題があったり、すでに半ディストピアの中で暮らしているような私達ですが、その半歩先にこういう社会が待っているかもしれないと思うと怖いものがありました。
『82年生まれ、キム・ジヨン』や『彼女の名前は』のイメージで読むと、だいぶ印象が違う作品。
とはいえ、社会の弱い側、抑圧されている人の痛みを描く作品なので、そこは一貫しているのかも。
語り手がどんどん変わり、時制もいったり来たりするので、
世界観が見えてくるまでちょっと読みづらかったです。
また、韓国名に慣れていないこともあって男女の別がしばらくわからず、
ジェンダーが意味を持つ場面での話の理解に少し苦労しました。
格差を描いたディストピア小説。サハマンションは、不法な居住をしている貧民窟。実験動物のようにされている「ウミ」。罪のあるなしもわからないのに、殺人犯にされた弟君。いろんなマンションの住民が出てきていろんな物語を展開させる。格差は固定し、偏見は罪を捏造する。格差の固定は怖い。とても怖いことだと感じました。