東京のぼる坂くだる坂
ほしおさなえ
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刊行日 2021/05/27 | 掲載終了日 2021/06/28
ハッシュタグ:#東京のぼる坂くだる坂 #NetGalleyJP
内容紹介
「活版印刷三日月堂」シリーズの著者が贈る
変わりゆく“坂の街”東京が舞台のお散歩小説
アラフォーで母と二人暮らしの富野蓉子の父・守之は、引っ越し好きの変人で、亡くなるまでに移り住んだ家は30箇所を超える。それらはすべて東京の名のある坂の近くに建っていた。
幼い頃家を出ていった父の遺言状には、自分が住んだ坂のリストがあった。その一つ「幽霊坂」を通りかかったことをきっかけに、父の足跡を辿り始める。坂をめぐりながら土地に刻まれた記憶をたどり、坂のある風景が、父の、母の、そしてわたしのさまざまな人生模様を描き出す。
幽霊坂、胸突坂、別所坂、王子稲荷の坂、桜坂、蛇坂……各話お散歩用イラストマップ付き!
――蓉子、なぞなぞだ。東京の坂で、のぼり坂とくだり坂、どっちが多いか。
父の声がした。そのとき、思った。これから少しずつ、父の住んだ坂を訪ねてみよう、と。
(「幽霊坂」より)
【著者プロフィール】
作家。1964年東京都生まれ。1995年「影をめくるとき」が群像新人文学賞小説部門優秀作に。小説に「活版印刷三日月堂」シリーズ(ポプラ文庫)、『菓子屋横丁月光荘』シリーズ(ハルキ文庫)、『紙屋ふじさき記念館』シリーズ(角川文庫)、『言葉の園のお菓子番』シリーズ(大和書房)、『三ノ池植物園標本室』(ちくま文庫)など多数。ほかに児童書「ものだま探偵団」シリーズ(徳間書店)、詩集『夢網』(思潮社、大下さなえ名義)などがある。
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784480805034 |
本体価格 | ¥1,500 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
人気のほしおさんの新作が、すぐ読み作品とは嬉しい驚き!
さらに目次を見て、東京にはこんなに沢山の有名な坂があるのかと驚いた。
初めのうちは、小説なのに、エッセイに思え、主人公・蓉子がほしおさん自身に見えた。それぐらい坂や街の描写が細かくて、リアルだったからだと思う。
読み進めるうちに、蓉子や亡き父、母、友人などの人物描写や人間関係にも引きこまれていった。
坂をのぼり、坂をくだりながら、自分の人生を見つめ直し、考える蓉子をそっと見守りたくなった。「別の答えを選んだ自分なんて結局どこにも存在しない。私たちはひとつの道しか選べず、一生を終える」が印象的だった。
お散歩用イラストマップが、緻密、かつ温かみがあって、素敵! 気になって調べたら、九ポ堂さんという紙雑貨のお店。活版印刷をされていると知り、ほしおさんとの関係もわかり、ほっこりしながら、インスタをフォロー。
自由に動ける時が来たら、東京へ行きたい。このマップを見ながら、歩いてみたい。
#東京のぼる坂くだる坂 #NetGalleyJP
坂の街、東京。名のある坂の近くを転々とした亡父の面影を探すように、蓉子は父からのリストに残された坂を巡り始める。上って、下る。あるいは、下って、上るのか。坂を歩きながら考える父の人生や人となり。答えなどあるはずもないが、関わりを絶って、流れた時間はそれぞれをまた変容させもした。
過去、今、これから。ここからここまでとはっきりわかる坂道はなぜかいろいろな思いを連れてくる。
「もしも」を考え始めたらきりがない。それでも、坂を上り下りしながら考える父の来し方に、時々ふと感じる手触りは、どこか懐かしいような面映ゆいような感覚を想起させる。
切れていたはずの父との関係がうっすらと見える跡をかみしめる蓉子は、そうやって初めての邂逅を果たしたのだろう。つらつらと浮いたり沈んだりするような蓉子の想念にわたしも寄り添い、一緒に歩くかのような時間を楽しんだ。
名前のある坂を好んだ主人公(娘)の父親は、生涯に渡り“坂”のお膝元へ引っ越しを繰り返す変り者だった。遺言状にリストアップされた坂の履歴が、主人公をツーリズムへと誘う──。
坂に向き合う度に、知らなかった父親の輪郭が陽炎のように揺れる。父親の本家、母親が墓場まで持って行きたかった事実、そして主人公自身の人生観を空虚な感じとは違う等身大の音色で奏でる。
まだ知らなかったほしおさんの側面を発掘した。▣章の終わりに添えられるイラストマップが愉しい。
名前のある坂に引っ越し続ける人生だった父・タカシの存在にも驚かされましたが、ふとしたきっかけから彼が住んだ坂を訪れるようになり、様々な人生模様が見えてくる展開から、もしかしたらと人生の可能性は考えながらも、それでも人生がこの選択しかなかったとする蓉子のありようがとても印象に残りました。
幼い頃から疎遠だった父が亡くなり、遺言状にあった父が好み住んできた“名前のついた坂”巡りを始める、思い出と歴史を辿るノスタルジックなお散歩小説。味のあるイラストマップと共に、色んな時代の色んな土地にトリップした様な気分が味わえ楽しめた。
小説なのに、エッセイのような、ガイドブックのような、不思議な感覚の本でした。東京に住んでいても、知らないところばかりで、またその付近に行ったことがあっても、あまり意識していないものばかりで、人生を無駄に過ごしてきてしまった気がしました。お父さんの生き方は、真似はできないけれど、新たな視点を意識して、色々見て回りたくなりました。
主人公の蓉子はアラフォーの編集者、母親と2人暮らし。父親は、蓉子が幼い頃にひとり家を出た。それきり会うこともなかったが、転居するたびに葉書をよこしていた父親は、坂好きの引越し魔。名前のある坂を選び、転々としていた。
そんな父親が亡くなり、蓉子への遺言状には今まで住んできた坂の名前の一覧が付されていた。
「蓉子、なぞなぞだ。東京の坂で、のぼり坂と
くだり坂、どっちが多いか。」蘇る父の声。
父親の足跡をたどり始める蓉子。坂の名前の由来や由緒、ガイドブック的要素の中に、ストーリーが絡んでいく。実際に歩くことで紐解かれていくのは、場所の記憶、物の記憶、人の記憶。知らなかった父親の…気づかなかった母親の思いに触れ、ノスタルジーを感じる作品であった。
17の坂が取り上げられ、そのイラストマップがまた楽しい。
「活版印刷」も楽しく読ませていただきました。
お父さんの遺言で巡るようになった東京にあるたくさんの坂。ほしおワールドに参加させてもらいました。なんとも不思議な情景でした。
登り坂、下り坂ではなくのぼる坂くだる坂ですもんね。
#東京のぼる坂くだる坂
#NetGalleyJP
それまでちっとも気にならなかったのにふとしたことぇやけに目につくようになるもの。そういうものの一つに地名があると思う。そしてさらに坂。なんだかノスタルジックな響きをたたえているようにも思う。気にしながら歩いてみるとやけに親しみを覚えたり懐かしくなったりするから不思議。
どんな坂が出てくるのだろう。
ワクワクしながら読みました。
感情の起伏が少ない物語が雰囲気にあっていて、一緒に坂めぐりをしている気分。
行ったことない坂で景色も知らないのだけれど、各章の最後のイラストマップを見ながら読むのが楽しい。
一つ、前に住んでいたところがあり「あ、子どもたちと歩いた!自転車で通ってた!」とその当時の風景が浮かんできて懐かしかった。この作品を読まないと忘れてしまっていた風景を思い出すことができてよかった。
容子さんは父親が愛していた坂道を歩くことで、父親の心を探ってみたかったのかもしれません。なぜ、妻子と共に暮らすことよりも坂のある町で暮らすことを取ったのか。それは、ずっと心の中にしまい込んでいた思いだったのでしょう。
坂道を歩き、時には自分の幼いころの記憶をたぐり、容子さんは様々なことを考えます。父は坂道のどこに魅力を感じていたのか?それが何となくわかるような気がしてきたり、友人たちの人生に思いを馳せたり、自分はこれからどう生きていくのかを考えたり。
短いけれど急な坂もあり、何処まで続くのか分からないようなダラダラ坂もあり、曲がりくねった坂もあり。坂を上ったり下ったり、坂道は人生と似ているのかもしれません。
様々な道を歩きながら容子さんは、今まで気づかなかった家族のありかたを見つけたのかもしれません。
アラフォーで母と二人暮らしの蓉子が、幼い頃家を出ていった父が遺した「自分が住んだ坂のリスト」をきっかけに、東京中の坂を転居して回った父の足跡を辿る物語。東京ってこんなにも坂の多い街なんだなと思いながらの読書。坂の名前の由来や、街の成り立ちなど丁寧に描かれ、各話の最後に手書きのイラストマップも付いているので、ブラタモリファンや坂好きにはたまらん1冊だと思われるが、私は東京に土地勘がないからかイマイチ乗り切れないまま読了。とは言え「活版印刷三日月堂」、「菓子屋横丁月光荘」、「紙屋ふじさき記念館」などのシリーズ物とは違うほしおさんの新たな一面を知れて良かった。
こんなにもたくさんの名前の付いた坂があるのだなと驚く。詳細に書き込まれた坂マップがとても可愛らしい。きっとそこに住んでいたらもっと楽しめたのだろうなと思うと少し残念に感じるなぁ。この本を片手に坂道を巡るのもきっと楽しい♪