私たちはどのような世界を想像すべきか
東京大学 教養のフロンティア講義
東京大学東アジア藝文書院
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刊行日 2021/05/25 | 掲載終了日 2023/06/27
ハッシュタグ:#私たちはどのような世界を想像すべきか #NetGalleyJP
内容紹介
災害、疫病、環境、科学技術、宗教……
不確実な時代において、
30年後の未来を考えるために。
東京大学の新入生に向けて行われた11のオムニバス講義を収録。
〈世界〉と〈人間〉を学問の最前線から捉え直す!
第1講 「人新世」時代の人間を問う——滅びゆく世界で生きるということ…………田辺明生
第2講 世界哲学と東アジア…………中島隆博
第3講 小説と人間——Gulliver’s Travelsを読む…………武田将明
第4講 30年後を生きる人たちのための歴史…………羽田正
第5講 脳科学の過去・現在・未来…………四本裕子
第6講 30年後の被災地、そして香港…………張政遠
第7講 医療と介護の未来…………橋本英樹
第8講 宗教的/世俗的ディストピアとユマニスム…………伊達聖伸
第9講 「中国」と「世界」——どこにあるのか…………石井剛
第10講 AI時代の潜勢力と文学…………王欽
第11講 中動態と当事者研究——仲間と責任の哲学…………國分功一郎・熊谷晋一郎
出版情報
発行形態 | ソフトカバー |
ISBN | 9784798701806 |
本体価格 | ¥2,500 (JPY) |
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NetGalley会員レビュー
東アジア藝文書院が東京大学学部一年生向けに2020年に開講した学術フロンティア講義「30年後の世界へ ―「世界」と「人間」の未来を共に考える」を書籍化したもの。講義の記録動画はUTokyo OCW(東京大学OpenCourseWare)にて公開されています。
これから学びの場に立ち向かう学部新入生にたいし、アカデミックに生きるための技法(アート)として、「問う」姿勢を身につける事へのガイダンスがこの講義の趣旨であるようです。「30年後」をテーマに、わたしたちの未来を考えるための「問い」を各分野の専門家が連続講義で提示していきます。
30年後というテーマで思い浮かぶのは1970年に開催された大阪万博。「人類の進歩と調和」というテーマで開かれたこの万博の30年後は21世紀。高度成長期のまっただ中、前年の1969年にはアポロ11号による人類初の月面到達。皆が希望溢れる21世紀を思い浮かべる時代であった。しかしながら1990年の株価大暴落(バブル崩壊)以降、日本を含む世界経済は長く続く調整期にはいる。政治的にも1989年のベルリンの壁を受け東西ドイツの統一、1991年ソ連邦の崩壊と大阪万博のテーマが前提とする世界は大きく様変わりした。
現在は、このエポックメーキング的な時期から30年を経過したが、この30年間世界はなにやら閉塞感に支配されていたように感じる。コンピュータテクノロジーは大きく進歩し、バイオテクノロジーも想像の域を超える進化を遂げているが、今私たちは14世紀の世界が黒死病におびえたのと同様に新型コロナウィルスにおびえている。
過去に学び、30年後の世界にどう生きるか。30年後も今と同じ社会が続いている時代から、混迷の時代を過ぎて,今日より明日が確実に進歩しているという実感にある時代を経て、不確実な30年。次の30年はさらに不確実性がましている。そんな中で、私たちはどんな世界を描き、どんな世界を造りだしていくのか。「問う」姿勢を身につけ、答えを探り出す技術は、これから学びの深淵に踏むこむ学生だけでなく、すでに人生を歩み始めている人に対しても必要な技術となることでしょう。
本書は2020年春学期の講義録ゆえコロナが随所で話題になっている。まだまだ収束する兆しが見えないが、そんななかでこのような講義を受講できる学生が羨ましくもあり励みにもなった。
まえがきの「この世界において、わたしたち人類がまだ希望を持つことができるのであれば、それは、他と共にあることを楽しみながら、相互に生じる変化のプロセスのなかから、共に世界をつくっていくことによるほかないでしょう。それを可能にするのは、究極のところ学問以外にないとわたしは思います。なぜなら、学問とはことばを愛し、知恵を愛する人々の友情にほかならないからです」(p14)でもう胸アツ…!
いつまでも学んでいたい(既にオトナである)私にとって、知的好奇心を刺激してくれる有意義な本であった。
好きな講義は1,2,3,10,11講。
第1講は話題の人新世。第2講は気になっていたちくま新書の『世界哲学史』シリーズが導入になっている。第3講は文学!武田将明先生のデフォーとスウィフト。
以下、コロナにおける中国の対応とIT技術、3.11と香港の民主化運動及び記憶と記録、データ作成者の意図の読み取り方と公衆衛生(保健所があって良かった!)。中国については知らないことが多くて学ばせてもらった。
第10講のAIとアガンベンのところは難しくも魅了された。第11講の当事者研究と依存についても深堀したい。依存についてはハッとさせられることがあった。
本書のおかげで関心の幅が拡がって読みたい本が増えたし、読まなきゃな〜と思っていた本は年内に読もうと決めた!
(『世界哲学史』シリーズ、國分功一郎先生の本、ハラウェイ、それからアガンベン!…は入門書から)
テーマは30年後の未来。東大の講義11をまとめたもの。理系の講義が少なくて文系が多かったというイメージ。哲学や文学が多めで、話しが偏っていたような気がする。興味がわいたのは「脳」の話し、よく男性脳とか女性脳とか言われるが、あんなのは嘘で、脳は短期間で変容するらしい。つまり脳トレとかしたら変化するのだから、固定的なものはないということ。あと、AIが文章とか歌を作るが、それが評価されない理由。判断価値に人間の心とか感情が入ってくるから。機械の人間化より、人間の機械化が怖いとのこと。
こんな講義を一年目から受けられるなんて東大生が羨ましい。物事をいろいろな角度から見直すのは重要だと言われるものの、なかなか難しい。それを十一のパターンで教えてくれた感じだ。いい勉強になりました。
詳しい感想は私のレビューブログまで。
世界と人間の未来を考える。滅びゆく世界でいかに生き抜くか。という文章に衝撃。30年前にはなかった将来の不安を人間の知識で払拭したい、せめてこの不安な気持ちの正体が知りたかったので読みました。
新入生向けの講演とはいえ、東京大学ですからなかなか難しい。でもところどころ納得できる講演もありました。人新世について語った田辺先生も、AI について語った王先生も機械を恐れるのではなく、人が機械のマネをするのが恐ろしい、と。香港出身の張先生が被災地で聞けた話にもグッときました。
さて不安は払拭できたのか。理解力もあり一掃とはいきませんが、全てを機械に頼るのではなく、データを鵜呑みにするのでなく、知の巨人たちの教えを自分なりに噛み砕き、過ごしていきます。