正欲(せいよく)
朝井リョウ
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刊行日 2021/03/26 | 掲載終了日 2022/03/03
ハッシュタグ:#正欲 #NetGalleyJP
内容紹介
これは、共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か?
「自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、 秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――」 曇りなく讚美される「誰もが自分らしく生きやすい新しい時代」の 虚像を引きはがし、白日の下に晒す。 収めきれない刃を隠し持つ、危険な書下ろし長篇小説!
「この小説には、紹介のあらすじをかんたんに書きたくない。 作者が作った爆弾をそのまま、受け止めてほしい―― 痛みを負いながら繋がり続ける意味を問い、 生きていようよ!と叫ぶ声が響いています 」(担当編集者K)
【『何者』を超える衝撃!】【デビュー10周年記念、著者渾身の書下ろし長編です!】
おすすめコメント
新潮社内、共感と困惑が入り乱れ
「メチャクチャ面白かった。朝井リョウさん、天才です! 自分の知らない自分を知ってしまいそうで・・・刺さりまくりました!」(出版部N)
「全編不穏で居心地が悪いのに、どうしてもページをめくる手が止められず、読後は呆然。常に自分を抉られている感覚・・・。私はもう『多様性』という言葉を、簡単には使えません」(企画編集部T)
「デビュー10周年記念にふさわしい大大大傑作! 世の中に違和感を感じつつ生きている、いびつな魂の物語でありながら、そこに普遍性があります。あるシーンでは、涙を抑えきれませんでした・・・」(営業部M)
みなさまの感想もぜひ聞かせて下さい! この物語を読んで下さった全ての方と語り合いたいです!
出版情報
ISBN | 9784103330639 |
本体価格 | ¥1,700 (JPY) |
NetGalley会員レビュー
冒頭から不穏な雰囲気。白ではなく黒作品。特殊な性癖を持つ彼等がこの世界で呼吸をし生きていくにはどうすれば良いのか。「多様性」という括りからもはみ出し、誰に何処に理解を求めていいかさえもわからない。諦め、嫌悪の感情を抱え生きる彼等を繋ぐものとは?「鈍さは重さだ。鈍さからくる無邪気さは重い邪気だ。」時に善意と良心は悪意にも変わる。人の心は見えないからこそ人は間違える。設定は特異な世界だが、描かれるテーマは誰にも当てはまる普遍なものだ。人間の心の奥底にあるものを炙り出す試みは10年という時を経て過激さを増したよう。しりとりのように言葉が紡がれていく遊びもファンとしては楽しめた。
書き下ろし、読み心地よりも思い切り書き心地に依った作品と
以前語られていたから、朝井さんが今書きたいもの
そのものだと思う。
まともだと言われる、思われる側にいたいのなら
私たちは勝ち続けなければならない。
ずっと地球に留学しているような気持ちって…。
万人が生きやすい世の中
そんなものありはしない。
そもそも正しさってなんなのか。
それは本当に正しさなのか。
もしも、私なら受け入れられるのか?!
多数派にいることをどこか安心している自分の腹黒さを晒された。
どうなのか。
どうだ、ならばどうする。
だから、どうする。
突きつけられた問いに答えが出せないまま読了。
きっと、発売前に再読すると思う。
一言一句漏らすことなく味わい尽くしたい。
そのくらい黒の朝井リョウ刺激的で魅了それた。
何の予備知識もなく読んで欲しい作品です!
なので多くを語れませんが自分の足元が揺らぐような価値観をひっくり返すカウンターパンチを喰らいます。
自分は普通なのか、そもそも普通とは何なのか?
普通だから安心なのか、普通だからこそ孤独なのか。
さまざまな問いかけが浮かんでは消えていきます。
章ごとに視点が変わる際に前の章の終わりと次の章の最初が同じ言葉で繋がっているところが「繋がり」へのこだわりのようで大きな意味を持っていた気がします。
そして越川検事の存在が希望であり光。
数人の登場人物による章で成り立って、書かれている作品です。ただ、どのページも不穏な空気が漂っていて、どう繋がってくるのかわからず、読み初めは不安を感じていました。繋がりのとっかかりを見つけた時は、夢中になって読みました。しかし、読後はもはや、衝撃としか言いようのないものにあてられてしまいました。白版の『スター』と同じ作家さんが書かれているとは思えないほどの、気持ち悪さが残りました。怖いもの見たさの方は、ぜひ!
多様性を認める社会。
誰もが受け入れられる世界。
そんな理想と現実との歪みを朝井さんからまざまざと見せられた気がした。
多様性を叫ぶよりも、理解したふりをするよりも、全然わからないと匙を投げてしまいたくなった。
それなのに、この物語のどんな登場人物もともに生きていく誰かと幸せになってほしいと願わずにはいられない。
自分の想像できる範囲の多様性しか認められない愚かで哀しい私でも、そう思った。
多数派で居続けることこそが少数派なのだ・・
検事の寺井啓喜は息子・泰希との接し方に悩んでいた。不登校になってしまった泰希の表情が能面のように感じられるのだ。父親として、人生の先輩として、社会秩序を安定させる検事として・・・
すっぱり安定した感想、思考が出てきません。皮肉の様に聞こえるかもしれませんが今流行りの多様性とおおっぴろげにはあまり話すことが憚られるような雰囲気のフェティシズム。「表」のテーマと「陰」のテーマが混ざりあい、
なんとも言い合わらすことができない感情が生まれました。
このままではいけないのか、このままでいいのか、の二択すら驕りなのでしょう。「いなくならないから」の言葉が突き刺さります。
「多様性」の意義を問う衝撃作。
読みながら幾度も手を止め、目をつぶった。苦しかった。ここに描かれていたのは、私だったから。
多様性という言葉で、世界を丸ごと受け入れたような錯覚をしていた自分。
思考も想像も放棄して、言葉の耳障りの良さに満足していた自分。
この本が突きつけたものは、無知ゆえに謙虚さを知らない、私のような人間の罪深さだ。
そして想像力なきまま寛容を取り繕った、浅慮な社会だ。
人は学べば学ぶほど、我が身の浅はかさを思い知ることになる。だからこそ真に学ぶ人は、謙虚さと慎重さをを持ち合わせていることが多いのだろう。
胸を張って主張を広げる時こそ、自分の無知を疑い、想像力を使って学ぶべき時かもしれない。
私の意見は、私の思考からきたものか。
それは真実か、それは公正か、それは言葉にできるものか、それは独善的ではないか、それは、それは…
読後もずっとこの本が心に居座り、私に問いかけ続けている。
読み終えても決して終わらない、力のある物語だ。
何が正しいとか正しくないとか、何が本当なのか嘘なのか、誰に何に共感するとかしないとか、全ての物事に主観も客観も意味がないことを教えられた気がした。
朝井リョウ、あなたは「何者」なんだ。
何を持ってかは語れないけれど一般的と言われる趣向、罪にならない癖のみで生きられることに、安堵することは多々ある。そうでなかった人の生き辛さは想像に尽くしがたい。
今作を読んで、それは強くなった。多様性からすら外れてしまう人達がいることに困惑した。
読書習慣のない人には勧めにくいけれど、それ以外の人には誰彼構わず読んでほしい一冊でした。
深かったー。
読後に価値観がひっくり返されるとか、認識を新たにするとか、そう言ったレベルの話ではない。
自分の中の正しさや信頼出来るものが本当にそうなのか確信が持てなくなって、非常に落ち着かないあやふやな気持ちに陥って呆然とする。
人は突き詰めればそれぞれがマイノリティなのかもしれず、マジョリティ側に立ち続けるには勝ち続けなければならない。
とすれば、なんとしんどい話だろう。
理解されることを諦め、どこにも繋がらないで生きていくことすら手放そうとするところから、「いなくならないから」とお互いに手を伸ばし、明日を生きようとするところへ繋がった一点に光を見たような気もするが、それすらもおこがましいのかもしれない。
怖くて苦しくて、多くの人の感想が聞きたい。
『正欲』
著者の才能には驚かされる。
社会に一石も二石も投じる作品だ。
世の中は、家族、人を愛すること、友達…
そして、明日を生きること…
それが当たり前のように形作られている。
ダイバーシティ?多様性を認める?
そんなものは、形の中からはみ出ない範囲のものでしかない。
はみ出てしまうと理解もされないし、排除しようとされてしまう。
生きるため、理解されない人同士で繋がりを求める。
最後まで読んで、もう一度、冒頭を読むと、やるせなさを感じた。
キレイごとばかりの言葉で人を分かったように論じる。
自分の価値観で、すべてを理解したように錯覚する。
それでいいのか?強烈な投げかけをされているような作品だった。
星5つ以上つけたい。
誰もが暗黙の了解で触れないタブーにあえて踏み込んできた朝井リョウさんの意欲作!多様性とは何か、どうあるべきなのかどうすべきなのか、ひとりひとりが思っても口に出せないこともあったりでとても難しいテーマですが、けれどそういったつい想像の外に置いてしまいがちな可能性を垣間見せてくれて、大切なことを思い出させてくれた気がしました。
グサリと鋭い刃物で抉られたかのような痛み。
世の中にはには自分の想像もつかないほどの絶望的な孤独を抱えてる人がいる。それを知るだけでも本書を読む意味があるのではないだろうか。
「多様性」という言葉を寛容を持って受け入れ理解してるつもりの浅はかで傲慢な自分が露呈して辛い。結局それは自分の許容できる範囲の理解であり寛容でしかないのだ。
物語は複数登場人物の視点で描かれる。どの人物の世界にも不穏な空気と圧倒的な孤独が存在している。物語後半になるにつれて登場人物たちの衝撃的な生きづらさに希望の光がさすかのように見えるが、そこにはやはり世間の「常識」や「普通」という壁が立ちはだかる。
ラストの「いなくならないから」と夫婦が伝言しあう場面にとても心打たれた。二人の深い繋がりの前には普通であることなど何の意味もないと感じた。
多様性に対する表面的な理解や寛容な態度が誰かを傷つけ苦しませていたりする可能性を忘れてはいけないと深く自戒するとともに、作者から出された宿題のような、一生考え続ける作品だと思う。