アウア・エイジ(our age)

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刊行日 2020/07/29 | 掲載終了日 2020/07/28

ハッシュタグ:#アウアエイジourage #NetGalleyJP


内容紹介

第163回芥川賞候補作。

「一緒に、塔を探しに行かないか?」

無為な40代の日々を過ごす私は、学生時代、映写室でバイトをしていた名画座を訪れた。その壁に貼られたままの一枚の写真に、かつて心惹かれた女性の記憶と謎がよみがえる……。

そして私はあらためて「衝突」ということを思い直した。カントール集合だ。すべてがすりぬけるばかりではなさそうだ。誰かに蹴られた運命の石が、到達して扉をたたいているのに、気づかず見過ごしていることが十分ありうるのだ。(本書より)

【著者】岡本学(おかもと・まなぶ) 
1972年、東京都生まれ。早稲田大学大学院国際情報通信研究科博士課程修了。 
博士(国際情報通信学)。会社勤務を経て、現在、神奈川工科大学情報学部教授。 
2012年、「架空列車」で第55回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。 
著書に『架空列車』『再起動』(ともに講談社)がある。 

第163回芥川賞候補作。

「一緒に、塔を探しに行かないか?」

無為な40代の日々を過ごす私は、学生時代、映写室でバイトをしていた名画座を訪れた。その壁に貼られたままの一枚の写真に、かつて心惹かれた女性の記憶と謎がよみがえる……。

そして私はあらためて「衝突」ということを思い直した。カントール集合だ。すべてがすりぬけるばかりではなさそうだ。誰かに蹴られた運命の石が、到達して扉をたたいているのに...


出版社からの備考・コメント

校了前のデータを元に作成しています。刊行時には内容が若干異なる場合がありますがご了承ください。

※発売前作品のため、発売後に読まれる読者の皆様のためにも、「ネタバレ」「外部書評サイトへのレビュー投稿」は極力お控えいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
※※リクエストの承認につきましては現在お時間をいただいております。

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※発売前作品のため、発売後に読まれる読者の皆様のためにも、「ネタバレ」「外部書評サイトへのレビュー投稿」は極力お控えいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
※※リクエストの承認につきましては現在お時間をいただいております。


出版情報

発行形態 ハードカバー
ISBN 9784065208397
本体価格 ¥1,400 (JPY)

NetGalley会員レビュー

ある男性が若い頃にバイトしていた映画館を訪れる。映写室で見つけた一枚の写真から当時の出来事が語られる。ノスタルジックで好きな雰囲気。そのバイト先で出会った奇妙で不思議な女性。写真に写っている塔を探している。その事を思い出した男性は塔を探し始める。ほろ苦い青春時代の話からミステリアスな話になってきてグイグイ惹き込まれる。人は生まれてから沢山の人と出会う。大なり小なり何らかの影響を受けているものだ。それが『伝達』であったならば、きちんと受け取れただろうか。きちんと伝えられただろうか。

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主人公がバイトしていた、神楽坂の名画座の話が何度も登場します。行ったこともない映画館なのに、そのすすけた感じや、客がパラパラとしかいないであろう客席や、フィルムを交換するときの黒い丸が目に浮かんでくるんです。シネコンなんてものがなかったころの、小さな名画座。狭い映写室は、ニューシネマパラダイスと似たような景色を想像してしまいました。

 写真に写っていた塔を探す旅は、ちょっと心惹かれました。わたしも、あの塔を探しに電車に乗って旅に行きたいなぁってね。

 誰かを探しに行ったのに、そこで自分を見つけてしまったという感じかな?不思議な魅力のある作品でした。

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ぶつかり合う何か、ぶつかり合わない何か
生きているうちに抜け落ちてしまった私が、若い頃にバイトをしていた映画館の閉鎖をきっかけに、過去の探し物と想いを振り返りケリをつけようとする物語。
「ミスミ」と探す過去、「ミスミ」がいないまま探す現在のシーンは壊れかけたカラーテレビが時々鮮明なカラーで映り徐々に白黒になったり一旦途切れたりして、また点き繰り返す・・といった印象です。生き疲れる中で抜け落ちたのは色合いなのか、その瞬間瞬間なのか。
言葉の謎が明かされた今、救いになったのだろうか・・

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ごくごく普通の中年男性が、ふとしたきっかけで過去に関係のあった女性との出来事を思い出させられる。この女性、ミスミのキャラクターが強烈で頭にこびりついた。その後、何かに追い立てられるように写真の謎を突き詰めていく主人公の様子に緊迫感を感じた。最後の結末までの展開に迫力があって、楽しめた。

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白黒映画やあまり聞きなれない外国映画のタイトル、
ゴトゴトと音を出しながら動く古臭い映写機の描写、
映画好きにはたまらないのではないだろうか。

「四十を過ぎ、生き飽きた気分になっていた」なんて、
どこか人生に対して投げやりさを感じさせる「私」は
招かれて学生時代にバイトしていた名画座を訪れる。
懐かしい映写室で見つけた一枚の写真。
そこに映る〝塔〟がある一人の女の記憶を呼び起こす。

「私」は今はもういないミスミとの思い出をなぞるように、
ミスミの遺した言葉をたよりに写真の謎を追い始める。

偶然の重なりによってあの頃のミスミの本当の姿が見えてくる。
そして、それはミスミと彼女の母の軌跡を辿ることでもあった。
当時の彼女が隠していたこと、母が娘に託した想い、当の本人たちが
知り得なかったことを今になって赤の他人の私によって明かされるなんて、
なんとも奇妙な巡り合せのように思えた。

だけど、この真相を得ることは私にとっても必要だったのだと思う。
ミスミから解放されるため、ミスミがいなくなってしまったことを
現実として受け容れるための弔いとしても。

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芥川賞候補作。名画座の映写技師のバイトをしていたという設定から引き込まれてしまう。映写機の葬式に呼ばれた主人公は、バイト当時に出会った女性に思いを巡らし、その女性が持っていた鉄塔の写真の謎を追う。後半は、まるでミステリーのようだが、女性の母やその周りの人物の生き様死に様が次第に明らかになって、胸を打つ。「タンポポ」「誘拐報道」等の映画の絡め方もうまい。これ、映画になったら良さそうだなと思う。

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our age
生きるの飽きた気分になっていた40代の大学の教員が、学生時代にバイトをしていた映画館から招待の手紙が届き、惹かれていた女性のことを思い出す。
映画館を訪れ、一枚の写真を見つけたことから何かが動きだす。

学生時代の映画館でのバイトの場面と、40代になった大学教員の今の場面で物語が進んでいく。
映写機の表現や不思議な女性とのエピソード、写真の謎を追いかけて…

何かに迷った時、本能に任せて流されていくこともあってもいい。
その時に見えるものがある、忘れていたものに気付くこともある。
生きる希望…
希望というのは、繋がれていく繋いでいくものなのかもしれない。

すべてが繋がって、ぶつかりあって、
心に溶け込んでいく素晴らしい作品だった。

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163回芥川賞候補作。ニューシネマパラダイスを思い出す読者も多いだろう。学生時代に映画館の映写技師のバイトをしていた一人称語り手。著者は本当にそのバイトをしたことがあるのではないかと思える、まるでその古びた映画館に共に身を置いているかのよう。完結で無駄がなく的確にシーンを描き出す、映画を見ているかのよう、映画化を狙っている?後半は謎解き要素が多く、一気に読ませる、とまらなくなる。最後は溢れる涙をとめることができない。伏線の張り方の妙なのかもしれない。ありがとう、この本に、著者と同年代の自分が、さらに先を生きる希望を与えてもらったきがする。書いてくれて、ありがとうといいたい。発売されたら買います。

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主人公が 数学の“カントール集合体”を研究する院生だった20年前。
小さなノスタルジックな映画館で映写技師のアルバイトをしていた頃の話。
そこで出会った同い年くらいの「ミスミ」というミステリアスな女性。
その女性から語られる自分の生い立ちと想い出の“塔”の写真。
最初は「ミスミ」と接点を持ちたいという軽い気持ちから、その“塔”の写真を頼りに
その場所を捜し歩いたり、写真に“our age”という言葉を見つけ、その意味をかんがえる。
だか、めぼしい情報もないまま時を経て、「ミスミ」も見かけなくなり 
主人公も院を修了前となりアルバイトを辞めてしまう。

主人公は、職を転々とした後、現在は大学勤めをしており 年も40代。
妻子とも離婚し、どこか抜け落ちた空虚な日々を過ごしていた。
まさにかつて研究テーマだった
構成要素は無限にあるのに中身が空という哲学的な集合体=カントール集合体のような状態。

ある日 昔アルバイトしていた映画館から、一通の葉書が届き、
20年ぶりに映画館へ行ってみる。そこで一枚の古い写真にまさかの邂逅。
それはかつて「ミスミ」という女が壁に貼っていた“塔”の写真だった。
主人公が苛立つほど焦燥した欠陥ピースがまさにこれ=“塔”だった。
そこで何かに憑かれるように“塔”捜し=自分の空虚探しを始める。
そして最後に主人公にとって“our age”とは…。
“カントール集合体”という不思議な世界観にどんどん引き込まれ一気に読める魅力ある作品でした。

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学生時代にバイト先で出会い惹かれていた女性、「ミスミ」。二十年を経てミスミの持っていた写真を見つけ、写真に写る塔を探し始める。殺されそうな女と言われたミスミは本当に殺されて亡くなっていたが、その強烈な個性とそこに惹かれていく主人公の未だに彼女を忘れられない複雑な想い。女の私には良くわからないながらも惹き込まれて読みました。

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名を残すこともない、欠点が目立つ人でさえ、生きることの意味はある。存在そのものが生きる意味だ。それを誰かが拾い上げてくれるならば本当に幸せだ。が、本人はすでにいないわけで、むしろ、拾い上げたその人こそが宝物を受け取ったことになる。そのチャンスに気づくことができたらいい。気付けるような生き方をしたいと思った。
ラストは。もうひとおし、インパクトがほしい気もした。

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